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本編
97:揺籃編纂士トウノの旋律
〈技能《鉱物知識》のレベルが上限に達しました。技能《鉱物学》に成長させますか?〉
〈技能《鉱物知識》が上級技能《鉱物学》に成長しました〉
時々鎮め札・中を補充しつつ、借りた本を読み終えた頃、ついに《鉱物知識》が《鉱物学》へと成長した。これで僕が覚えている『◯◯知識』系は全て成長したことになる。とはいえ、図書館にある本の内のほんの一部しか読んでいないので、これからまたどんなジャンルを読めるようになるのか楽しみだ。
ひと通り技能成長などの確認をしている間にまた減っていた鎮め札・中を補充しつつ、返却だけでもしてくるか? などと考えていると、唐突に《勘破》に反応があり、背後に住民マーカーが現れる。
「……まぁ、こうなるよな」
バラムが欠け月の写しから転移してきたようだ。周囲の状況を把握して少し遠い目をしながら言う。
「起きたか」
「ああ、少し予想はしていたが、とんでもない数になっていたな。朝起きてからずっと昇華し続けてるんだが、まだたくさんいる」
「こいつら、お前が寝てる間は潜んで出て来なかったんだぞ」
「そ、そうなのか……数が多過ぎると思ったんだ」
バラムが気にかけてくれていたにも関わらず、彷徨う霊魂の数が多過ぎることが腑に落ちた。
流石にこんな敷地内に彷徨う霊魂が溜まってしまっては図書館の老女からもまた何か反応があるだろうか? その為にも一度返却に行ってみた方が良いのかもしれない。
「図書館に本を返却だけしたいから、少しの間ここを見といてくれるだろうか?」
「俺は良いが、こいつらはどうだかな」
そう言って顎で彷徨う霊魂達を示す。
「まぁ、置いておいても自分で使用してくれてるし、ちょっとなら大丈夫なんじゃないか?」
一応、鎮め札・中の束に並んでいる彷徨う霊魂達にすぐに戻ると伝えてから、図書館へ入る。
「トウノ様、本日もお越しくださり嬉しゅうございます。ホホホ、表が大変賑わっておりますわね」
「一応、一体ずつ昇華してるんだが中々な……」
「ホホホ、以前レディから贈られた歌がお役に立てるかもしれませんわね」
「贈られた歌か……」
それは『揺籃歌の断片』のことだろう。ここで言ってくるということは、なるべく早めに編曲を終わらせてみた方が良いのかもしれない。
「編曲はほとんど終わっているから、完成させて試してみよう」
「ホホホ、それがよろしいかと」
「ああ、助言ありがとう。あと、これらを返却したい」
「とんでもございませんわ。返却もありがとうございます。ホホホ、次にトウノ様が訪れる日が楽しみでございます」
僕は返却したい本を老女へと渡す。新たな本は表の彷徨う霊魂達をどうにかしてから借りよう。
〈称号【博識】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉
「む……」
随分と久しぶりな気がする称号獲得通知が出た。称号の仕様からおそらく『◯◯学』にするのに必要な本を全て読んだことを老女に認識されたから獲得したのだろうが……僕を表現するのには仰々しいので控えで良いか。というか控えの称号も住民には普通に認識されている気もするし。
ということで、最低限の用事を終えた僕は図書館を出て、欠け月の写しへと戻る。
「ふぅむ、これでも随分昇華されていったはずなんだが中々減ったように見えないな」
「多分、減ったそばから増えてるぞ」
「や、やっぱりそうなのか……」
バラムの僕より鋭い諸々の感覚によると、やはり追加されていたらしい。これは早速老女の助言に従った方が良いかもしれない。
「図書館の老女から例の揺籃歌を活用した方が良いと助言を貰ったから、ささっと完成させてしまおうと思う」
「アレか……アレ聴いてると眠くなるんだよな……」
前に『揺籃歌の断片』を弾いていた時は、いつの間にか眠っていて、自然覚醒するまで全く起きなかった。
「そういえばぐっすりだったな? なんだったら、家に戻っていてくれても……むぐっ」
「ここにいるに決まってんだろ」
「ほうか」
僕なりに気遣ったつもりだったんだが余計なお世話だったのか、片手で両頬を少し強めに捏ねられてしまった。
気を取り直して『揺籃歌の断片』の編曲を終わらせてしまおう。
と、言ってもほとんど出来ているといえば出来ていて、あと少し何か物足りない気がしているだけなのだが。
現状『揺籃歌の断片』と酒場で演奏した時の旋律を混ぜて少し明るめな印象にしているのだが……やはり、ほんの少し……ほんの少しだけ“あの曲”を取り入れてみようか……?
