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第五章
5-4 RPG⑥主人が腑抜けて困ります
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雨都家では、永が甘えた声でレース針を投げ出していた。
「あーん、もう疲れた!」
「では休憩を」
すぐさま鈴心は冷たい麦茶を差し出す。
「サンキュー!うまっ」
それを永が半分ほど飲み干すと、続けて水羊羹を差し出した。優杞からわけてもらった物である。
「糖分もお取りください」
「あまー、うまー!──はー……っ」
水羊羹をペロリと平らげて緩んだ顔が幾分かましになった頃、鈴心は永に問いかけた。
「今日はいかがしますか?」
「そうだなあ……昨日は瑠深さんに聞いても慧心弓のことはわかんなかったからねえ」
「眞瀬木に貸したというのはどういう目的があったんでしょう……」
「弓も、道具のうちだよね」
「はあ」
鈴心の相槌に永はニヤリと笑って言った。
「眞瀬木には呪具の製作部署があるよね?」
「八雲さんに聞きに行くんですか?」
「ま、ダメで元々!」
永の行動力が健在で、鈴心は少し安心する。
「どこに行けば会えるんでしょう?」
「うーん。て言うかちゃんと筋は通さないとダメだろうから……」
「まずは瑠深さんの所ですね?」
そうしてまた二人は思いつきのまま雨都家を飛び出した。
眞瀬木家の前までくると、少し冷静を取り戻す。二人は昨日と同じやり取りをするはめになった。
「──人気がないね」
真っ暗な玄関をそっと覗きながら永が小声で呟くと、鈴心もまた小声で言う。
「昨日もこんな感じでしたね。まさか罠では?」
「それは考え過ぎだと思うけど、用心した方がいいか、な?」
「では一旦帰りましょう」
「うん……」
危機管理が働いている鈴心はすぐに踵を返したが、永は少し後ろ髪を引かれていた。何の気配もしない玄関を注視していると、突然中から瑠深が引き戸を引いて出てきた。
「あっ!」
「ヤベッ!」
瑠深とばっちり目が合ってしまった永は思わず背を向けて逃げ出してしまった。が、すぐに追いつかれ首根っこを掴まれた。
「おい、何がだ?なんか悪さしようとしてたんか?コラ」
「いえいえ、そんな滅相もない!」
永に凄んでみせる瑠深の迫力はまるで地獄の閻魔のようだった。その剣幕には永もタジタジでヘラヘラ笑うしかなかった。
「まったく、祭りの準備で父さんも兄さんも忙しくしてるのをわかって来てるんだろ?あたしをナメてんな!?」
「ああ!人気がないのはそういうことだったんですね!」
「はあ?おま、マジふざけんなよ」
まだ腑抜けている永の的外れたのんびり加減に瑠深がいっそう怒りかけた時、やっと鈴心が戻って止めに入る。
「瑠深さん!どうかお怒りを鎮めてください!ハル様は本調子ではないんです!」
「ああ?」
瑠深の平手打ちが飛びそうで、半泣きの永をかばいながら鈴心が事情を話した。
===============================
お読みいただきありがとうございます
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「あーん、もう疲れた!」
「では休憩を」
すぐさま鈴心は冷たい麦茶を差し出す。
「サンキュー!うまっ」
それを永が半分ほど飲み干すと、続けて水羊羹を差し出した。優杞からわけてもらった物である。
「糖分もお取りください」
「あまー、うまー!──はー……っ」
水羊羹をペロリと平らげて緩んだ顔が幾分かましになった頃、鈴心は永に問いかけた。
「今日はいかがしますか?」
「そうだなあ……昨日は瑠深さんに聞いても慧心弓のことはわかんなかったからねえ」
「眞瀬木に貸したというのはどういう目的があったんでしょう……」
「弓も、道具のうちだよね」
「はあ」
鈴心の相槌に永はニヤリと笑って言った。
「眞瀬木には呪具の製作部署があるよね?」
「八雲さんに聞きに行くんですか?」
「ま、ダメで元々!」
永の行動力が健在で、鈴心は少し安心する。
「どこに行けば会えるんでしょう?」
「うーん。て言うかちゃんと筋は通さないとダメだろうから……」
「まずは瑠深さんの所ですね?」
そうしてまた二人は思いつきのまま雨都家を飛び出した。
眞瀬木家の前までくると、少し冷静を取り戻す。二人は昨日と同じやり取りをするはめになった。
「──人気がないね」
真っ暗な玄関をそっと覗きながら永が小声で呟くと、鈴心もまた小声で言う。
「昨日もこんな感じでしたね。まさか罠では?」
「それは考え過ぎだと思うけど、用心した方がいいか、な?」
「では一旦帰りましょう」
「うん……」
危機管理が働いている鈴心はすぐに踵を返したが、永は少し後ろ髪を引かれていた。何の気配もしない玄関を注視していると、突然中から瑠深が引き戸を引いて出てきた。
「あっ!」
「ヤベッ!」
瑠深とばっちり目が合ってしまった永は思わず背を向けて逃げ出してしまった。が、すぐに追いつかれ首根っこを掴まれた。
「おい、何がだ?なんか悪さしようとしてたんか?コラ」
「いえいえ、そんな滅相もない!」
永に凄んでみせる瑠深の迫力はまるで地獄の閻魔のようだった。その剣幕には永もタジタジでヘラヘラ笑うしかなかった。
「まったく、祭りの準備で父さんも兄さんも忙しくしてるのをわかって来てるんだろ?あたしをナメてんな!?」
「ああ!人気がないのはそういうことだったんですね!」
「はあ?おま、マジふざけんなよ」
まだ腑抜けている永の的外れたのんびり加減に瑠深がいっそう怒りかけた時、やっと鈴心が戻って止めに入る。
「瑠深さん!どうかお怒りを鎮めてください!ハル様は本調子ではないんです!」
「ああ?」
瑠深の平手打ちが飛びそうで、半泣きの永をかばいながら鈴心が事情を話した。
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