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麻婆豆腐を洗って食うバカはいない
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そういえば彼女と出会って何年経っただろう。
ふと思い出すと結構な回数、会っていることに気づく。まあ会った回数は殆どセックスをした回数であって、しかも恋愛ではない。
援助交際。
彼女は明るくて、いつも僕を気遣ってくれたり、てきぱきと進めてくれた。なかなかイケないときも嫌な顔一つせず付き合ってくれたし、丁寧にフェラチオをして立たせてくれたり、口の中で出させてくれることもあった。ダメなことはダメ、と言ってくれることもあったし、何より本当に心根の素直な優しい、いい子だなと思った。だけど、そんないい子でも見ず知らずの男とお金を媒介にセックスをする。そのことに僕はひどくショックを受けたが、それ以上に興奮した。どんな子でもいい、こちらがどんな素性でも構わないのと同じことなんだ。彼女はとてもいい子だった。せっかく会うのだからお互いに気分よく過ごせるようにしてくれていた。そこが粋だったな、と今は思う。
長く伸びた黒髪はいつもサラサラのツヤツヤで、絹のような手触りだった。顔たちはいわゆるうりざね顔で薄口ながらも整っていた。ツンとした目と鼻。唇は薄いがよく笑うのか口角が上がっていて、高く澄んだ声をしていた。そしてこのアニメのような可愛らしい声が裸で交わり出すと淫靡にゆがんだ。
そんな彼女とは出会い系サイトの掲示板で知り合った。初めは別の女性と待ち合わせの約束をしていて、彼女の住む街のさらに隣の駅前にいた。新幹線も停まる駅だが小さなコンビニの駐車場で、そこにやってきた女性というのがひと言でいえばとんでもない人だった。SF映画の有名なキャラクターにソックリだがもちろんヒロインではなく、序盤で主人公の借金を取り立てる巨大なガマのような顔の宇宙人だ。そいつが僕の車を探して折り畳み式のケータイを閉じたり開いたりにらめっこしたりしながらコッチに向かって歩いてくる。地獄で処刑を待ってる気分だった。そして処刑執行人はついに僕の白いワゴン車を突き止めて(事前にナンバー四桁を教えてしまっていたのが運の尽きだった)助手席の窓を
コンコン
と叩いた。観念してズイーーと窓を開けると
「待ち合わせの方、ですよね」
という。その口臭のクサイのなんの。間近で見ると猶更キツい。汚い白髪交じりの髪を乱暴に束ね、悪い意味でノーメイク。でっぷりと肥った歩くSF超大作に対して僕はひとこと言ってやった。
「ち、違います……」
思いっきり困った顔と声で。相手はそう言われた以上引き下がるしかない。一世一代の大芝居だった。コレに捕まったらどうなるかわかったもんじゃない。逃げるようにその場を後にしたもののこれでは収まらない、と先ほどまでのSF通信は削除して新たに相手を探すことにした。我ながら懲りない男だ。そしてそこで見つけたのが彼女だった。懲りなくてよかった、本当に可愛い人が来てくれた。
平成も終わりごろの、春先の土曜日、正午すこし前。混み合うトンカツ屋の店内でテイクアウトのヒレカツ弁当を注文してお会計も済ませて、長椅子に座って待つ。さらさらの黒いロングヘアーがツヤツヤしている可愛い君の分の昼食だ。
「混んでるね」
「ねー、ほんとにありがとね、いいの?」
「ああ、全然」
「お腹空いてたからよかったー」
膝の上に乗せた小さな鏡をのぞき込んで前髪を直しながら君が言う。外は肌寒いが店内は暖房が効いているので、不意に腕を上げた君の腋の下からもツンとしたいい匂いがする。
