最強竜騎士と狩人の物語

影葉 柚樹

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3神、襲撃編

74話「ローガド襲撃!」

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 それは時間なんて関係なく、突如として襲い掛かってきた。アルスとハルト、ルーディス神と共に眠っていたエテルナの脳内に声が聞こえてくる。
 威厳の声が響き、見ていた夢に現れたのは白くて巨大な龍、アルドウラ神の仮の姿が3人の夢に出てきて神託という名の最後の忠告をし始める。

『我々の意に従わねば滅ぶ事になる。それは人間という存在全ての者達に下される神の裁きとなってこの世界を破壊するだろう。それをお前達はしようとするのか。神々である我々に逆らって世界に混沌を呼び込もうとするその行為を我々は許す事は出来ない。最後だ、我々に従え!』

 そこまでで夢は覚めて3人は瞳を開けて覚醒する。ルーディス神と共に眠っていたエテルナは心配するルーディス神に神託を告げ、アルスとハルトは素早く装備を着込み部屋から飛び出して教会の外に出て言葉を失う。巨大な白龍がローガド上空に現れて神力を使いローガドを襲い始めていたのである。
 時間的に人々の眠っている時間、多くの人間達は成す術もなく現れた異空間に飲み込まれていくのをアルスとハルトは確認した。飲み込んでいる異空間の先に神々の力を得る為の精神世界が広がっているのだろう、その異空間から吐き出されている人間達は皆ただの廃人と化していた。
 ルーディス神とエテルナも出てきて状況を把握するとルーディス神は神力を高めてローガド全体に結界を張り巡らせる。エテルナはルーディス神の力になる為に祈りを捧げ始め、アルスとハルトの右手には神狩り武器の存在が握られていた。

「ルーディス神、ここは任せるぞ!」
「行こうアルス!」
「あの姿は仮初だ! 深追いするな!」

 ルーディス神の言葉を背に白龍へ向かって走り出す2人は神狩り武器と共に攻撃を開始する。白龍はその武器の存在を確認して怒りを露わにすると同時にローガド全体に迅雷を落とし始める。
 雷を避けてアルスが跳躍し白龍の額にボドルックの光線を差し込んで攻撃すると同時に、アルフェスの光線を白龍の胴体に狙って差し込むハルトの手から青白い光が放たれる。まだ完全に力を得ている訳ではない白龍は苦しみながらも迅雷をローガド全体に激しく落としていく。
 それにより民家や教会は崩れていき、段々と国として存在できない程の破壊を受ける事となる。だが、白龍はまだ攻撃を止めない。

「いい加減にしやがれっ!」
「これ以上の暴挙は認めない!」
『愚か。神々に勝とうなど甘いと何故分からぬ。人間は所詮神々にとっての餌でしかない。それを分かってて我々の加護を受けている。餌が主に歯向かう等あってはならぬのだ!』
「俺達は餌じゃねぇ! 人間として生きていく以上、自我のある生きた存在だ! 神々の餌だとか言われて好き勝手にされてたまるかってんだ!!」
「僕達の世界は僕達が導いていく! 神々の勝手で消させたりしない! 僕達の未来は僕達が切り開く!」
『おのれ! おのれ! 人間ごときが偉そうに! この世界を破滅に導くのが人間であると教えてやろうではないか! 神々がどれだけ支えてきたかを知るがいい!!』

 白龍は神力を解放しローガド全体を飲み込んでいく。それの光に宿っている膨大な知識と記憶がアルス達人間に流れ込んで精神を破壊する為に動き始めるが、アルスもハルトもその光から抜け出せた。
 ルーディス神の力と神狩りの武器の加護を受けている2人は白龍しか存在しない異空間にて対面する。神狩り武器達は神の存在を感じて滾っているのだろう、強い力をハルト達に流し込んでくる。
 ハルトが白龍を狙って矢を穿つ様に狙いをすまし、アルスは槍の様な鋭利な攻撃を仕掛ける為に空中に跳躍し、同時に白龍へと攻撃をする。攻撃を受けた白龍から緑の血が流れ始め異空間は勢いよく弾けて現実世界へと戻された。

「これは……ローガド全体に柱が……」
「なんなんだよこれ……」

 2人の視界を埋め尽くす光の柱。ローガド全体にそれらが立ち並びその柱から異常なまでの力を感じる事が出来る。
 ルーディス神の力で守られた一部の人間達も不安そうに見つめているが、戻ってきたアルスとハルトにエテルナがあまりにも強大な力を見て不安になるだろうが、気丈な振る舞いでローガドから退避する事を伝えてきた。

「この国は滅びるとルーディス神様のお言葉で知っていました。残った者達を連れて体勢を整える為に国を捨てます」
「こんな理不尽な攻撃で逃げなきゃいけねぇのか……」
「今は耐えるんだ。きっと僕達にも勝機はある」
「さぁ、皆さん。この地から離れて新しい場所へ」

