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第一章 最強パーティ、一夜にして糞雑魚パーティへ
第18話 属性
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「ひとまずパーティは機能しそうだね。デュランス、君は治癒術以外に何の神聖呪文が使えるんだい?」
「俺か? 傷治療《キュア・ウーンズ》と祝福《ブレス》。それと信仰の盾だな。つっても祝福も信仰の盾も気休め程度だぜ?」
「いや、こんな迷宮では気休めすらありがたいよ。ネズミが出たらそれにも頼ることになりそうだね」
オスカーの言う通りだ。紙一重で生を拾う。
数え切れないほど俺はそんな事態を迷宮で体験している。
気休めすらありがたい。それが迷宮ってなもんだ。
「ネズミ? なんでネズミだと呪文が必要になるんスか?」
ソニアが首をかしげる。ああ。この二人はまだネズミと出くわしていなかったんだな。
あんな凶悪ネズミに一匹でも出会っていたら確実に死んでいただろうな。
「なんかこの迷宮ネズミだけめちゃくちゃ強いんだよ。三層、四層で出てきてもおかしくないくらいの強さで実際俺は殺されかけた。オスカーも死にかけた」
「僕は罠で死にかけたんだけど……」
「ネズミがそんなに強くなってるなんて信じがたいが旦那の顔を見ればわかりますよ。信じます」
「ああ。とにかくネズミには気をつけてくれ。本当に危険なんだよ」
「大丈夫っス! デュランスはこう見えてそこら辺キチっとしてる奴なんス! だってこいつ……」
「あ、おい! 言うな! 言うんじゃねえよソニア!」
ソニアに指を差されて露骨にデュランスが露骨に動揺する。
相当な秘密みたいだな。めちゃくちゃ顔が真っ赤になってるよ。
「何? 何何? ソニアちゃん言ったって言ったって。デュランス君がどうしたの?」
「デュランスの属性……秩序にして善なんスよ! だから大丈夫っス!」
「ああああ!! 言うなって言っただろ! 俺は全てを憎み呪う混沌にして悪のクレリックなんだよ!」
デュランスという男、やけにキッチリした奴だと思ってはいたが秩序にして善だったのか。
属性
俺たち冒険者は法に対しての価値観。そして善悪の見地から九つに分類される。
法を守る気持ちが強ければ秩序 その逆は混沌。そのどちらでもないなら中立
善なるものは善 悪なるものは悪。これはそのままだな。同じく善でも悪でもないなら中庸
その組み合わせである属性はギルドで分類されることになる。
例えば金持ちから盗んだ金を貧しい者に分け与える。これは混沌にして善だ。
『誰かを助ける為なら法なんざ関係ねえ!』という価値観だな。かっこいいな!
法を悪用して自分の政敵を破滅させ私腹を肥やす役人や大臣。これは秩序にして悪だ。
『己の利の為ならばいくらでも法を悪用してやる!』という価値観だ。ヘドが出るねえ~。
俺とギフンは中立にして中庸
基本的に法は守るけどそこまでガチガチじゃないし、良い奴ではないけど悪い奴でもないよ。という価値観だ。
一番平凡というか無難な属性だな。
でも平凡が一番いいって二十歳過ぎた辺りからしみじみと思えるようになってきたよ……
オスカーは混沌にして中庸。好奇心を満たすためなら法なんて関係ないって価値観だな。
性格は中庸ではあるけれども結構良い奴寄りじゃないかな。
ベルティーナも同じく混沌にして中庸だ。こいつは自分第一で法を守る気は一切ないな。
性格は中庸ではあるけれでも、ギリギリだと俺は思っている。本当ギリギリ中庸だよこいつは!
