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第一章 最強パーティ、一夜にして糞雑魚パーティへ
第40話 決着
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「俺のターン! 魔力をチャージ……ターンエンド」
俺は一切の感情を見せずにターンエンドを宣言する。
このゲームはピンチの時こそ笑い、チャンスでは眉間に皺を寄せる。そのようなブラフがまかり通っている。
もちろん本当にピンチの時に不安な顔を見せることで裏の裏を深読みさせる、といった戦法もあるが
リーゼッテにそのような駆け引きを試みても恐らくロクな結果にならないだろう。
ならば無表情無感情。一切の駆け引きを放棄する。ここまできたら読みもへったくれもない。
「……アイザック様、何か抱えていらっしゃるのですか?」
探る視線だ。リーゼッテが俺の呼吸、目線、仕草、一挙手一投足を観察している。
「……そちらのターンだ」
「駆け引き放棄ですの? これもまたデュエル&ドラゴンズの醍醐味だと思うのですけども」
「駆け引きを放棄する。それもまた駆け引きだ」
「物は言いようですわね。私のターン。ドロー! 魔力をチャージ。バトルに入ります」
リーゼッテはこのターンも召喚をせずにそのままバトルに入ってきた。
「特に対応はない。受けよう」
「では見張りと女盗賊の攻撃でそれぞれ計11ダメージ、受けてもらいますわ!」
「クッ!!」
「これでアイザック様のライフは残り8ですわね」
「み、見張りが強すぎる! だ、旦那。このままだと次のターンには負けてしまいますぜ!」
リーゼッテはすでに勝利を確信しているのだろうか。余裕の笑みすら浮かべている。
勝利を確信したもの特有の笑みだ。
目線、態度、プレイング。そこから導き出される答えは一つ。
この女、もう一枚『心奪う女盗賊』を抱えている!
俺の英雄デッキのクリーチャーはほぼ全てが男性ユニット。
この盤面を逆転できるクリーチャーを出した所でもう一度奪ってやれば問題ないと思っているのだろう。
リーゼッテのプレイングを見てわかった。
恐らくこの子は対人経験がほぼ皆無だ。一人で遊んでいたのだろう。
だからこの程度の盤面ですでに勝利を確信しているのだ。見せてやるよ。
ゴールドワイバーンクラスの実力を!
「俺のターン。ドロー」
まずはドロー。悪くないカードだ。これなら予想よりも早く”詰め”ることができる。
「なあリーゼッテ」
「どうされましたのアイザック様?」
「俺はさっき言ったよな。見張りと剣は”繋ぎ”のカードだと」
「え、ええ。そう仰ってましたわね」
俺がこれから繰り出すカードへの用心からかリーゼッテが唾を飲む。
「そう。繋ぎ。前座なんだよあいつらは……俺の本命は……こいつだ! 魔力チャージ! 魔力5でこいつを召喚だ!」
「な!? ま、まさかそのカードは!!」
俺が召喚したクリーチャーにリーゼッテは明らかに動揺を隠せていなかった。
そう……俺が召喚したのは
「『偉大なる守護者ザルディン』! これが俺の切り札だ!」
「あー。アイザックの旦那が迷宮でめっちゃ力説してたやつじゃないですか。かっこいいイラストですね」
自分の体躯を優に超える程の巨大な斧を担いだバーバリアンの男性が場に飛び出す。
角の生えた鉄兜を被ったその戦士は鋭い眼光を放っている。
ザルディンは……盤面に存在する見張り、女盗賊とは異彩を放つ程の格を放っていた。
「ザ、ザルディン!? まさかそれ程のカードをお持ちになっていらしたの!?」
思わずたじろぐリーゼッテ。それもそのはずだ。ザルディンはスペシャルユニークカード
極々僅かな数しか刷られていない伝説のカードなのだから。コーセイ……仕入れてくれて本当感謝だよ。
「ザルディンはパワー3体力4。コスト5のクリーチャーとしては貧弱だ。だがその真髄は能力にある。お互いのターンの始めにパワー4体力1の兵士を生み出す!」
このままザルディンの能力で兵士を増やして押し込めば勝てる!
「俺はこのままターンエンド。そして」
「私のターンの最初に兵士が一体生み出されるってわけですわね……」
「ああ。このまま軍団を編成させてもらうぞ」
「ザルディン……話には聞いていましたが実際に見るのは初めてですわ……素晴らしいカードです」
「ああ。素晴らしいカードだ」
「ですから……この方も……」
落ち着きを取り戻したリーゼッテは魔力をチャージしてから笑みを浮かべる。
先程俺の見張りを奪ったときと同じ笑みだ。
「頂きますわ! コスト4『心奪う女盗賊』を再び召喚しますわ!」
やはり持っていたか! だがなリーゼッテ。
俺はお前のその甘えた大振りなアクションを咎めさせてもらうぞ!
