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本編
111:「ね、簡単でしょ?」は簡単じゃない
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イベントが終わり、またあぬ丸から「トウのん忘れてそうだから」と連絡を受けてイベント報酬を受け取った。あぬ丸にはお礼のメッセージとギルドに卸している飴玉をいくつか送っておいた。
“イベント報酬”と言っても、結局僕のイベントポイントは変わらずゼロなので、シークレットポイント報酬の方なのだが。
イベントポイント報酬はバリエーション豊かなのに対し、シークレットポイント報酬の方はポイント数に応じてLP、MP、APを増やすことが出来る結晶の大欠片か欠片を入手出来るのみで、有用ではあるがオマケ感がすごい。あくまでメインはイベントポイント報酬ということなのだろう。
結晶の欠片の種類は満遍なく手に入ったので、どれを誰が使うかで僕とバラム、シルヴァとの間で一悶着あったのだが、LPを増やす『生の結晶』系はバラムが、MPを増やす『魔の結晶』系はシルヴァが、APを増やす『技の結晶』系は僕がそれぞれ使うこととなった。バラムは生の結晶も僕に使って欲しそうだったが、どのみち僕の防御力や戦闘能力だとそこまで意味は無いという結論に至りこの分け方となった。
ということで────。
「図書館の本は全部返した……ゴーレム達も持った……木彫り像も持った……良し」
『準備は出来たであるか、主殿』
「ああ」
今日、ユヌに向けて出発する事となった。バラムは既に黒馬となったシルヴァと共にドゥトワを発っているので、ここにはいない。
……なのに何故シルヴァがここにいるかのようにウィスパーで語りかけることが出来ているのかと言えば、僕が装備しているシルヴァの盟友の証から僕の様子を知ることが出来るとのことだった。これは盟友の証というよりはシルヴァの能力によるもの……らしい。
そして、本体とこちらで思考を割くことも2分割くらいなら苦もなく出来るとのこと。……本当に今仲間になっていい存在なのか物凄く不安になってくるが、相変わらず運営から音沙汰は無いので問題無いのだと思っておこう。
それに、すっかり愉快なムードメーカー的な存在として馴染んでしまったので、問題ありとしていなくなられてしまうのはそれはそれで……悲しい、かもしれない。
……とりあえず話を戻すと、バラムとシルヴァは先に出ていて、僕が乗る為のアンバーを伴って丘の上の廃寺院に向かっている。本当はさくっと僕達だけで廃寺院へ転移してシルヴァに2人共乗れば良いのだが、数少ないアンバーと外で《騎乗》する機会をバラムとシルヴァが作ってくれた。
……気遣いが素直に嬉しい。
『こちらは我がいた寺院に着いたであるから、主殿も準備が出来たら転移するのだ』
「分かった」
ということで、ドゥトワに来てからほとんどの時間を過ごした家の勝手口から庭に出る。……借りたままであるし、そんなに長く空ける予定は無いがなんとなく寂しさを感じるのは何故だろう?と思いつつ、いつものようにフクロウへと変化して図書館前の欠け月の写しへと向かった。
『大分飛行が上手くなったであるな。フクロウそのもののようであるぞ、主殿』
『ここの穏やか過ぎる環境限定でだが』
『それでも、人としての動きに慣れきった状態でここまで早くは習得出来まい。中々稀有な才であるぞ』
『……そんなものか』
『そうである』
シルヴァと言葉を交わしながら飛行していると、そんなに離れてもいないので、すぐに目的地に到着する。
