上 下
7 / 9

ウルフと魔女と三人の冒険者

しおりを挟む
 私は冒険者と交換条件で、ウルフ退治に森林の奥に入りこんだ。

 冒険者が討伐するウルフは、牙狼族の種族で高原の高い場所に生息すると言われている。
 もちろん、村で魔物図鑑を買い覚えた。
 牙狼族は、鋭い牙で獲物を逃がさないよう噛み殺す牙を生えている。
 一度咥えた獲物は、必ず逃がさないと言う執念深いの種族。

 …………のはずなんだが、もし私がいなかったらこの冒険者絶対死んでると思う。
 それなのに、よく依頼したなこの冒険者は。
 私は、昔からよく牙狼族のウルフの事はよく知っている。
 むしろ、いつも討伐しているからだ。

「そういえば、名前聞いていなかったね。私の名前は……」
 私は自己紹介で名前を言おうとした瞬間

「アリサ・クロウですよね。冒険者の人達は全員貴方の名前は知っています」

「あっ……そう?」

 深刻な表情で、小さい声で呟く。

 私の噂めっちゃ広まってるじゃん!あだ名も名前もステータスも私の個人情報全て漏れているじゃないか。

「じゃ俺から自己紹介するな。 俺の名前はユウキ、職業は剣士。 いつか俺は王国の騎士になろうと思ってる」

「次、私ね。 私の名前はカレン、職業は知ってる通り魔法使い。 私は魔法学園に進学して、いつか魔法学園の教師になりたい」

「お前、その変な夢よりもっと高い方に目指せよ。お前そのままじゃ人生捨ててるぞ。
 俺みたいにさ、カッコイイ仕事した方がいいぞ」

「なによ、変な夢って! あんたこそ、王国の騎士っていいながら目指してるようだけど、勉強も出来ない様子じゃ王国の騎士になれないと思うよ。毎回テストでオール2って、どんなに頭悪いの? そのままじゃ王国の騎士になれなく、村で鍛冶屋の仕事に就くよ。
 あんた、そっちの方が似合ってるよ」

「はぁー!! 毎回なんどもなんどもだけど、俺の夢を勝手に壊すんじゃねぇぞ!
 てめぇこそ、教師じゃなく夜のお仕事の方がよっぽど合ってるぞ。
 そっちの方がお金儲けなるんじゃないのか」

「ちょっと、何なの? 私の方が余計傷つくんだけど。 あんな気持ち悪いお仕事なんて絶対嫌! あんたこそ私に結構傷つく事言ってるからね」

「はぁー?」
「何よ、文句あるの?」

 何故か自己紹介のはずが、二人の喧嘩を見る光景になってしまった。
 私は何も言えず、下を向きながら知らない様子でトボトボと歩きだすと、もう一人の女性が

「あのー、次私の番だけど夫婦喧嘩はよそでしてくれない?」

「はぁー? 夫婦喧嘩じゃねぇし、それに夫婦じゃねぇし」

「そうよエリカ! 私たちは夫婦じゃないの。ごめんね、エリカの自己紹介を邪魔して。
 原因はあいつだから許してね」

「原因は俺かよ!」

「何よ、原因を作ったのはあんたじゃないの!」

「うっ……そ、それはそうだけど。すまん」

「わ……私こそごめん。きつい言葉を言って」

「べ……別に気にしていないんだけど。ま……まぁ許してやるよ」

「じゃ私も許してやるよ」

「はぁ?なんだその態度! 超ムカつくんだけど」

「何よ、あんたがその態度をするからでしょう」

 とまぁ、二人は一瞬喧嘩が治まったように見えたが、また喧嘩が始まった。
 二人が喧嘩してる間に、もう一人の女性が私に近づき

「すいません、魔女様!こんな喧嘩を見せてしまい。
 私の名前は、エリカと言います。職業は賢者で回復系です。
 夢はまだ決めていないです」

「よろしくね、エリカさん」

「あっ、別にエリカって呼び捨てでいいですよ。私、さん付けあまり好きじゃないんで」

「あっ……そう」

 こうして私達は無事に自己紹介が終わり、ウルフ退治に向かおうとする。
 二人は未だにまだ喧嘩をしているけど。


 そのあと、私達はようやく牙狼族の生息する場所に着いた。
 牙狼族が生息する場所は、人が居ない場所で住んでいる。

「よっしゃー! 早速ウルフ討伐するぞ」

「ちょっとユウキ! 声がでかいよ。ウルフ達に居場所ばれるじゃない」

「大丈夫! 俺たちはウルフを討伐に来たんだぞ。それに魔女様が仲間に居るから俺たちに怖いものなんて一つもないんだからさ」

 ユウキがその言葉を言った瞬間

 ウオオ―――――――ン!!!

