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第三章
3-6 梢賢の警戒
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いよいよ話題は本来の目的へ移る。とっかかりが欲しい永はとりあえず一昨日気になったことを聞いた。
「で、雨辺のうつろ神信仰ってどんなの?」
「ざっくり言えば、一昨日菫さんが説明したのに尽きるな」
「世界が終わる時にうつろ神、つまり鵺が降臨して世界を救う──ですか」
「ありがちな宗教観の神様を鵺に置き換えただけだな」
鈴心が思い出しながら呟いたのに続いた蕾生の言葉に、梢賢は驚きながら反応する。
「おお、どうしたどうしたライオンくん。急に専門家みたいやで」
「彼には僕がオカルティック思想の教育を施してあるので」
その肩に手を置き、得意げにしている永を見て梢賢は残念な子を見るような目を蕾生に向けた。
「……ほんまに不憫な子やわ」
「うるせえ。もっと知ってること言え」
「そう言われてもなあ。ずぶずぶになる訳にもいかんからあんまり聞いてないねんけど──せや、なんか毎日拝んでるって言ってたな」
「宗教ならそれは当たり前だろ」
蕾生がつまらなそうにしていると、永が話題を発展させた。
「ただ、拝むという行為には必ず付き物があるよね」
「偶像ですね」
鈴心の言葉が正解だと言うように、梢賢は頷いた。
「せやね。御先祖を拝むならお位牌、神様を拝むなら御神体ってな感じにな。それでいくと雨辺は家宝を拝んでるっていう話や」
「家宝か。そういえば修行の内容も雨辺家の秘術だって言ってたね」
「家宝を拝むことが修行なんでしょうか?修行と言うからにはもう少し過酷なものを想像していたのですが」
永と鈴心が言い合っていると梢賢は肩を竦めて答えた。
「その修行も家宝もオレは見たことないわあ。普段は平凡な家庭やからなあ」
「じゃあ、話題を少し変えよう。梢賢くんはそもそもどうして雨辺と親しくなったの?」
永がそう聞くと、梢賢は頭を掻きながら頬を赤らめて恥ずかしがった。
「え?聞いちゃう?参ったなあ、こら」
「人妻に懸想した気持ちの悪い話ですか?」
鈴心はもの凄い勢いで心の距離をとる。
「ちゃうよ!ていうか、菫さんは離婚してシングルマザーだから!間男じゃないから!そもそも初めて会ったのはオレが五歳の時!」
「意外と古い付き合いだったんだな」
蕾生が少し驚いていると、梢賢はうんうん頷いて当時の思い出を語る。
「初対面はな。あれはオレが七五三の時や。こういう時なら少し贅沢してもいいやろっつって、家族で街に出てん」
「隠れて住んでる割に、聞いてるとけっこう活動的だよな、お前んち」
「んー、雨都は特例である程度里の外に出られんねん。ただし、眞瀬木から支給された道具の携帯が条件でな」
「道具って?」
永は興味を引かれて乗り出して聞いた。
「簡単に言えば持ち運びできる結界や。後は発信機の役目もある」
「今も持ってるんですか?」
「おう、もちろん」
鈴心の問いにポケットをゴソゴソと探り始めた梢賢は、ポケットの裏地を引っ張り出した後舌を出す。
「あ、やばい、忘れちゃった」
「おお、確信犯」
永はそんな梢賢に感嘆の声を上げる。わざわざ村を出た事といい、梢賢自身が眞瀬木を警戒している表れだと思った。
===============================
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「で、雨辺のうつろ神信仰ってどんなの?」
「ざっくり言えば、一昨日菫さんが説明したのに尽きるな」
「世界が終わる時にうつろ神、つまり鵺が降臨して世界を救う──ですか」
「ありがちな宗教観の神様を鵺に置き換えただけだな」
鈴心が思い出しながら呟いたのに続いた蕾生の言葉に、梢賢は驚きながら反応する。
「おお、どうしたどうしたライオンくん。急に専門家みたいやで」
「彼には僕がオカルティック思想の教育を施してあるので」
その肩に手を置き、得意げにしている永を見て梢賢は残念な子を見るような目を蕾生に向けた。
「……ほんまに不憫な子やわ」
「うるせえ。もっと知ってること言え」
「そう言われてもなあ。ずぶずぶになる訳にもいかんからあんまり聞いてないねんけど──せや、なんか毎日拝んでるって言ってたな」
「宗教ならそれは当たり前だろ」
蕾生がつまらなそうにしていると、永が話題を発展させた。
「ただ、拝むという行為には必ず付き物があるよね」
「偶像ですね」
鈴心の言葉が正解だと言うように、梢賢は頷いた。
「せやね。御先祖を拝むならお位牌、神様を拝むなら御神体ってな感じにな。それでいくと雨辺は家宝を拝んでるっていう話や」
「家宝か。そういえば修行の内容も雨辺家の秘術だって言ってたね」
「家宝を拝むことが修行なんでしょうか?修行と言うからにはもう少し過酷なものを想像していたのですが」
永と鈴心が言い合っていると梢賢は肩を竦めて答えた。
「その修行も家宝もオレは見たことないわあ。普段は平凡な家庭やからなあ」
「じゃあ、話題を少し変えよう。梢賢くんはそもそもどうして雨辺と親しくなったの?」
永がそう聞くと、梢賢は頭を掻きながら頬を赤らめて恥ずかしがった。
「え?聞いちゃう?参ったなあ、こら」
「人妻に懸想した気持ちの悪い話ですか?」
鈴心はもの凄い勢いで心の距離をとる。
「ちゃうよ!ていうか、菫さんは離婚してシングルマザーだから!間男じゃないから!そもそも初めて会ったのはオレが五歳の時!」
「意外と古い付き合いだったんだな」
蕾生が少し驚いていると、梢賢はうんうん頷いて当時の思い出を語る。
「初対面はな。あれはオレが七五三の時や。こういう時なら少し贅沢してもいいやろっつって、家族で街に出てん」
「隠れて住んでる割に、聞いてるとけっこう活動的だよな、お前んち」
「んー、雨都は特例である程度里の外に出られんねん。ただし、眞瀬木から支給された道具の携帯が条件でな」
「道具って?」
永は興味を引かれて乗り出して聞いた。
「簡単に言えば持ち運びできる結界や。後は発信機の役目もある」
「今も持ってるんですか?」
「おう、もちろん」
鈴心の問いにポケットをゴソゴソと探り始めた梢賢は、ポケットの裏地を引っ張り出した後舌を出す。
「あ、やばい、忘れちゃった」
「おお、確信犯」
永はそんな梢賢に感嘆の声を上げる。わざわざ村を出た事といい、梢賢自身が眞瀬木を警戒している表れだと思った。
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