「今日、どこにしよっか」
「サンライトってとこ。このすぐ裏だよ」
「そっか、じゃそこで」
「うん」
傍目には休日にガッツリ食べるカップルか何かに見えるだろうが、実はそんなものではない。もちろん兄妹や友人同士でもない。彼女の昼食代は、いわばオプション。このあと彼女に支払う現金一万五千円のついでみたいなものだ。トンカツ屋の裏手にあるというホテルは、いつも使っているアイ・シー・アイと比べても若干安く内装も悪くなさそうだった。携帯電話の検索画面を閉じたところでテイクアウトをお待ちのお客さまーと呼ばれたので引換券を渡して弁当を受け取り、あいまいな礼を言って店を出る。柔らかな日差しと道路を気ぜわしく走る車の流れに紛れて、二人は姿を消した。
土曜日。正午すこし過ぎ。ホテルサンライト302号室。玄関を開けて部屋に入ると壁紙がすべてヒョウ柄だった。実に野性味あふれる、何が目当てでここにくるのかを端的に表したセンスだ。なぜ田舎のラブホテルの部屋にはスロットマシーンがあるのだろう。その横に大きな鏡と化粧棚。ドライヤーやアメニティは最新のものから人気商品まで色々揃っているらしい。しかし彼女は部屋に入るなりそうした設備には目もくれずにバスルームに直行し蛇口をひねってバスタブにお湯を張ると、こちらへ戻ってきて
「んしょ」
と小さく呟いて早速衣服を脱ぎはじめた。つられてこっちも脱いでゆく。もっとも作業着なので簡単なものだ。一方の彼女はおしゃれしてるので一枚ずつ脱いでゆくのを見ているだけでも愉しい。
ベージュの薄い上着、好きなバンドの長袖Tシャツ、赤いキャミソール、少し濃い赤のブラを手際よく脱いでは畳んで、モスグリーンの少し傷んだソファに置いていく。むっちりと脂の乗った肉付きのいい肉体と可愛らしいバスト、そして黒々とした腋毛が露になった。半裸の彼女に近づくとほんのりと香ばしい、蒸れたいいにおいがする。背中越しに抱きしめられながら彼女は黒いショートパンツとブラと同じ濃い赤のTバックのパンティを脱ぎ、一糸まとわぬ姿で鏡の前に立った。鑑越しに彼女の生い茂った濃い陰毛がはっきり見える。上を向いて髪の毛を束ねて、後ろでにキュっとまとめて縛る。
「さ、お風呂入ろ」
「えー、いいよ。このまま」
跪いて彼女の丸くて柔らかなお尻に顔をうずめると、こちらからも酸っぱくて少し塩辛い、いつもの彼女のいいにおいがした。肛門越しに漂ってくるフレーバー。女の子って、いいなあ。
「え、なあに?」
彼女がくすぐったそうに笑う。声に出てしまっていたんだ。
「女の子っていいなあ、って」
「アハハハ! や、もう、ダメお風呂」
「お願い、もうちょいこのまま。ね」
「ええー、もう……うん、いいけど。どうすればいい?」
「ありがと。えっとね、じゃあコッチで」
鏡の前に手をつかせて立ったまま四つん這いになってもらい、そのままお尻から舌を差し込んだ。肉付きのいい女の子はこんなとき、ほっくりと蒸れていて最高だ。これを臭いとか汚いとかいう奴にセックスをする資格などあるものか。麻婆豆腐を洗って食うバカはいないだろうに。彼女の肛門に舌が触れると初めは塩辛くてほんのり苦い。それが舐めれば舐めるほど甘くぬるぬるした味がしみてくる。そのまま彼女の性器を舐めるのはマナー違反なので、ということにして、今はひたすらに彼女の肛門だけをふやけるまで、舌が攣るまで舐め続けていたかった。お尻や肛門、ふとももがぴくりぴくりと震えている。舌の動きにあわせて甘い声を漏らしてくれる。それが嘘でも演技でも何でもいい。大事なのは、いま目の前にこんなに可愛い裸の女の子が居て、自分を相手にしてくれているということだけだ。どういう理由であれ。
