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第294回。なぞのジパング
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昔、近所にあったあやしいビデオ屋さん。
ジパング。
そういうお店の名前だった。
ホントに90年代の終わりごろまでは、街中に普通にアダルトショップというか、ビデオ屋さんあったよな。子供は入れないタイプの。うちの婆ちゃん家の団地の目の前が
おじさん
っていうやっぱりビデオショップで。まあーココもあやしい人が出入りしてた。
その「おじさん」の隣がディスカウントショップ東海、ってお店だったけど、すすけてうらぶれて、薄汚れた品物が雑多に積まれたなんだかすごいお店だった。でも店のオジサンはいい人で。たまにおもちゃとかピエロの形のハンガーをくれたりした。
でビデオ屋さん。
このジパング。営業時間は昼間から夕方遅くくらいまで。
夜中にコッソリ、という手段が使えない。
私たぶん当時中学生ぐらいだった。で通学路にモロそのお店があったんで気になって気になって。
夕方、下校してくると開いてるんだけど、店の中は殆ど見えなかった。
外からは見えないようにフィルムが貼ってあって、さらにポスターや張り紙も多くて。
たまに店のドアが開いてて、そっと覗くとレジカウンターに座ってる店主のおっさんと目が合っちゃったりして。
この店主もあやしかった。
山本晋也カントクをでっぷり太らせたような人で、いつも古くてちょっとボロく見えるアメ車に乗って、店の向かいにある駐車場に停めてのしのし歩いていた。ハゲかかった頭にサングラス。突き出た腹、不愛想な口ひげ。
あやしい店のあやしいおっさん。
これこそが、私の身近なオトナの世界の番人のようだった。
よくこういうあやしいおっさんと軽口を叩きながらアダルティな品物を物色し、とっておきを出してもらって…なんてな場面を漫画とか出てみた気がするけど、実際にあの店の敷居をまたぐのは勇気がいる。というか中学生なので蛮勇であっても入れない。
ジパングのお店になる前はなんだったか、もう思い出せない。
そんなに広くて大きな店でもないんだ。
そのすぐ上のマンションとの段差にへばりつくような、歩道に沿って斜めになった細長い店で、黄色いド派手な外装と裏腹に中身は…?って感じで。
この店の前を通りかかるガキどもの間では、あのおっさんは密かに注目されていた。
店に客が入っている様子はあまりなかった。
プリペイドカードやDVDの露骨な幟なんかも少なかった気がする。
周りが普通に住宅地で子供も多いんで配慮したんだろうか。
もっとも、あの時代は何の関係もない民家のすぐ前に囲いも何もなくエロ本の自販機がドン!と設置されてて、免許証も何もいらず、羞恥心さえ捨てればすぐに千円札を入れて(硬貨は使えなかったし釣銭も出たか出なかったか)ボタンを押せば
ビーーーーーーー、ガッタン
とエロ本ないしビデオが手に入った。
お望みの商品とは限らなかったけど。
たまぁに、すっげえハズレ掴まされたりして。文句も言えねえし、そうやって授業料を払って大人になってったってもんだ。
もちろんその頃は未成年なので買っていたのは水着の写真集とか、そういうのですけどね!!!
(何に怯えたんだキッド)
一方そんなガキどもには近寄ることさえ叶わないユートピア、エルドラド、いやエロドラドの番人ことジパングのおじさん。
私が中3ぐらいの頃から、パタっと姿を見せなくなった。
見せの向かいの駐車場には、あの茶色いぼろいアメ車がずっと置きっぱなしになっていた。
色んなうわさが流れた。
ヤバいものを売ってて捕まったとか、ヤバい人に捕まったとか、死亡説も流れたが真相は当然闇の中で。
そのままいつの間にかアメ車も撤去された。というか撤去される直前には
この車何とかしろ
の張り紙も色褪せて、タイヤだとか外せてかっぱらえるものは何でも持ってかれてたし、最早アメ車ってよりもスクラップ寸前って感じだった。
やがて店はのっぺらぼうになり、数年後にはスナックに、その次には
えびす焼き
なる粉モノのお店になったが、いずれもすぐにやめてしまった。
今は何かの事務所になっていた筈だ。
ジパング。
地の果て、海の向こう、空の彼方にあるという黄金の国。
思春期のクソガキにとってはまさに黄金の理想郷だったわけだが、普通のセルショップなら普通にモザイク入りのビデオや写真集が売られていたのだろうし、この当時だって裏ビデオの通販なんか虚実入り混じっていたとはいえ存在してたし…行かないで終わってくれてよかったのかも知れない。
そして冒頭に出てきた おじさん のほうが閉店した理由は、本当にヤバいものを売っていたのがお巡りさんにバレたからだという噂があるけど、真偽は不明。
この辺りの、大人の世界の真偽不明のお店って、なくなったよね。
大型店というか
むしろ恥ずかしがることありませんけどお!?
