私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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3章

26話「あなたの笑顔が何よりも愛おしい」

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 ランスロットの42年間の人生でアレスと言う存在をこんなにも愛おしく感じるのは兄だから、と言う訳ではないと考えている。兄だけの感情だけで言うのであればアレスを女として見たりする事も無かった筈であると冷静に考える事が出来るからである。
 だが、今のランスロットとアレスの関係は家族を超えて正式に恋人の状態である事がランスロットの中では重要な位置にあった。誰よりも傍にいて、誰よりもお互いを見つめ合い、誰よりも愛し合う。
 それがランスロットの中で大きな希望の光となって支えている事は明確である。限りある人生の中で、こんなにもランスロットの全てを支えられる存在は妹であり恋人であるアレス以外にいないと本気でランスロットは考えている。
「ランスロット、今日は1人か?」
「あぁ、アレスは城下の見回りの隊に入っている」
「そうか。それでいつ式を挙げるんだ?」
「何故そんな話になる」
「だって、いつまでも恋人のままじゃアレスが可哀想じゃないか。まだ華の20歳だぞ」
「それは……そうだが」
「アレスにだって憧れだってあるだろう。ウェディングドレスを着て愛する存在であるランスロットの妻になる事は女のアレスには最大の憧れじゃないのか?」
「……」
「お前は男だから歳を重ねても問題ないだろうが、アレスは女。適齢期に入りつつある女だ。ちゃんと形にしてやらないと不安を覚えて1人で抱え込むからなアレスは」
 ロルゾの言葉にランスロットの心にも不安はあるのが分かってしまう。アレスは自分の伴侶として一生を過ごす事に何か考える事があるのではないだろうか? そう考えると中々結婚についての話題を出す事が出来ないでいた。
 それだけではない。ケンベルトとロゼット、ロルゾ達にはアレスとの関係は話を正式にしているが他の人間達には一切その様な事を伝えてはいない。伝えた結果、ランスロットを責めるのは構わないがアレスを責める事があればランスロットの怒りを買う事も知ってもらわないといけない事も踏まえて公表するタイミングを逃していたのである。
 ロルゾがそんなランスロットの不安を見抜いて小さく笑ってランスロットの右肩をバシンと叩いてある事を教えた。それはロルゾやハルウッド、ガルドやローレンスが影でランスロットとアレスの為に行っていた事の成果についての報告でもある。
「ランスロット。安心しろ、騎士団は全面的にお前達を祝福するよ」
「どういう意味だ?」
「影ながら俺達が騎士団の面々にお前達の関係について話をしていた。殆どの騎士達は驚きはしたが嫌悪感どころか祝福する方面で喜びまくったよ。アレスの事を幸せにしてやらないと騎士団の全員から恨まれるぞ」
「……色々とお前達にも世話を掛けていたんだな」
「俺達が好きでしていた事だ。それにアレスのウェディングドレスは俺達も見たいのさ。兄みたいに慕ってくれたアレスの晴れ舞台を見届けて幸せになってほしい。俺達の妹でもあるんだからなアレスは」
 ロルゾの嬉しそうな言葉にランスロットも微笑みを浮かべる。いつだってこの仲間達は自分を見ていたから分かってくれる。
 本当に必要ならその手を引っ張って光へと導いてくれる事を。ランスロットはロルゾの腹に軽く右手を握り締めた拳をぶつけて笑いながら告げる。
「なら、アレスとちゃんと話し合って式の日取り等を決めないとな。お前達がアレスの事を幸せにしないと怒る事もしっかり伝える」
「そうしてくれ。陛下やロゼットもきっと歓迎してくれる」
「あぁ、そうだな」
 そこにハルウッドとローレンス、ガルドも合流してロルゾが今までの話をすると3人も心からランスロットに祝福の言葉を掛けてくれた。そして、その日の夜になって下城したランスロットとアレスは食事を摂って食後はアレスの部屋で過ごす事をしていた。
 アレスはランスロットの胸に寄り掛かり最近読む様になったティクス国の小説を読み込んでいた。ランスロットはアレスを感じながら持ち帰っていた仕事の書類を読んでいる。
 そんな時間を過ごしている時にアレスが少し身体を動かして口元に両手を持って行き小さなくしゃみをする。寒いのだろうかとランスロットが顔を覗き込むと照れたアレスは顔を隠してしまう。
「隠さないでいいだろう」
「恥ずかしいの。くしゃみしただけなのに」
「寒いのかと思って見ただけなんだが」
「寒くはないよ。ただ、少し鼻がムズムズしちゃって……。そろそろ休まないでいいの? 明日はランスロットは会議が朝からあるんじゃない?」
「そうだな……、アレス」
「なぁに?」
「少し真剣な話をしてもいいか?」
「真剣なお話? それじゃちゃんと聞かないとね」
 胸に寄り掛かって聞いていたアレスは身体を起こして向き合う様にしてベッドの上に座り直す。そして真剣な表情を浮かべてランスロットの瞳を見つめてきた。
 ランスロットも体勢を整えて、向き合うようにしてからアレスの瞳を見つめる。お互いに見つめ合っているがランスロットの右手がアレスの右頬に触れて優しく撫でると同時に話を切り出す。
「アレスの理想の未来を聞きたい」
「私の……理想の未来?」
「あぁ、お前もまだ20歳だ。まだ知らない未来に希望や理想があるんじゃないか?」
「うーん……そうだねぇ……」
