279 / 1,319
第272回。ビジネスチャンスと親父の背中
しおりを挟む
ウチの親父は私が小学6年ぐらいの頃、借金と酒で生活が立ち行かなくなったところを拾われてきた。
野生のお父さん、ってわけだ。
なので苗字も違えば血も繋がってない。
が、親父は親父なので、ひと様にはそう説明している。
輝(テル)さんと今でも呼ばれるこの愛すべきダメ人間には数々の伝説がある。
でもどんなに凄い人間でも落ちるときは落ちるもので、うちにいる間はそういう人生の折り返しに向かってゆっくり沈んでいく時期でもあったのかも知れない。酒をはじめとした不摂生のツケが出たり、精神的にも不安定な時期だった。
そんな時期であっても働く事はしていたし、家にお金も入れてくれていた。
というか借金を肩代わりしたのでその返済に躍起になっていた。
ちゃんとトラックの運転手をして正社員で雇ってもらってたのだが、それでも足りないと色々なことに手を出し始めた。
まず最初がクロレラの錠剤。
私がアトピーでもあったので、それにも効くからというので私も飲んでいた。
なんとも言えない味と匂いで、ウンコが真っ黒に近い緑色になった。限界まで深く深くなった深緑、って感じ。ケツからヘドロが出た!と思ったもん。
で次がなんかよくわからん酵母のスティックタイプ。
これもアトピーや自分の肝臓に良いからと始めた。
ウンコはよく出た。けどプラセボ効果との差がわからん。
まあどっちも胡散臭いところから買って売りさばくタイプの副業だった訳ですが、元々が客商売に向かなくて飲み屋を潰し借金を作った男。幸か不幸かどちらも上手くいかなくてすぐやめてた。
あとに残った酵母の在庫を暫く飲んでたな。結局未だにデブのままだし、効果のほどは不明。
クロレラっていえばさ、身近にヤクルトにお勤めの人がいるとわかると思うけどクロレラ入りのラーメンあるよな?知ってる?
ちょっと前までは麺許皆伝って名前で売ってた。
ウチも私が小学生の頃、母親がヤクルトさんしてたから(その当時のヤクルト仲間の女性はみんな美人だったな…)その時に初めて見たんだけど、緑色のラーメンって結構強烈なのな。
食えるのか!?
って思ったもん。味は下手なインスタントラーメンより全然美味しいけども。
あのクロレララーメンを朝テキトーに食ってさ。
もう母は仕事に行っちゃってて。母子家庭だからね。
祖父母も居たけど、その当時は祖母の体調が悪くて。
元気だったころは朝飯作ってくれてたけど、私が学校行かなくなってて大喧嘩したりして。
そういう滅茶苦茶な時期に食ってたのがクロレララーメンと、バターロールにハムときゅうり挟んでオーブンで温めて、頭んとこが焦げたやつと、あと冷凍食品の焼きおにぎり。
冷凍食品の焼きおにぎりをオーブンにかけて、それが冷めたのを朝から食うんだよ。学校行きたくねえなあ、ヤだなあ、って思いながら。他にも色々問題はあったけどまあそれは置いといて。
クロレララーメンは食えるけど、未だに焼きおにぎりがちょっと苦手なのは軽いトラウマなのかもな。
キチガイ、トラウマ、憂鬱、便利な言葉だよな。
でも全部経験しちゃうと、なんか
こんなもんか
って感じになる。
本当に、あの頃の自分はどうかしてたな、あの頃の我が家は狂ってたな、と。
それが未だに尾を引いてるな、と。
で今でも仕事や人間関係について考えると憂鬱だな、と。
でも、その全部を小学校とか中学校でやってたんだと思うと、ぜってーそっちのが辛いだろ!って思う。
その頃は母親に
「お前なんかより辛い思いしてる奴なんかゴマンと居るわ!いいから学校行け!」
と引っ叩かれて家を追い出されてたけど、今の私がその頃の私を見つけたら、学校なんか休ませて映画にでも連れていってやりたいなと思う。
心のSOSはおそらくラジコなしでも南極で受信出来るぐらい出てたし、死んじゃおうかと思ったり、殺したい奴が居たりで忙しかったな。
転がり込んだ家がこんなだったら、どんな立派な男でも病むわな。
でもそれでもこっちには背中を向けて働いてたし、母親と前の旦那とのトラブルに私たちが巻き込まれたときはひとりで乗り込んできてくれたしで、カッコいいところもあったんだ。
結局はお酒で体を壊して我が家からは去ってしまったけれど、それ以来パタっとやめて浮いた酒代でハーレーを買って乗り回しているのを見て
「やっぱこの人カッコいい」
と見直したりもしている。
結局は、不安定な時期の心の隙間に付け込んだマルチ商法だったクロレラや酵母なわけだが、今にして思えば私がこの年でハマったりしなかっただけでもありがたい経験だったなと思うし、もし自分が居候の身でお金まで借りてたら、やっぱり足元を掬われる気がするもん。
そういうダメなところも背中で示したこの男を、私はこれからも親父と呼ぶのだ。
