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第532回。黄色い円盤が襲来したよ!

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今回は購入・拝見したマンガのお話になります。
なるべく注意して書かせて頂きますがネタバレなどが気になる方はご注意頂きつつご覧頂くか、一旦作品をご覧になって頂いた上で、改めてお越しいただければ幸いです。

さて本題。
黄島点心先生・作、リイド社さんから7月18日発売の単行本
「黄色い円盤」
が届きました!

かなりのボリューム。柔らかな手触りと、黒と銀とイエローのカッコイイ表紙に吸い込まれるように本を開く。イントロからして物語に引き込まれてゆくようだ。
例えるならウルトラシリーズをテレビで見るときの、あのオープニング。
今から不思議なお話が始まるよ、世にもおかしな世界が広がるよ、ということを感じさせてくれる。
このワクワク感を大人になっても享受できるのはとても幸せだ。
黄色い円盤
と大きく描かれた見開きページはとても印象深い。

いつもネタバレしちゃうので作者の皆様には恐縮なのですが、本当に面白い、素晴らしい作品なので書かずにはおれませず…。
今日はこの作品集の中でも一つだけご紹介させてください。
このほかにも素晴らしい作品が目白押し。一冊に凝縮された黄島点心先生のめくるめく奇想ホラー、ファンタジー、スペクタクル世界にどっぷり漬かれます。

で私が一押しでご紹介したいのが
「盲脳」
という作品。
もう予測変換で盲脳と一発で出るぐらい、ツイッターで黄島点心先生の公式アカウントさんを見るたびに
(ああ盲脳が紙の本になる)
(盲脳が面白いんだよな!)
と書いたり想ったりしていた。
もちろん他の作品もサイコーで、宝毛と黒子毛なんかは胸が詰まるぐらい哀しくて、やるせなくて、スピード感とエモーションにあふれた傑作なのだけれど、やっぱり私の中では
盲脳
がダントツにお気に入りなもので…。

で盲脳。
盲に脳とはなんぞや?とお思いでしょう。
私も劇画狼さんのツイートを見た時はそうでした。
でも、あのふかーーい絵柄の仏像と、緩くて可愛い線のキャラクター、そして脳。
この三点セットに心をブチ抜かれてしまったのです。
元々、劇画狼さんのおおかみ書房さんの絡んだ本は面白いという信頼が私の心のなかで勝手に出来上がっていて。
で、それは改めて信頼なんて言うまでもなく脳と仏像の合わさった絵を見て
「なんだこれ!!!!狂ってやがる…!(興味津々&誉め言葉)」
と即読み&ドはまりでした。

お話は日本が高度経済成長期の時代。
その片隅で起こったダム工事と、その水の底に沈んだ村。
空(クウ)とは何か。
脳の写真と盲腸の手術。腕のいい女医と調子のいい助手。
ダムの底に沈んだ村は、この女医のふるさとだった。
その女医のもとにやってきた男は、身寄りのない子供を引き取り育てているという。
そしてその男に連れられてきた男の子。丸々太って仏様のような風貌をしている。
この子を仏様のよう、と言わしめたのはそれだけではない。
生まれつき頭のてっぺんがもこっと膨らんでいるのだ。そのせいか少々ぼんやりしているところがあるというこの少年。手術は無事に終了したが、なんとそのふくらみの正体は肥大化した脳だったのだ。切り取ってしまっても大丈夫、まるで盲腸のような脳。そう、盲脳…。
男と女医は脳談義に花を咲かせるなかでキーワードが揃う。
盲脳、ダム、身寄りのない子供。
その共通点がやがて女医をある行動へと駆り立てる。

夜更けに少年を連れて出奔する女医。
探しに出る男。
嫉妬する助手。この助手は密かに女医に惚れていて、彼女がこれまでに切除した盲腸のすべてをコレクションしていたのだ。もちろん、少年から切り取った盲脳も

そして巻き起こる連続猟奇事件。
手掛かりを求め、男は女医のふるさとの村へとやってきた。

その頃、助手の部屋で保存されていた盲脳にも異変が起こっていた。

ここから女医と男、助手と盲脳、猟奇事件を追う刑事たちの疾走が始まる。
盲脳の異変がヨーイドン!の合図のように、物語が村の頂上にあるお寺に向かって収束し、圧縮され、やがてその内側へと展開してゆく。
そう、内側とはつまり腹の中であり脳の奥。

脳と腸って似てるなあ…。
序盤の病院での一コマ。女医はそんなことを思っていたのである。
少年を使い、女医の父である僧侶の脳と巨大な仏像を一体化させ、少年に村の出身者たちの脳を食らわせ、腹の中であり脳の奥たる空間にかつてのふるさとを作り出したのだ。
そう、そこは涅槃…!

もうわけわかんないと思いますが、確かに世の中に存在するマンガ作品なのだから仕方がない。
本当なんです!信じてください!!
北斗、お前は二週間の謹慎だ!!!
こんなことがあるわけない!こんなのありえない!
という理屈を力づくで、またはさらなる空想でねじ伏せてしまう。それこそがマンガの醍醐味だ。
そして盲脳は動き出す。
寺院をブチやぶって動き出す仏像であり少年であり女医の父。
そしてそれは腸であり脳でもある。
あやうし、男。

つづく!
のである。そう、ここまでが前編で、このあと衝撃の後編が待っているのだ。
だって思い出してご覧なさいな。
まだ助手と盲脳が彼らのもとへたどり着いてもいないし、腸(脳)内の村の様子もわからない。
空(クウ)とは、そして冒頭に読者へと語りかける住職の正体は!?

というわけで、是非続きが気になった方は本編をご覧下さい。
この盲脳以外にも、不気味で不条理で残酷だけどちょっと可愛くて。
そんな愛おしい黄島点心先生の世界が広がっているのです。
黄色い円盤、おすすめです!

ツイッターでリイドカフェの回し者じゃないか、と言ってくれたフォロワーさんが居るけれど、むしろ逆で。
私のマンガ世界が、おおかみ書房さんとリイドカフェさんによって再び動き出したのである。
天が動けば天動説。
大地が動けば地動説。
私のマンガはリイ動説。

今回ご紹介させて頂いた盲脳以外にも、不気味で不条理で残酷だけどちょっと可愛くて。
そんな愛おしい黄島点心先生の世界が広がっているのです。
黄色い円盤、おすすめです!
リイド社さん黄島点心先生、サイコーでした!
ありがとうございました。
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