「ん、ごめ、もう腰が……」
「ああ、ごめん。ありがとね」
彼女は鏡台から手を離して体を起こし、少しトントンと腰のあたりを叩いた。そんな仕草のひとつひとつがまた可愛くて、いま自分は彼女の時間と体を買っていることを忘れてしまいそうだ。今度ご飯を食べに行こう、飲みに行こう、カラオケに……なんて誘っても彼女にとってはそれも込みでの時間ということになるだけだ。そこを踏み越えようとしてはいけない。仮に付き合っていようがいまいが、結局は他人同士なことに変わりはない。江戸川乱歩の孤島の鬼みたく後からくっ付けたってそれは変わらないし変えようのないことだ。ならば心を、と思ったところで、じゃあ具体的に心なんてものが何処にあってどうすれば一つに繋がり癒着するのか。答えがないものを決めつけたり、前もって永遠だの礼儀だのマナーだの言うことで自分の周りに縛り付けようとする奴にロクなのはいない。求心力というものはいかに自分の周りにひとを縛り付けて数字に表してマウントを取るか、ではなく、求められるような心の力を持った人だということだろう。何を裸で、なにもかもむき出しにしたまま語っているのか。自分でもわからなくなってきた。お風呂に入ろう。
すっかりお湯の溜まったバスタブの蛇口を閉じてシャワーを出し、慣れた手つきで温度を調整する彼女。
「はい、このぐらいだっけ」
と差し出した手に流れるお湯の温度がちょうどいい。好みの湯加減を覚えていてくれて、少し熱めのお湯をだしてくれたのだ。
「ありがとう、ちょうどいいよ」
そう言って彼女のシャワーヘッドさばきに身を任せる。しゃーっと全身を万遍なく温めるように濡らして、素早くボディーソープを手で泡立ててしゅっしゅっと洗ってくれる。もちろん大事なところも一緒に。さっきから硬く過敏に膨らんでいたままなので、先っぽに石鹸まみれの指先が触れるだけで腰を引っ込めてしまうほど感じてしまう。彼女がいたずらっぽく含み笑いを漏らす。お湯をかけてもらってバスタブに入る。こっちも少し熱くて、さっきまで裸だった体があったまって気持ちがいい。彼女も立ったまま全身を素早く、陰部も指先を滑り込ませるようにしてスイスイと洗って泡を流して入ってきた。そのときにバスタブのふちに置いてあった歯ブラシを開封して、一つをこちらに手渡してもう一つを自分で使いながら歯磨きを始めた。これも実に慣れた手つきだ。
さっきまで混みあうトンカツ屋でテイクアウトを待っていて、何食わぬ顔をしていたというのに。それどころか数か月前までは全くもって赤の他人。お互いの顔も名前も存在すらも知らなかったのに。名前だって彼女が名乗ったものはおそらく仮名、源氏名みたいなものだろう。何も知らないもの同士が出会って顔を見知って、そして今また裸でお風呂に入って歯磨きをしている。これだからセックスは面白い。
こちらに背中を向けて座ると、髪の毛をあげて丸見えになったうなじが美しい。腋や陰部は毛深いが、それ以外の素肌はもちもちっとして滑らかな手触りで、それもまたたまらない魅力だった。まだ歯磨きをしている彼女の胸を背中越しにそっと揉んでみる。決して大きくはないが形がよくて、やっぱり素晴らしい感触だ。素肌がこちらの指先に吸い付くようで、ずっと触っていたくなる。彼女も歯磨きを終えて、胸を触られたままうがいをして、改めて身をゆだねてきた。胸を揉みしだいて乳首をつまんで、顔を反らせてキスをする。彼女の舌を吸いながら唇を絡ませる。バスタブの湯がざぶり、と揺れる。肩や腕が冷えるのも構わずに、暫くそうして彼女の肌触りと甘い声を堪能した。