的な派手なお店や、小さくてもやっぱりケバい色遣いとここぞとばかりのTENGAの幟やポスター、あとツーショットや出会い系の幟がヒラヒラ出てるお店もダメってことはないが、街角でひっそりやってたお店の趣もたまには懐かしいなと。
そういうお店、もう私の周囲には残っていないから、余計にそう思うのかも。
ジパング。
そういうお店の名前だった。
ホントに90年代の終わりごろまでは、街中に普通にアダルトショップというか、ビデオ屋さんあったよな。子供は入れないタイプの。うちの婆ちゃん家の団地の目の前が
おじさん
っていうやっぱりビデオショップで。まあーココもあやしい人が出入りしてた。
その「おじさん」の隣がディスカウントショップ東海、ってお店だったけど、すすけてうらぶれて、薄汚れた品物が雑多に積まれたなんだかすごいお店だった。でも店のオジサンはいい人で。たまにおもちゃとかピエロの形のハンガーをくれたりした。
でビデオ屋さん。
このジパング。営業時間は昼間から夕方遅くくらいまで。
夜中にコッソリ、という手段が使えない。
私たぶん当時中学生ぐらいだった。で通学路にモロそのお店があったんで気になって気になって。
夕方、下校してくると開いてるんだけど、店の中は殆ど見えなかった。
外からは見えないようにフィルムが貼ってあって、さらにポスターや張り紙も多くて。
たまに店のドアが開いてて、そっと覗くとレジカウンターに座ってる店主のおっさんと目が合っちゃったりして。
この店主もあやしかった。
山本晋也カントクをでっぷり太らせたような人で、いつも古くてちょっとボロく見えるアメ車に乗って、店の向かいにある駐車場に停めてのしのし歩いていた。ハゲかかった頭にサングラス。突き出た腹、不愛想な口ひげ。
あやしい店のあやしいおっさん。
これこそが、私の身近なオトナの世界の番人のようだった。
よくこういうあやしいおっさんと軽口を叩きながらアダルティな品物を物色し、とっておきを出してもらって…なんてな場面を漫画とか出てみた気がするけど、実際にあの店の敷居をまたぐのは勇気がいる。というか中学生なので蛮勇であっても入れない。
ジパングのお店になる前はなんだったか、もう思い出せない。
そんなに広くて大きな店でもないんだ。
そのすぐ上のマンションとの段差にへばりつくような、歩道に沿って斜めになった細長い店で、黄色いド派手な外装と裏腹に中身は…?って感じで。
この店の前を通りかかるガキどもの間では、あのおっさんは密かに注目されていた。
店に客が入っている様子はあまりなかった。
プリペイドカードやDVDの露骨な幟なんかも少なかった気がする。
周りが普通に住宅地で子供も多いんで配慮したんだろうか。
もっとも、あの時代は何の関係もない民家のすぐ前に囲いも何もなくエロ本の自販機がドン!と設置されてて、免許証も何もいらず、羞恥心さえ捨てればすぐに千円札を入れて(硬貨は使えなかったし釣銭も出たか出なかったか)ボタンを押せば
ビーーーーーーー、ガッタン
とエロ本ないしビデオが手に入った。
お望みの商品とは限らなかったけど。
たまぁに、すっげえハズレ掴まされたりして。文句も言えねえし、そうやって授業料を払って大人になってったってもんだ。
もちろんその頃は未成年なので買っていたのは水着の写真集とか、そういうのですけどね!!!
(何に怯えたんだキッド)
一方そんなガキどもには近寄ることさえ叶わないユートピア、エルドラド、いやエロドラドの番人ことジパングのおじさん。
私が中3ぐらいの頃から、パタっと姿を見せなくなった。
見せの向かいの駐車場には、あの茶色いぼろいアメ車がずっと置きっぱなしになっていた。
色んなうわさが流れた。
ヤバいものを売ってて捕まったとか、ヤバい人に捕まったとか、死亡説も流れたが真相は当然闇の中で。
そのままいつの間にかアメ車も撤去された。というか撤去される直前には
この車何とかしろ
の張り紙も色褪せて、タイヤだとか外せてかっぱらえるものは何でも持ってかれてたし、最早アメ車ってよりもスクラップ寸前って感じだった。
やがて店はのっぺらぼうになり、数年後にはスナックに、その次には
えびす焼き
なる粉モノのお店になったが、いずれもすぐにやめてしまった。
今は何かの事務所になっていた筈だ。
ジパング。
地の果て、海の向こう、空の彼方にあるという黄金の国。
思春期のクソガキにとってはまさに黄金の理想郷だったわけだが、普通のセルショップなら普通にモザイク入りのビデオや写真集が売られていたのだろうし、この当時だって裏ビデオの通販なんか虚実入り混じっていたとはいえ存在してたし…行かないで終わってくれてよかったのかも知れない。
そして冒頭に出てきた おじさん のほうが閉店した理由は、本当にヤバいものを売っていたのがお巡りさんにバレたからだという噂があるけど、真偽は不明。
この辺りの、大人の世界の真偽不明のお店って、なくなったよね。
大型店というか
むしろ恥ずかしがることありませんけどお!?
的な派手なお店や、小さくてもやっぱりケバい色遣いとここぞとばかりのTENGAの幟やポスター、あとツーショットや出会い系の幟がヒラヒラ出てるお店もダメってことはないが、街角でひっそりやってたお店の趣もたまには懐かしいなと。
そういうお店、もう私の周囲には残っていないから、余計にそう思うのかも。
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