サンタとサンタで大さわぎ

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サンタとサンタで大さわぎ

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サンタとサンタで大さわぎ

クリスマスの夜、町をおおう雪はふわりふわりと舞い、静けさの中で鈴の音がかすかに響きます。

その夜、リクの部屋では、小さな灯りだけがぽうっと灯っていました。
そして……まさかのことに、サンタがふたりもやってきて、大さわぎが始まろうとしていたのです。

窓から、まるいお腹の ふとっちょサンタ がよっこらしょ、と忍び込みました。
「ふぅ……なんど来ても、窓はちとせまいのぅ」
大きな袋をツリーの下に置き、満足げにうなずきます。

ドアから、背がすらりと長い ほっそりサンタ が入ってきました。
「ふむ、今年の階段はやけに長かった……おや?」

部屋にサンタがふたり。
ふとっちょサンタも、ほっそりサンタも、目をまんまるにしました。

「これはどういうことでしょう?」
「いやいや、こちらが聞きたいくらいですぞ」

ふとっちょサンタ はにこにこと言いました。
「さあ見ておくれ、リクくん!
このペンケースは、ふたを開けたら知恵がぽんっ(パチン)とひらめきが湧くんじゃ!
勉強だってすいすいじゃ!」

ほっそりサンタ も負けじと答えます。
「いえいえ、リクくん。
この魔法のくつは、とにかく軽い!
「はけば、校庭五周なんてひとっ走り、スーッと走れますよ!」

リクは手を広げて、目をキラキラさせながら言いました。
「うーん……すごいけど、なんだかちょっと物足りないなあ……」

ふとっちょサンタは袋を「ゴソゴソ」とまさぐり、
ほっそりサンタは袋を「カサッ」と揺らしました。

「ならば、これもつけちゃおう!」(バサッ)とふとっちょサンタ。
「こちらも追加だ!」(カタカタッ)とほっそりサンタ。

リクは声を張りました。
「わー、すごい! でも……もう一声!」(パチパチパチッ)

ふたりのサンタは笑い、さらに競い合うように追加プレゼントを出します。

「これもつけるぞ!」(ドンッ)
「こっちもだ!」(ザッ)
「まだまだ、これもこれも!」(カラカラッ)
「負けませんよ、あれもこれも!」(パタパタッ)

リクは掛け声をかけながら跳びはね、笑い声をあげます。
部屋はまるで小さなお祭りのように、賑やかで弾む音にあふれました。

しかしあまりの魅力に、リクはとうとう頭をかかえました。
「うーん……どっちもほしい……どっちもすっごくほしい……」

ふとっちょサンタとほっそりサンタは腕を組んでうなりました。
リクはにかっと笑いながら言いました。
「じゃあ、ふたつとももらっちゃおう!」

ふたりのサンタは顔を見合わせ、ぱっと手を打ちました。
「もちろん、よいとも!」
「そうそう、ほしい物ははっきり言えるのがいちばんです!」

こうしてリクは、魔法のペンケースと魔法のくつのふたつ にくわえ、
おまけの「いろいろ」までもらってしまいました。
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