ふと思い出すと結構な回数、会っていることに気づく。まあ会った回数は殆どセックスをした回数であって、しかも恋愛ではない。
援助交際。
彼女は明るくて、いつも僕を気遣ってくれたり、てきぱきと進めてくれた。なかなかイケないときも嫌な顔一つせず付き合ってくれたし、丁寧にフェラチオをして立たせてくれたり、口の中で出させてくれることもあった。ダメなことはダメ、と言ってくれることもあったし、何より本当に心根の素直な優しい、いい子だなと思った。だけど、そんないい子でも見ず知らずの男とお金を媒介にセックスをする。そのことに僕はひどくショックを受けたが、それ以上に興奮した。どんな子でもいい、こちらがどんな素性でも構わないのと同じことなんだ。彼女はとてもいい子だった。せっかく会うのだからお互いに気分よく過ごせるようにしてくれていた。そこが粋だったな、と今は思う。
長く伸びた黒髪はいつもサラサラのツヤツヤで、絹のような手触りだった。顔たちはいわゆるうりざね顔で薄口ながらも整っていた。ツンとした目と鼻。唇は薄いがよく笑うのか口角が上がっていて、高く澄んだ声をしていた。そしてこのアニメのような可愛らしい声が裸で交わり出すと淫靡にゆがんだ。
そんな彼女とは出会い系サイトの掲示板で知り合った。初めは別の女性と待ち合わせの約束をしていて、彼女の住む街のさらに隣の駅前にいた。新幹線も停まる駅だが小さなコンビニの駐車場で、そこにやってきた女性というのがひと言でいえばとんでもない人だった。SF映画の有名なキャラクターにソックリだがもちろんヒロインではなく、序盤で主人公の借金を取り立てる巨大なガマのような顔の宇宙人だ。そいつが僕の車を探して折り畳み式のケータイを閉じたり開いたりにらめっこしたりしながらコッチに向かって歩いてくる。地獄で処刑を待ってる気分だった。そして処刑執行人はついに僕の白いワゴン車を突き止めて(事前にナンバー四桁を教えてしまっていたのが運の尽きだった)助手席の窓を
コンコン
と叩いた。観念してズイーーと窓を開けると
「待ち合わせの方、ですよね」
という。その口臭のクサイのなんの。間近で見ると猶更キツい。汚い白髪交じりの髪を乱暴に束ね、悪い意味でノーメイク。でっぷりと肥った歩くSF超大作に対して僕はひとこと言ってやった。
「ち、違います……」
思いっきり困った顔と声で。相手はそう言われた以上引き下がるしかない。一世一代の大芝居だった。コレに捕まったらどうなるかわかったもんじゃない。逃げるようにその場を後にしたもののこれでは収まらない、と先ほどまでのSF通信は削除して新たに相手を探すことにした。我ながら懲りない男だ。そしてそこで見つけたのが彼女だった。懲りなくてよかった、本当に可愛い人が来てくれた。
平成も終わりごろの、春先の土曜日、正午すこし前。混み合うトンカツ屋の店内でテイクアウトのヒレカツ弁当を注文してお会計も済ませて、長椅子に座って待つ。さらさらの黒いロングヘアーがツヤツヤしている可愛い君の分の昼食だ。
「混んでるね」
「ねー、ほんとにありがとね、いいの?」
「ああ、全然」
「お腹空いてたからよかったー」
膝の上に乗せた小さな鏡をのぞき込んで前髪を直しながら君が言う。外は肌寒いが店内は暖房が効いているので、不意に腕を上げた君の腋の下からもツンとしたいい匂いがする。
「今日、どこにしよっか」
「サンライトってとこ。このすぐ裏だよ」
「そっか、じゃそこで」
「うん」
