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第四章
4-7 RPG②娘
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蔵の中は一昨日入った時と同じ、薄暗く閑散としていた。書棚も変わった所はなくほとんどが空の状態のまま。その中の一ヶ所だけは新めの書物が数冊仕舞われている。
「二日ぶりに入ったけど──、リンは何か感じる?」
永が蔵の中を見回しながら聞くと、鈴心は申し訳なさそうに首を振った。
「いえ……特に何も」
「ふーむ、仮に眞瀬木が式神かなにか使って入ったなら気配くらい残ってるかなーって思ったんだけどな」
「何もない……とは言い切れません。私には何も感じないだけです。眞瀬木と銀騎の術の理が違うとしたら、私程度では感知できないと思います」
「それ、ちょっと引っかかってるんだけど、リンは銀騎の術が使えるってこと?確認なんだけど」
永は以前に星弥に聞いたことがある。だが星弥は具体的なことは知らなかった。
ただ、鈴心は幼少期に銀騎詮充郎から頻繁に健康診断を受けていたと聞いた。その診断の内容や目的などは、結局聞けずにいる。
あのクソジジイにお前は何をされたんだと、面と向かって聞く勇気が持てないまま、永はそのことがずっと気がかりでいる。
「いいえ、使えません。習っていないので。ただ、私の身体は銀騎詮充郎の精子からできていますから、銀騎のDNAによる感知能力だけはあるようです」
鈴心は思いの外平然としていた。だがもたらされた事実は永の度肝を抜いた。
「ええ!?ちょっと待ってよ、てことは遺伝子上ではリンは詮充郎の子どもってこと!?」
「ああ、はい」
「いやいやいや、そんなケロっとした顔で言われても」
永の動揺を見て、鈴心は肩を落として謝った。
「すみません。なんだかバタバタしていてウラノス計画の詳細を報告するのを失念していました……」
「まあ、そうだね。銀騎さんの昏睡とライくんの鵺化があったから、それどころじゃなかったよね──て、待って。じゃあ、銀騎さんも孫じゃなくて……」
「遺伝子上は詮充郎の娘です」
「ああ、そう……なんか腑に落ちたよ」
星弥のしたたかな性格や、鈴心に対する変態的な執着心などは確かに詮充郎寄りだと永は思った。皓矢の妹というよりは、詮充郎の娘だと思うとしっくりくる。
「ウラノス計画の説明をいたしますか?」
「いや、今はいいよ。今度ライくんもいる時にね。それよりも今は慧心弓だ」
「御意」
ウラノス計画はキクレー因子を人工的に保有させたデザインベビーを作ることだと皓矢から聞いている。その被験者が鈴心と星弥だ。
それ以上のことを今この場で聞いて一人きりで受け止める覚悟が永には出来なかった。せめて側に蕾生がいないと心細い。
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お読みいただきありがとうございます
感想、いいね、お気に入り登録などいただけたら嬉しいです!
「二日ぶりに入ったけど──、リンは何か感じる?」
永が蔵の中を見回しながら聞くと、鈴心は申し訳なさそうに首を振った。
「いえ……特に何も」
「ふーむ、仮に眞瀬木が式神かなにか使って入ったなら気配くらい残ってるかなーって思ったんだけどな」
「何もない……とは言い切れません。私には何も感じないだけです。眞瀬木と銀騎の術の理が違うとしたら、私程度では感知できないと思います」
「それ、ちょっと引っかかってるんだけど、リンは銀騎の術が使えるってこと?確認なんだけど」
永は以前に星弥に聞いたことがある。だが星弥は具体的なことは知らなかった。
ただ、鈴心は幼少期に銀騎詮充郎から頻繁に健康診断を受けていたと聞いた。その診断の内容や目的などは、結局聞けずにいる。
あのクソジジイにお前は何をされたんだと、面と向かって聞く勇気が持てないまま、永はそのことがずっと気がかりでいる。
「いいえ、使えません。習っていないので。ただ、私の身体は銀騎詮充郎の精子からできていますから、銀騎のDNAによる感知能力だけはあるようです」
鈴心は思いの外平然としていた。だがもたらされた事実は永の度肝を抜いた。
「ええ!?ちょっと待ってよ、てことは遺伝子上ではリンは詮充郎の子どもってこと!?」
「ああ、はい」
「いやいやいや、そんなケロっとした顔で言われても」
永の動揺を見て、鈴心は肩を落として謝った。
「すみません。なんだかバタバタしていてウラノス計画の詳細を報告するのを失念していました……」
「まあ、そうだね。銀騎さんの昏睡とライくんの鵺化があったから、それどころじゃなかったよね──て、待って。じゃあ、銀騎さんも孫じゃなくて……」
「遺伝子上は詮充郎の娘です」
「ああ、そう……なんか腑に落ちたよ」
星弥のしたたかな性格や、鈴心に対する変態的な執着心などは確かに詮充郎寄りだと永は思った。皓矢の妹というよりは、詮充郎の娘だと思うとしっくりくる。
「ウラノス計画の説明をいたしますか?」
「いや、今はいいよ。今度ライくんもいる時にね。それよりも今は慧心弓だ」
「御意」
ウラノス計画はキクレー因子を人工的に保有させたデザインベビーを作ることだと皓矢から聞いている。その被験者が鈴心と星弥だ。
それ以上のことを今この場で聞いて一人きりで受け止める覚悟が永には出来なかった。せめて側に蕾生がいないと心細い。
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