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第六章 愛民の王太子 メイヴィス VS 仮面伯爵
5・かつての孤児院での仲間
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マーリオは弟妹が働く、宿屋を兼ねた食堂に来ていた、弟のガースと妹のロラーナは、もう十五年近くここで働いている。
二人は働き振りが認められて前店主からここを任されていたが、前店主の引退と弟の結婚を機にここを譲り受けて、今は弟妹と嫁で切り盛りしている。
「お帰りなさい、兄さん、どうぞ」
ロラーナが頼んでもいない昼の定食をマーリオに運んできた、昼間から酒を飲んでいたマーリオは胡乱げに妹に話しかける。
「ロラーナ、何だこれは、俺は頼んで無いぞ」
「これは私から兄さんへの労いよ、さっ食べてちょうだい。兄さんは痩せすぎなのよ、もっと食べて健康的にならないと恋人も出来ないんだからね」
かつてチビだった妹は、前店主からタラフク食わされてピチピチに成長している。
「俺は胃が小さいから、あんま食えねえんだ、知ってるだろ」
ロラーナが悲しそうな顔をする、幼い頃貧乏でろくに食えなかった俺は、成長してもガリガリのままだ、だがロラーナとガースは幼い頃からここで養って貰ったお陰で、体だけは立派に成長した。
「心配してくれて、ありがとな。久し振りのお前の手料理だ、どれどれ、料理の腕が落ちていないか味見してやるよ」
妹の悲しい顔は見たく無いと、マーリオは食べ始めた、途端にロラーナが笑顔になる、出された定食は、素朴だが量も申し分無く、彩りよく何品か料理が揃えてあり満足度が高い物だった。
「西の辺境伯領ってどんな所だったの?」
ロラーナが酒を下げてお茶を渡してきた。
「今回は、拘束時間が長い仕事だったんだ、領下を見て回る時間なんか無かったよ、悪かったな、土産も買えなくて」
ロラーナとガースは宿屋兼食堂で働いている為、纏まった休みが取れない。だから時々遠くに行くマーリオからの土産や、土産話を楽しみにしている。
「ううん、そんな事いいの。でも宿の方で療養してる二人はそこで保護されたんでしょう、どうしてそんな所に居たのかなって」
ザカリーに奴隷として使われていた中に、王国民が二人いて、元気に働ける様になるまで宿で面倒を見る事になっていた。
ここは元々、王城に務める人間だけが使える保養施設の様な所で、宿も食事も格安で利用できる、保護された二人の滞在費も他から支払われる事になっている。
「どうしてそんな事が気になる?、お前の知らない奴らだろ」
普段ならしない質問をしてきたロラーナに、マーリオが深掘りして聞くと、ガースが横から口を挟んで来る。
「兄さん、ロラーナが気になっているのは、あの人達じゃなくてお見舞いに来る人だよ」
「ガース兄さん!!」
ロラーナの顔が赤くなり、会話に割り込んだ次兄を咎める。
「見舞いだと、誰だ?」
「ほら丁度、今お見舞いに来たみたいだ」
ガースが指差す方を見ると、見知った騎士団員二人が宿の方へと向かっている。彼等の姿を見たマーリオは、次にロラーナを見る、妹はうっとりと彼等の方を見ている。
… まさか、ロラーナが、あいつらを? …
悪夢の様な現実に打ちの目されたマーリオは、急にストレスを感じて食欲が失せた、胃がムカムカして気分が悪くなる。
「ごっそさん、美味かった、また来る」
マーリオはうっとりしているロラーナに声を掛けて席を立った、その顔が深刻に思い悩んでいる様に見えて、ガースが声を掛ける。
「兄さん?、どうかしたの?」
しかし、マーリオは心ここに在らずといった風で、ガースの声掛けにも気付かず、ヨロヨロとした足取りで食堂を後にした。
… 嘘だろ、ロラーナが、あいつらを?…
◆◇◆◇◆◇
「レオ、リオ、体の方はどうだ?」
騎士団員の二人が、辺境伯領で保護されて、この宿で療養中の二人の見舞いに訪れた。
「やあ、ベン、ダン、有難う、もうほぼ元通り元気になったよ」