傍目には休日にガッツリ食べるカップルか何かに見えるだろうが、実はそんなものではない。もちろん兄妹や友人同士でもない。彼女の昼食代は、いわばオプション。このあと彼女に支払う現金一万五千円のついでみたいなものだ。トンカツ屋の裏手にあるというホテルは、いつも使っているアイ・シー・アイと比べても若干安く内装も悪くなさそうだった。携帯電話の検索画面を閉じたところでテイクアウトをお待ちのお客さまーと呼ばれたので引換券を渡して弁当を受け取り、あいまいな礼を言って店を出る。柔らかな日差しと道路を気ぜわしく走る車の流れに紛れて、二人は姿を消した。
土曜日。正午すこし過ぎ。ホテルサンライト302号室。玄関を開けて部屋に入ると壁紙がすべてヒョウ柄だった。実に野性味あふれる、何が目当てでここにくるのかを端的に表したセンスだ。なぜ田舎のラブホテルの部屋にはスロットマシーンがあるのだろう。その横に大きな鏡と化粧棚。ドライヤーやアメニティは最新のものから人気商品まで色々揃っているらしい。しかし彼女は部屋に入るなりそうした設備には目もくれずにバスルームに直行し蛇口をひねってバスタブにお湯を張ると、こちらへ戻ってきて
「んしょ」
と小さく呟いて早速衣服を脱ぎはじめた。つられてこっちも脱いでゆく。もっとも作業着なので簡単なものだ。一方の彼女はおしゃれしてるので一枚ずつ脱いでゆくのを見ているだけでも愉しい。
ベージュの薄い上着、好きなバンドの長袖Tシャツ、赤いキャミソール、少し濃い赤のブラを手際よく脱いでは畳んで、モスグリーンの少し傷んだソファに置いていく。むっちりと脂の乗った肉付きのいい肉体と可愛らしいバスト、そして黒々とした腋毛が露になった。半裸の彼女に近づくとほんのりと香ばしい、蒸れたいいにおいがする。背中越しに抱きしめられながら彼女は黒いショートパンツとブラと同じ濃い赤のTバックのパンティを脱ぎ、一糸まとわぬ姿で鏡の前に立った。鑑越しに彼女の生い茂った濃い陰毛がはっきり見える。上を向いて髪の毛を束ねて、後ろでにキュっとまとめて縛る。
「さ、お風呂入ろ」
「えー、いいよ。このまま」
跪いて彼女の丸くて柔らかなお尻に顔をうずめると、こちらからも酸っぱくて少し塩辛い、いつもの彼女のいいにおいがした。肛門越しに漂ってくるフレーバー。女の子って、いいなあ。
「え、なあに?」
彼女がくすぐったそうに笑う。声に出てしまっていたんだ。
「女の子っていいなあ、って」
「アハハハ! や、もう、ダメお風呂」
「お願い、もうちょいこのまま。ね」
「ええー、もう……うん、いいけど。どうすればいい?」
「ありがと。えっとね、じゃあコッチで」
鏡の前に手をつかせて立ったまま四つん這いになってもらい、そのままお尻から舌を差し込んだ。肉付きのいい女の子はこんなとき、ほっくりと蒸れていて最高だ。これを臭いとか汚いとかいう奴にセックスをする資格などあるものか。麻婆豆腐を洗って食うバカはいないだろうに。彼女の肛門に舌が触れると初めは塩辛くてほんのり苦い。それが舐めれば舐めるほど甘くぬるぬるした味がしみてくる。そのまま彼女の性器を舐めるのはマナー違反なので、ということにして、今はひたすらに彼女の肛門だけをふやけるまで、舌が攣るまで舐め続けていたかった。お尻や肛門、ふとももがぴくりぴくりと震えている。舌の動きにあわせて甘い声を漏らしてくれる。それが嘘でも演技でも何でもいい。大事なのは、いま目の前にこんなに可愛い裸の女の子が居て、自分を相手にしてくれているということだけだ。どういう理由であれ。
「ん、ごめ、もう腰が……」
「ああ、ごめん。ありがとね」
