ゴーストバスター幽野怜Ⅲ〜三つの因縁編〜

蜂峰 文助

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第十七話『VS 霊王丿八――万物斬撃』

【7】

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 時は遡り、十日ほど前。

 幽野家での、冥、彩乃、剣一郎によるミーティングの続き。


「さて……ここからが本題よ。彩乃、剣一郎……」

 そして冥は言った。

「これから私達が考えるべきなのは、その彩乃の『引き寄せ』の力を――――



 誰に使うべきか? なのよ」


「誰に使うべきかぁ?」彩乃は首を捻る。

「『引き寄せ』の力は、誰かに使う能力ってことなの? 何か、言葉からして、自分に何かを付与する能力っぽいけど」剣一郎がそう続けた。

 すると、冥はニコッと笑って、剣一郎を指差しながら……。

「その発想が、正解よ」

 そう言った。

 正解だと――言った。

「はい?」剣一郎が首を捻る。当然、彩乃も同様に、これまで以上に首を捻る。

 頭上に?マークが沢山浮かんでいるようだ。

「ま、この説明では分からないでしょうね。それでは答えを述べるとしましょう……。さっきも言ったけれど、『引き寄せ』の力は、黒檻踊による、霊王対策の力である――それは理解出来てるわね?」

「はぁい……」
「それは……まぁ……」

 彩乃と剣一郎が、渋々頷いた。

「じゃあ……『引き寄せ』の力が、どう霊王対策として機能するのか? それを考えた時、答えが出た。剣一郎、あなたさっき、何て言った?」

「え? えーっと……『誰に使うか?』って言葉に、違和感がある……って、言ったような……」

「それと?」

「へ?」

「続けて、重要なことを言っていたわよね?」

「重要な……? オイラ、そんなこと言ったっけ? えーっと……『引き寄せ』って言葉からは、『自分に何かを付与するってイメージの方が強い』って言っただけだよ?」

「それ――――果たして、黒檻踊は、『霊王から自分へ、何を付与するつもりだった』のでしょうね?」

「霊王から?」
「自分へぇ……っ!!」
「あぁっ!!」

 ここでようやく、剣一郎と彩乃は気付いた。

 黒檻踊の――――とんでもない企みに。

 その答えを述べたのは、かつて、そのとんでもない企みを企てていた黒檻踊に呪われていた、彩乃だった。



「『霊王の能力』を――――『自分に付与』しようとしていたぁ……?」


「正解よ」冥は笑って答える。

「迂闊だったわ……まさか、こんなに恐ろしい悪霊が……人間に取り憑いていて、身を潜めていたという事実にね……。黒檻踊が、もし、霊王のいずれかと鉢合わせていたら、それこそ本当に――――新たな霊王が、生まれていたかもしれない……そう考えたら、背筋が凍ったわ……」

「イロノに憑いてたあの女ぁ……そんなに凄い悪霊だったんだぁ……」

 彩乃の顔が、少し、青ざめる。

「とにかく――――これで理解出来た? 彩乃の『引き寄せ』の力には、『霊王クラスの力をコピー』出来る可能性がある――ということに」

「で、冥さんは、その力を『どの霊王に使うべきか?』と、言っていた訳だ」と、冷や汗混じりに剣一郎。

「そゆこと。ま、でもそれは、彩乃が選びなさい」

「えぇ!? イロノがぁ!?」

「そ、彩乃が。だってこれは、今はあなたの力だもの。あなたが選ばないと、そうでないと、百パーセントの力は発揮できない。あなたが心から納得して、その力を自分に付与した時――あなたは、その力を、百パーセント駆使できるわ」

「百パーセントぉ……」

「そして、その付与する力は――別に、『霊王じゃなくても良い』」

「え……?」

 「例え、怜ちゃまの力でも、剣一郎の力でも、命吉や見舞や天地、姫美ちゃんの力でも、それこそ……私の力でも、誰の力でも良い。ここぞという時に、あなたが、ソレを選びなさい」