変化を解きつつ欠け月の写しの傍へ降り立つ。小さな水の出ない噴水のある広場には、僕以外誰も、何もいない。
「萌芽祭が終わったら彷徨う霊魂も現れなくなったな……」
本当にイベント関連だったのか、イベントが終わった途端ぱったりと彷徨う霊魂が現れなくなった。
『エレメント共が活発になる時期にその濃い生の気に惹かれて彼奴らも姿を現すのだ。今は“道”が壊れておるからな、放っておけば狂うしか無い者共であったが……』
今までに聞いたことの無い優しげな声音でシルヴァが言う。
『主殿のおかげで在るべき形で在るべき場所へ逝けた。彼奴らを主殿の元へ導いた甲斐があったというものよ』
「ああ、彼らの為になったのなら良かった。……というかやっぱりシルヴァが霊魂達を誘導していたのか」
『クククッ、今のこの世で彼奴らを労せず昇華させる事が出来るのは主殿を置いて他にはおらぬからな』
「……」
……まぁ、《古ルートムンド語》と聖属性を扱える者と言う意味ではそうなのだろう。ただ、そんなに労せず、ということも無かったと思うが。時間はかかったし、途中……色々大変だったし。
『おい、転移して来ないが何か問題でもあったか?』
ここで廃寺院で待っているバラムからウィスパーが入った。シルヴァと話している内に待たせてしまったようだ。
『すまない。とくに問題は無いのですぐに行く』
『ああ』
『これくらいでうるさいのぅ。もう少し余裕を持った方が良いのではないか?』
『うるせぇ。どうせお前がいらん無駄話でもしたんだろうが』
シルヴァとバラムの皮肉り合いに耳を傾けつつ、欠け月の写しへと手を翳す。すると。
〈転移先を選んでください〉
というシステムメッセージが表示される。……とはいえ、僕が選べる転移先は一つしか無いのだが。ユヌへ戻る道すがらや遺跡へ向かう時にもう少し転移先を解放出来るだろうか。
『丘の上の廃寺院』を選択すると、エリアボスと戦うフィールドやダンジョンに出入りする時と同じく、浮遊感の後に視界が白く染まっていく。
────視界が元に戻ると、石造りの神殿のような建造物が目の前にあった。
無事に目的地に転移出来たようだ。……そういえば、これが初めての欠け月の写しを使った転移だな? 住民のバラムがすでに使い倒していて、好奇心旺盛なシルヴァもとっくに使っているだろうことを考えると、この中でプレイヤーである僕が一番最後の使用者とはこれ如何に。
「遅ぇぞ」
「少しシルヴァと話し込んでしまっていた。悪かった」
「チッ、やっぱりお前ぇのせいじゃねぇか」
傍に来たバラムが僕の腰に腕を回して引き寄せつつ、シルヴァのいる方を睨む。
『主殿が来た瞬間尻尾を振って寄って行くとは。永き時の中で血が薄れたとは思えぬ程の夜狗ぶりであることよな』
「尻尾……」
シルヴァの言葉に思わずバラムの腰辺りを見てしまうが、バラムは只人族のはずなので当然尻尾は無い。
「黙れ、クソ山羊。お前も真に受けるな」
「うむ」
片手で両頬を挟まれて捏ねられる。今日のはちょっと痛い。
しばらく捏ねられた後バラムの手から解放され、改めて廃寺院の方を見ると、今は大きな黒馬へと姿を変えたシルヴァがいた。……そういえばここ……とは少し違う空間だが、この廃寺院でシルヴァと出会ったんだったな。
『ここに永い間封じられていたが、解放されるとあっという間に過去の事のようであるな』
感慨深げにシルヴァが建造物を仰ぎ見る。
『そうそう、先の一角獣共から着想を得てな。この寺院を入り口にした我の『ダンジョン』を作ってみたである』
「へぇ、ダンジョンを………………んん???」
「……は?」
今何て?