「心奪う女盗賊、まだ抱えていたか」
「ええ。切り札はまだ切っていない。そう直感してましたの。これでザルディンを奪って見張りで攻撃すればライフは0! 私の勝ちですわ!」
「甘いなリーゼッテ……どうして俺が6ターン目にザルディンを召喚したかわからなかったのか?」
「えっ?」
「ザルディンは魔力5で召喚できる。だが俺は1ターン耐えて6ターン目。魔力を6使える状態で召喚したんだ」
「……」
「そう……魔力はまだ1余っているんだよ」
「あっ!」
「俺は魔力を1使用して即時装備魔法『将の兜』をザルディンにつける!」
『将の兜』の使用コストは1。その能力は『相手クリーチャーの能力や魔法の対象にならない』
ザルディンは強い。相手からしてみれば放っておけない厄介なクリーチャーだ。
対処もなしに召喚してもすぐに奪われたり魔法カードで破壊されることは間違いない。
だからこそ俺はデッキに忍ばせていた。ザルディンを守ることができるカードを!
「勝負を……焦ってしまいましたわ……なぜ魔力を1余らせていたのか……そこに考えが至っていれば……!」
痛恨の表情をリーゼッテは浮かべていた。
もちろん『将の兜』だけでは対処できないカードは沢山ある。だがリーゼッテの手札に、デッキに
兜を被ったザルディンを対処できる札がないことは彼女の表情が伝えていた。
「俺のターン! ザルディンが兵士を生み出す! そしてドロー! ……魔力5! 魔法カード『突撃せよ我が兵士』を使用!」
「あ、それも昨日迷宮でめっちゃ早口で話してたカードですよね。確か全員の攻撃力プラス3でしたっけ?」
そう。コスト5とやや重めではあるが毎ターンに兵士を生み出すザルディンとの相性は抜群だ。
ザルディンさえ無事ならターン毎にパワー7の兵士が生み出されることになるのだ!
「そ、そんな……」
青ざめながら口元を抑えるリーゼッテ。これは駆け引きやブラフではなく生の感情だろう。
対人経験のなさが如実に現われたな。
そこからは容易だった。
「クッ! 攻めきれませんわ!」
こちらは悠々と戦力を整え、リーゼッテは無限に生み出される兵士に攻めあぐね……
そして3ターン後、俺はパワー7の兵士5体で攻撃。
リーゼッテは女盗賊二体と見張りでブロックするが残り兵士二体の攻撃を受けて14ダメージ
リーゼッテの残りライフは13。これでリーサル!
彼女のライフが0を迎えた瞬間、周囲を静寂が支配する。終わりを告げる沈黙だ。
「対戦、ありがとうございました」
俺は対戦相手への尊敬の念を込めて深々とお辞儀をする。
対してリーゼッテはというと……
俺は一切の感情を見せずにターンエンドを宣言する。
このゲームはピンチの時こそ笑い、チャンスでは眉間に皺を寄せる。そのようなブラフがまかり通っている。
もちろん本当にピンチの時に不安な顔を見せることで裏の裏を深読みさせる、といった戦法もあるが
リーゼッテにそのような駆け引きを試みても恐らくロクな結果にならないだろう。
ならば無表情無感情。一切の駆け引きを放棄する。ここまできたら読みもへったくれもない。
「……アイザック様、何か抱えていらっしゃるのですか?」
探る視線だ。リーゼッテが俺の呼吸、目線、仕草、一挙手一投足を観察している。
「……そちらのターンだ」
「駆け引き放棄ですの? これもまたデュエル&ドラゴンズの醍醐味だと思うのですけども」
「駆け引きを放棄する。それもまた駆け引きだ」
「物は言いようですわね。私のターン。ドロー! 魔力をチャージ。バトルに入ります」
リーゼッテはこのターンも召喚をせずにそのままバトルに入ってきた。
「特に対応はない。受けよう」
「では見張りと女盗賊の攻撃でそれぞれ計11ダメージ、受けてもらいますわ!」
「クッ!!」
「これでアイザック様のライフは残り8ですわね」
「み、見張りが強すぎる! だ、旦那。このままだと次のターンには負けてしまいますぜ!」
リーゼッテはすでに勝利を確信しているのだろうか。余裕の笑みすら浮かべている。
勝利を確信したもの特有の笑みだ。
目線、態度、プレイング。そこから導き出される答えは一つ。
この女、もう一枚『心奪う女盗賊』を抱えている!
俺の英雄デッキのクリーチャーはほぼ全てが男性ユニット。
この盤面を逆転できるクリーチャーを出した所でもう一度奪ってやれば問題ないと思っているのだろう。
リーゼッテのプレイングを見てわかった。
恐らくこの子は対人経験がほぼ皆無だ。一人で遊んでいたのだろう。
だからこの程度の盤面ですでに勝利を確信しているのだ。見せてやるよ。
ゴールドワイバーンクラスの実力を!