他にこの世界の曲を知らないし。
よし、微妙だったらやめて他の案を出せば良いだけだと結論づけ、インベントリからラベイカを取り出した。
曰く付きの“あの曲”もとい、このゲームのオープニング『世界を希う調べ』の旋律をほんの少しだけ取り入れてみたところ────。
「すごくしっくり来た……」
完成した、というのが確信出来るほど、最初からこの世界に用意された曲なのではないかと思うほどにしっくりと来る曲が出来た。
「完成したのか」
「ああ、多分……」
「完成してから、その曲からお前の匂いがしてきたぞ」
「曲から匂い……」
とは? まぁ、バラム独自の感覚なんだろう。この反応からしてもこれで完成で良いようだ。
〈新たに力のある旋律が生まれました。旋律の名前が自動生成されます……………………〉
ん?
〈技能《揺籃編纂士トウノの旋律》を獲得しました〉
んん????
《揺籃編纂士トウノの旋律》
消費AP:-(連携技能、演奏時間依存)
連携技能:《編纂》、《古ルートムンド語》
聴いた者の望みに共鳴し、寄り添い、微かではあるが確かに道を示す旋律。
旋律に《編纂》で《古ルートムンド語》の秘技を付与することが出来る。旋律の届く範囲内に付与効果が発揮される。秘技付与時に1回分のAPを消費し、旋律を奏で続ける限りAPが消費される。旋律が止まるか、APが不足するまで効果が持続する。
「……いや……うーーーーーん……まぁ……まさにこの状況を解決するのにうってつけのものではあるが…………うぅん」
曲が何故か僕の職業と名前のついた技能化したことが些細なことに感じるほどの大問題がある。
「範囲効果にする技能と《編纂》と《古ルートムンド語》が連携するのはとんでもなさ過ぎる」
「さっきから様子がおかしいぞ、どうした」
「それが……」
僕は曲を完成させてから数分足らずで追加されたとは思えない濃い情報を説明しながら《揺籃編纂士トウノの旋律》の《解析》結果を文書として生み出してバラムに渡す。それを読んだバラムは……。
「…………」
無言で片手で顔を覆って天を仰いでしまった。気持ちはとても分かる。
この技能で〈惑う魂に慰めを与えん〉を使うのは良いんだが、〈淡き宵の訪い〉も適用されるのがとんでもない。大して使っても行き詰まってもいないのに勝手に大幅強化されていく。最早怖い。何なら弱体化されても全然かまわない。
「まぁ……いざという時以外使うなよ……」
「それは勿論……」
バラムと頷き合って改めて〈淡き宵の訪い〉の取り扱いを再確認する。
さて、少々話がズレたが、これでここにいるたくさんの彷徨う霊魂の昇華を加速出来ないか試してみるとしようか。
インベントリからラベイカを出して、先程完成したばかりの曲を弾き始める。ここに《編纂》とはどうすればいいんだ?と思いつつ、一応旋律に《編纂》するイメージで使ってみると、出来た。……ただ、どういう原理かは全く分からないが。
旋律に秘技の効果が乗ると同時、音の届く範囲内の彷徨う霊魂の影がみるみる薄くなり、やがて光の球へと変わっていく。
日が傾いて薄暗くなっていたのもあってかなり壮観な、幻想的な光景となっている。視線操作でスクショしておこう。たまに演奏練習していた成果か、演奏には余裕がある。
ただ、音の届かない範囲もそれなりにあるので、館の周りを歩きながら演奏を続け、しばしラベイカの音色と昇華の光の幻想的な光景に浸った。
〈技能《鉱物知識》が上級技能《鉱物学》に成長しました〉
時々鎮め札・中を補充しつつ、借りた本を読み終えた頃、ついに《鉱物知識》が《鉱物学》へと成長した。これで僕が覚えている『◯◯知識』系は全て成長したことになる。とはいえ、図書館にある本の内のほんの一部しか読んでいないので、これからまたどんなジャンルを読めるようになるのか楽しみだ。
