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第十三話『目覚める霊王』
【1】
しおりを挟む「うん、今日の実技はこれくらいにしておきましょうか」
「あ……ありがとぉ、ございましたぁ……」
激しく息を切らし、疲労困憊な様子で、彩乃は冥に対して頭を下げた。
「ん」と冥は返事をした後、腕時計を確認。
「よし、それじゃあ一時間の昼休憩を取って、昼からはミーティングをしましょう」
「はぁい……」
「結構キツめに追い込んだから、ゆっくり休んでねー」そう言い残し、冥がその場から立ち去った。
その瞬間、彩乃は倒れ込むように地面に仰向けに寝転がった。
乱れた息を整えながら、一言。
「め……冥さんのトレーニング地獄ぅ……怜っちってぇ、アレでも相当優しかったんだぁ……」
怜と姫美が依頼先へと旅立って二日が経過。
冥との特訓が始まって二日が経過。
彩乃は今、冥の自宅にて、冥による特訓を受けていた。
自宅……とは言っても、和風の豪邸といった印象だ。
凄まじく広い敷地があり、大きな家。
「それにしてもぉ……ここが、怜っちの実家かぁ……広いし大きいなぁ……わざわざここを出てぇ、あんな廃校舎で一人暮らしなんてぇ、どういう考えに至ればぁ、そんな暴挙にうってでるのかしらぁ?」
そう、ここは『幽野本家』――怜の実家である。
彼はこの豪勢な家から出て、山奥の廃校舎にて一人暮らしをしている。
「相変わらずぅ……よくわかんない人ねぇ……」
仰向けのまま、真っ青な大空を見上げながら、彩乃は呟いた。
すると、そんな綺麗な大空を覆い隠す、二つの影。
冥直属の弟子である、貼薙遙と札月三月が心配そうに、彩乃の顔を覗き込んできたのである。
「大丈夫? 彩乃さん」と声を掛けたのは、遙の方だった。
「な、何とかねぇ……」
「冥さんは、修行の時容赦ありませんから……はい、これ飲んでください」三月が、スポーツ飲料を手渡してきた。「ありがとぉ」彩乃はそれを受けとり、早速一口飲む。
疲れた身体に、冷たいスポーツ飲料が染み込んでくる。
「くぅ~! 美味しぃ~! 生き返った気分だわぁ~!」
上体を起こし、大きく伸びをする彩乃。
「ありがとうございます、二人共ぉ」
「どういたしまして」ニコッと笑い、三月が答えた。返答はしなかったものの、遙は彼の横でうんうんと頷いている。
三月が切り出した。
「よければ、一緒に昼食食べませんか?」
「良いんですかぁ!? 喜んでぇー!」
「はい、ボク達も、色々とあなたに聞きたいことがありますし」
「……? 聞きたいことぉ?」
そんな訳で、三人は幽野本家の豪華な食事を堪能した。
食後、彩乃が一言。
「あぁ~! 美味しかったぁ~! 何これ何コレぇ~! 超美味しかったんですけどぉ~!! 怜っちはぁ、こんなの食べれる実家から出てぇ、何であんな廃校舎でカップラーメン啜ってんのぉ!? マジで意味分かんないんだけどぉ~!!」
めちゃくちゃ元気になっていた。
「『幽野家』の料理は美味しいって評判なんだよ~。新鮮なお魚も使ってるし、何より、料理長の腕がピカイチ!」遙が、ニコニコと微笑みながら、早口でそう解説をした。
「へぇ~! 通りで美味しぃ訳ねぇ」
「この後デザートで出てくる、いちご大福も激ウマだから、超オススメだよー!」
「うわっ、何それぇ! めっちゃ楽しみぃ~!」
そんな感じで、女子トークに花を咲かせているところに、「話の腰を折ってすみませんが……」と、三月が割り込んだ。
「彩乃さんに、いくつかご質問よろしいでしょうか?」
気さくな遙とは違って、かしこまった喋り方をする三月へと視線を向ける彩乃。
「質問? あぁ、さっき言ってたやつぅ?」
「はい……どうしても、聞きたいことがあったので」
「イロノに答えられる質問ならぁ、何でもどぉぞ~。イロノ的にもぉ、二人に聞きたいことあるしぃ~」
「あ、ならば、そちらからどうぞ」
「いえいえ~先に質問があるって、この場を作ってくれたのはぁ、お二人なんですからぁ、気になさらず、質問してきてくださぁ~い」
「そうですか? ……ならば、お言葉に甘えて」そう言ったのち、三月はコホンッと一回咳払い。
質問を投げかけてきた。
「ボクたちが聞きたいのは、霊王――『兆力無双』についてです」
「あ~……」
この時、彩乃は思った、自分には答えられそうにない質問だなぁと。
「残念だけれどぉ、その質問にはぁ、イロノ答えられそうにないわぁ……」
しかし――
「彩乃さんが、戦闘に参加していなかったのは知っています。その上で、聞きたいことがあるんです」
「その上でぇ?」
彩乃が首を傾げるのを見て、話を続けたのは遙だった。
「私達が聞きたいのは、後方支援についてなの。彩乃さんは、戦闘には参加せず、近くの街の人など、周囲のサポートに回っていたんだよね? 私達の力は、どちらかというと、『サポートタイプ』なんだ。だから、詳しく話を聞きたいなと思ってて……」
「なるほどぉ~」
更に、今度は三月が続ける。
「冥さんが今、彩乃さんに訓練をしている、という事は、次回の霊王討伐作戦の際には、冥さんも戦地に赴く可能性が高い。と、なると、前回の『兆力無双』討伐の際、彩乃さんが行っていたことを、間違いなく、今後はボク達が担わなくてはいけません。だから、今後の参考になるかなと思いまして……。お願いします、話を聞かせてください」
「…………理由は分かりましたぁ。お話はしますけどぉ、役に立つかは分かりませんよぉ? イロノ、そこまで考えて動いてませんでしたからぁ~」
「それでも嬉しいよ! ありがとう!」
「ありがとうございます!!」
「わぁ!! 頭なんて下げなくて良いですよぉ!」
わざわざ立ち上がり、律儀に頭を下げた遙と三月を前に、少し狼狽えてしまう彩乃。
流石は冥、礼儀作法まできっちりと仕込んでいるようだった。
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