「ああ、美味しいご飯を一杯食べて、前より健康なくらいさ」
レオとリオは寝台から上半身を起こして、ベンとダンを迎えた、穏やかで満ち足りた顔をしている。
「大変だったな、救えて良かったよ」
「ああ、本当に見つけられて良かった」
ベンとダンは寝台横に置かれた椅子に座り、久し振りに会えた仲間の顔を見る、四人とも穏やかに微笑んで嬉しそうだ。
「落ち着いたら、孤児院から攫われた後の事を聞かせて貰えるか?」
ベンが二人に話しかけた、ダンも頷く。
「僕達にも分からない事が多くて、余り話せる事は無い。攫われた後は、黒い袋を被せられて、奴隷商人に引き渡された」
「そう、その後はどこかの建物に監禁されて、買主が決まるまではそこに居て、買主が決まったら、黒い袋を被せられて移動する」
レオとリオは情けない顔で下を向く、そんな二人にダンが聞く、ベンも二人を見る。
「一緒に攫われた他の仲間は、どうしているか分かるか?」
「「 分からない 」」
レオとリオは声を揃えて言う、ベンとダンは難しい顔になる、ベンが重ねて問いかける。
「じゃあ、何でもいいから覚えている事を教えてくれるか?」
レオとリオは顔を見合わせて、少し考える。
「この国の貴族で一人、上得意が居ると言っていた、買うのも売るのも両方するから、珍しいと」
「そう、これまでに、かなりの数の奴隷を売買したらしいけど、決まって金髪碧眼の美女だそうだ」
……金髪碧眼の美女、四人はかつて孤児院で一緒にいた、ホリーの事を思い浮かべていた……誰からも愛されて、孤児院のお姫様だった、美しい少女……金髪碧眼は孤児院では珍しく、どこかの貴族の庶子では無いかと思われていた……ホリー…
騎士団員のベンとダンは顔を見合わせる、かなり嗜好がはっきりしているので、調査すればどの貴族か特定出来るかも知れない、べンがダンに語りかけた。
「取り敢えず、ソイツを探し出して、奴隷商人まで辿って、仲間の情報を手に入れよう」
「ああ、そうだな」
ダンが返事をしてベンを見る、二人は目を合わせて頷き合った、これまでと同様に二人に出来る事は、仲間を助ける為に全力を尽くす事だけだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
* 関連話 *
マーリオはマーリオ 【王太子は濃密】
二人は働き振りが認められて前店主からここを任されていたが、前店主の引退と弟の結婚を機にここを譲り受けて、今は弟妹と嫁で切り盛りしている。
「お帰りなさい、兄さん、どうぞ」
ロラーナが頼んでもいない昼の定食をマーリオに運んできた、昼間から酒を飲んでいたマーリオは胡乱げに妹に話しかける。
「ロラーナ、何だこれは、俺は頼んで無いぞ」
「これは私から兄さんへの労いよ、さっ食べてちょうだい。兄さんは痩せすぎなのよ、もっと食べて健康的にならないと恋人も出来ないんだからね」
かつてチビだった妹は、前店主からタラフク食わされてピチピチに成長している。
「俺は胃が小さいから、あんま食えねえんだ、知ってるだろ」
ロラーナが悲しそうな顔をする、幼い頃貧乏でろくに食えなかった俺は、成長してもガリガリのままだ、だがロラーナとガースは幼い頃からここで養って貰ったお陰で、体だけは立派に成長した。
「心配してくれて、ありがとな。久し振りのお前の手料理だ、どれどれ、料理の腕が落ちていないか味見してやるよ」
妹の悲しい顔は見たく無いと、マーリオは食べ始めた、途端にロラーナが笑顔になる、出された定食は、素朴だが量も申し分無く、彩りよく何品か料理が揃えてあり満足度が高い物だった。
「西の辺境伯領ってどんな所だったの?」
ロラーナが酒を下げてお茶を渡してきた。
「今回は、拘束時間が長い仕事だったんだ、領下を見て回る時間なんか無かったよ、悪かったな、土産も買えなくて」
ロラーナとガースは宿屋兼食堂で働いている為、纏まった休みが取れない。だから時々遠くに行くマーリオからの土産や、土産話を楽しみにしている。
「ううん、そんな事いいの。でも宿の方で療養してる二人はそこで保護されたんでしょう、どうしてそんな所に居たのかなって」