 冥のその言葉に対して、自信なさげに彩乃は「はぁい……」と頷いたのだった。



 そして今、現在――――

 彩乃は、冥のその言葉に自信を持って頷くことができる。


 今、この時、天地の力を受け継いだことが、間違いではないと、胸を張って言える。

「皆を守って!! 【銀丿軍隊】!!」

「お易い御用です……と、言いたいところですが、私の銀でも、【万物斬撃《彼氏》】の斬撃相手には、時間稼ぎしか出来ませんよ?」

「それで十分!! 時間さえ稼いでくれたら、ウチが皆を回復させていくから!」

「…………」

「ウチは信じてる! 剣一郎くんや、命吉さん! 見舞さん達の力を合わせたら――――必ず! 【万物斬撃】を倒せるって!!」

「…………その、結束力の強さに、私は負けたんですねぇ……。脱帽です。分かりました! 守って差し上げましょう!!」

【銀丿軍隊】が動き出す。

 本日三度目となる、霊王と霊王のぶつかり合い。

 尚、今回は前回とは違って、本気の闘いとなる。

 霊王同士の――――本気の命の削り合い。

【銀丿軍隊】は即座に、銀のドームを形成する。

「おっと……範囲は、援護組の外にしておかないとですね」

「……小癪な……」舌打ち混じりに、【万物斬撃】が言う。

「ガッカリしたでござる、シルバリア……。よもや、お主ほどの男が、人間如きに敗れ、あまつや、人間の味方をしているとは……」

「一つ忠告しておきましょう……小葉焚 斬之助。人間を――――



 あまり舐めない方が良い」


 全身には銀の鎧。頭部には銀の兜。左手に銀の銀の大砲。右手に銀の刃。

【銀丿軍隊】も、本気モードで立ち向かう。


「笑わせてくれる!」

【万物斬撃】が、銀のドームを斬り裂く。

 やはり、【銀丿軍隊】の鉄壁の銀でも、【万物斬撃】の攻撃を防ぎ切ることは出来ない。

 しかし――――時間稼ぎはできる。

「うおおぉおおおおぉおおおぉおおおおおおおぉぉぉぉおおぉおおおおーっ!!」
「ぬおおおぉおおおおぉぉぉぉおおおぉおーっ!!」

【銀丿軍隊】と【万物斬撃】がぶつかり合う。

 その隙に――――

 ヒュンッ! 彩乃が、『引き離し』を発動し、命吉と剣一郎の治癒を行う。

「末代……お前ぇ……」

「命吉さん……その話は後……」

「彩乃ちゃん……その糸って……ひょっとして……」

「剣一郎さんも……後で、説明するから……」

 治癒を終えると共に、彩乃の視線が【万物斬撃】へと向けられる。

「今は――――あの悪霊を倒すことが先決でしょ?」

「……あぁ……」
「……そうだね」

 命吉と剣一郎が、神妙な顔をして頷いた。

「行きましょう」彩乃が動く。

 そんな彼女の背中を見ながら、剣一郎が命吉へと問い掛けた。

「命吉さん……天地は、もしかして……」

「もしかしなくてもぉ……そういうことだぁ」

「そっか……」

「負けてられねぇぞぉ! オレらもよぉ!!」

「うん!!」

 剣一郎と命吉も、続いて動き出した。


 戦闘中の二体の霊王――――それに割って入る、ゴーストバスター達。

 彩乃の糸が、【万物斬撃】の動きを止め。
 命吉の大槌が、斬撃の嵐を吸い取り。
 剣一郎の刀が、攻撃と空間斬撃による瞬間移動を行い。
 見舞、三月、遙の三名が、サポートを行う。

 このサポートというのは、ゴーストバスター達に対してのみではない、【銀丿軍隊】に対しても、同様だ。

「不思議な弾丸ですね……力が湧いてきます……。これが、力を合わせるということなのですね……。実に、気分が良い」

「……ぐぅっ!」

 ゴーストバスター達のサポートもあり、【銀丿軍隊】は徐々に【万物斬撃】を追い込んでいく。

 グッと、歯を噛み締める【万物斬撃】

「舐めるなぁぁあぁああーっ!!」

 防戦一方の状況を、その刀の一振りで振り出しに戻す。

 その凄まじい一振りは、【銀丿軍隊】の銀の鎧すら真っ二つにした。

「…………やはり、強いですね……あなたは…………」

 この場での、希望とも言えていた【銀丿軍隊】の姿が消えていく……。

「お主さえ消えれば……後は――――っ!!」

「後は……なに!!」

 頭上から、剣一郎が襲い掛かる。

 虚をつかれた【万物斬撃】は、その一撃を辛くも躱す。

 生まれる隙――――

 そこへ、命吉の大槌から繰り出される巨大なレーザービーム。

「溜めてた分、まとめて返すぜぇー!!」

「ぐぅっ!!」【万物斬撃】の身体をかすめる。

「小賢しいわぁぁあぁあーーっ!!」

 十本の腕から、闇雲ともいえるほど、飛ぶ斬撃が繰り出される。

「っちぃ!!」

 命吉の大槌でも……。

「吸収し切れねぇ!!」

 残った飛ぶ斬撃が、面々に襲い掛かる――――――


「やぁっ!!」

 彩乃の能力――――『引き離し』が発動。

「なっ!!」これには、流石の【万物斬撃】も目を見開く。

「拙者の斬撃が――――――吹き飛ばされた、だと!?」

 バンッ! バンッ! バンッ! と、三発の銃声。

 三発とも、【万物斬撃】へ命中。

 その瞬間――――

「ぐっ! 身体が重く……!」

【万物斬撃】の動きが、鈍くなる。

「今だぁぁああぁあーー!!」
「うおぉおおおぉおおおーーっ!!」

 すかさず、命吉と剣一郎が襲い掛かった。

 そして……それぞれの一撃が――――


「いけぇ! 命吉さん! 剣一郎さん!!」
「やれっ! 命吉! 剣一郎!!」
「お願いします!」
「……倒してぇ……! 霊王を……!!」

 彩乃、見舞、三月、遙の声援を受けながら……。

 二人の、大槌と刀が――――


「ぐあぁああぁぁああぁあああぁあーーっ!!」


【万物斬撃】の、身体を捉えたのであった。
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