おそらく、僕だけ違うゲームをしている。

鵩 ジェフロイ

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本編

141:ローラー作戦

 隠された通路の先は罠や部屋が隠蔽されまくっていた。このパーティにはシーフ系の職業がいないので普通は苦戦するところなのだろうが……罠や部屋は僕の《勘破》でほとんどどうにか出来てしまった。
 まぁ、文字違いで“看破”的なことも出来るということだろうか。

 どうしても避けて通れない場合は、検証野郎Zの弓で発動させてしまうか、防御を固めた鍋の蓋が罠を受けてくれた。こういう解除方法を『おとこ解除』と言うらしい。

「毒を受けても検証野郎Zの薬で回復出来るし、薬でどうにかならない系はトウノ君の洗浄札で大体どうにかなるし、何とかなりそうだな」
「というか実はかなりバランス良いー? 私達」
「だな」

 検証野郎Zは基本状態異常付与の薬が専門のようだが、そちらを突き詰めるとその状態異常を回復させる薬の調合も出来るようになるとのことだった。本人は「ついで」と言っていたが。

 ただ、検証野郎Zの薬では対処出来ないものの中に《呪い》という状態異常があり、これが厄介で現時点では解除アイテムも魔法もあまり整っておらず、洗浄札頼りだという。
 それが、時折避けられない罠に仕込まれていて、こちらは漢解除するわけにもいかず色々頭を捻ったところ、洗浄札を罠に使えば状態異常付与の効果だけを消す事が出来ることが分かった。

「……思ったんですが、現状判明している洗浄札の効果を鑑みるに、これを他の罠にも使えば状態異常付与の効果を消せるのではないでしょうか?」
『「「「…………」」」』

 早速試してみると、毒や麻痺毒の“付与”を解除することが出来た。

『まさかこんな事も出来るとは……』
「製作者がそれ言っちゃうー?」
『いや……〈クリーン〉の代わりに使えれば程度で作ったから……』
「トウノ君……そのお札〈クリーン〉の代わりじゃ収まらないくらいの便利グッズになってるから。今分かってる効果を攻略サイトで確認してみてくれ……」
『ああ、分かった。落ち着いたら確認してみる』
「なんか……検証って大事なんだなって思う瞬間だな」

 洗浄札で状態異常付与を解除出来る事が分かってからは、鍋の蓋くらいの耐久力だとほんの少しのダメージが入るだけとなり、たまに強壮の飴玉を渡すだけで良くなった。

 とはいえ少し申し訳無かったのだが、鍋の蓋がいつもより楽しそうな気がしたのは何故なのだろう?



「大体こっちも探索し終わったかなー?」
「多分?」
「ていうか、別ルートも罠だらけで魔物もほとんど出ねぇでしょっぱいのかよ! 隠し通路なんだからこっちはドロップ豪華であれよ!」
「私としては今までに見たことの無い罠や仕掛けを見れて充実していますが。まぁ、確かに実入り自体は表の地下道よりも少ないくらいかもしれませんね」
『ふぅむ……』

 隈なく探索してみたが、こちらにはもう隠し通路や部屋の類は無さそうだ。勿論、僕が感知出来ていない、という可能性もあるが。

『……隠し通路を見つけた時より、妖精の気配が遠くなってやがる』
『うむ、主殿に隠し通路が見つかって慌てて移動したようであるな』
『……という事は?』
『おそらく、今は表の方にいるのではないかのぅ? 全く、手間をかけさせおってからに』

 2人の感覚によるとそういうことらしかった。

『どうやら、妖精は逃げて表の方に移ってしまったようだ』
「何、だと……それじゃあ、また表に行くかぁ?」
「仮にダンジョン内を自由に移動出来るのであれば、表に行ってもまたこちらに逃げられて、というイタチごっこになってしまうのでは?」
「じゃあ、二手に分かれて待ち伏せするー?」
『うーん……』

 仮にも相手は妖精なので、あまり分かれてしまうのは良くないと思うがどうしたものか……。

『心配には及ばないである。こちらの空間を主殿が封鎖してしまえばもう逃げ込むことは出来まい』

 シルヴァがまた言っている事は分かるが、意味がよく分からない事を言う。

『封鎖って……そんな事……シルヴァじゃなくて僕がするのか?』
『うむ、今ならば我よりも主殿の方が良いである』
『そう、なのか? どうすれば?』
『何、主殿の力で満たして領分を奪えばいいだけである。主殿ならその方法も色々とあろう』
『うぅん……』

