私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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2章

9話「新人騎士募集案件」

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 ランスロットの考えていた改革の2段階目の政策として打ち出された「新人騎士募集」についての詳細が騎士団の掲示板に告知された。主だって見ていたのは役職に就いていないベテランの騎士と選抜戦にて惜しい結果に終わった騎士達が多かった。
 今までの騎士団のままであれば新人の騎士になれるのは貴族の次男や末っ子、それか貴族の後ろ盾を持っている実力者達だけであった。だが、今回の告知で書かれている条件は「実力・才能・知力を持つ身分の関係ない者」と書かれていた事もあって、市民からの応募も受ける事になっている事を話題性を呼んだ。
「今年からこの方法で新人を集めるのであればこれはうかうか出来んな」
「選抜戦のレベルも底上げされる事になるな。これは気を引き締めて訓練に取り組む事になりそうだ」
「市民からの応募を受けるのであれば実力もだが、市民からの注目度も上がる。俺達既存の騎士の品性も問われる事も考えないといけないか」
 騎士達の殆どがこの新人募集には好意的だったが、選抜戦で勝ち残った役職組はてんやわんやの仕事をしていた。役職組は新人の騎士を扱う事になる者達はランスロットの指示の元、試験内容の構築や募集文の作成を行っていたのである。
 役職組の大半が新人でもある為に苦戦しながら仕事に打ち込んでいる者達で溢れていた。そこにサポートとして役職経験者で選抜戦で残れなかったベテラン騎士達の出番である。
「団長にお取次ぎ願います」
「おー、少し待っててくれ。今他の騎士が来ててな」
「お前の順番まで少し掛かるから紅茶でも飲んで待っててくれ」
「えっ、そんなに騎士達が来ているのですか??」
「お前で今日で8人目だ。全員同じ理由で面会に来ている。お前も新人騎士募集の仕事内容の確認で来たんだろう?」
「自分はローレンス様に頼まれていた新人騎士の宿舎確保の許可書をお持ちしたんです。
団長のサインがされないと予算の決算が進まないと言われたので」
「あ、なら急ぎだな。じゃあランスロットには次に会ってもらえる様に頼む。ガルドに書類のミスがないか確認してもらってくれ」
 応接室にて本日8人目の騎士とのやり取りを終わらせたロルゾは団長室に入って丁度面会が終わったタイミングだったのか、来ていた騎士が出てくるのに鉢合わせた。騎士を見送り急ぎの面会が入っていると伝えるとすぐにランスロットは通す様にロルゾに頼む。
「急ぎとなるとサイン関係か」
「恐らくこの後はサイン関係の面会が主になると思われます。そろそろ新人役職者達にはベテラン騎士達のサポートが入る様にハルウッドが手配してくれていると思いますから。慣れている騎士達が仕事の最終確認も済ませてサインを貰いに来る頃でもありますからね」
 ローレンスの言葉通り、8人目の騎士から差し出された書類にサインをしてからは1時間ごとにサインを求める騎士の面会が断続的に続く。ガルドが書類の不備がないかをチェックし、ロルゾは面会者のリストを埋めて行き、ハルウッドが騎士達のサポートの手配をし、ローレンスはランスロットのサポートで回っている。
 新人騎士の募集文を作成担当していた騎士が一度面会に来たようだがガルドから指摘された部分の修正をしてきて再度面会に訪れた事を聞いて、その騎士がエンドルだと知ってランスロットは少し期待していた。エンドルは先の選抜戦でかなりの実力を示して見事役職に配属された新人の騎士である。
「失礼します!」
「入りなさい。募集文は出来たかい?」
「はい! ガルド先輩に不備が無いか確認してもらい、ご指摘もあったので修正して通してもらいました。ですが、まだ自分は文章が得意と言う訳ではないので団長から見てダメならもう一度考えます!」
「ふむ、それでは見させてもらおう。読んでいる間にローレンスに仕事の進捗を報告してくれるか?」
「はいっ!」
 ローレンスに差し出されたエンドルが書いた募集文を受け取り読み始める。その間にローレンスにエンドルは仕事の進捗を真面目に報告していた。
 正直、文章自体は幼い印象を受けるものの要点もしっかり押さえているし、分かりやすさは評価が出来る。何より新人募集に込められた熱意をしっかり感じ取れるだけの出来栄えではあった。
 読み終わる頃には報告も終わったのか静かにランスロットの言葉を待つエンドル。ランスロットは募集文の洋紙をローレンスに差し出してローレンスにこう指示を出す。
「この文章を告知に使用する様に手配を頼む。これだけの熱意を感じる文章を作成した事は評価を与えていいだろう。エンドル、君はまだ新人の隊長でありながらも真剣に全力で仕事をしているのは報告にも上がっている。これを元に隊長としての自覚もしっかり育み、今後も励んで欲しい」
「あ、ありがとうございます!!」
「エンドル、貴方には次に他の隊長達のサポートをお願いする事になります。主に新人騎士の試験内容の構築を担当している騎士の補佐を頼みます」
「分かりました! 俺で出来るサポートしてきます!」
「うむ。これからの成長を期待しているよ」
