不定期エッセイ キッドさんといっしょ。

ダイナマイト・キッド

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スティーブ・ウィリアムス大好き

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小学校高学年の頃からコツコツ買い集めてたプロレスのパンフレットを整理していたら懐かしいのが出てきた。
全日本プロレス2002年エキサイトシリーズのパンフレット。地元・豊橋大会の際に買い求めたもので、プロレスリングノアとの分裂・大量離脱から少し経った辺りの時期とあって非常にユニークなラインナップで行われた興行だった。
パンフレットにハンコで押された当日の対戦カードをご紹介しますと

第1試合トリプル・スレット・マッチ
Hi69
VS
ヤス・ウラノ
VS
土方隆司

第2試合
愚乱・浪花VSジム・スティール

第3試合
タッグ・マッチ
宮本和志
荒谷信孝
VS
D.I.S.1号
D.I.S.2号
(休憩)
第4試合
田中将斗VSマイク・バートン

第5試合
タッグ・マッチ
平井伸和

VS
マイク・ロトンド
スティーブ・ウィリアムス

第6試合
天龍源一郎
VS
保坂秀樹

第7試合
タッグ・マッチ
奥村茂雄
長井満也
川田利明
VS
本間朋晃
ジョージ・ハインズ
太陽ケア

(以上敬称略)

タッグマッチをタッグ・マッチと書いたり、実際はVSの代わりに制限時間と本数が書かれていたりと老舗団体らしい表記になっている。
ちなみに第3試合のD.I.S.とはダブル・アイアン・シークの略で、この試合だけ何故か双子のタッグチーム、ロン・ハリスとドン・ハリスのハリス・ブラザーズが出場せずに、二人ともスキンヘッドでアラブ系の衣装をまとったダブル・アイアン・シークなるタッグチームが出てきたんだった。入場するや否や
アッラーーーーー!
と二人して叫びまくっていたのを覚えている。何だったんだろう。私としては、当時全日本で活躍していたハリス・ブラザーズと、その合体技「ハリス・ボム」が見てみたかった。あの技で天龍さんと仲間割れした冬木さんが負けているのだ。

それにしても、いま見ると興味深いのはFMWを離脱した田中将斗選手、大日本プロレスを離脱した本間朋晃選手がこの当時は全日本プロレスを主戦場にしていたことや、奥村茂雄選手もメキシコに渡る前(まさかこの3年後には私もメキシコに渡り、闘龍門の寮でチャンコ鍋を作ったのを奥村選手に召し上がって頂くことになるとはね)で、愚乱・浪花さんもご存命中で相変わらずの人気者だったこと。そして新日本プロレス時代はNWOのマイケル・ウォールストリートとして出場していたマイク・ロトンドが居て、そのパートナーでありバーシティクラブの相棒でもある、あの殺人医師ことスティーブ・ウィリアムスも、まだ現役を続けていた頃だったことだ。日米で活躍して全日本プロレスでは世界タッグや三冠ヘビー級も獲得し四天王と真っ向からぶつかり合い散々に苦しめた、あのスティーブ・ウィリアムス。
ギラついた瞳、お鬚、岩みたいな赤銅色をした筋肉質の肉体。私はスタン・ハンセンもテリー・ゴディもベイダーも大好きだが、「ゼンニチのガイジン」といえばやはりスティーブ・ウィリアムスが好きだった。昭和から継続参戦のハンセン、ゴディ、昭和の伝説になったブロディと比べても、平成のゼンニチらしい外人といえばスティーブ・ウィリアムスだ。ベイダーという意見も認めるが私としてはウィリアムスで、特にウィリアムスのバックドロップが好きなのだ。

90年代の全日本マットで脅威的な破壊力を誇った、スティーブ・ウィリアムスのバックドロップ。四天王プロレスと呼ばれる、極限まで鎬を削り脳天から落としまくるプロレス自体は、私はあまり好きじゃない。悪いとは思わないし、あれはあれで凄かったが、そりゃあ何年も続けて出来るものじゃない。色んなジャンルの作品や試合についてよく足し算引き算掛け算という表現をするけど、四天王プロレスは
「あまり」の許されない割り算
だったと思う。そしてその方程式がリングで答えになったきっかけが、スティーブ・ウィリアムスのバックドロップだったとされている。そのトンデモバックドロップが出たのも、ここ豊橋での大会だったとか。その試合を見てみたかったなあ。