 “力を満たして領分を奪う”……。

『言葉通りの事をするなら〈我が力を与えん〉を演奏しながら移動、くらいしか思いつかないんだが……』
『それで良いと思うである!』
『おいクソ山羊、それだとこいつが……』
『夜狗の小僧、主殿を案ずる気持ちは分かるが、主殿も逞しくなったであるし、そもそも我らが何人も触れさせなければいいだけであろう』
『…………』

 バラムが眉間に皺を寄せてムッツリと黙り込んでしまう。うぅん……バラムの心配もシルヴァの信頼もどちらの気持ちもありがたいので如何ともし難い。

『……チッ、分かった』
『うむうむ、お主も成長せねばいつまでも小僧であるぞ!』
『うるせぇ』

 バラムは気を許していそうな人の前では、結構子どもっぽくなるように思うので、シルヴァに対して大分気を許してきたのだろうかと察せられて、微笑ましくてつい声を漏らしてしまう。

『ふっ…………むぐぐっ』
『何笑ってんだ』

 少し拗ねた声音のバラムに指でクチバシの横あたりを摘まれて捏ねられてしまう。……ちょっと心地良いのが憎い。


 とりあえず、方針が決まったがしばしバラムとシルヴァとだけで話をしてしまったので、皆にも伝えよう。

「なるほど……って納得しかけたけど、トウノ君そんなこと出来るの? 本当に?」
「なんかそれもうダンジョンを逆支配出来ちゃいそうじゃないー?」
「……トウノさんから出てくる新情報があり過ぎて何を何処から検証していけば良いのやらという感じですね……」
「『検証班のヤベェ奴』にここまで言わせるトウノさん、恐るべし」
「ピキュゥ……」

 魔物のアルプにまで何となく遠い目をされるのが、なんとなく納得いかないが……皆からの賛同は得られたので、早速やってみよう。

 バラムの首元から飛び立って《変化》を解いて、インベントリからヴァイオリンを出す。

「おおー。ってそれヴァイオリン? アルストにあったんだねー」
「ああ、ちょっと当てが出来てこっちの職人に作ってもらった」
「……メモだけはしておきますが……」
「こいつの検証欲に検証項目の過剰提供で勝つなんてなぁ……」
「まぁ……今は妖精との遭遇を目指すということで……」

 ということで、名前が変わった《縁覚編纂士トウノの旋律》を奏で始め、それに〈我が力を与えん〉を付与する。


 ────すると。


「!」


 今までとは旋律の広がる範囲が、力の行き渡り方が格段に違う、と感じた。

 そして、少ないAP消費でかなり広い範囲をカバー出来ている。とはいえ、演奏している間はAPが消費され続けてしまうので、早速来た道を戻ろう。

「おおー? 何かバフかかった?」
「ピキュキュー!!」
「うおっ!? なんか鍋の蓋の従魔のテンションがぶち上がってんな……」
「どうどうアルプ……」
『クククッ、我と夜狗の小僧以外だと彼奴が一番こちら側に近いであるからな、主殿の領域の影響も大きかろう』
「そのヴァイオリンは魔楽器なのでしょうか?」
「いや、ただの楽器だ。これは魔法では無いからな」
「いやはや……興味が尽きませんね……」
「おい、こいつに付き纏うつもりなら、この世界でのお前の自由を保障しねぇぞ……」

 バラムが地を這うような声と圧力で、検証野郎Zに牽制する。

「……はい、トウノさんから聞いて簡単に検証出来るようなものでも無いと思いますし、今見た事をヒントに私独自に色々と検証します。……ええ、大変良い刺激をいただいておりますよ……」
「「……」」

 今まで無表情だった彼女の口元が吊り上がり、目は爛々と輝き、何とも言えない妖しい表情を浮かべながら言う。

「ま、まぁこいつもこう言ってるんで……俺も手綱握っときますし!」

 シャケ茶漬けが若干頬を引き攣らせながらバラムと検証野郎Zとの間に入る。

 ……地味に勇気ある行動だと思った。



────────────

ep.140の変化中の《底根の根》使用のトウノの描写がそれより以前の描写と矛盾がありましたので、修正しております!m(_ _)m
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