「俺に出来る事があればいいんだが」
「ランスロットじゃないと叶えられない事もあるんだよ?」
「……結婚とかか?」
「うん。私……いつかランスロットの奥さんになりたい。それが叶う日が来るまで一杯喧嘩もして、泣いたり怒ったり、苦しんだりすれ違いもあるとは思う。でも、それがあったとしても隣に、一緒にいたいと思うのはランスロットだけ。だから……」
「そこまで」
「えっ」
「それ以上先の言葉は男の俺から言わせてほしい。……アレス、結婚しよう」
「っ、で、でも……あくまで未来の話だし、急じゃないよね!?」
「勿論、すぐに挙げれる訳じゃない。それこそ手順を踏んで準備をしないといけないだろうが、本気でお前を妻にしたい。だから……俺の隣に永遠にいろ」
「……私、我儘も沢山言ってしまうし、泣いちゃうし、困らせてしまう事も多いかもしれない。……それでも、奥さんにしてくれますか?」
「俺はアレスと言う1人の女を愛している。妹だから、禁断の関係だとか、そんなの吹き飛ばす勢いでお前だけを、アレスだけを永遠に愛し続けると誓おう。それで神々に見捨てられても見返すだけの幸せな生活と姿を見せ付けてやるさ」
「ランスロット!」
「一生離さない。俺の隣でずっと支えてくれ」
 アレスが抱き着き嬉しさから泣いているのはランスロットは理解してそっと抱き締める。将来への不安を持っていたのはお互いである事が分かって、そして、未来を共に生きる事を望み合ってこうして傍にいられる事に嬉しさを感じている。
 翌日、アレスは先に登城する任務があるので早朝には城へと上がっていた。ランスロットは会議に直接向かうので別々に上がる必要もあった為にアレスは1人で団長室の執務机に向かって仕事に集中していた。
 そこに遅れて団長室に入ってきたロルゾとローレンス、ガルドとハルウッドが姿を見せる。仕事をしているアレスに4人は微笑みながら同じ様に仕事に取り掛かった。
 会議を終えて通路を歩いていたランスロットはアレスの同期で同じ女性騎士であるリディルを見掛けて呼び止めた。リディルはランスロットの声に応じて立ち止まり敬礼して話を待っていた。
「すまないが、少し協力してもらえないだろうか?」
「私でお力になれる事であれば。あ、アレス関連ですか?」
「あぁ、指輪を贈りたいのだがどんなのを好むか聞いて欲しいんだ。こういう事はあまり話さなくてな」
「なるほど。それじゃ指輪は婚約ですか? それとも結婚ですか?」
「結婚指輪を考えているんだが違いがあるのか?」
「一応あります。婚約に使われる指輪には関係が深まる様な宝石を使った指輪が多くて、結婚に使われる指輪には永遠の愛を誓う宝石を多く使うのが多いですね」
「そうなのか、そういう点は疎いから分からないんだが……」
「それじゃアレスが好むデザインの指輪を今度アレスと出掛けて調査しておきます。その際に宝石の種類もお伝え出来るかと思います」
「ありがとう。君がアレスの友人で心強い」
「いえいえ、私にはアレスは今でも命の恩人であり大事な友人でもありますから。この程度で力になれるならいくらでもご協力します」
 リディルは深く一礼して立ち去っていくのをランスロットは見送る。こうしてアレスの為に指輪を贈る準備を着々と進めていたある日。
 アレスは貴族の友人であるティナに相談を持ち掛けられていた。ティナはある男性に心を寄せているがそれを伝えてはない。
 そのティナがアレスに協力をお願いしてきたのでアレスも友人の為ならばと、この日の朝からティナのお屋敷に姿を見せていた。ティナの私室で2人は向かい合って紅茶を飲みながら最近のお互いの近況を軽く報告し終わった所である。
「それでティナが私に協力して欲しいって何を協力すればいいの?」
「……以前に私が心を寄せている男性がいる、とお話しましたよね?」
「うん。でも、その人には想いを告げていないのも聞いたね」
「私……近々お見合い致します。そのお見合いが成功したら結婚も時間の問題かと思います。でも、こんな気持ちのままお見合いに挑む事は出来ません。なので……想いを伝えたいなと思っています。その男性と会う為の段取りをアレスに準備してもらいたいのです」
「え、それは私が準備してもいいものなの?」
「それどころかアレスじゃないとダメなんです。その男性……騎士様ですの」
「えっ!? それじゃ私が知っている人って可能性もある??」
「可能性どころじゃないです……かなり親密にされておいでですわ……。正直、私が嫉妬してしまいます程に」
 ティナの告白にアレスは驚きでフリーズしてしまう。自分の友人だと言う事が考えられる上に、同じ騎士でティナが知っている相手。
 そして、ティナは恐らくその相手とは繋がる事が出来ない想いだとも理解した上で自分の中でケジメを付ける為に玉砕するつもりだとも。アレスはそんな友人の恋路を手伝う事に正直辛いと感じていた。
 叶わない恋をしているティナの恋が出来れば叶うように手を貸したい。でも、ティナの身分と騎士である相手の身分では到底叶わないのも頷けてしまう。
 兄であるランスロットが身分制度を騎士から廃止している為に平民で騎士になっている人間もいる。だが、貴族を相手にするのであれば相手になる者にも当然身分を求められる……それが今でもティクス国には暗黙の了解で残されているルールでもあった。
 ティナの恋路はどうなるのか、そして、このティクス国の中に根強く残る身分制度に囚われてしまうティナの未来をアレスは憂うしか出来ないのか。そして、ティナの想い人とは一体――――。
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