ドMなんかじゃない

みきてぃー。

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4.抵抗と情動

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あの藤宮を妄想のオカズにして絶頂するなんて、私も落ちぶれたもんだ。

チッ、と舌打ちしながら私は物品庫を後にする。

なんであの時のこと思い出すと、私は快感に浸れるんだろう…
あームカつく…!あの藤宮のスカした顔。

オナニーした後なのに、こんなにフラストレーションが溜めてどーすんのよ…。


その時、携帯を確認すると、クロから「紫音のバー先に行ってるけどまーちゃんも来るかな?」とメッセージ。

時刻は午前7時前。
紫音のバーは閉店時間なんて存在せず、私たちが帰れば終わりだ。

よし、いつも一時過ぎにバーに現れる藤宮たち一行は、この時間はさすがにもういないだろう。

と、なれば行くっきゃない。

…もう、飲まないといろいろとやってられないのよ。

私は足早に同じビル内のバーがある二階へと急ぐ。


二階に着くと、その廊下は静まり返っていた。
藤宮たちがいる時は廊下にまでガンガンうるさい話し声が聞こえてくるので、やはりもう帰っているようだ。

一安心して、バーのドアを開ける。


「…おー、まーちゃん。おはよー、ってかおつかれさま」

カウンターから紫音が手を上げる。

「今日遅いね。何飲む?ビール?」

「うん、お願い~。ってか、あれ、クロは……………

え、?は?」


カウンターに一人で座る男を視界に入れた時、私はクロの言葉を信じてここに来たことを激しく後悔した。


「ん?クロさんなら来てないけど?」

ビールを注ぎながら、紫音はそういった。

「…………は?来てない?」

なんなの、あいつ。
また得意の行く行く詐欺か。

いやそれよりも。

店内を見回すも、どう見ても紫音とこいつしかいなかった。


「……ごめん、紫音、帰るわ」

「え?ビールせっかく注いだのに?」

コトン、とビールをカウンターの席の前に置く。
よりによって一人でカウンターに座るこの男のすぐ隣に置きやがった。

「…急用を思い出しましたので」

謎の敬語で早口でそう言い捨て、背を向けると、そのカウンターに座る男が低い声で言ってきた。

「いいから座れば」

「………」
思わず足を止めてしまう。


「そーそー。旺ちゃんもいってるし、一杯だけでも飲んでってよー」

何も知らない紫音が、いいからいいから~と言って私を席に座られる。

よりによってこの藤宮旺太郎のとなりに。


「…………」

私は仕方なく黙ってビールを飲む。

なぜ。
なぜこいつが一人で紫音のバーにいる?いつもいる取り巻き共はどうした?


「……お前さあ、」

「…!」

すぐ隣でヤツは低い声で小さめの声で唸るように話しかけてくる。

「…ふざけてんの?」

「は?」

悪態を吐くように言い返すのが精一杯だ。

言えない。
さっきまでこの冷たい声でオナニーに耽ってたなんて言えない。


「…自分の立場わかってんの?」

「…何?立場って」

小さな声で淡々と言い合いをする私たちを紫音は、ん?と不思議そうに見つめる。


「全部、晒していいの?」

「全部って、」

「蓮二さんのこと、お前の物品庫の変態ドMオナn、」

「だーーーー!!!!」

紫音は急に大きな声を出す私にビクンと身体を跳ねらせる。

「何?まーちゃん…ビックリしたあ…」

紫音はそういうと、空になった藤宮のグラスを持ち、新しくビールを注ぎ足している。

「…うるせえな。耳元で叫ぶな。…なんなら今もしてきたのか?」

「し、してない」

「なんだよ、図星かよ。万年発情期か」

「はああ??」

横からキッと睨みつけるも、ヤツはなんてことなしにただ悠々と酒を飲んでいる。

こいつの余裕そうなスカした顔が本当にムカつく。
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