【書籍化&完結】おそらく、僕だけ違うゲームをしている。【2月中頃発売】

鵩 ジェフロイ

文字の大きさ
20 / 280
本編

19:同じ宿の飯は食べた

しおりを挟む
 隣の大剣使い=鎧の男という事実にフリーズしている僕を尻目に、ギルが悪戯成功とでも言いたげに続ける。

「いやぁ、異人達から『住民の傭兵がここの奥で働いていた異人を路地裏に連れ去っていったんだが、大丈夫なのか』と聞いた時は何事かと思ったけどね。よく状況を聞いたら、トウノ君を助けてあげただけみたいで安心したよ」
「通るのに邪魔だっただけだ」
「鉄銹の。私は『連れ去り』の方がまだ真実味があると思ったくらいだったぞ」
「…………チッ」

 段々とフリーズから立ち直ってきて目の前のやり取りを聞いていると、何だかんだ気安そうな雰囲気だ。サーリハなんかは表情を変えることなく大剣使いをいじっている。

 チラッと横に視線を向けてみると、すぐさま睨まれた。目が「余計なことを言うな」と言っている。
 と言っても僕達の間に大したエピソードは無くないか? ……まぁ、沈黙は金ということで。

「さて、揶揄うのはこれくらいにして。一応トウノ君の紹介もしとこうか。彼が終わりの見えない作業から私を解放し、今回魔物襲撃の可能性をかなり早く察知してくれた異人だ。職業はまだ〈下級〉と〈見習い〉が取れてないけど優秀な編纂士になると期待しているよ」
「それなりに長くギルドで務めてるが、編纂士ってなぁ初めてお目にかかるなぁ」
「私もだ」
「えー……よろしく頼む」

 コノルとサーリハが興味深そうにこちらを見てくる。
 正直、技能的には学者系統なら誰かがなっていてもおかしくないと思うんだが、何故今はいないんだろう? そういう職業があること自体を知らないからなりようがないとかだろうか。

「それじゃあ、一通り紹介が済んだところで本題に入ろうか。まず、ユヌのギルド連盟はくだんの魔物襲撃に際してより詳細な時期、襲撃規模の追加調査の必要性があると結論づけた」
「襲撃規模が分からないと傭兵の十分な投入と配置が出来ないからな」
「こっちも必要な補給と素材調達の算段がつけられん」

 それはそうだなと思ったので頷く。

「そこで異人達にクエストを出して各方面の調査を依頼しようと思っていてね」
「今やユヌに滞在している冒険者や傭兵の数は異人の方が圧倒的に多いからな。今だからこそ出来る人海戦術だ」
「ついでに素材調達や物資の生産もな!」

 むしろそれらが無いとプレイヤー達からブーイングの嵐になるだろうなと思いながら頷く。

「ところで、調査をすれば非常に重要な手がかりが得られそうなエリアが存在するが、不特定多数の者達が踏み入ることが不都合な困った場所があるんだ。まとめてくれた君なら何処か見当がつくだろう?」
「……南西の遺跡群か」
「その通り」

 確かに、過去の襲撃の記録と襲撃前の異変、現在表れている異変を見ても南西の遺跡群が非常に怪しい。その異変というのは、遺跡群含む南西フィールド周辺で魔物との遭遇が激減するというものだ。

 そして、襲撃時には町の南側での戦闘が最も苛烈だったという記録から、南西に魔物大量発生の要因があるのかもしれないと追加のメモのような考察にまとめていた。

「あそこは野盗や魔物の根城になってしまわないように、連盟が連携して調査と保全活動をしているんだけど、保全が精一杯で調査に関しては全然進んでいなくてね……」

 ……おや? この流れは……。

「これまでの実績と信頼、異人の性質からトウノ君に南西の遺跡群の調査を依頼したいんだ」

 やっぱり……!

