不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

文字の大きさ
323 / 1,319

第294回。なぞのジパング

しおりを挟む
昔、近所にあったあやしいビデオ屋さん。
ジパング。
そういうお店の名前だった。

ホントに90年代の終わりごろまでは、街中に普通にアダルトショップというか、ビデオ屋さんあったよな。子供は入れないタイプの。うちの婆ちゃん家の団地の目の前が
おじさん
っていうやっぱりビデオショップで。まあーココもあやしい人が出入りしてた。

その「おじさん」の隣がディスカウントショップ東海、ってお店だったけど、すすけてうらぶれて、薄汚れた品物が雑多に積まれたなんだかすごいお店だった。でも店のオジサンはいい人で。たまにおもちゃとかピエロの形のハンガーをくれたりした。

でビデオ屋さん。

このジパング。営業時間は昼間から夕方遅くくらいまで。
夜中にコッソリ、という手段が使えない。
私たぶん当時中学生ぐらいだった。で通学路にモロそのお店があったんで気になって気になって。
夕方、下校してくると開いてるんだけど、店の中は殆ど見えなかった。
外からは見えないようにフィルムが貼ってあって、さらにポスターや張り紙も多くて。
たまに店のドアが開いてて、そっと覗くとレジカウンターに座ってる店主のおっさんと目が合っちゃったりして。

この店主もあやしかった。
山本晋也カントクをでっぷり太らせたような人で、いつも古くてちょっとボロく見えるアメ車に乗って、店の向かいにある駐車場に停めてのしのし歩いていた。ハゲかかった頭にサングラス。突き出た腹、不愛想な口ひげ。
あやしい店のあやしいおっさん。
これこそが、私の身近なオトナの世界の番人のようだった。

よくこういうあやしいおっさんと軽口を叩きながらアダルティな品物を物色し、とっておきを出してもらって…なんてな場面を漫画とか出てみた気がするけど、実際にあの店の敷居をまたぐのは勇気がいる。というか中学生なので蛮勇であっても入れない。

ジパングのお店になる前はなんだったか、もう思い出せない。
そんなに広くて大きな店でもないんだ。
そのすぐ上のマンションとの段差にへばりつくような、歩道に沿って斜めになった細長い店で、黄色いド派手な外装と裏腹に中身は…?って感じで。

この店の前を通りかかるガキどもの間では、あのおっさんは密かに注目されていた。
店に客が入っている様子はあまりなかった。
プリペイドカードやDVDの露骨な幟なんかも少なかった気がする。
周りが普通に住宅地で子供も多いんで配慮したんだろうか。

もっとも、あの時代は何の関係もない民家のすぐ前に囲いも何もなくエロ本の自販機がドン!と設置されてて、免許証も何もいらず、羞恥心さえ捨てればすぐに千円札を入れて(硬貨は使えなかったし釣銭も出たか出なかったか)ボタンを押せば
ビーーーーーーー、ガッタン
とエロ本ないしビデオが手に入った。
お望みの商品とは限らなかったけど。
たまぁに、すっげえハズレ掴まされたりして。文句も言えねえし、そうやって授業料を払って大人になってったってもんだ。

もちろんその頃は未成年なので買っていたのは水着の写真集とか、そういうのですけどね!!!
(何に怯えたんだキッド)

一方そんなガキどもには近寄ることさえ叶わないユートピア、エルドラド、いやエロドラドの番人ことジパングのおじさん。
私が中3ぐらいの頃から、パタっと姿を見せなくなった。
見せの向かいの駐車場には、あの茶色いぼろいアメ車がずっと置きっぱなしになっていた。
色んなうわさが流れた。
ヤバいものを売ってて捕まったとか、ヤバい人に捕まったとか、死亡説も流れたが真相は当然闇の中で。
そのままいつの間にかアメ車も撤去された。というか撤去される直前には
この車何とかしろ
の張り紙も色褪せて、タイヤだとか外せてかっぱらえるものは何でも持ってかれてたし、最早アメ車ってよりもスクラップ寸前って感じだった。

やがて店はのっぺらぼうになり、数年後にはスナックに、その次には
えびす焼き
なる粉モノのお店になったが、いずれもすぐにやめてしまった。
今は何かの事務所になっていた筈だ。

ジパング。
地の果て、海の向こう、空の彼方にあるという黄金の国。
思春期のクソガキにとってはまさに黄金の理想郷だったわけだが、普通のセルショップなら普通にモザイク入りのビデオや写真集が売られていたのだろうし、この当時だって裏ビデオの通販なんか虚実入り混じっていたとはいえ存在してたし…行かないで終わってくれてよかったのかも知れない。

そして冒頭に出てきた おじさん のほうが閉店した理由は、本当にヤバいものを売っていたのがお巡りさんにバレたからだという噂があるけど、真偽は不明。
この辺りの、大人の世界の真偽不明のお店って、なくなったよね。
大型店というか
むしろ恥ずかしがることありませんけどお!?
的な派手なお店や、小さくてもやっぱりケバい色遣いとここぞとばかりのTENGAの幟やポスター、あとツーショットや出会い系の幟がヒラヒラ出てるお店もダメってことはないが、街角でひっそりやってたお店の趣もたまには懐かしいなと。

そういうお店、もう私の周囲には残っていないから、余計にそう思うのかも。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...