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本編
第四話 秘密の共有
しおりを挟む陽は祖母の定期検診に付き添って、病院の待合室で順番を待っていた。
ふと視線を上げたとき、廊下の向こうに見慣れた背中が見えた。
「……遥?」
呼びかけると、振り返った遥は一瞬だけ表情を凍らせた。けれどすぐに笑みを作り、軽く手を振ってくる。
「……陽。どうしてここに?」
「ばあちゃんの検診の付き添い。……お前は?」
「ちょっと……、検査をね」
遥の声は落ち着いていたが、その指先はかすかに震えていた。
違和感を覚えた陽は、席を立ち廊下を歩く。
そのとき、診察室の扉が少しだけ開き、中から医師の声が漏れた。
「進行が早いので、できる限り安静にしてください。……残された時間は――」
陽の心臓が凍りついた。目を見開いて、遥を見つめる。
「……どういうことだよ、遥」
遥は唇を噛み、やがて小さく首を振った。
「……お願い。翔太には言わないで。あの人にだけは、絶対に」
陽の胸に、怒りと悲しみと戸惑いが入り混じる。
だが、遥の必死な表情を前に、何も言えなくなった。
「……本当にそれでいいのか」
「うん……僕のわがままだから。……陽だけが知っていてくれればいい」
陽は拳を握りしめ、深く息を吐いた。
「……わかった。約束する。でも……無理するなよ」
遥は微笑みを浮かべた。その笑顔が、どこか壊れそうで、儚かった。
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