おそらく、僕だけ違うゲームをしている。

鵩 ジェフロイ

文字の大きさ
145 / 246
本編

179:そんな気軽な……

 その後各自解散となり、僕やバラム、シルヴァ以外はそれぞれオセロット達が用意する宴の時間まで探索に出ることになった。

 僕はそのまま天幕でバラムに抱えられながら《ウロタワン語》の入門書を《編纂》でチマチマまとめている。
 その過程で《慧眼》でこの島の植生や動物分布も情報が出て来て驚いた。

 ……そういえば《解析》時代も感知範囲全体に技能を使うことは出来たので、上位技能だろう《慧眼》で把握出来るのは当然か。

 そして《慧眼》がこの地を統べる存在由来の《黒曜の眼》が元となっているからか、ここに来てから妙に軽い情報しか得られなかったものが、通常の空間並みに情報が得られたりしていた。

 ……それにしても。
 何となく動物分布の量が多いし、今も少しずつ増えているのは一体……と思ったが、もしかしてあぬ丸の《解析》状況を反映して……いる……?

 うぅん……《底根の根》といい《慧眼》といい、僕の手に負えるか怪しいものが大分増えてきたな……あんなに様子のおかしい技能だった《編纂》や秘技がやや大人しく感じてしまうほどだ。

 などと、少し遠い目になりながら《編纂》を続け、久しぶりに各種◯◯学系技能に大きく経験値が入った。地味に美味しい。



 途中、魔楽器パーティの面々がやって来て、この後の宴でも演奏をするつもりだとかで、僕も一緒に加わらないかと誘われた。
 ……前回はその直後に巨大ジャガー姿のオセロットが乱入してきたが……まぁ、もう大丈夫だろうと了承した。

 その後そのパーティメンバーと、カカオ風味の飲み物を飲みながらもう少し話をしてみると、早く王都か職人の町へ行って、現実の世界にあるようなエレキギターなどを作れないか注文したいが、魔楽器オンリーパーティなので、カトル周辺でもまだまだ苦戦していて辿り着くのはいつになることやら……という話になった。

 …………そういう新しい魔楽器作りにとてつもなく食いつきそうな職人を知っているが……何なら始まりの町にいるが……。
 ここで紹介すれば、まだまだ始まりの町では駆け出しのグウェニスをかなり応援出来るだろうが、気軽によく知らないプレイヤーに紹介していいものか迷う気持ちもある。

 うーん……その後ちゃんと確認はしていないが、カーラのところに商売などの相談をしに行ったのなら、カーラかもしくはギルドを窓口にして審査してもらえば問題無いだろうか?
 仕事を増やしてしまうので、そこはイベントが終わったら相談しに行こう。

 そして、魔楽器パーティにはとりあえず彼らが行ける範囲でもしかしたら魔楽器を作るアテがあるかもしれないがどうか、と持ちかけてみる。
 ……魔楽器をかき鳴らして感謝された。

 まだ全く確定ではないので、あまり期待しすぎないで欲しいと伝えたのだが……耳に入っているか怪しそうだ。

 何とかイベント後も連絡がとれるように、全員とフレンド登録することが出来た。
 フレンド登録が終わると、演奏欲が掻き立てられたのか、そのまま演奏しながら天幕の外へ行ってしまった。
 ……なんか、自由な人たちだ。


 そんなこんなと過ごしている内に宴の用意が出来たと、オセロット直々にその会場へ案内される。

 うぅん、僕達だけ妙に恭しくされている気がするが……まぁ、いいか。

「おぉー、豪勢ー!」
「流石にテンション上がってくんなー!」

 探索に出ていたあぬ丸達も戻って来ていて、宴の会場の華やかさに感嘆していた。ちなみに、検証野郎Zは戻って来ていない。

 確かに、これと比べたら天幕での食事は『軽食』だったなと思うほど、ここにいるプレイヤー全員をもってして食べきれないほどの料理や果物が山と並んでいる。
 それに極彩色の花や鳥の羽が会場のいたるところに飾られていて、より華やかに豊かな雰囲気になっている。

「貴殿らはこっちだ」
「……えっ」

 周囲をキョロキョロと見回す僕達にオセロットがそう言って案内したのは、会場の一番奥の中心で一際スペースがとられ、飾りたてられた……どう見ても主賓席だった。

「どうした?」
「……僕達はただ一時お邪魔している異人だし、こんな席は恐れ多いな、と……」
「母はトウノ達をこの席に、と」
「……」

 どうやら黒曜天母からのオーダーらしい。そして、出会った時から薄々感じていたが、オセロットは相当『母』黒曜天母の事を敬っているらしく、「母からの誘い、断らないよな?」という圧力を感じる。
 ……マズい、その圧に反応してバラムの機嫌が下降気味なので早く返答しないと。それに、黒曜天母のお招きとあらば、応えないわけにはいかないだろう。

「そういうことであれば、厚意に甘えよう」
「よし」

 僕の返答にオセロットは満足そうに頷くと、何処かに行ってしまった。

「ふぅ」

 ……何らかの選択肢を制限時間内に選ばされている感覚だった。

「トウのん、お疲れー! とりあえずベターな選択肢選べたんじゃなーい?」
「……あぬ丸もそう思うか。まぁ、それなら良いんだが」

 とりあえず、それぞれ主賓席エリアの椅子に腰を下ろす。………………僕はバラムの足の間に座らせられたが……これで、いいんだろうか。……そういえば、外に出てからずっとバラムに抱えられているが、誰も気にしていないのは一体……。

「それにしてもその『母』ってトウノ君とシルヴァパイセンは会ったことあるんだろ?」
「そうだな」
『我は似姿の依代を目にしただけで会ってはいないであるな』

 そういえば、多分本体?と会ったのは意識だけ転移させられた僕だけだ。

「あ、そうなんすか。いやぁ、せっかくだし、どんな姿か見てみたかったなーって」
『妾ノこトカ?』
「まぁ、そうだな。…………ん?」

 ……今、何かここで聞こえるわけが無い声が聞こえたような…………いや、よく意識したら、少しズレた空間に何かいる。

『トウノ、其方ノ根を少シ出しテクれなイか? ソうすレバ、僅かニ顕現出来るハずダ』
「…………」

 “顕現”……こんなところでして良いのだろうか。というか、僕の根で顕現出来るってどういう……?
 ……うぅん、仕方ない。

「皆、今から多分、黒曜天母が顕現するみたいだ」
「「えっ!?」」
「はぇー、結構フットワーク軽いんだねぇ」
『ほぅ!』
「お前……」

 一応、根を出す前に皆に伝えておく。バラムの腕が締まってちょっと苦しいが、不可抗力なんだ……と見つめると緩めてくれた。許された。
 とりあえず、待たせるのも少し怖いので、やってみよう。

 今演奏するわけにはいかないので、とりあえず《編纂》でその辺の地面に〈我が力を与えん〉を注ぎ込む。……途中で「浄らかなやつも」と要望を受けたので〈汚れを濯ぐ〉も追加して、今回大活躍のハイパワー浄化セットを地面に注ぎ続ける。

 すると、地面を割って黒い根が出てきた。《演奏》をしないで素でやってみるのは何気に初めてだったが、上手くいったようで良かった。

 そして、ある程度根が出てきたところで、根が不自然な動きをしだす。
 ウネウネ、グネグネと絡み合ったり、解けたりを繰り返してやがて動きが止まるとそこには────。


 黒い根で出来た猫が鎮座していた。
感想 295

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)