46 / 62
第十六話『黄金の糸と冥王』
【9】
しおりを挟む銀のドーム内が、漆黒に包まれている。
黒い雷。
黒い風。
黒い炎。
黒い雨。
あらゆる自然を、黒が飲み込み。
異様な空間となっている。
それらは全て、【銀丿軍隊】の目の前にいる、この人間の少女によってもたらされた現象だ。
人間……? いや、そう呼ぶのが躊躇われる。
(何なんですかねぇ……? 目の前の、コレは……何と呼べば良いのでしょう……?)
拳を混じえながら、【銀丿軍隊】は考える。
(私は…………この――――化け物のことを)
化け物――――霊王に、そう言わしめているのは、最強のゴーストバスター――幽野 冥の切り札。
『冥獣』――――『冥王人』である。
冥自身が、『冥王』へと変身する、最終奥義。
そして人類の――――最終兵器。
黒紫の肌。
尖った耳と牙。
赤い目。
真っ黒な翼。
鋭利な爪。
先がフォークのような形をした尻尾。
身体のあちらこちらに不思議な模様。
その風貌は正に――――悪魔そのもの。
「カシャアァァアアァアアァアァアーーーーッ!!」
冥の口元から、漆黒のレーザービームが放たれる。
それは、【銀丿軍隊】が放つ巨大レーザービームよりも大きなものだ。
「くっ!」
咄嗟に銀の壁を繰り出し、防御に移るも……。
漆黒のレーザービームが銀の壁に触れた瞬間――――銀色が黒に侵略され、銀色が黒に染っていく。
途端に、壁が崩れていく。
鉄壁が、鉄壁でなくなっていく。
「何なんですか……それ……」
「グガァァアアァアァアアアァアアァアーーーッ!!」
銀の壁に空いた隙間から、冥が急接近する。
何枚も銀の壁を作り出し、接近を防ごうとするものの……冥の放つ漆黒の霊気の前には、何の意味ももたない。
ビームを使わずとも、両手両足に、漆黒の霊気を纏わせ、殴る蹴る。
ただのそれだけで、【銀丿軍隊】の鉄壁を、壊し尽くしていく。
「ジャララァァアアァアアアァァアアアーーッ!!」
「……言葉も……通じませんか……」
【銀丿軍隊】は冷や汗をかく。
彼の能力自体が、目の前の化け物に対して、何の意味ももたらさない。
漆黒の霊気――――これが『冥王』の力であり。
幽野 冥が最強である由縁。
その漆黒の霊気は、あらゆる事象を漆黒に侵し、その性能を乗っ取る。
どんな力も――――『冥王』状態の冥の前には無力。
例え相手が――――霊王であっても。
鋼鉄、鉄壁、絶対防御の銀も――――冥の前では、意味をなさない。
「くそっ……まさか、こんな怪物が、人間側にいたとは……」
【銀丿軍隊】が、瞬く間に接近を許した。
その時の表情は、苦笑い。
「ウ、ガッアァァァアアァアアァアアアァアアァアアーーッ!!」
ガシュッ! ――――という音と共に、冥の右腕が…………【銀丿軍隊】の胸部を貫いた。
その瞬間……銀のドームが崩壊をはじめる。
大きな音を立てながら。
銀のドームだけではない……。
【銀丿軍隊】を包んでいた鉄壁の銀の兜も、鎧も、両腕の武器も……崩れ落ちて行く。
本体も、まるで砂のように、消え去っていく。
自らを貫いた冥に対して、【銀丿軍隊】は、微笑みながら言う。
「なるほど……最期ながら、あなたに興味が湧きました……もし、あなたが、その破壊衝動の化け物を、抑え込むことができたなら……その漆黒の刃は、霊王の中の霊王へと……届き得ることでしょう……」
「グシャァアアァアーーッ!!」
「その時を…………地獄から、見守ることにしましょうかねぇ……」
【銀丿軍隊】に耳を貸さずに。
冥は、追い討ちとも言わんばかりに、口元へ漆黒の霊気をチャージする。
そして――――漆黒のレーザービームを、至近距離から放った。
満身創痍の【銀丿軍隊】に、それを躱す力は残っていない。
「トリオン……理解しましたよ……。これが……――――
人類の……底力というやつなのですね……」
漆黒のレーザービームを間近で受け、消え去りながら……【銀丿軍隊】は呟いた。
「完敗です……」
こうして……【銀丿軍隊】は消滅。
人類は――――二体目の霊王撃破を、成し遂げたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
都市伝説レポート
君山洋太朗
ホラー
零細出版社「怪奇文庫」が発行するオカルト専門誌『現代怪異録』のコーナー「都市伝説レポート」。弊社の野々宮記者が全国各地の都市伝説をご紹介します。本コーナーに掲載される内容は、すべて事実に基づいた取材によるものです。しかしながら、その解釈や真偽の判断は、最終的に読者の皆様にゆだねられています。真実は時に、私たちの想像を超えるところにあるのかもしれません。
霊和怪異譚 野花と野薔薇
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。
表紙イラストは生成AI
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/17:『えれべーたー』の章を追加。2026/1/24の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/16:『せきゆすとーぶ』の章を追加。2026/1/23の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/15:『しばふ』の章を追加。2026/1/22の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる