おそらく、僕だけ違うゲームをしている。

鵩 ジェフロイ

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本編

178:今後の方針

 さて、これからどうしたものかと考えていたところで、シルヴァからウィスパーで呼びかけがあった。

『そろそろ良いであるか? 守護戦士長も目覚めて落ち着いてきたであるから、こちらに来て欲しいである』
『…………チッ。いいだろう』

 バラムは長く溜めてから言いつつ、僕を抱える腕の力が増す。

 ……確かに、サラッと3日目が終わって4日目になってしまっている。
 ずっと籠っているわけにはいかないか。

『ああ、すぐ出る。そっちを任せてしまってすまなかったな』
『クククッ、あの時の一番の脅威は夜狗の小僧の不満の爆発だったである。今の様子だと大分解消したようであるな、流石主殿である』
『いや、まぁ……とりあえず、そちらに行こう』
『うむ、待っているである』

 ということで……主に僕の服装が乱れているので、整えてここを出よう。

「よし………………バラム、離してくれないと動けないんだが……」
「…………」

 バラムの腕が僕を捉えたままで、身動きがとれない。バラムの方を見るが、微妙に目が合わない。

 仕方がないので、装備画面で装備し直して、一瞬で元のかっちり着込んだ状態になる。

「…………チッ」

 その様子を見て、ようやく腕の力を緩めてくれた。
 バラムも自分の装備を整えて用意をした後、僕のフードを持ち上げて被せてくる。


 その後、僕が《変化》して出ていくか否かでまた一悶着あったが、僕とフクロウの姿が繋がっていることをあまり大っぴらにしない為にも、この場は普通に《変化》せずに出ていくことにした。

 ……その代わり、常に僕を抱える、という条件を呑まされたが。

 この島の問題はほぼ解決したように思えるとはいえ、片手が塞がることに抵抗はないのだろうか? まぁ、バラムが良いなら良いのだが。


 ということで、ヒョロいとはいえ、大して小さくもない僕を軽々と片手で抱えたバラムと、抱えられている僕、というリアクションに困るだろう布陣で皆がいる場所に戻ったのだった。


 ────そして。


「これまでの無礼、何卒お許しを」
「「「「お許しを!!」」」」
「そして、我が母への献身感謝する」
「「「「感謝する!!」」」」

 洞窟から外へ出ると、完全な人の姿となったオセロットを始めとした、オセロットによく似た戦士達の一団に両膝をついた状態でこのように出迎えられてしまった。

 オセロットは胸に空いた大穴が何事も無かったかのように消失していて元気そうだ。黒曜天母が何かしただろうが、やはり元々の生命力があるのだろう。
 ……バラムの心の舌打ちが聞こえた気がするが、気のせいということにしておこう。

「ああ。こっちもただいきなり押しかけてきたようなものだから気にしないでくれ。誤解が解けて良かった」

 ここは素直に受けないと収拾がつかない気がするので、何故僕が異人代表のようになっているんだ?という疑問を呑み込んでアドリブで何とか対応する。

「もしかしたら彼の存在から聞いているかもしれないが、僕達はあと2日と半日ほど経ったら綺麗さっぱりここから去る。すまないが、その間だけこの島に間借りさせてもらえると助かる」

 僕達は完全にこの島という、多分だが神域にとって異物だが、ここにいる期間は決まっているし、迷惑をかける意志も無い事をアピールする。
 ……あとは黒曜天母が説教ついでにちゃんと説明してくれてたのかの確認も含めて。

「ああ、もちろんだ。母からもよく言い含められた。この島にいる間は不自由のないよう、歓待させてもらおう」
「歓待……あ、ああ。それではありがたく……」

 彼ら基準の“歓待”がどんなものなのか一瞬不安になったものの、黒曜天母はちゃんと僕達の状況や対応を好意的に伝えてくれていたようだ。

「それでは『異人』と言ったか。宴の準備が出来るまで好きに過ごしてくれ。何か助けが必要ならば我らオセロメーの戦士達に何でも言って欲しい」

 オセロットの言葉にプレイヤー達が色めき立つ。皆視線を合わせてどうしようか、と遠慮している風だったが……検証野郎Zがあっさりオセロメーに話しかけ、何処かへ行ってしまったので、そこからは皆それぞれに話しかけに行くようになった。


