おそらく、僕だけ違うゲームをしている。

鵩 ジェフロイ

文字の大きさ
137 / 246
本編

171:シルヴァの解説と観戦

 シルヴァから外の戦いの様子を聞いたところ、シャケ茶漬けと検証野郎Zが相対している、虫となってしまった征服者達の方はどうにかなりそうなようだった。
 ……プレイヤーの精神的ダメージを無視すればだが。

「じゃあ、バラムが抑えている守護戦士達はどうなんだ?」
『うむ。そちらが厄介でな。今のところ倒してしまわぬように動いていて、それが中々負担なようである』
「……確かに、黒曜天母も倒せとまでは言っていなかったしな……。それに彼らを『愚息』とか『作った』とか言っていたから倒したらそれはそれでマズいかもしれない」

 主に黒曜天母の心証的な意味で。

『そうであろう? 主殿から彼の存在との会話の内容を聞いて、倒すのは得策ではないと夜狗の小僧を諌めたである』

 シルヴァがドヤ顔を山羊の顔で器用に作る。そうだな、これはシルヴァのファインプレーと言えるだろう。

「ああ、助かった。流石だな」
『クククッ、もっと我を称賛してくれてもいいであるぞ?』
「……そうだな」
『おおっ、楽しみであるな!』

 ……とりあえず、今の僕が作った碧錆玉を贈ってみるのがいいだろうか?


 さて、それは一旦置いておいて。


「ただ、黒曜天母は『頑丈に作ったから多少手荒でも構わない』とも言っていたから、弱るまでは本気を出しても構わないんじゃないか?」
『そうなのであるが、奴らも普通に手強くてな。異人達だけで見ると大ダメージまで中々行けないようであるな』
「なるほど……」

 確かに戦士達は神に近しい存在が手ずから作った存在だ。そして『戦士』というからには戦闘に特化しているのだろう。
 しかもこのサーバーはバラムとシルヴァが参加した影響で純戦闘職が少ない上に、別の戦闘にも人員を割いていてさらに総合戦闘力が低下している状況だ。

 この状況で『神の戦士』とも言える存在を複数相手にするのは大分荷が重そうだ。むしろ、戦線崩壊していないだけ善戦していると言えるのではないだろうか。

『巨人族の異人がよく守っているであるな。あの者の従魔も相手を撹乱して負担を和らげているである』
「鍋の蓋とアルプか」

 確かに鍋の蓋が始めから戦士戦側にいたのは幸いだった。でなければ、戦闘開始直後にプレイヤーは全滅していたかもしれない。

『あの獣をよく観察している異人も、獣姿の戦士を転がして何やら蕩けさせておるな』
「……ん? 蕩け……?」

 シルヴァが言っているのは多分あぬ丸のことだと思うのだが……「獣姿の戦士を蕩けさせている」……とは?

『何やらあの者の“撫で撫で”がとても堪らないようであるな! 食らったものはあられもない姿になっているである』
「撫で撫で……あられもない姿に……」

 戦士長以外の戦士達の獣の姿を見ていないから何とも言えないが、察するに彼らもそれなりに大きいジャガーなのではないかと思うのだが……それがそんな姿に……それは……。

「ちょっと見てみたいかもしれない」
『む? おお、そうである、今の主殿の眼力なら我の分体の視界を見るのも容易いのではないか』
「え……そうなのか?」
『うむ、やってみるである!』
「えぇと……」

 シルヴァに言われるまま、再び《慧眼》に意識を向けてみる。流石に洞窟の外は感知範囲外なので、見れるはずもないのだが……シルヴァに注目すると、遠くの方へ視界を移せるようなマーカーがあった。
 そして、そのマーカーに意識を向けると、一気に明るい景色が広がる。

「っ」

 一瞬、急な景色の変化に怯むが、すぐに気を取り直して、視界に映るものを確認すると────。


“よーし、よしよしー!”
“ゴロゴロゴロゴロ……”
“グルアアアッ!”
“おいでませー! 君もよしよしー!”
“グル……ニャッ!? ……ゴロゴロ……”