 行き先も分からないまま廃国となって滅んでしまったローガドから離れたアルス達は、一度残る神狩り武器を探しに行った部隊との合流を果たす為に移動をしていた。ルーディス神も同行しているが常に白龍からの攻撃に備えて結界を張れる準備だけはしている。
 エテルナを先頭に歩き続けているが、ルーピンに乗って先の大陸の状態を確認しに行っていたアルスが野営地に相応しい場所を見付けた事をエテルナに伝えてくる。休める場所の確保に尽力してくれたアルスに人々は感謝して野営地になりそうな平原でテントの設営には残った戦力になるハンターと騎士達の手で行ってもらった。
 ルーディス神もエテルナも休む様にハルトはテントの中に押し込んでアルスと共に今後の事について話し合う。あの白龍、アルドウラ神はいよいよ自分達を敵と見なして攻撃を仕掛けてきた事にアルスはある仮説を組み立てていた。

「……まさかなぁ……」
「アルス? どうしたの?」
「いや、アルドウラ神があんなにローガドを敵襲したのって……ルーディス神の力が強まりつつあって焦ったんじゃねぇかなって思ってな」
「これ以上のルーディス神の力を増やす訳にはいかない。だから限られているとは言え攻撃をしてきた、って事?」
「可能性的に考えられない訳じゃない。今ルーディス神の力は3神が最盛期の頃に近い時の状態にまで近付いている、そう思っているが実際は分かんねぇけれど。でも、そうだとしたら3神がこれ以上の状態を見過ごす事はしねぇと思う」
「いよいよ聖戦の幕が上がる、そう考えてもいいかも知れないね」
「コル達が間に合えばいいんだけれどな」
「信じよう。僕達は信じて待つしか今は出来ない」

 アルスの左肩を抱いて抱き寄せてハルトは瞳を伏せる。失っている左耳の聴力と右目の視力を除けばハルトも立派な戦士として戦えるが、今こちらが焦る訳にはいかない事も理解している。
 今は体勢を整えるべき時、その為にも神々の攻撃に耐えうるだけの場所を得なくてはならない。どうするべきかと考えていると1人の神父がアルスとハルトに何やら話をしたい、と申し出てきた。
 神父と会う事にした2人は神父の元に行くと、神父の男性は深々と頭を下げて挨拶するとある話をし始める。それはルーディス神の力が強まったお陰でローガドを始めとする神々を信仰する国の本来の姿が露わになりつつあるとの証言だった。

「それじゃ3神を信仰してる国々は廃れ始め、逆にルーディス神の信仰をしている国は栄え始めた、って事ですか?」
「はい。私は色々な国の神父達と手紙のやり取りをしており情報は入ってきます。信仰が強い国ほど、その傾向が現れていると言ってもいいかと思われます」
「それじゃ参戦を明言している国に行けば3神との戦いにも備えられるという事か」
「ローガドを中心にアルガスト大陸全土の国々の中で3神との聖戦に意欲的であり、防衛の面でも安心な国は2つ。1つは大陸南に存在する「ゼブスル」、もう1つは大陸中央に存在する騎士達の国とも呼ばれている「アルバーン」が候補に挙げれると思います」
「ゼブスルかアルバーン……どちらの国もルーディス神の信仰を明言してから勢力を伸ばし始めた国ではありますね」

 神父の男性にお礼を告げて2人はルーディス神とエテルナにその話をしにテントに入ると2人はその話を聞いて地図を取り出して地面に広げて話し始める。このまま流浪の状態では神々との戦いには挑む事すら難しい。
 ルーディス神とエテルナの意見を聞きながらアルスはある事を考えていた。コル達の元に知らせを飛ばして候補に挙げられている国のどちらかで合流をするべきだろうっと。
 アルスの考えを知らないハルト達は地図を見つめて距離と現在位置を確認して判断をするべく話し合いを続けていく。そんな状態でルーディス神は異変に気付く。

「……? なんだ」
「どうした?」
「ルーディス神様?」
「……何だろう、外の気配が静かだ」
「まさか……!」
「アルス!」
「ハルト、お前も行け。もしかしたら3神がまだ手を緩めていないのかもしれん」
「分かりました!」

 テントから飛び出していったアルスを追い掛けて出て行くハルトを見送ったルーディス神は震えているエテルナを抱き締めて囁く、「大丈夫だ」と。2人が外に出ると野営地を囲む様に柱が立っておりアルドウラ神の攻撃だと悟る。
 神狩り武器を構えて柱を攻撃しに向かっている騎士達を援護しながらハンター達は防衛に体勢を整えつつあった。アルスが神狩り武器で柱を破壊すると柱は光を放って野営地を飲み込まんとし始める。
 アルスとハルトが的確に指示を出している中で逃げ惑う一般市民達は祈りを捧げる。死への恐怖からではない、ルーディス神の無事を祈る姿にアルス達も勇気を貰う。
 負けれない、その心で柱からの光を阻止し始めている騎士達にハンター達も援護に入る。皆が「生きたい」と願ったその時、ルーディス神達がいるテントから強大な神力が感じられて振り向いた時、黒くて美しい戦乙女が姿を見せる。

「なんだ……あれ……」
「でも、美しいしなんだか強そうだぞ……」
「ルーディス神様のお力か……?」

 口々に色々な言葉が乗るがアルスもハルトもその戦乙女を見て何故かルーディス神の本気を感じる。愛する者達を守ろうとする神の本気が今示される――――。
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