野生のお父さん、ってわけだ。
なので苗字も違えば血も繋がってない。
が、親父は親父なので、ひと様にはそう説明している。
輝(テル)さんと今でも呼ばれるこの愛すべきダメ人間には数々の伝説がある。
でもどんなに凄い人間でも落ちるときは落ちるもので、うちにいる間はそういう人生の折り返しに向かってゆっくり沈んでいく時期でもあったのかも知れない。酒をはじめとした不摂生のツケが出たり、精神的にも不安定な時期だった。
そんな時期であっても働く事はしていたし、家にお金も入れてくれていた。
というか借金を肩代わりしたのでその返済に躍起になっていた。
ちゃんとトラックの運転手をして正社員で雇ってもらってたのだが、それでも足りないと色々なことに手を出し始めた。
まず最初がクロレラの錠剤。
私がアトピーでもあったので、それにも効くからというので私も飲んでいた。
なんとも言えない味と匂いで、ウンコが真っ黒に近い緑色になった。限界まで深く深くなった深緑、って感じ。ケツからヘドロが出た!と思ったもん。
で次がなんかよくわからん酵母のスティックタイプ。
これもアトピーや自分の肝臓に良いからと始めた。
ウンコはよく出た。けどプラセボ効果との差がわからん。
まあどっちも胡散臭いところから買って売りさばくタイプの副業だった訳ですが、元々が客商売に向かなくて飲み屋を潰し借金を作った男。幸か不幸かどちらも上手くいかなくてすぐやめてた。
あとに残った酵母の在庫を暫く飲んでたな。結局未だにデブのままだし、効果のほどは不明。
クロレラっていえばさ、身近にヤクルトにお勤めの人がいるとわかると思うけどクロレラ入りのラーメンあるよな?知ってる?
ちょっと前までは麺許皆伝って名前で売ってた。
ウチも私が小学生の頃、母親がヤクルトさんしてたから(その当時のヤクルト仲間の女性はみんな美人だったな…)その時に初めて見たんだけど、緑色のラーメンって結構強烈なのな。
食えるのか!?
って思ったもん。味は下手なインスタントラーメンより全然美味しいけども。
あのクロレララーメンを朝テキトーに食ってさ。
もう母は仕事に行っちゃってて。母子家庭だからね。
祖父母も居たけど、その当時は祖母の体調が悪くて。
元気だったころは朝飯作ってくれてたけど、私が学校行かなくなってて大喧嘩したりして。
そういう滅茶苦茶な時期に食ってたのがクロレララーメンと、バターロールにハムときゅうり挟んでオーブンで温めて、頭んとこが焦げたやつと、あと冷凍食品の焼きおにぎり。
冷凍食品の焼きおにぎりをオーブンにかけて、それが冷めたのを朝から食うんだよ。学校行きたくねえなあ、ヤだなあ、って思いながら。他にも色々問題はあったけどまあそれは置いといて。
クロレララーメンは食えるけど、未だに焼きおにぎりがちょっと苦手なのは軽いトラウマなのかもな。
キチガイ、トラウマ、憂鬱、便利な言葉だよな。
でも全部経験しちゃうと、なんか
こんなもんか
って感じになる。
本当に、あの頃の自分はどうかしてたな、あの頃の我が家は狂ってたな、と。
それが未だに尾を引いてるな、と。
で今でも仕事や人間関係について考えると憂鬱だな、と。
でも、その全部を小学校とか中学校でやってたんだと思うと、ぜってーそっちのが辛いだろ!って思う。
その頃は母親に
「お前なんかより辛い思いしてる奴なんかゴマンと居るわ!いいから学校行け!」
と引っ叩かれて家を追い出されてたけど、今の私がその頃の私を見つけたら、学校なんか休ませて映画にでも連れていってやりたいなと思う。
心のSOSはおそらくラジコなしでも南極で受信出来るぐらい出てたし、死んじゃおうかと思ったり、殺したい奴が居たりで忙しかったな。
転がり込んだ家がこんなだったら、どんな立派な男でも病むわな。
でもそれでもこっちには背中を向けて働いてたし、母親と前の旦那とのトラブルに私たちが巻き込まれたときはひとりで乗り込んできてくれたしで、カッコいいところもあったんだ。
結局はお酒で体を壊して我が家からは去ってしまったけれど、それ以来パタっとやめて浮いた酒代でハーレーを買って乗り回しているのを見て
「やっぱこの人カッコいい」
と見直したりもしている。
結局は、不安定な時期の心の隙間に付け込んだマルチ商法だったクロレラや酵母なわけだが、今にして思えば私がこの年でハマったりしなかっただけでもありがたい経験だったなと思うし、もし自分が居候の身でお金まで借りてたら、やっぱり足元を掬われる気がするもん。
そういうダメなところも背中で示したこの男を、私はこれからも親父と呼ぶのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる