おそらく、僕だけ違うゲームをしている。

鵩 ジェフロイ

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本編

108:お揃いと予約

〈『変幻悪夢の王 黒妖牡山羊 シルヴァ』と『森碧の揺籃編纂士 本の虫 トウノ』との間に盟友契約が結ばれました〉
〈称号を確認しています…………意匠を生成中……………盟友の証が付与されました〉


 申請を受けると、新たに盟友の証が生成される。……これでアクセサリースロットがいっぱいになってしまったな。

『おお……主殿との繋がりを感じて気分が良いであるな!』

 シルヴァも鼻を鳴らして満足そうで何よりだ。

「えぇと、追加された盟友の証は……あれ?」

 盟友の証を確認しようと右耳を触るが、何も無かった。イヤーカフではないのか?

「これじゃねぇか?」
「うん?」

 バラムの手が僕の首元をトントンと叩くので、そこに触れてみると、確かに今まで無かった装飾が増えている。

 スクショのカメラを自分側に向けて確認してみる……が、すっかり日が沈んでいるので暗くて見づらい。家の灯りに照らせば見えるか?と思ったところではたと気づく。

「……いつまでも庭にいるのも何だし、中に入るか」
「……そうだな」
『であるなー』
「お前ぇは大きすぎて入んねぇだろ。外だ」

 確かに、山羊にしても馬や鷲にしても、この家のどの出入り口からも入れそうに無いし、入れても身動きが取れないだろう。

『クククッ、甘いぞ夜狗の小僧。我は“変幻”ぞ? 大きさを変えることなど造作も無いわ!』

 そう言ってシルヴァの輪郭が一瞬曖昧になったかと思うと、現実の山羊くらいのサイズまで縮んでいた。

『ふふん、これでこの通り余裕を持って出入り出来るである』
「チッ」

 得意気に小さくなったシルヴァが家の中に入っていくので、僕達もそれに続く。

「“変幻”……そう言えば契約の際にあった【変幻悪夢の王】って何だ?」
『む? ああ、それは我が封印される前の古い称号であるな。今はその時仕えていた主も世界を去ってしまったし、そこまで特別な意味は無い。気にしなくて良いである』
「「……」」

 気になる情報塗れな気がするが、ダンジョンやら2枠目の盟友契約やらで疲れたので、これについてはまた改めて考えたり聴取したりするか……。

『おお、このゴーレムは面白い生物を模しているな』

 一番元気そうなシルヴァが早速異様な存在感を放っているペリカンくんとペリカンくん2号に興味を示す。……しかし、このブロンズ像がゴーレムだと看破しているのは流石……と言うべきなのか?

 家の中を散策しているシルヴァは少し置いておいて、ソファに腰を下ろして改めてスクショのカメラを自分側に向けて首元を確認してみる。

「これは……カメオか?」

 そこには、牡山羊が彫られた真っ黒なカメオブローチが付いていた。色と質感が服と合っていて、最初からこれ込みのデザインなのかと思ってしまうほど自然だ。

『我も主殿の証が見たいであるな……』

 一通り散策が終わったのか、シルヴァがこちらにやって来ていた。

 そう言えば、シルヴァの方の盟友の証は何処にあるのかと観察すると、毛に埋もれているがそれらしい物が首回りにあった。

 小さくなってもサイズが合っていそうなので、変化のアンクレットのように体の大きさが変わってもその時の大きさに合わせてくれる仕様のようだ。

 シルヴァの首にある盟友の証のデザインは、全体的にオリーブ色で首元にある本から何らかの植物が生え、そのままグルっと首を囲んで首輪のようになっている。

 …………何というか。

「バラムとお揃い感がすごいな。……まぁ、どちらも僕を模しているのだから当たり前、か?」
「やめろ」
『おお、そうなのか』

 多少装備を解除してラフな格好になったバラムが『お揃い』という言葉にとてつもなく嫌そうな顔をする。

 見せられるかは分からないが、試すだけ試してみようとシルヴァの姿をスクショして、周りへ見せられる設定で表示してみる。

「見れるか?」
「!」
『おおっ! 我が姿が映っておるぞ』

 反応からしてバラムにもシルヴァにも見ることが出来たらしい。シルヴァが興味深そうに色んな角度から空中に投影された画像を観察する。

『確かにお主とお揃いであるな』
「……」

 ……黙ってはいるが、とても大きな歯軋りが聞こえる。

『ククッ、主殿を守り仕える者の証のようで良いではないか』

 明らかに嫌そうなバラムに対してシルヴァは結構気に入っていそうだ。

 と、ここで唐突に右手から強い主張を感じる。人差し指に嵌っている指輪からだが、これは……ジェラシー?