「ふぅ」

 うーん、これで僕の突発的なロールプレイのようなものも一段落ついたということでいいのだろうか。

『クククッ、中々様になっていたであるぞ、主殿』

 黒いフクロウ姿のシルヴァが飛んできて、僕の肩に留まる。

「こうなることを知っていたなら、事前に教えておいて欲しかったんだが……」
『新鮮な驚きや刺激を主殿から奪うのが忍びなかったのでな』
「……そうか」

 多分、僕とバラムが籠っている間、色々気を巡らせてくれていたのだろうし、まぁ、いいか。

「それにしても、宴までの空き時間か……僕達はどうしようか?」

 さっきオセロットに言ったようにイベント終了まであと2日と半日ほどある。
 事前のイベント説明文によると最終日は、それまでの進行具合を踏まえたクライマックスイベントが発生するとのことらしいので、実質1日と半日だろうか。

「うっ!?」

 そのように首を捻りながら思考の海に沈んでいると、突然、耳に熱い息と柔らかく湿った感触が襲い、体が跳ねる。

「また籠るか」
「んっ……そ、それは流石に……」

 僕の耳の奥に流し込むように囁かれた低い声に、思わず背筋が震えてしまうし、また体の奥が疼きだしそうな気配がしてきてしまっているが……。

「トウノ君、兄貴ー……って、やっべ。しくった」
「あちゃー…………むふふ」
「……出直そうか?」
「ピキュウ……」
「っ」
「……チッ」

 シャケ茶漬け達が声をかけてきたことで、我に返る。
 そうだ、今は皆の目があるんだった。

「うぅん……大丈夫だ。そうだ、オセロット戦の後、放り出してしまってすまなかった」
「気にしないでー。言うて私達もやること無かったしー。オトモダチとトウのんがホワホワしてるところが見れただけで満足!」

 そう言ってあぬ丸がとても良い笑顔でこちらに親指をぐっと立てる。……ホワホワ?

「多分、この島の主要な問題を解決しちまったんじゃないかなーってことで、このあとどうしようか軽く打ち合わせようと、思ったんだけど……」

 シャケ茶漬けが少し気まずそうに話を切り出してくれる。

「いや、僕もどうしようか悩んでたところだから、良ければ話し合いたい」
「そっか! じゃあ何処かで……」
「それならば、場と軽い食事を用意させよう」
「「「「!」」」」

 オセロットがごく自然に僕らの会話を受けて場の提供を提案してきた。
 ……まだいたんだな。……先ほどのバラムの囁きの部分も見られていたのだろうか……気まずい。

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」


 ということで、オセロットの案内でいつの間にか建てられていた天幕で軽食……というには大分豪勢な食事をつつきながら今後の予定を話し合うことになった。

 結果的には、この島での大きなイベントはほぼ出尽くしたのではという見解は皆同じのようで、残りのイベント期間は基本、好きに過ごすこととなった。
 ……検証野郎Zはもう何処かに行ってしまっているし。

 シャケ茶漬けは他に小さなイベントは無いか探索して回るそうだ。ジャガーの戦士……オセロメーの一人が名乗りを上げて、同行してくれるらしいとのことだった。

 あぬ丸と鍋の蓋もレベル上げをしつつ、動物や魔物を観察したいとのことで探索するらしい。……あぬ丸はオセロット以外のオセロメーからの好感度が異常に高く、誰が同行するかで争いになりかけたが、あぬ丸がそもそも同行を断ったことでことなきを得た。
 ……というか、ジャガー模様の猫、オンキラに負けたというべきか。

 オンキラの案内で色々見て回るらしい。屈強なオセロメー達の悔しげな視線をさらりと余裕の態度で流すオンキラ……彼らのパワーバランスはどうなっているのだろう?

 それで言うと僕は、探索にもそれほど食指も動かないし……何となくこのイベント期間中はもうバラムが僕に動いて欲しくなさそうなので、今後使えるか分からないが《ウロタワン語》の入門書でも作ろうか?
 などと考えながら、トウモロコシのような食材で出来た様々な料理に舌鼓を打った。


 ……ふ、《健啖》のおかげで満腹度をあまり気にせずたくさん食べれている。


────────────

次話更新は12月24日(火)予定です。
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