《完結済》獣人王国の四男に生まれましたが、何故か人間でめちゃくちゃ愛されてます!?

MITARASI_

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第四章

第38話 眠りの果て

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 式典の夜が明けても、王城の空気は重かった。
 祝いの装飾が残る大広間は、今や沈黙の場所となっている。

 王子リクは――未だ、目を覚まさなかった。



 医務室の扉を開けると、
 白いカーテン越しに柔らかな光が差し込んでいた。
 ベッドの上で眠るリクの顔は穏やかだ。
 けれど、その瞼は一度も開かれないまま三日が経っていた。

 シリウスは椅子に腰を下ろし、
 手にしていた包帯を無意識に握りしめる。

 「……あの時、止めるべきだったのか」

 式典の光景が、何度も頭をよぎる。
 リクが倒れた瞬間。
 あの小さな唇が確かに動いた。

 『……シリウス……ひと……の……』

 “人の――”その続きが何だったのか。
 何度思い返しても、わからない。
 だが、耳の奥に残る声の響きが離れなかった。

 エルミナは扉の前に立っていた。
 彼女の白い耳は、悲しみを映すようにしおれている。

 「王子は……まだ?」
 「はい。体に外傷はありませんが、原因が分かりません」
 「お医者様が言っていました。
  まるで“心”が眠ってしまっているようだと」

 彼女の言葉に、シリウスは拳を握った。
 (心が……眠っている?)

 エルミナは静かにリクの手を取る。
 「王子、目を開けてください……」
 その声は震えていた。

 シリウスは視線を伏せた。
 その手を離してしまいたい衝動に駆られる。
 ――自分こそが、彼をこんな目に合わせたのではないか。



 その頃、リクの意識はどこか遠くにあった。

 暗い水の底のような静けさ。
 光の粒が漂い、どこからか声がする。

 「……陸」

 胸の奥が跳ねた。
 懐かしい呼び方。
 “リク”ではなく、“陸(りく)”。

 目を開けると、灰色の空。
 ビルの影。
 道路の雨の匂い。

 そして、そこに――彼がいた。

 シリウスによく似た青年。
 けれど耳も尻尾もなく、
 人間の姿をしていた。

 「……シリウス?」
 「やっと見つけた、陸」

 声は優しく、けれどどこか悲しかった。
 「……君、誰?」
 「思い出して。僕たちは、前にも出会ってる」

 その言葉と同時に、
 頭の奥で再び激しい痛みが走る。
 リク――いや、“陸”は呻き声を上げた。

 視界が白く弾け、再び暗闇が包み込む。



 「リク……!」
 シリウスが叫んだ。
 ベッドの上でリクの体が小さく痙攣した。
 汗が額を濡らす。

 「医師を呼べ!」
 部屋に走る声。
 けれどリクの瞼は閉じたまま。

 彼の中では、もう一つの世界が確かに動き始めていた。
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