41 / 174
第二章
2-21 梢賢の部屋
しおりを挟む
三人は梢賢の部屋に案内された。
畳の上にネオンカラーのカーペットが敷かれ、ガラス張りテーブルが置かれている。
アルミ製のゴミ箱やマガジンラックなど、かなり昔のヤンキーが使っていたような物ばかりが雑然と置いてあった。
パイプベッドにはあろうことか直接布団が敷いてある。
「鈴心ちゃん、大丈夫か?なんならオレのベッドに寝っ転がってもええで」
クーラーをつけてから梢賢は鈴心を気遣った。だが、返ってきたのは辛辣な言葉だった。
「臭そうなので嫌です」
「──!!」
まるで雷に打たれたように、梢賢は固まった。蕾生も気持ちはわかるが言うことではないと思った。
「そんだけ悪態つければ平気だろ」
「しかたないので座らせてもらいます」
鈴心は深く溜息をついてベッドに腰掛けた。
「ま、まあええ、麦茶でも持ってきたるわ。適当に座っててや!」
ショックから立ち直れない梢賢は一旦部屋を出て行った。永はカーペットの上に直接腰を下ろす。
「リン、本当に大丈夫か?」
「はい。家の中に入ったらだいぶ良くなりました」
「そう、良かった」
しかし、鈴心はその後黙ってしまった。そんな様子を具合が悪いだけと捉えた蕾生は部屋の壁を見回しながら永の隣に座った。
「しかし、なんだこの部屋?」
「んー、古き良き時代の青春って感じだねえ」
永も懐かしそうに部屋を眺めていた。まるでその時代を経験したかのように。
「なんで壁に布張ってんだ?」
「あれはペナントって言ってね、昔のお土産の定番だよ」
「へえー……」
初めて見るものに蕾生が目を丸くしていると、梢賢がトレイに麦茶を乗せて戻ってきた。
「おまっとうさん!どうした坊達!さてはオレの部屋のおシャンティさに腰抜かしよったな?」
「ちょっと何言ってるかわかんねえ」
今度は蕾生からの辛辣な反応に、また梢賢は固まった。
「はいはい、麦茶ありがとう。──はい、リン、飲みな」
そんな梢賢からトレイをひったくって、永はまず鈴心に麦茶を差し出した。
「ありがとうございます」
受け取った鈴心は静かに、けれど勢いよく麦茶を飲んでいる。
「まあええわ、オレはお兄さんやからな。広い心で受け止めたるわ」
引き攣った顔のまま、梢賢もようやく腰を下ろした。
===============================
お読みいただきありがとうございます
感想、いいね、お気に入り登録などいただけたら嬉しいです!
畳の上にネオンカラーのカーペットが敷かれ、ガラス張りテーブルが置かれている。
アルミ製のゴミ箱やマガジンラックなど、かなり昔のヤンキーが使っていたような物ばかりが雑然と置いてあった。
パイプベッドにはあろうことか直接布団が敷いてある。
「鈴心ちゃん、大丈夫か?なんならオレのベッドに寝っ転がってもええで」
クーラーをつけてから梢賢は鈴心を気遣った。だが、返ってきたのは辛辣な言葉だった。
「臭そうなので嫌です」
「──!!」
まるで雷に打たれたように、梢賢は固まった。蕾生も気持ちはわかるが言うことではないと思った。
「そんだけ悪態つければ平気だろ」
「しかたないので座らせてもらいます」
鈴心は深く溜息をついてベッドに腰掛けた。
「ま、まあええ、麦茶でも持ってきたるわ。適当に座っててや!」
ショックから立ち直れない梢賢は一旦部屋を出て行った。永はカーペットの上に直接腰を下ろす。
「リン、本当に大丈夫か?」
「はい。家の中に入ったらだいぶ良くなりました」
「そう、良かった」
しかし、鈴心はその後黙ってしまった。そんな様子を具合が悪いだけと捉えた蕾生は部屋の壁を見回しながら永の隣に座った。
「しかし、なんだこの部屋?」
「んー、古き良き時代の青春って感じだねえ」
永も懐かしそうに部屋を眺めていた。まるでその時代を経験したかのように。
「なんで壁に布張ってんだ?」
「あれはペナントって言ってね、昔のお土産の定番だよ」
「へえー……」
初めて見るものに蕾生が目を丸くしていると、梢賢がトレイに麦茶を乗せて戻ってきた。
「おまっとうさん!どうした坊達!さてはオレの部屋のおシャンティさに腰抜かしよったな?」
「ちょっと何言ってるかわかんねえ」
今度は蕾生からの辛辣な反応に、また梢賢は固まった。
「はいはい、麦茶ありがとう。──はい、リン、飲みな」
そんな梢賢からトレイをひったくって、永はまず鈴心に麦茶を差し出した。
「ありがとうございます」
受け取った鈴心は静かに、けれど勢いよく麦茶を飲んでいる。
「まあええわ、オレはお兄さんやからな。広い心で受け止めたるわ」
引き攣った顔のまま、梢賢もようやく腰を下ろした。
===============================
お読みいただきありがとうございます
感想、いいね、お気に入り登録などいただけたら嬉しいです!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる