私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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1章

7話「国王からの厚い信頼と前騎士団長からの信用」

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 ティクス国国王、ケンベルト国王の執務室には前聖騎士団団長であり、今は国王直属の補佐官として傍仕えしているロゼットが姿を見せていた。ケンベルトの仕事の粗方のスケジュールを把握し、それに伴って仕事の調整を行うのが補佐官の主たる仕事でもある。
 ケンベルトは机に向かってカリカリと書類仕事を行っている横でロゼットは終わった書類を纏めて提出する部署ごとに分けていた。そんな沈黙が部屋を支配していたが沈黙を破ったのはロゼットが書類を分けていた時にケンベルトが懐かしそうに思い出し笑いをした事がキッカケであった。
「ふふっ……」
「どうされましたか陛下?」
「うむ。昔、俺がまだ王子の頃だった時にランスロットが今のロゼットの様に宿題だったプリントが終わったのを散らかしていた時に纏めて仕分けてくれていた事を思い出してな」
「それは古いご友人であるとはお伺いしておりましたが、そこまで長いお付き合いだったのですね?」
「あぁ、長さで言うのであれば軽く20年は付き合いは続いているぞ。ランスロットが7歳、俺が9歳の頃に出逢ったからな。出逢いはお前達が思っている以上に意外ではないんだが」
「それはどの様な出逢い方をされたのですか? 差し支えなけれぼお伺いしたい所ではありますが」
「うむ。俺が9歳の頃にエルンシア家の没落が決まり国からエルンシア家が消えた事がキッカケであった。父親同士の挨拶に同席した時にランスロットの姿があった。父親がランスロットの成長を促す為に俺との付き合いを勧められてからが交流を持ち始めたのだよ。最初から俺はランスロットの事を弟の様に思っていたのだがランスロットは一国の王子だと思って礼儀を持って接していたんだが、俺がそれをぶち破ったのだがな。ははっ」
 ケンベルトは大笑いしながら洋紙に羽ペンを動かしていた。ロゼットはケンベルトの昔話を聞いて不意にランスロットの過去について自分なりに色々と知らない事が多い事に気付く。
 ケンベルトはロゼットの様子に気付いてクスクス笑いながら自分の記憶にあるランスロットの過去について話をする事を考えていたが、ロゼットの質問に驚きを示す。ロゼットの質問とはこうであった。
「陛下はランスロットの生家であるエルンシア家の事は何かしらご存知なのですか?」
「エルンシア家は聖なる武器である「アルボリス」が国内から消えたのが原因であるのと、父親と婦人の間に子供がランスロットだけだったのも引き金になっていたそうだ。だが、お前も知っているだろうが、ランスロットには妹の存在がいる。その妹の存在が没落から再興する条件として俺の父親が出したのは……「アルボリス」の発見と守護をする事だ。だが、あくまでそれは前提条件としての建前であり本当の条件は妹を見つけ出してエルンシア家の権力を回復させる事だ」
「それではその1つとして団長に勧めたのはそれも含めているのですな?」
「いや、正直ランスロットの腕前を知っているから腐らせたくないと思ったまでよ」
 ロゼットもそこは同意出来ると思った。ランスロットの性格を熟知しているケンベルトの判断はまさに適格だと思えたからだ。
 ロゼットの脳裏にはランスロットの団長として執務に取り組む姿や政策の取り組む姿の評価についてはロゼットの耳にも入ってきている。その評価は思っている以上に厳しい人間達が多い城の人間達からの評価であるので手厳しい筈なのだが、あまり厳しい声は聞こえてこない。
 ケンベルトとロゼットの見解としてはランスロットの評価は予想以上に高評価だと思っている方だ。だが、2人からしたらこれはまだ序の口だと言える。
 ロゼットは洋紙から羽ペンを外すと少し息を吐き出すと同時にロゼットの他に控えているメイドに紅茶を頼んだ。ロゼットは書き終わった書類を纏めてから紐留めしてからケンベルトに一礼して執務室を後にして、自分の執務室へと戻って行く。
 途中ですれ違う兵士達に敬礼を受けながら自分の執務室に戻って椅子に座ってケンベルトのスケジュールを確認していた時だった。ノックに気付いて顔を上げたロゼットは入室を許可する言葉を出す。
「入りなさい」
「失礼します。騎士団からの報告書をお持ちしました」
「ご苦労様。何か気になる部分はあったかな?」
「はい。新体制を築いてからで問題点の洗い出しをしている様なんですが、新人達の下で従っている騎士達から不満は出ているかと思いましたがその様子も見られないので上手く動いている様でございます」
「順調に活動をしているようだな。ランスロットは何をしているか知っているか?」
「ランスロット団長は新役職に就いた騎士達のサポートをメインに色々と微調整している様でございます。やはり人格者としてもそれ相応の実力を活かしている、と見受けられます」