『これでも我は落胤……異人達に顔が売れているであるからな、呼び込めさえすれば中々繁盛するダンジョンになると思うのだ!』
「何やってんだ、お前……」
「と、とりあえず……ダンジョンはそんな簡単に作れるものなのか?」
『何も無いところからだと流石に難しいが、ここは我がずっと閉じ込められた空間があるからな、そこを改良すれば良いだけであるから簡単だったぞ』
「「…………」」
絶対に簡単じゃないと思うが、ツッコんでいるとキリが無さそうなので、もうこれについてはそういうものとしておこう。
“イベント報酬”と言っても、結局僕のイベントポイントは変わらずゼロなので、シークレットポイント報酬の方なのだが。
イベントポイント報酬はバリエーション豊かなのに対し、シークレットポイント報酬の方はポイント数に応じてLP、MP、APを増やすことが出来る結晶の大欠片か欠片を入手出来るのみで、有用ではあるがオマケ感がすごい。あくまでメインはイベントポイント報酬ということなのだろう。
結晶の欠片の種類は満遍なく手に入ったので、どれを誰が使うかで僕とバラム、シルヴァとの間で一悶着あったのだが、LPを増やす『生の結晶』系はバラムが、MPを増やす『魔の結晶』系はシルヴァが、APを増やす『技の結晶』系は僕がそれぞれ使うこととなった。バラムは生の結晶も僕に使って欲しそうだったが、どのみち僕の防御力や戦闘能力だとそこまで意味は無いという結論に至りこの分け方となった。
ということで────。
「図書館の本は全部返した……ゴーレム達も持った……木彫り像も持った……良し」
『準備は出来たであるか、主殿』
「ああ」
今日、ユヌに向けて出発する事となった。バラムは既に黒馬となったシルヴァと共にドゥトワを発っているので、ここにはいない。
……なのに何故シルヴァがここにいるかのようにウィスパーで語りかけることが出来ているのかと言えば、僕が装備しているシルヴァの盟友の証から僕の様子を知ることが出来るとのことだった。これは盟友の証というよりはシルヴァの能力によるもの……らしい。
そして、本体とこちらで思考を割くことも2分割くらいなら苦もなく出来るとのこと。……本当に今仲間になっていい存在なのか物凄く不安になってくるが、相変わらず運営から音沙汰は無いので問題無いのだと思っておこう。
それに、すっかり愉快なムードメーカー的な存在として馴染んでしまったので、問題ありとしていなくなられてしまうのはそれはそれで……悲しい、かもしれない。
……とりあえず話を戻すと、バラムとシルヴァは先に出ていて、僕が乗る為のアンバーを伴って丘の上の廃寺院に向かっている。本当はさくっと僕達だけで廃寺院へ転移してシルヴァに2人共乗れば良いのだが、数少ないアンバーと外で《騎乗》する機会をバラムとシルヴァが作ってくれた。
……気遣いが素直に嬉しい。
『こちらは我がいた寺院に着いたであるから、主殿も準備が出来たら転移するのだ』
「分かった」
ということで、ドゥトワに来てからほとんどの時間を過ごした家の勝手口から庭に出る。……借りたままであるし、そんなに長く空ける予定は無いがなんとなく寂しさを感じるのは何故だろう?と思いつつ、いつものようにフクロウへと変化して図書館前の欠け月の写しへと向かった。
『大分飛行が上手くなったであるな。フクロウそのもののようであるぞ、主殿』
『ここの穏やか過ぎる環境限定でだが』
『それでも、人としての動きに慣れきった状態でここまで早くは習得出来まい。中々稀有な才であるぞ』
『……そんなものか』
『そうである』
シルヴァと言葉を交わしながら飛行していると、そんなに離れてもいないので、すぐに目的地に到着する。
変化を解きつつ欠け月の写しの傍へ降り立つ。小さな水の出ない噴水のある広場には、僕以外誰も、何もいない。
「萌芽祭が終わったら彷徨う霊魂も現れなくなったな……」