彼女は鏡台から手を離して体を起こし、少しトントンと腰のあたりを叩いた。そんな仕草のひとつひとつがまた可愛くて、いま自分は彼女の時間と体を買っていることを忘れてしまいそうだ。今度ご飯を食べに行こう、飲みに行こう、カラオケに……なんて誘っても彼女にとってはそれも込みでの時間ということになるだけだ。そこを踏み越えようとしてはいけない。仮に付き合っていようがいまいが、結局は他人同士なことに変わりはない。江戸川乱歩の孤島の鬼みたく後からくっ付けたってそれは変わらないし変えようのないことだ。ならば心を、と思ったところで、じゃあ具体的に心なんてものが何処にあってどうすれば一つに繋がり癒着するのか。答えがないものを決めつけたり、前もって永遠だの礼儀だのマナーだの言うことで自分の周りに縛り付けようとする奴にロクなのはいない。求心力というものはいかに自分の周りにひとを縛り付けて数字に表してマウントを取るか、ではなく、求められるような心の力を持った人だということだろう。何を裸で、なにもかもむき出しにしたまま語っているのか。自分でもわからなくなってきた。お風呂に入ろう。
すっかりお湯の溜まったバスタブの蛇口を閉じてシャワーを出し、慣れた手つきで温度を調整する彼女。
「はい、このぐらいだっけ」
と差し出した手に流れるお湯の温度がちょうどいい。好みの湯加減を覚えていてくれて、少し熱めのお湯をだしてくれたのだ。
「ありがとう、ちょうどいいよ」
そう言って彼女のシャワーヘッドさばきに身を任せる。しゃーっと全身を万遍なく温めるように濡らして、素早くボディーソープを手で泡立ててしゅっしゅっと洗ってくれる。もちろん大事なところも一緒に。さっきから硬く過敏に膨らんでいたままなので、先っぽに石鹸まみれの指先が触れるだけで腰を引っ込めてしまうほど感じてしまう。彼女がいたずらっぽく含み笑いを漏らす。お湯をかけてもらってバスタブに入る。こっちも少し熱くて、さっきまで裸だった体があったまって気持ちがいい。彼女も立ったまま全身を素早く、陰部も指先を滑り込ませるようにしてスイスイと洗って泡を流して入ってきた。そのときにバスタブのふちに置いてあった歯ブラシを開封して、一つをこちらに手渡してもう一つを自分で使いながら歯磨きを始めた。これも実に慣れた手つきだ。
さっきまで混みあうトンカツ屋でテイクアウトを待っていて、何食わぬ顔をしていたというのに。それどころか数か月前までは全くもって赤の他人。お互いの顔も名前も存在すらも知らなかったのに。名前だって彼女が名乗ったものはおそらく仮名、源氏名みたいなものだろう。何も知らないもの同士が出会って顔を見知って、そして今また裸でお風呂に入って歯磨きをしている。これだからセックスは面白い。
こちらに背中を向けて座ると、髪の毛をあげて丸見えになったうなじが美しい。腋や陰部は毛深いが、それ以外の素肌はもちもちっとして滑らかな手触りで、それもまたたまらない魅力だった。まだ歯磨きをしている彼女の胸を背中越しにそっと揉んでみる。決して大きくはないが形がよくて、やっぱり素晴らしい感触だ。素肌がこちらの指先に吸い付くようで、ずっと触っていたくなる。彼女も歯磨きを終えて、胸を触られたままうがいをして、改めて身をゆだねてきた。胸を揉みしだいて乳首をつまんで、顔を反らせてキスをする。彼女の舌を吸いながら唇を絡ませる。バスタブの湯がざぶり、と揺れる。肩や腕が冷えるのも構わずに、暫くそうして彼女の肌触りと甘い声を堪能した。
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