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私は、秘匿された存在…聖女だ。
聖女は、この国に一人しかいない。

だけど、目の前には…私の妹が聖女だともてはやされている。
何故??

小さい頃に妹が「私は聖女なの!」と言った。
その頃は私もあまり聖女についての知識がなかったから、「そうなんだ。」と返していた、けれど。
周りの大人は、「聖女がこの家から生まれたぞ!」と大騒ぎ。
それから私も聖女の能力を知って、
(…あれ?もしかして聖女って私じゃない??)
と思うようになった。
誰にも明かしていないが、聖女は私なのだ。
今更何を言っても遅いと思い、私は黙っていることにした。

…妹が聖女だと言われるのはいいのだけれど、妹がもてはやされすぎて、近頃傲慢になってきている。
服を盗られたり、昨日なんて使用人がご飯すら用意してくれなかった。
きっと妹の根回しだろう。

(…それぐらいなら、我慢できる。)
そう思っていた矢先だった。

「ねぇ~!!お姉さま?」
私が自室で読書をしていると、妹が来た。
だが、私の婚約者も連れている。
「どうしたの?」
そう私が聞くと、妹は
「ごめんなさい、お姉さま!!
お姉さまの婚約者と、相思相愛になってしまいましたの!!」

…はあ。
いつかはやると思っていましたが、こんなに早いとは…。
最近、婚約者と仲が良いのは知っていた。
だけど、私の婚約者に手を出すほど、貴方も馬鹿じゃないと思っていた。
そう思っていた私が馬鹿だったのかしら?

しかも、『相思相愛』って。
わざとらしいわね。

「…そうなの。
じゃあ、私が婚約破棄すればいいの?」
もう諦めはついている。
私が我慢すればいいだけの話だ。
いつか、この家を出ていくから。

「本当にごめんなさい!」
妹は、頭を下げた。

だが、単純に頭を下げたわけではなかったのだ。
頭を上げる瞬間に、私に小言を言ってきた。
「ざまぁみろ、お姉さま」
と。
そうして貴方たちは去っていった。

さすがの私も頭にきてしまった。
さっきの思っていたこと、撤回する。
『いつか』家を出ていくんじゃなくて、『今』家を出ていくことにする。
あとは勝手に貴方たちで破滅してもらいましょう。

家を出ていって、この国で生きられる保証もない。
だから私は、他の国で聖女だと身を明かして、保護してもらうことにする。
そっちの方が待遇もいいはずだ。

そうと決まれば、さっそく家を出て行こう。
婚約者はあっちの国でまた見つけることにしよう。
聖女である、本当の私を愛してくれる婚約者が、いるといいな。
もう、何も我慢しなくて済むような、婚約者を_
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