本当にイベント関連だったのか、イベントが終わった途端ぱったりと彷徨う霊魂が現れなくなった。
『エレメント共が活発になる時期にその濃い生の気に惹かれて彼奴らも姿を現すのだ。今は“道”が壊れておるからな、放っておけば狂うしか無い者共であったが……』
今までに聞いたことの無い優しげな声音でシルヴァが言う。
『主殿のおかげで在るべき形で在るべき場所へ逝けた。彼奴らを主殿の元へ導いた甲斐があったというものよ』
「ああ、彼らの為になったのなら良かった。……というかやっぱりシルヴァが霊魂達を誘導していたのか」
『クククッ、今のこの世で彼奴らを労せず昇華させる事が出来るのは主殿を置いて他にはおらぬからな』
「……」
……まぁ、《古ルートムンド語》と聖属性を扱える者と言う意味ではそうなのだろう。ただ、そんなに労せず、ということも無かったと思うが。時間はかかったし、途中……色々大変だったし。
『おい、転移して来ないが何か問題でもあったか?』
ここで廃寺院で待っているバラムからウィスパーが入った。シルヴァと話している内に待たせてしまったようだ。
『すまない。とくに問題は無いのですぐに行く』
『ああ』
『これくらいでうるさいのぅ。もう少し余裕を持った方が良いのではないか?』
『うるせぇ。どうせお前がいらん無駄話でもしたんだろうが』
シルヴァとバラムの皮肉り合いに耳を傾けつつ、欠け月の写しへと手を翳す。すると。
〈転移先を選んでください〉
というシステムメッセージが表示される。……とはいえ、僕が選べる転移先は一つしか無いのだが。ユヌへ戻る道すがらや遺跡へ向かう時にもう少し転移先を解放出来るだろうか。
『丘の上の廃寺院』を選択すると、エリアボスと戦うフィールドやダンジョンに出入りする時と同じく、浮遊感の後に視界が白く染まっていく。
────視界が元に戻ると、石造りの神殿のような建造物が目の前にあった。
無事に目的地に転移出来たようだ。……そういえば、これが初めての欠け月の写しを使った転移だな? 住民のバラムがすでに使い倒していて、好奇心旺盛なシルヴァもとっくに使っているだろうことを考えると、この中でプレイヤーである僕が一番最後の使用者とはこれ如何に。
「遅ぇぞ」
「少しシルヴァと話し込んでしまっていた。悪かった」
「チッ、やっぱりお前ぇのせいじゃねぇか」
傍に来たバラムが僕の腰に腕を回して引き寄せつつ、シルヴァのいる方を睨む。
『主殿が来た瞬間尻尾を振って寄って行くとは。永き時の中で血が薄れたとは思えぬ程の夜狗ぶりであることよな』
「尻尾……」
シルヴァの言葉に思わずバラムの腰辺りを見てしまうが、バラムは只人族のはずなので当然尻尾は無い。
「黙れ、クソ山羊。お前も真に受けるな」
「うむ」
片手で両頬を挟まれて捏ねられる。今日のはちょっと痛い。
しばらく捏ねられた後バラムの手から解放され、改めて廃寺院の方を見ると、今は大きな黒馬へと姿を変えたシルヴァがいた。……そういえばここ……とは少し違う空間だが、この廃寺院でシルヴァと出会ったんだったな。
『ここに永い間封じられていたが、解放されるとあっという間に過去の事のようであるな』
感慨深げにシルヴァが建造物を仰ぎ見る。
『そうそう、先の一角獣共から着想を得てな。この寺院を入り口にした我の『ダンジョン』を作ってみたである』
「へぇ、ダンジョンを………………んん???」
「……は?」
今何て?
『これでも我は落胤……異人達に顔が売れているであるからな、呼び込めさえすれば中々繁盛するダンジョンになると思うのだ!』
「何やってんだ、お前……」
「と、とりあえず……ダンジョンはそんな簡単に作れるものなのか?」
『何も無いところからだと流石に難しいが、ここは我がずっと閉じ込められた空間があるからな、そこを改良すれば良いだけであるから簡単だったぞ』
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