2002年のスティーブ・ウィリアムス(おっ、なんかプロレスの本みてえなフレーズだ!)は、正直言えば、もう、あまり動けていなかった。脇腹を傷めていたようで、コスチュームの上からでも分厚いテーピングがガッチガチに施されていたのが見えてたし、試合中も動きがぎこちなかった。他の観客から
「ウィリアムスも終わったかなあ」
とため息交じりの感想が漏れたのを、私は今でも覚えている。何を!と思ったが、試合を見れば一目瞭然。確かにウィリアムスの動きは悪かった。

私は全日本プロレスという団体を観戦するのも初めてだったし、あの大阪での三沢光晴さんとの三冠選手権で腕が折れたまま戦い抜いたデンジャラスKこと川田利明さんを見るのも初めてだったし、何しろ初めて尽くしで浮かれに浮かれていた。そして売店を覗くと、そこには、よりにもよってスティーブ・ウィリアムスが座っているではないか。中学生ぐらいだったと思うが、既に
売店の椅子にレスラーが座っている=グッズを買うとサインがもらえる
という、もう一つの方程式を完全に理解していた私は、迷わずにスティーブ・ウィリアムスのTシャツを買った。今でも大切に仕舞ってあるバーシティ・クラブ21の黒いシャツだ。スティーブ・ウィリアムスとマイク・ロトンドがリング上でポーズを決めている写真もある。
ウィリアムスは白いペンでサインを入れてくれると、おもむろに椅子から立ち上がって私に向かってツカツカツカっと歩いてきた。眼光鋭いウィリアムスのグローブみたいに分厚い手がヌッと伸びて、私は反射的にその手をガッチリ握って握手してもらった。岩みたいに硬くてゴツゴツした手だった。蚊の鳴くような声で
サ、サンキュー!
と言うのが精いっぱいだったが、ウィリアムスはウンウン、と頷いてくれて、そのまま椅子に戻った。ウィリアムス、デカかった。そんなにタッパがないかと思っていたがとんでもない、よく考えてみたらいつも一緒にいるマイク・ロトンドやスタン・ハンセン、テリー・ゴディがデカ過ぎるんであって、ウィリアムスも十分ノッポだった。

そんなわけで試合は確かにギクシャクしたところがあったが、怪我が治れば、また前みたいに暴れまわってくれるだろうと思っていた。

だけど、ウィリアムスはその後、総合格闘技の試合でアレクセイ・イグナショフとかいう奴にボロ負けしてしまう。あの当時はプロレスラーが総合格闘技の試合によく出ていて、高山善廣さんとドン・フライの試合なんか面白かったけど、結局は芳しくない成績で終わることも少なくなかった。ウィリアムスが出ると聞いたとき、私は
何処の誰だか知らんがドクター・デスなら負けっこない
と思っていたし、目の前の光景が信じられなかった。確かにウィリアムスはベテランだが、まさかあれほど、あんなニヤけてヒョロヒョロした奴に、あんな負け方をするなんて。
スティーブ・ウィリアムスは何故、アレクセイ・イグナショフを殺さなかったのか(おっ、またそれっぽい本のタイトルみてえだ)ってなわけじゃないが、以来、アレクセイ・イグナショフが大嫌いで許せない私だ。まあそれはともかく。
ウィリアムスが咽頭癌を告白したのは、そのすぐ後だった。
一旦は手術を行い回復するものの、その後しばらくして再発。そのまま亡くなってしまった。

スティーブ・ウィリアムスと言えば、入場曲として使用していたKISSの
I Love It Loud
も良かった。スティーブ・ウィリアムスがひとこと述べて、そこにあのイントロのドラムが入る。あれをプロレス会場のスピーカーで聞いたことで、私は洋楽に目覚めたのだ。プロレスに使われた色んな音楽を調べたり、実際に音源を入手したり、それを聞きながら筋トレをしたりと、今に至るまで続く趣味の一端が、あの日あの時の一瞬に繋がっている。


押入れを整理していたら、思わぬ記憶の扉があいたので書き留めてみた次第です。皆さんの思い出のガイジンレスラー、試合も、是非お寄せください。私もまた何か思い出したら書いてみようと思います。
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