 報告書を持ってきた部下にランスロットの動きを聞いているロゼットは報告してくれているこの部下から見えているランスロットの様子を想像してみた。この部下は城内でもロゼットを強く慕っており、新団長であるランスロットの配下になるのを拒んでまでロゼットに付き従う事を望んでいた程である人物である為にランスロットへの評価は厳しい方だ。
 この部下からこうも評価がいい事を聞くとロゼットはランスロットの事を信用して良かったと思ってしまう。ケンベルトの信頼もこの部分から来るのだろうとロゼットは考えていた。
 部下が報告書を置いて退室してからロゼットは極秘に城内でも有数の人材を有する部署に依頼書を作成する。内容は聖なる武器である「アルボリス」の行方を追う為の人材派遣と騎士団のサポートを影ながらする事の内容である。
「これで俺からの支援としては出来る事はしているが……、ランスロットの力で何処まで今後動けるか見守るしか出来んが。だが、陛下の信頼と俺からの信頼があるだけで動ける事は限られてしまうけれどな……」
 ロゼットの呟きは誰に聞かれるでもなく部屋の中で消えてしまう。そして、ケンベルトの執務も終わって自室に帰ったケンベルトは自分の部屋の中で1冊の本を取り出して椅子に座って読んでいた。
 その本には幼い子供の手で書かれた言葉の小説が残されているのが伺える。その小説を読みながらケンベルトの脳裏にはこの小説を書いていた頃の自分とランスロットの姿が浮かんでいた。
『俺はこの話はかっこよく終わらせるんだ!』
『ケンベルトのお話はいつもそんな終わり方だよな。俺はもっと幸せな話にしたいよ』
『ランスロットの話は綺麗過ぎるんだよ! もっと男ならバトルとか書かないとつまらないだろう!?』
『いいんだよ。だって誰かが悲しむお話は辛いじゃないか』
「今思えばランスロットは自分以外の者達が悲しむ話を好まなかったな。それがあの男の美点とも言えるのだけれどな」
 ランスロットの優しさを知るケンベルトだからこそ、ランスロットが成果を上げるは嬉しいと感じているし思うのだ。だが、ランスロットの活躍には必ず犠牲が付き物になる事を誰よりも心を痛める事を知っているのもケンベルトであった。
――――
「陛下からお呼び出しですか?」
「あぁ、何でもロゼット様も同席されるそうだから重要な話なんだろうなと思う。だから少し席を外すが暫く頼めるか?」
「分かりました。ではその間の執務は処理しておきます」
「ロルゾ達も来たら席を外している事を伝えておいてくれ。それでは行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
 団長室から出て行くランスロットを見送り、ローレンスは席を外している間の執務を引き受けた手前仕事は片付けて行く事を優先する。こうやってケンベルト国王に呼び出しを受けるのは友人としての関係を超えて主従関係も構築しているからだと理解しているからだ。
 ランスロットが玉座の間ではなく、ケンベルトの執務室に姿を見せるとロゼットも既に来ていた。ランスロットはロゼット以外の配下がいなかったが公式の場だと思って礼儀を尽くす様に一礼する。
「堅苦しい話はする気はない。ランスロット、実は折り入って頼みがある」
「これは騎士団の表立って動かす事の出来ない事である。だから精鋭を選抜して進めてくれると助かる」
「……極秘の用件、って事か。俺に判断出来るならいいんだが」
「ロゼットの頃から極秘に動かしていた案件でな。それで今のロゼットの力を使ってギリギリの場所まで進めたが決定的な一打が欲しい」
「詳細はここに書いてある。あくまで俺と陛下、そしてランスロットの胸の内に秘めておくべき案件である」
「分かった。読ませてもらう」
 ケンベルトとロゼットの言葉に従って記された書類に目を通すランスロットの眉根が寄る。2人が胸の中に留めておいて欲しい、そう言った理由をこの時点で理解してしまう。
 書類を読み終えたランスロットはその書類は近くの暖炉に投げ入れて燃やしてしまった。そして、振り向きケンベルトに真っ直ぐに向き合った。
「これは……お前の為でもあるんだな?」
「俺はこの事について色々と手を打ってきた。だが結果として最悪の結果になった……俺の身を護る為にも必要な事だ」
「そして、同時にティクス国の地盤を揺るがす事になる。これは見過ごす訳にはいかない案件だ」
「……分かった。この件に関しては俺の判断で処理する。どんな手段を用いても成功させる。それが……俺のケンベルトへの恩返しだ」
「すまないな。だが、お前に賭けるしかない」
 ケンベルトの言葉にランスロットは重々しく頷いて執務室から出て行く。ランスロットの手に任されたのは……ケンベルトの弟であるガゾルゾ王子の暗殺であった。
 王族同士の争いはよく聞く話ではあるが、このティクス国は王位継承権争いで既に6人の王族がこの世を去っている。ケンベルトに落ち着く事になったのも影で暗殺が行われてケンベルト派の者達による牽制が入ったからだと言われている程だ。
 だが、今の国王であるケンベルトに身の危機が迫っていると言うのであればランスロットには迷いは無かった。そう、それがケンベルトを守る事に繋がると信じているから――――。
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