「デュランスお主秩序にして善なのか。ワシは偉いと思うがなあ」
「そうだよ。今どき珍しいよ。偉い偉い」
「そうねえ。デュランス君偉いじゃない。滅多に見かけないわよ秩序にして善なんて」
「そうなんスよ! なのにデュランスは自分の属性を嫌がってるんス! ワケがわからないっスよデュランス!」
ソニアがフンス!と鼻息荒くデュランスを攻め立てる。
確かにみんなの言う通りだ。
平凡属性の俺からしたら大したもんだと思うけどなあ。偉いもんだよ
「それが嫌なんですよ! その『ルール守って偉いでちゅねえ~』感が気になるんですよ!」
「うーん……そんなもんなんかなあ……俺にはわからんなあ」
「アイザックの旦那もなってみればわかりますって。だから俺はこれから秩序も気にせず己の為なら他者をも蹴落とす混沌にして悪になるんです!」
「だいたいデュランスはそんなタマじゃないっス」
ソニアの言う通りだと俺も思うなあ。
それに生き方、信念ってのはそうそう変わるもんじゃないし。
「いーや! 生き方を変えれば属性も変わるはず! ……ん? アイザックの旦那ちょっと! プレートアーマーの肩部分が外れかかってんじゃないですか! ほら!」
デュランスが俺の左肩から外れかかっていたアーマーの金具を付け直す。
「お、おお。すまんな。助かる」
「痛い思いはしないで済むに越したことないですからね……っと。これでよしっと! ……ん? ベルティーナの姉さん、ちょっと杖見せてください! ここ! 煤《すす》が詰まってますよ!」
金具を直したデュランスが今度はベルティーナに詰め寄る。
「あ、あら。ありがとうね。た、助かるわあ」
「俺はクレリックだから詳しいことはわからないけどその杖から魔法が出るんですから。こんな詰まってたら危ないじゃないですか」
デュランスがブツブツいいながら杖に詰まった煤を細かく払いのける。うーん……この子……とってもいい子!!
満足行ったのだろうか。デュランスはベルティーナの杖を眺めてウンウンと頷いた後に両手で髪の毛をセットし直す。
「ま、そういうわけで俺は混沌にして悪のクレリックとして生きていくんでよろしくです!」
「絶対無理っス。デュランスは一生秩序にして善っス。ちなみに私は混沌にして善っス!」
中立マンの俺からしたらなんとも濃い新規メンバーだ。
休憩に使った玄室を後にし、探索を再開しようとした所で背中にデュランスの声が響く。
「ちょ! ちょっと何やってんですか! 焚き火の火がまだ完全に消えてないじゃないですか! 火事になるかもしれないし他の冒険者が火傷になってしまうかもしれないじゃないですかぁ!」
振り向くとデュランスが慌てた表情で火種をしっかりとかき消していた。
やだこの子……想像以上に秩序にして善!!!
「俺か? 傷治療《キュア・ウーンズ》と祝福《ブレス》。それと信仰の盾だな。つっても祝福も信仰の盾も気休め程度だぜ?」
「いや、こんな迷宮では気休めすらありがたいよ。ネズミが出たらそれにも頼ることになりそうだね」
オスカーの言う通りだ。紙一重で生を拾う。
数え切れないほど俺はそんな事態を迷宮で体験している。
気休めすらありがたい。それが迷宮ってなもんだ。
「ネズミ? なんでネズミだと呪文が必要になるんスか?」
ソニアが首をかしげる。ああ。この二人はまだネズミと出くわしていなかったんだな。
あんな凶悪ネズミに一匹でも出会っていたら確実に死んでいただろうな。
「なんかこの迷宮ネズミだけめちゃくちゃ強いんだよ。三層、四層で出てきてもおかしくないくらいの強さで実際俺は殺されかけた。オスカーも死にかけた」
「僕は罠で死にかけたんだけど……」
「ネズミがそんなに強くなってるなんて信じがたいが旦那の顔を見ればわかりますよ。信じます」
「ああ。とにかくネズミには気をつけてくれ。本当に危険なんだよ」
「大丈夫っス! デュランスはこう見えてそこら辺キチっとしてる奴なんス! だってこいつ……」
「あ、おい! 言うな! 言うんじゃねえよソニア!」
ソニアに指を差されて露骨にデュランスが露骨に動揺する。
相当な秘密みたいだな。めちゃくちゃ顔が真っ赤になってるよ。
「何? 何何? ソニアちゃん言ったって言ったって。デュランス君がどうしたの?」
「デュランスの属性……秩序にして善なんスよ! だから大丈夫っス!」
「ああああ!! 言うなって言っただろ! 俺は全てを憎み呪う混沌にして悪のクレリックなんだよ!」
デュランスという男、やけにキッチリした奴だと思ってはいたが秩序にして善だったのか。
属性
俺たち冒険者は法に対しての価値観。そして善悪の見地から九つに分類される。
法を守る気持ちが強ければ秩序 その逆は混沌。そのどちらでもないなら中立
善なるものは善 悪なるものは悪。これはそのままだな。同じく善でも悪でもないなら中庸
その組み合わせである属性はギルドで分類されることになる。
例えば金持ちから盗んだ金を貧しい者に分け与える。これは混沌にして善だ。
『誰かを助ける為なら法なんざ関係ねえ!』という価値観だな。かっこいいな!