「俺のターン。ドロー」
まずはドロー。悪くないカードだ。これなら予想よりも早く”詰め”ることができる。
「なあリーゼッテ」
「どうされましたのアイザック様?」
「俺はさっき言ったよな。見張りと剣は”繋ぎ”のカードだと」
「え、ええ。そう仰ってましたわね」
俺がこれから繰り出すカードへの用心からかリーゼッテが唾を飲む。
「そう。繋ぎ。前座なんだよあいつらは……俺の本命は……こいつだ! 魔力チャージ! 魔力5でこいつを召喚だ!」
「な!? ま、まさかそのカードは!!」
俺が召喚したクリーチャーにリーゼッテは明らかに動揺を隠せていなかった。
そう……俺が召喚したのは
「『偉大なる守護者ザルディン』! これが俺の切り札だ!」
「あー。アイザックの旦那が迷宮でめっちゃ力説してたやつじゃないですか。かっこいいイラストですね」
自分の体躯を優に超える程の巨大な斧を担いだバーバリアンの男性が場に飛び出す。
角の生えた鉄兜を被ったその戦士は鋭い眼光を放っている。
ザルディンは……盤面に存在する見張り、女盗賊とは異彩を放つ程の格を放っていた。
「ザ、ザルディン!? まさかそれ程のカードをお持ちになっていらしたの!?」
思わずたじろぐリーゼッテ。それもそのはずだ。ザルディンはスペシャルユニークカード
極々僅かな数しか刷られていない伝説のカードなのだから。コーセイ……仕入れてくれて本当感謝だよ。
「ザルディンはパワー3体力4。コスト5のクリーチャーとしては貧弱だ。だがその真髄は能力にある。お互いのターンの始めにパワー4体力1の兵士を生み出す!」
このままザルディンの能力で兵士を増やして押し込めば勝てる!
「俺はこのままターンエンド。そして」
「私のターンの最初に兵士が一体生み出されるってわけですわね……」
「ああ。このまま軍団を編成させてもらうぞ」
「ザルディン……話には聞いていましたが実際に見るのは初めてですわ……素晴らしいカードです」
「ああ。素晴らしいカードだ」
「ですから……この方も……」
落ち着きを取り戻したリーゼッテは魔力をチャージしてから笑みを浮かべる。
先程俺の見張りを奪ったときと同じ笑みだ。
「頂きますわ! コスト4『心奪う女盗賊』を再び召喚しますわ!」
やはり持っていたか! だがなリーゼッテ。
俺はお前のその甘えた大振りなアクションを咎めさせてもらうぞ!
「心奪う女盗賊、まだ抱えていたか」
「ええ。切り札はまだ切っていない。そう直感してましたの。これでザルディンを奪って見張りで攻撃すればライフは0! 私の勝ちですわ!」
「甘いなリーゼッテ……どうして俺が6ターン目にザルディンを召喚したかわからなかったのか?」
「えっ?」
「ザルディンは魔力5で召喚できる。だが俺は1ターン耐えて6ターン目。魔力を6使える状態で召喚したんだ」
「……」
「そう……魔力はまだ1余っているんだよ」
「あっ!」
「俺は魔力を1使用して即時装備魔法『将の兜』をザルディンにつける!」
『将の兜』の使用コストは1。その能力は『相手クリーチャーの能力や魔法の対象にならない』
ザルディンは強い。相手からしてみれば放っておけない厄介なクリーチャーだ。
対処もなしに召喚してもすぐに奪われたり魔法カードで破壊されることは間違いない。
だからこそ俺はデッキに忍ばせていた。ザルディンを守ることができるカードを!
「勝負を……焦ってしまいましたわ……なぜ魔力を1余らせていたのか……そこに考えが至っていれば……!」
痛恨の表情をリーゼッテは浮かべていた。
もちろん『将の兜』だけでは対処できないカードは沢山ある。だがリーゼッテの手札に、デッキに
兜を被ったザルディンを対処できる札がないことは彼女の表情が伝えていた。
「俺のターン! ザルディンが兵士を生み出す! そしてドロー! ……魔力5! 魔法カード『突撃せよ我が兵士』を使用!」
「あ、それも昨日迷宮でめっちゃ早口で話してたカードですよね。確か全員の攻撃力プラス3でしたっけ?」
そう。コスト5とやや重めではあるが毎ターンに兵士を生み出すザルディンとの相性は抜群だ。
ザルディンさえ無事ならターン毎にパワー7の兵士が生み出されることになるのだ!
「そ、そんな……」
青ざめながら口元を抑えるリーゼッテ。これは駆け引きやブラフではなく生の感情だろう。
対人経験のなさが如実に現われたな。
そこからは容易だった。
「クッ! 攻めきれませんわ!」
こちらは悠々と戦力を整え、リーゼッテは無限に生み出される兵士に攻めあぐね……
そして3ターン後、俺はパワー7の兵士5体で攻撃。
リーゼッテは女盗賊二体と見張りでブロックするが残り兵士二体の攻撃を受けて14ダメージ
リーゼッテの残りライフは13。これでリーサル!
彼女のライフが0を迎えた瞬間、周囲を静寂が支配する。終わりを告げる沈黙だ。
「対戦、ありがとうございました」
俺は対戦相手への尊敬の念を込めて深々とお辞儀をする。
対してリーゼッテはというと……
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