「あの、僕は戦闘はからっきしというか、この世界に降り立ってから町を出たことすらないんだが……」

 目的地にすら辿り着かずに死に戻りする自信しかない。いつかは外に出ようと思っていたが、こんな重要な依頼で、ではないはずだ。

「そのあたりは勿論把握しているよ。そこで! そこのラスティ君を案内兼護衛としてつけようってことで彼もここに呼んだんだ」
「な、なるほど……?」
「ラスティ君は実力は申し分ないし、最近異人と依頼を多くこなしていたようだから、異人の事情を理解してバックアップするのに適任だろうと思ってね。それに君たちは同じ釜の飯を食べた知り合いのようだしね」
「知り合いじゃない」

 そうだな、知り合いかどうかは疑問だが確かに同じ宿の飯は食べているな。

「鉄銹はこんな態度だが既に護衛依頼の内容も報酬も了承している。あとは君が調査依頼を受けるかどうかだ」

 うーん、この。外堀を完全に埋められてる感。まぁ、戦闘面では完全に役立たずと分かっての采配なら依頼を受けるのは吝(やぶさ)かではない。あと、さっきの失われた言語関連のことも進展があるかもしれないし。
 ということで。

「分かった。調査依頼を受ける」
「良かった! 早速で悪いが、準備が出来次第向かってもらいたい。外に出るのに必要なものはラスティ君に聞くといい」
「分かった」


【WQ:ギルド連盟指名クエスト】
魔物大規模襲撃のさらなる情報を得る為に南西の遺跡群を調査しよう
依頼者:始まりの町『ユヌ』のギルド連盟
期限:残り7日
報酬:30000G、ユヌの防衛力上昇(小)、ギルド連盟からの信頼度上昇(微)、???(成果に応じて変動)


 クエスト受注通知も来たが、先ほどまとまった内容なのでツッコミ所はとくにない。……とても安心出来る。

「私からの話は以上だけど、他に何かある者はいるかい?」
「あっ、そうだ。異人が入れる町のエリアについてなんだが……」
「うん?」

 ギルに僕が他の異人では入れないとされているエリアに入れていることから注目を浴びており、町の住民の許可を得るなり案内されれば入れるようになることを広めても問題ないかを相談した。

 そのことにより一部の住民にかかるだろう負担などの懸念点も伝える。

「ふぅむ、確かに『そういう仕掛け』になっているが、そんなことになっていたのか……。これは個人に任せるのではなく連盟で段階的に開放したり、開放する場所を管理した方がいいかなぁ」
「ああ、異人には手順と条件が明確になっている方が分かりやすい。大多数は普通に従ってくれるだろうと思う」

 その方がゲームっぽいだろう。……ゲームなんだが。というか今サラッと『そういう仕掛け』って……まぁ、いいか。きっとファンタジーでマジカルな奴だ。

「ふふふ、そんなにギルド内に入りたいならいっぱい仕事があるよぉ……。《分析》を持ってる人にはこれからとくにねぇ……。《記録》の技能書を奮発してもいい……」

 あっ、馬車馬(ギル)から漆黒のオーラが……。
 《分析》の経験値が美味しいし《記録》も覚えられる上に報酬も貰えるぞ。やったな、学者見習いの諸兄姉方!

「それでは『そのうちギルド連盟が条件を整備してくれるから発表を待つように』と異人に広めておく」
「ああ、よろしく頼んだよ」

 攻略スレと始まりの町スレ、あとはNPCスレあたりに投稿しておけば十分だろう。
 と、考えていると。

「そんな簡単に広められるのか」

 意外なことに大剣使いからツッコミが入った。
 ……「お前にそんな人脈ないだろ」ってことか? まぁ、無いが。

 プレイヤーが使っている掲示板を何て言えば……いや、普通に掲示板でいいのか。

「ああ、異人同士でだけ利用出来る掲示板があるんだ。そこで広める」
「ほーぅ、そんなもんがあんのか。やけに異人同士で情報が広がるのが早いと思ったがそういうことか」

 僕の答えには、コノルが興味深そうな反応を示した。大剣使いの方はもう興味が無さそうである。

 うーん、依頼の間だけでも上手くやっていけるだろうか。
 と、手を顎に持っていったらいつもは無い感触が。

 それは人差し指にはまっている古ぼけた指輪だった。



 そういえば、強制的に持ち出すことになってしまったコレの相談もあるんだったな……。
しおりを挟む
感想 293

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます

大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。 オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。 地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──

処理中です...