『クハハ、先を越してしまって悪いな、古き友よ』

 指輪の強い主張がシルヴァにも届いたのか、指輪に向かって胸を張って言葉をかける。指輪から伝わる意思とシルヴァの反応からして、盟友契約をしたシルヴァに対してジェラシーを感じているらしい。
 そして、僕に対して強い主張が届く。

「うぅん……3枠目の予約?」

 どうやら僕の最後の盟友契約枠を自分用にとっておいて欲しい……というようなことを主張している、と思う。多分。

「まぁ…………それはかまわないが」
「おい」
「何だかんだ、いざという時は助けてきてくれたしな」
「…………チッ。仕方ねぇな」

 バラムは指輪と反りが合わないので反発するが、先ほどのダンジョンや遺跡調査の時などの大ピンチに助けられているので、最終的には予約を受け入れてくれた。

『3枠目を取っておいてくれるそうだ。良かったであるな、友よ』
「……というか、この状態だと盟友契約は出来ないのか?」
『その指輪はあくまで友の意思を伝える媒体であるからなぁ。本体で直接まみえなければ契約は出来んな』
「そうなのか」

 この指輪が“媒体”であることも初耳ではあったが、とりあえずそういう訳で『予約』ということらしい。指輪の本体か……いつか会う日が来るのだろうか?


「おい、そろそろ何か腹に入れろ」
「む」

 バラムに促されて朝食以降何も食べていなかったことを思い出す。

「そうだな」
「ちょうど『ドブネズミの洞穴』から食事が届いてたぞ」
「お」

 それは嬉しい。

『ほぅ、何とも独特な香りであるな。して、我の分は何処にあるのだ?』
「あるわけ無ぇだろ」
『何故だ! 仲間外れは感心せんぞ!』
「まぁ、先ほど合流したばかりだからな……」

 僕達の言葉にシルヴァは山羊の顔で器用にショックを受けた表情をする。

「僕の分を少し分けてもいいが、そもそも口に合うのかも分からないぞ?」
『おお、我が主殿は優しいのぅ。我は未知のものや新しいものを好むのでな、物は試しである!』

 ということで、シルヴァに少し食事を分けつつ、美味しく満腹度を回復させた。そしてシルヴァの食事の感想は……。

『うむ、中々面白い味だが、我は主殿の力の籠った物が食べたいであるな』
「また飴玉か?」
『そうである! 主殿、他の落胤達が持っていた飴玉は主殿の力がほとんど感じられなくて非常に残念な気持ちになってしまったぞ! 鎮め札とやらは美味だったが』
「他の落胤達?」
『む? ああ、他の者は『異人マレビト』と呼んでいるのだったか? 彼奴ら自身は『ぷれいやー』と称しておるようだったが』
「……よく見てるな……」
『ククッ、永く封印されて良かった事は目に入る物、聞く物全てが真新しく感じる事よな』

 なんともポジティブ過ぎる精神性だな……。封印した者がこれを聞いたらガックリ来てしまうのではないだろうか。

 そして、以前に僕に対しても言われた『落胤』とはどうやらプレイヤーの事を指していたようだ。

「まぁ、彼らに売っている飴玉からは聖属性を抜いてはいるが……」
『なるほど、それで物足りぬ味だったであるか。そうしたら主殿! 我は主殿の力がたっぷり入っている飴玉を所望するのだ!』
「我儘な奴だな」
「……」

 バラムも飴玉に関しては……と思いはしたが、口を噤んでおいた。


 まぁ、先ほど助けに来てくれたお礼も込めて、秘技の〈我が力を与えん〉も使って飴玉を生み出したところ満足してもらえたようだ。

 ……早々にインベントリが使えるようになったようで、またしても手元にある素材が枯渇するまで作らされたが。

 何なら、バラムからも『素材を渡すからあとで俺の分も作って欲しい』とウィスパーが入ったが。
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