不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

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#横尾公敏先生ワールドヒーローズ第一巻発売おめでとうございます

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ホワッホッホ!
というわけで8月5日は私の青春、というか子供の頃の大事な思い出でもある格闘ゲーム、ワールドヒーローズのコミカライズ版の単行本第一巻の発売日でした。
漫画を描いているのは原作でもキャラクターデザインを担当されていた横尾公敏先生。時を超えて、再び世の中に現れた英雄たち。プラットフォームを画面から誌面に変えてもあの熱と濃密さは健在。それどころかマシマシ。
きっとブラウン博士がタイムマシーンを完成させたんで、1990年代の日本から違う未来に繋がったんだ。あの頃、近所にあるココストアの前にポツンと置かれた筐体にかじりついて、マッスルパワーと一緒に戦っていた私の背中が見える。

コミックス第一巻は主人公のハンゾウがワールドヒーローズに招かれたところから、ジャンヌ様との戦いまでが収録されている。私の愛用キャラだったマッスルパワーやチンギス・ハーンも居る。昔からああいうムキムキでごっついオッサンが好きだった。でもストリートファイター2以降のあのシリーズでは一貫してケンだった。リュウじゃないところが良かったんだと思う。それはこのワールドヒーローズでも同じで、ハンゾウかフウマならフウマを使っていた。赤い方が好きなのかしらん。でも烈風斬のがカッコ良かったし。

この物語のハンゾウは、かなり悲惨な末路を辿る。そこから物語は始まる。ただひたすらに強さを求める、名誉や金銭などには目もくれぬストイックかつちょっと天然ボケでモノを知らない、天真爛漫だが闇の深いキャラクターになっている。あの戦いを経て、ブラウン・シュガー博士とフウマに出会う。タイムマシーンに乗って未来の世界にやってきた彼は、強さを求めるため、強いものを求めるため、新たな戦いの場である
ワールドヒーローズ
に挑むこととなった。
これだと、単純に格闘ゲームとして楽しんでいたワールドヒーローズのバックボーンが見えてくる。なぜ彼らは日夜戦っていたのか。何度も、何度も戦いを繰り返す理由は。それが要するに、ランキング制のバトルエンターテイメントであるところのワールドヒーローズというイベントと、それを運営する組織の存在だった。ボクシングやメキシコのルチャ・リブレにはランキングがあるし、他のスポーツでも野球やサッカーなどなんでも順位付けがなされていて、それが対戦カードへの興味を煽る一つの指針になっている。ハンゾウもそこへ飛び込んで、様々な時代の個性豊かで個性が煮凝りになったような英雄たちと次々に対戦してゆく。
いきなりラスプーチンが登場して、あの「愛の奥義」を繰り出してくれたり、チンギス・ハーンが己のプライドと守るべきものの大切さを説いてくれたりするなかに各キャラクターが持つ背景も明かされてゆく。なぜラスプーチンがあそこまで
「愛」
に固執するのか。ラスプーチンでゲームをクリアすると流れるエンディングでは、彼は愛を説くために自ら宗教団体を興しているのだけれど、彼をそこまでかきたてる原体験とは何なのか。そして彼もまたハンゾウ同様に肝心の何かが抜け落ちてしまっているようなキャラクターに感じられた。暗い影、暴力、ラスプーチンがハンゾウに懐いちゃったのは単純に彼の強さ、魅力に惹かれただけではあるまい。何か感じるところがあったのではないかなーと思わされる。
勿論そうした難しい側面ばかりではなく、ゲーム中に出てきた動き、技も飛び出してくる。あの手足がデカくなる攻撃がなつかしい。

私の好きなマッスルパワーも登場する。時代は筋肉モリモリマッチョマンプロレス全盛期のアメリカ。ようこそ、俺の時代へ。というセリフが痺れる。
試合が終わった後の巨大スタジアムで対戦するハンゾウとマッスルパワー。
プロテインの化け物の開幕ラリアットから一気に試合が動き出す。マッチョマンらしいパワー一辺倒の豪快な試合ぶり。マッスルパワーは欲望の権化。強いのなんか当たり前。ほしいものは
金、女、名声!
それでこそ80年代の筋肉モリモリマッチョマンだ。
何もかも失い、ただひたすら強さだけを求めるハンゾウとは正反対に、強すぎて対戦相手が居なくなったためにワーヒーにやってきた豪傑。惜しくも敗れてしまったが、この物語におけるワールドヒーローズというエンターテインメントの性質上また対戦することも、主人公とはいえ勝敗が保証されないことも楽しみだ。私はマッスルパワーが好きなのだ。

あまり内容に触れてしまうのも(これでも抑えているつもりだけど…)ナンなので、是非皆さんもお手に取っていただいて、あの頃遊んだ人は今も彼らは健在だということを、知らなかった人にはあの頃こんなゲームが愛されていたんだということを、それぞれ楽しんでいただければと思います。
ジャンヌ様のキャラ付けも良かった…一年間限定の命。あのブチキレっぷり。そりゃ虜になるってもんです。
第一話で見せたハンゾウの跳躍がここで出てくる奥深さも見逃せない。トン、トンってね。

極めつけは表紙カバーを外したとき。
私の場合はスーパーファミコンのカセットだったけど、あの筐体では満足できずに欲しくて欲しくてたまらなかったソフトが手に入ったときの、胸の高鳴りというか感情の高ぶりを思い出すようで。
おかえり、ワーヒー。
そう言いたくなりました。第二巻、そしてこれからワールドヒーローズ2が始まる連載の方も楽しみにしています。
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