 あぬ丸が凄まじい勢いで、現実の猛獣よりも数倍の大きさはあろうかというジャガーをいとも簡単に転がして撫でまくって蕩けさせていた。既に蕩けさせられたジャガーが何頭も転がっていて中々すごい絵面になっている。

 ……他の獣姿の戦士がバラムよりもあぬ丸に怯えた視線を向けるほどだ。

「…………まぁ、この戦場の勝利条件としては、これ以上ないほど適していると言える……か?」
『おおっ、視ることが出来たようであるな。確かに、言われてみればそうであるな!』
「バラムは……」

 獣姿の戦士達はあぬ丸が一体ずつ確実に無力化出来るとして、バラムと戦士長はどうなっているのか、シルヴァの分体を起点に視野を広げる。
 ……僕もなんかサラッとやってしまっているが《慧眼》の能力もとんでもないな……。

 視野を広げると、あぬ丸達から少し離れたところで凄まじい剣戟が繰り広げられていた。
 どうやら戦士長は人の姿のままでいるようだ。流石に大剣を扱うバラム相手に素手ということはなく、何か、無骨で大きな武器を持っていた。

 うーん……シルエットは金棒のように見えないこともないが、金棒より平べったく、縁に黒く鋭利な刃がズラリと並んだ、結構凶悪な見た目をしている。
 この刃に少しでも捕まってしまったら、たちまち肉がズタズタに引き裂かれてしまうだろう。

 体格や実力が拮抗しているからか、一進一退の攻防を繰り広げている……と思ったのだが、バラムは戦士長を倒さないようにしているので、多少バラムの方が実力の面では上なのかもしれない。
 ……それはそれで滅茶苦茶だなと思うが。


“ぐぅぅっ! 邪魔をするなぁっ! 貴様ら母に何をしたぁっ!”
“…………”


 何やら激昂している戦士長と寡黙に受け続けているバラムが対照的だ。

 というか……。

「……この戦士長は何故怒っているんだ?」

 僕が把握している状況と戦士長の言動に違和感を覚える。

 彼の言う“母”というのは、まぁ、黒曜天母のことだろう。そして、この雰囲気から言って、少なくともこの戦士長は黒曜天母に何か良からぬことをされたと思い、激怒しているようなのだが……。
 黒曜天母本人……本神?の様子を見ると、むしろ今が正常な状態だ。

 戦士長が本心からあの禁呪がかかった状態を望んでいるとは思えないので、どちらかの認知が歪んでいる可能性が高いだろう。

 となると……。

「戦士長達の認知が歪んでいる……いや、歪まされている?」
『ふむ……まぁ、禁呪を解いて感謝されるならまだしも、ここまで敵意を向けられる謂れは無いであるからなぁ』

 シルヴァも同じ考えのようだ。

「しかし、どうしてというか……どうやって? それに、僕のハリセンで一度正気に戻っているのに再び暴れているのも気にかかる」
『であるなぁ。あのハリセンで、完全に状態異常を排しきれないとなるとそれこそ禁呪級に強い異常であると思うである』
「そう、なのか?」
『であるな』

 ……自分で作っておいてなんだがあんな爽快な音が鳴るだけのパーティグッズにそこまでの効果が……まぁ、素材や使用技能がぶっ飛んでるからということで納得するしか無い。

「禁呪級、か…………ん? いや、そうか……」
『どうしたであるか?』
「禁呪級……というより、まさしく禁呪の影響下にあるのかもしれない。黒曜天母も『害虫共の影響が抜けていない』と言っていたし」
『ふむ。確かにそう考えるのが妥当そうであるな』

 考えてみれば、初めから黒曜天母がほぼ答えを言っていた。

「ただ、パッと見、腐っている様子は見られないし、どうすればいいのだろう……」


 と、さらに戦士長を観察しようとして────眉間に皺を深く刻んで半目のバラムと“目が合った”。
感想 295

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)