 エンドルが嬉しそうに敬礼して退室した後、ロルゾとガルドが今日の面会者を打ち切ったと知らせに来たので、ランスロットは今日面会で把握した進捗を纏めに掛かった。ローレンスにも手伝ってもらって仕上げた書類をロルゾとガルドに持たせてロゼットに届けさせる。
 ハルウッドがそこに戻ってきて新人騎士試験会場の確保が出来た事を知らせてきた。着々と準備が整い、この新人騎士の募集を行う事になったのはランスロットが団長に着任したのが27歳の頃で募集を決めたのはそれから5年後の32歳の頃だった。
 まずこの新人騎士募集にかなり時間を掛けたのは、そう簡単にティクス国の全体的な政治的意味で決定が出来なかった事も時間が掛かった理由になる。ティクス国の隣国である「ディズ国」、この国との間に結んでいた協定がある時一方的に破られたのである。
 その結果としてティクス国とディズ国は一時的に緊張感が高まり、いつ戦争に発展してもおかしくなかった。その為にいつ戦争が起きる事も考えて騎士団もこの5年間緊張感に包まれて新人教育など進まないし募集に許可が出る事もなかったのである。
 5年の時間を使って再度協定の復活を担当していた外交官達の努力が実り、再協定を結び一応ではあるが平穏な時間を取り戻した事で新人騎士募集を行う事が決めれたのである。だが、この募集は市民の間ではかなり噂が飛び交う事になる。
 新人騎士を集めるまでに騎士団の戦力が低下している、とか新人騎士を戦地に送って騎士達の消耗を抑え込む目的だ、とかのあまり喜ばしい噂は流れなかった。だが、告知をした文章に書かれていた内容にはそんな噂が流れていたとしても、市民達にはかなりの好条件の魅力には変わらなかった。
「告知後の市民からの応募数は予想を下回るか?」
「それが逆だ。予想の倍は応募者がいる」
「それもこの騎士募集には性別は問わないと言う条件も記して事もあって女性の応募者も多いと聞いています」
「女が騎士に憧れているのもあるが、大方結婚を視野に入れている女が多数だろ」
「ですが、貴族の人間達からの応募は前年の人数を下回っています。純粋に市民の方々の意識が高い事も伺えます」
「女の応募者がいたとして試験内容には変更する予定はない。騎士団に入れば部屋や風呂は別にする配慮はするが訓練内容や任務内容は平等だ。それは自ずと分かる事だ」
「今後の定期的に行う募集で有能な人材を選抜する意味も含めて、試験内容は毎年更新していく必要がございますね」
「前回の試練で落ちた奴も再度受けて実力を出せれば合格出来るシステムだしな」
「試験管の忖度が出ない様に気を付けねぇとな。賄賂とか有り得ない話ではないからな」
 ガルドの言葉にハルウッドとロルゾが真剣に頷く。その点についてはローレンスが既に先手を打っている事をランスロットは知っていた。
 ランスロット達が考えていた頃、募集文が書かれた看板を見ていた1人の子供がいた。ブルーの髪の毛を高い位置に纏めて結んでいる少女が1人。
 募集文に書かれている条件を読んでいた少女は読み進めて小さくため息を吐き出す。条件に書かれている最低条件は年齢が13歳以上である事。
 少女はこの時点で11歳であり、条件に書かれた年齢を満たしていない事で応募出来ない事を知る。だが、募集文を告知した看板には最後の方に毎年開催予定である事が記載されているのに気付いた少女は瞳に強い決意を秘めてその場から立ち去った。
 新人騎士募集の試験開催まで半年が設定されている。初めて行われる募集ともあって応募者の数が想定以上でもあった為に受理する時間が必要だと分かって市民には最終的な開催時期を再告知する事で知らせる事になった。
「それで最終的な人数の確認は?」
「今ハルウッドとローレンスが最終結果の報告をしている筈だ。だが、ここまで関心が高いと下手な人材が集まる可能性も高いんだよなぁ」
「試験管になる隊長達には充分見極める事を伝えているから振るいは出来るとは思うんだけれどな。さて、俺もそろそろ本職を頑張りますか」
「試験開始の時期がまさか風土病に掛かる時期に重なると思わなかったが、風読み師は責任重大だな」
「本当だぜ。でも、風読み師の本領発揮出来る時期でもあるからな。俺の読みで少しでも新人試験の時に風土病が流行らない様に調整するさ」
 ロルゾは普段は着ない風読み師の正装着を着込んで仕事の準備をし始める。ガルドはロルゾの準備が終わって応接室を出て行くのを見送ってから団長室に入って行くとローレンスとハルウッドと共にランスロットからの指示を受けていた。
 ローレンスとハルウッドが受けたのはロルゾの風読みで予想される風土病への対策部署へのサポートだった。ガルドが入ってきたので2人は入れ替わりに団長室を出て行く。
「これから忙しいな」
「まだ序の口の忙しさだ。だが、ロルゾが部下としてサポートしてくれるから風土病への対策も組める。俺は人材に恵まれている」
「ははっ、それじゃ俺もそろそろ役に立たないとな?」
「ガルドの立場としては俺の護衛が最適じゃないのか?」
「そうだ。だから行くんだろう? 試験会場の下見に」
「見抜かれていたか」
「伊達に親衛騎士としてハルウッドと傍にいる訳じゃないからな。お供する」
「それじゃ急いで向かおう。夕方には戻りたい」
「なら早馬を用意するか」
 ガルドを連れて試験会場の下見に出たランスロットは試験会場を下見して思う。これからの騎士団の未来を――――。
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