法を悪用して自分の政敵を破滅させ私腹を肥やす役人や大臣。これは秩序にして悪だ。
『己の利の為ならばいくらでも法を悪用してやる!』という価値観だ。ヘドが出るねえ~。
俺とギフンは中立にして中庸
基本的に法は守るけどそこまでガチガチじゃないし、良い奴ではないけど悪い奴でもないよ。という価値観だ。
一番平凡というか無難な属性だな。
でも平凡が一番いいって二十歳過ぎた辺りからしみじみと思えるようになってきたよ……
オスカーは混沌にして中庸。好奇心を満たすためなら法なんて関係ないって価値観だな。
性格は中庸ではあるけれども結構良い奴寄りじゃないかな。
ベルティーナも同じく混沌にして中庸だ。こいつは自分第一で法を守る気は一切ないな。
性格は中庸ではあるけれでも、ギリギリだと俺は思っている。本当ギリギリ中庸だよこいつは!
「デュランスお主秩序にして善なのか。ワシは偉いと思うがなあ」
「そうだよ。今どき珍しいよ。偉い偉い」
「そうねえ。デュランス君偉いじゃない。滅多に見かけないわよ秩序にして善なんて」
「そうなんスよ! なのにデュランスは自分の属性を嫌がってるんス! ワケがわからないっスよデュランス!」
ソニアがフンス!と鼻息荒くデュランスを攻め立てる。
確かにみんなの言う通りだ。
平凡属性の俺からしたら大したもんだと思うけどなあ。偉いもんだよ
「それが嫌なんですよ! その『ルール守って偉いでちゅねえ~』感が気になるんですよ!」
「うーん……そんなもんなんかなあ……俺にはわからんなあ」
「アイザックの旦那もなってみればわかりますって。だから俺はこれから秩序も気にせず己の為なら他者をも蹴落とす混沌にして悪になるんです!」
「だいたいデュランスはそんなタマじゃないっス」
ソニアの言う通りだと俺も思うなあ。
それに生き方、信念ってのはそうそう変わるもんじゃないし。
「いーや! 生き方を変えれば属性も変わるはず! ……ん? アイザックの旦那ちょっと! プレートアーマーの肩部分が外れかかってんじゃないですか! ほら!」
デュランスが俺の左肩から外れかかっていたアーマーの金具を付け直す。
「お、おお。すまんな。助かる」
「痛い思いはしないで済むに越したことないですからね……っと。これでよしっと! ……ん? ベルティーナの姉さん、ちょっと杖見せてください! ここ! 煤《すす》が詰まってますよ!」
金具を直したデュランスが今度はベルティーナに詰め寄る。
「あ、あら。ありがとうね。た、助かるわあ」
「俺はクレリックだから詳しいことはわからないけどその杖から魔法が出るんですから。こんな詰まってたら危ないじゃないですか」
デュランスがブツブツいいながら杖に詰まった煤を細かく払いのける。うーん……この子……とってもいい子!!
満足行ったのだろうか。デュランスはベルティーナの杖を眺めてウンウンと頷いた後に両手で髪の毛をセットし直す。
「ま、そういうわけで俺は混沌にして悪のクレリックとして生きていくんでよろしくです!」
「絶対無理っス。デュランスは一生秩序にして善っス。ちなみに私は混沌にして善っス!」
中立マンの俺からしたらなんとも濃い新規メンバーだ。
休憩に使った玄室を後にし、探索を再開しようとした所で背中にデュランスの声が響く。
「ちょ! ちょっと何やってんですか! 焚き火の火がまだ完全に消えてないじゃないですか! 火事になるかもしれないし他の冒険者が火傷になってしまうかもしれないじゃないですかぁ!」
振り向くとデュランスが慌てた表情で火種をしっかりとかき消していた。
やだこの子……想像以上に秩序にして善!!!
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