ひと通り技能成長などの確認をしている間にまた減っていた鎮め札・中を補充しつつ、返却だけでもしてくるか? などと考えていると、唐突に《勘破》に反応があり、背後に住民マーカーが現れる。
「……まぁ、こうなるよな」
バラムが欠け月の写しから転移してきたようだ。周囲の状況を把握して少し遠い目をしながら言う。
「起きたか」
「ああ、少し予想はしていたが、とんでもない数になっていたな。朝起きてからずっと昇華し続けてるんだが、まだたくさんいる」
「こいつら、お前が寝てる間は潜んで出て来なかったんだぞ」
「そ、そうなのか……数が多過ぎると思ったんだ」
バラムが気にかけてくれていたにも関わらず、彷徨う霊魂の数が多過ぎることが腑に落ちた。
流石にこんな敷地内に彷徨う霊魂が溜まってしまっては図書館の老女からもまた何か反応があるだろうか? その為にも一度返却に行ってみた方が良いのかもしれない。
「図書館に本を返却だけしたいから、少しの間ここを見といてくれるだろうか?」
「俺は良いが、こいつらはどうだかな」
そう言って顎で彷徨う霊魂達を示す。
「まぁ、置いておいても自分で使用してくれてるし、ちょっとなら大丈夫なんじゃないか?」
一応、鎮め札・中の束に並んでいる彷徨う霊魂達にすぐに戻ると伝えてから、図書館へ入る。
「トウノ様、本日もお越しくださり嬉しゅうございます。ホホホ、表が大変賑わっておりますわね」
「一応、一体ずつ昇華してるんだが中々な……」
「ホホホ、以前レディから贈られた歌がお役に立てるかもしれませんわね」
「贈られた歌か……」
それは『揺籃歌の断片』のことだろう。ここで言ってくるということは、なるべく早めに編曲を終わらせてみた方が良いのかもしれない。
「編曲はほとんど終わっているから、完成させて試してみよう」
「ホホホ、それがよろしいかと」
「ああ、助言ありがとう。あと、これらを返却したい」
「とんでもございませんわ。返却もありがとうございます。ホホホ、次にトウノ様が訪れる日が楽しみでございます」
僕は返却したい本を老女へと渡す。新たな本は表の彷徨う霊魂達をどうにかしてから借りよう。
〈称号【博識】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉
「む……」
随分と久しぶりな気がする称号獲得通知が出た。称号の仕様からおそらく『◯◯学』にするのに必要な本を全て読んだことを老女に認識されたから獲得したのだろうが……僕を表現するのには仰々しいので控えで良いか。というか控えの称号も住民には普通に認識されている気もするし。
ということで、最低限の用事を終えた僕は図書館を出て、欠け月の写しへと戻る。
「ふぅむ、これでも随分昇華されていったはずなんだが中々減ったように見えないな」
「多分、減ったそばから増えてるぞ」
「や、やっぱりそうなのか……」
バラムの僕より鋭い諸々の感覚によると、やはり追加されていたらしい。これは早速老女の助言に従った方が良いかもしれない。
「図書館の老女から例の揺籃歌を活用した方が良いと助言を貰ったから、ささっと完成させてしまおうと思う」
「アレか……アレ聴いてると眠くなるんだよな……」
前に『揺籃歌の断片』を弾いていた時は、いつの間にか眠っていて、自然覚醒するまで全く起きなかった。
「そういえばぐっすりだったな? なんだったら、家に戻っていてくれても……むぐっ」
「ここにいるに決まってんだろ」
「ほうか」
僕なりに気遣ったつもりだったんだが余計なお世話だったのか、片手で両頬を少し強めに捏ねられてしまった。
気を取り直して『揺籃歌の断片』の編曲を終わらせてしまおう。
と、言ってもほとんど出来ているといえば出来ていて、あと少し何か物足りない気がしているだけなのだが。
現状『揺籃歌の断片』と酒場で演奏した時の旋律を混ぜて少し明るめな印象にしているのだが……やはり、ほんの少し……ほんの少しだけ“あの曲”を取り入れてみようか……?