ザカリーに奴隷として使われていた中に、王国民が二人いて、元気に働ける様になるまで宿で面倒を見る事になっていた。
ここは元々、王城に務める人間だけが使える保養施設の様な所で、宿も食事も格安で利用できる、保護された二人の滞在費も他から支払われる事になっている。
「どうしてそんな事が気になる?、お前の知らない奴らだろ」
普段ならしない質問をしてきたロラーナに、マーリオが深掘りして聞くと、ガースが横から口を挟んで来る。
「兄さん、ロラーナが気になっているのは、あの人達じゃなくてお見舞いに来る人だよ」
「ガース兄さん!!」
ロラーナの顔が赤くなり、会話に割り込んだ次兄を咎める。
「見舞いだと、誰だ?」
「ほら丁度、今お見舞いに来たみたいだ」
ガースが指差す方を見ると、見知った騎士団員二人が宿の方へと向かっている。彼等の姿を見たマーリオは、次にロラーナを見る、妹はうっとりと彼等の方を見ている。
… まさか、ロラーナが、あいつらを? …
悪夢の様な現実に打ちの目されたマーリオは、急にストレスを感じて食欲が失せた、胃がムカムカして気分が悪くなる。
「ごっそさん、美味かった、また来る」
マーリオはうっとりしているロラーナに声を掛けて席を立った、その顔が深刻に思い悩んでいる様に見えて、ガースが声を掛ける。
「兄さん?、どうかしたの?」
しかし、マーリオは心ここに在らずといった風で、ガースの声掛けにも気付かず、ヨロヨロとした足取りで食堂を後にした。
… 嘘だろ、ロラーナが、あいつらを?…
◆◇◆◇◆◇
「レオ、リオ、体の方はどうだ?」
騎士団員の二人が、辺境伯領で保護されて、この宿で療養中の二人の見舞いに訪れた。
「やあ、ベン、ダン、有難う、もうほぼ元通り元気になったよ」
「ああ、美味しいご飯を一杯食べて、前より健康なくらいさ」
レオとリオは寝台から上半身を起こして、ベンとダンを迎えた、穏やかで満ち足りた顔をしている。
「大変だったな、救えて良かったよ」
「ああ、本当に見つけられて良かった」
ベンとダンは寝台横に置かれた椅子に座り、久し振りに会えた仲間の顔を見る、四人とも穏やかに微笑んで嬉しそうだ。
「落ち着いたら、孤児院から攫われた後の事を聞かせて貰えるか?」
ベンが二人に話しかけた、ダンも頷く。
「僕達にも分からない事が多くて、余り話せる事は無い。攫われた後は、黒い袋を被せられて、奴隷商人に引き渡された」
「そう、その後はどこかの建物に監禁されて、買主が決まるまではそこに居て、買主が決まったら、黒い袋を被せられて移動する」
レオとリオは情けない顔で下を向く、そんな二人にダンが聞く、ベンも二人を見る。
「一緒に攫われた他の仲間は、どうしているか分かるか?」
「「 分からない 」」
レオとリオは声を揃えて言う、ベンとダンは難しい顔になる、ベンが重ねて問いかける。
「じゃあ、何でもいいから覚えている事を教えてくれるか?」
レオとリオは顔を見合わせて、少し考える。
「この国の貴族で一人、上得意が居ると言っていた、買うのも売るのも両方するから、珍しいと」
「そう、これまでに、かなりの数の奴隷を売買したらしいけど、決まって金髪碧眼の美女だそうだ」
……金髪碧眼の美女、四人はかつて孤児院で一緒にいた、ホリーの事を思い浮かべていた……誰からも愛されて、孤児院のお姫様だった、美しい少女……金髪碧眼は孤児院では珍しく、どこかの貴族の庶子では無いかと思われていた……ホリー…
騎士団員のベンとダンは顔を見合わせる、かなり嗜好がはっきりしているので、調査すればどの貴族か特定出来るかも知れない、べンがダンに語りかけた。
「取り敢えず、ソイツを探し出して、奴隷商人まで辿って、仲間の情報を手に入れよう」
「ああ、そうだな」
ダンが返事をしてベンを見る、二人は目を合わせて頷き合った、これまでと同様に二人に出来る事は、仲間を助ける為に全力を尽くす事だけだ。
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