 ウルフの咆哮が聞こえた。
 ウルフが咆哮する時は、満月を見ながらする時と、敵が襲ってくるのを感じた時しかしない。
 つまり、ウルフは私達がここに来ている事を察し、仲間達を呼んでるしか思いつかない。

「ほら、言ったじゃない! あんたの声がウルフ達に聞こえたじゃない」

「そんな事言っても、俺たちはウルフを討伐に来てるんだぞ。 居場所がバレても討伐する事は変りはないさ」

 冒険者達は、戦闘準備を始め待ち構えた。
 私は戦闘準備より、早く家に帰りたいしか考えていなかった。

 そんな事を考えると、森林の奥から物凄い足音が聞こえてくる。
 3匹、4匹じゃない、これは群れで襲いにかかってきていると感じた。

 そして、大群のウルフが私達の前に立ち止まり威圧を出してるように見つめている。

「ちょっと、こんな話聞いていないんですけど? ウルフって群れで襲いかかるのは知ってるんですけど、こんな大群初めて見るけど」

「えぇ、私も驚きました。まさかこんなに大勢の大群が襲ってくるのは予想もしていなかったです」

「へっ、こんなに大群連れてきても俺たちは後下がりなんてしないぜ。
 俺たちは冒険者だ。こんな日が来てもおかしくないしな」

「魔物退治の魔女様、私達を見ていて下さい。 私たちがどれほど強いか見せて上げます」

「わかった。貴方たちの覚悟、見せてもらうよ」

「それじゃ行くぞ、皆!」

「「えぇ、いつでもいいよ!」」

 始めに動いたのは、先頭に居た剣士のユウキが走り出した。
 その後ろで魔法使いのカレンが詠唱を始め、賢者のエリカはカレンとユウキのステータスを一時的高くするスキルを使う。

「行くぜー!! スキル『一刀両断』」
 スキルと言うと、刀の刃から、青色に輝き物凄い速さで真正面のウルフの首元を豆腐のように切れた。

 その後、詠唱が終わった魔法使いのカレンは魔法を使う。
「この一辺を焼き尽くせ! ハァー!!」

 杖の先から炎の玉が何個も現れウルフたちに散らばって飛んでいく。
 散らばった炎の玉はウルフの身体に炎に包まれ、黒焦げのように倒れていく。

 へぇー結構やるじゃない、あいつら。
 大体全員レベル15ぐらいかな。結構強いじゃん。
 これなら私の出番はないかな。

 ホッとした様子で、戦ってる冒険者を見つめる。

 もう私の出番はないと思ったけど、ウルフ達の群れが急に行動を始めた。
 始めは戦闘に走ってるユウキの方に、大群のウルフがユウキに襲いかかる。

「へっ! そんなに大群きても俺の一刀両断には逃げる事なんてできないぜ」
 ユウキは再び、一刀両断のスキルを放ちウルフの首を落とした。
 しかし、一刀両断で首を落としたのは戦闘に居た3匹のウルフ。
 そのスキルを放った終わり、隙を狙ってたウルフ達はユウキの手足に嚙みついた。
 痛みを感じたユウキは、思い切り刀を嚙みついているウルフ達に振り回している。

「こ、この野郎! さっさと俺の手足から失せろ」
 全体を揺らし、ウルフ達を離そうとしてるけどウルフには一度嚙みついた時は、絶対離さない執念があり死ぬまでずっと嚙みつく。

 その様子を見たカレンは、魔法でユウキの周りのウルフを倒そうと詠唱する。

「カレン、危ない!」
 詠唱してる時に後ろにいたエリカの声を聞こえ後ろに振り向いたら、前方からウルフ達が襲ってきた。
 ユウキを助けたい気持ちで、魔法の詠唱を気にし過ぎで周りのウルフ達に目を向けていなかった。

 カレンは着ていた服装をウルフに噛まれて、服装を引きちがれほとんど服装が破れていた。

「嫌―――――!! 止めて!!」
 カレンは服装をちぎられて泣き叫ぶ。
 その様子を見たエリカは止めに入ろうとするけど、エリカの魔法ではウルフを倒す魔法がなかった。
 それでもカレンを助けに走りだす。

「エリカ――!! その場所から動くな」
 ユウキはエリカにその場を動くなと叫び止めようとした。
 しかし、急に止まれと言われすぐに足を止める事ができなく全方面からウルフに襲われ、カレンと同じように服装を破れた。

「嫌―――!! 止めて頂戴!!」
 エリカもカレンと同じように誰かに助けてもらいたく、叫んだ。

 先ほど一部始終を見てた魔物退治の魔女はその場を動かず立ち止まってる。
 すると、一匹のウルフが動いていない魔女を狙って飛び出し嚙みつこうとした。

 後何センチで魔女の服装を嚙みつく寸前の時に、魔女は片手を後ろに振り回しウルフの顔を直撃し、襲いかかったウルフの顔が潰れて、体中から大量の血を出しその場で倒れ込み黒い霧と共に消えていく。

 その光景を見た三人の冒険者は、悪寒を感じたのか恐怖を感じた表情を顔に出していた。
 魔女はウルフの大群の方に身体を向け、今まで見たことない怒った表情でウルフに睨みだした。
しおりを挟む

処理中です...