ゴーストバスター幽野怜Ⅲ〜三つの因縁編〜

蜂峰 文助

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第十六話『黄金の糸と冥王』

【9】

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 銀のドーム内が、漆黒に包まれている。

 黒い雷。
 黒い風。
 黒い炎。
 黒い雨。

 あらゆる自然を、黒が飲み込み。

 異様な空間となっている。

 それらは全て、【銀丿軍隊】の目の前にいる、この人間の少女によってもたらされた現象だ。

 人間……? いや、そう呼ぶのが躊躇われる。

(何なんですかねぇ……? 目の前の、コレは……何と呼べば良いのでしょう……?)

 拳を混じえながら、【銀丿軍隊】は考える。

(私は…………この――――化け物のことを)

 化け物――――霊王に、そう言わしめているのは、最強のゴーストバスター――幽野 冥の切り札。


 『冥獣』――――『冥王人』である。


 冥自身が、『冥王』へと変身する、最終奥義。


 そして人類の――――最終兵器。


 黒紫の肌。
 尖った耳と牙。
 赤い目。
 真っ黒な翼。
 鋭利な爪。
 先がフォークのような形をした尻尾。
 身体のあちらこちらに不思議な模様。

 その風貌は正に――――悪魔そのもの。

「カシャアァァアアァアアァアァアーーーーッ!!」

 冥の口元から、漆黒のレーザービームが放たれる。

 それは、【銀丿軍隊】が放つ巨大レーザービームよりも大きなものだ。

「くっ!」

 咄嗟に銀の壁を繰り出し、防御に移るも……。

 漆黒のレーザービームが銀の壁に触れた瞬間――――銀色が黒に侵略され、銀色が黒に染っていく。
 途端に、壁が崩れていく。

 鉄壁が、鉄壁でなくなっていく。

「何なんですか……それ……」

「グガァァアアァアァアアアァアアァアーーーッ!!」

 銀の壁に空いた隙間から、冥が急接近する。

 何枚も銀の壁を作り出し、接近を防ごうとするものの……冥の放つ漆黒の霊気の前には、何の意味ももたない。

 ビームを使わずとも、両手両足に、漆黒の霊気を纏わせ、殴る蹴る。

 ただのそれだけで、【銀丿軍隊】の鉄壁を、壊し尽くしていく。

「ジャララァァアアァアアアァァアアアーーッ!!」

「……言葉も……通じませんか……」

【銀丿軍隊】は冷や汗をかく。

 彼の能力自体が、目の前の化け物に対して、何の意味ももたらさない。


 漆黒の霊気――――これが『冥王』の力であり。

 幽野 冥が最強である由縁。


 その漆黒の霊気は、あらゆる事象を漆黒に侵し、その性能を乗っ取る。

 どんな力も――――『冥王』状態の冥の前には無力。

 例え相手が――――霊王であっても。


 鋼鉄、鉄壁、絶対防御の銀も――――冥の前では、意味をなさない。

「くそっ……まさか、こんな怪物が、人間側にいたとは……」

【銀丿軍隊】が、瞬く間に接近を許した。
 その時の表情は、苦笑い。

「ウ、ガッアァァァアアァアアァアアアァアアァアアーーッ!!」

 ガシュッ! ――――という音と共に、冥の右腕が…………【銀丿軍隊】の胸部を貫いた。

 その瞬間……銀のドームが崩壊をはじめる。


 大きな音を立てながら。

 銀のドームだけではない……。

【銀丿軍隊】を包んでいた鉄壁の銀の兜も、鎧も、両腕の武器も……崩れ落ちて行く。


 本体も、まるで砂のように、消え去っていく。


 自らを貫いた冥に対して、【銀丿軍隊】は、微笑みながら言う。


「なるほど……最期ながら、あなたに興味が湧きました……もし、あなたが、その破壊衝動の化け物を、抑え込むことができたなら……その漆黒の刃は、霊王の中の霊王へと……届き得ることでしょう……」

「グシャァアアァアーーッ!!」

「その時を…………地獄から、見守ることにしましょうかねぇ……」

【銀丿軍隊】に耳を貸さずに。

 冥は、追い討ちとも言わんばかりに、口元へ漆黒の霊気をチャージする。

 そして――――漆黒のレーザービームを、至近距離から放った。

 満身創痍の【銀丿軍隊】に、それを躱す力は残っていない。


「トリオン……理解しましたよ……。これが……――――



 人類の……底力というやつなのですね……」


 漆黒のレーザービームを間近で受け、消え去りながら……【銀丿軍隊】は呟いた。


「完敗です……」


 こうして……【銀丿軍隊】は消滅。

 人類は――――二体目の霊王撃破を、成し遂げたのだった。
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