他にこの世界の曲を知らないし。
よし、微妙だったらやめて他の案を出せば良いだけだと結論づけ、インベントリからラベイカを取り出した。
曰く付きの“あの曲”もとい、このゲームのオープニング『世界を希う調べ』の旋律をほんの少しだけ取り入れてみたところ────。
「すごくしっくり来た……」
完成した、というのが確信出来るほど、最初からこの世界に用意された曲なのではないかと思うほどにしっくりと来る曲が出来た。
「完成したのか」
「ああ、多分……」
「完成してから、その曲からお前の匂いがしてきたぞ」
「曲から匂い……」
とは? まぁ、バラム独自の感覚なんだろう。この反応からしてもこれで完成で良いようだ。
〈新たに力のある旋律が生まれました。旋律の名前が自動生成されます……………………〉
ん?
〈技能《揺籃編纂士トウノの旋律》を獲得しました〉
んん????
《揺籃編纂士トウノの旋律》
消費AP:-(連携技能、演奏時間依存)
連携技能:《編纂》、《古ルートムンド語》
聴いた者の望みに共鳴し、寄り添い、微かではあるが確かに道を示す旋律。
旋律に《編纂》で《古ルートムンド語》の秘技を付与することが出来る。旋律の届く範囲内に付与効果が発揮される。秘技付与時に1回分のAPを消費し、旋律を奏で続ける限りAPが消費される。旋律が止まるか、APが不足するまで効果が持続する。
「……いや……うーーーーーん……まぁ……まさにこの状況を解決するのにうってつけのものではあるが…………うぅん」
曲が何故か僕の職業と名前のついた技能化したことが些細なことに感じるほどの大問題がある。
「範囲効果にする技能と《編纂》と《古ルートムンド語》が連携するのはとんでもなさ過ぎる」
「さっきから様子がおかしいぞ、どうした」
「それが……」
僕は曲を完成させてから数分足らずで追加されたとは思えない濃い情報を説明しながら《揺籃編纂士トウノの旋律》の《解析》結果を文書として生み出してバラムに渡す。それを読んだバラムは……。
「…………」
無言で片手で顔を覆って天を仰いでしまった。気持ちはとても分かる。
この技能で〈惑う魂に慰めを与えん〉を使うのは良いんだが、〈淡き宵の訪い〉も適用されるのがとんでもない。大して使っても行き詰まってもいないのに勝手に大幅強化されていく。最早怖い。何なら弱体化されても全然かまわない。
「まぁ……いざという時以外使うなよ……」
「それは勿論……」
バラムと頷き合って改めて〈淡き宵の訪い〉の取り扱いを再確認する。
さて、少々話がズレたが、これでここにいるたくさんの彷徨う霊魂の昇華を加速出来ないか試してみるとしようか。
インベントリからラベイカを出して、先程完成したばかりの曲を弾き始める。ここに《編纂》とはどうすればいいんだ?と思いつつ、一応旋律に《編纂》するイメージで使ってみると、出来た。……ただ、どういう原理かは全く分からないが。
旋律に秘技の効果が乗ると同時、音の届く範囲内の彷徨う霊魂の影がみるみる薄くなり、やがて光の球へと変わっていく。
日が傾いて薄暗くなっていたのもあってかなり壮観な、幻想的な光景となっている。視線操作でスクショしておこう。たまに演奏練習していた成果か、演奏には余裕がある。
ただ、音の届かない範囲もそれなりにあるので、館の周りを歩きながら演奏を続け、しばしラベイカの音色と昇華の光の幻想的な光景に浸った。
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(ムーンライトノベルにも掲載しています)