【R18】傲慢な王子

やまたろう

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第七章 王太子の偏愛  王国騎士団 & 王国民

6・新星の謎と窃盗団

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 噂の新星ニュースターネイト・アーガンは騎士宿舎の自室にいた、寝台に腰をかけて暗い顔で俯いている。


「どうして、こんな事になったんだ」


 その顔は苦悩に満ちていて、予選で快進撃をしている騎士には見えない。


 実の所、何故自分が勝ち進んでいるのか本人も分かっていない。
 

「一体、俺に何が起きているんだ?」


 対戦相手の実力者達が、あり得ないミスを連発するのだ、踏み込みが甘かったり、目測を誤ったり、空振りしたりアーガンにも訳が分からない。


 しかし、相手のミスで勝ち進んでいる事だけは確かなので、自分の実力とは掛け離れた戦績には戸惑いしかない。


「まさか、勝つ呪いにかかってるとか?」


 次の試合は四回戦で各小隊長や手練ればかりが名を連ねている、そんな中に実力不足の自分が混ざる事も恐ろしい。


「蛇に睨まれた蛙か、鷹の前の雀だよ」


 自分の身に起きている不可思議な事態と、先行きの不安にアーガンは気負けする、四回戦も怖いがその先はもっと怖い。


 ……もし四回戦も勝ってしまったら…‥


 五回戦では『炎の剛剣』や『氷の疾風』『水の貴公子』と対戦する可能性も出てくる


「無理、むりムリ、俺じゃ相手にもならない」


 青ざめて頭を抱えるアーガンの手首には変わった形の腕輪が嵌っている、いっそのこと棄権したいのだがそれも出来ない。


「俺は一体、どうすれば良いんだ」


 勝ち上がって欲しい巷の期待とは裏腹に、彼は早く負けたかった。


「そうだ、ワザと負ければ良いんだ」


 閃いたアーガンは嬉々として怪しまれない負け方を考え始めた、強くなる事を目標に頑張ってきたのに、まさか自分がこんな事を考える日が来るとは思いもしなかった。


 しかし、怪しまれない負け方を何も思いつかなったアーガンは、無策のまま試合に挑んだ。


 そして勝利した。


 …だから勝っちゃダメだろ、俺!、弱いクセに何で負けられないんだ…


 新星ニュースターは勝利した無力な自分を嘆いていた。


「俺は何て駄目なヤツなんだ」




 
 ◆◇◆◇◆◇
 




「何て凄い奴なんだ!、新星ニュースター!」


 新星ニュースターの勝利に酒場では歓声が湧いていた。


「やったぞ、新星ニュースターがまた勝った!」

「スゲェ強えな」

「うおーーーーー!!!  」

「四回戦突破かぁ、やりやがったな」

「ああ、興奮するな、次は五回戦だ!」

「でもシード剣士に勝てるかな?」

「ここまで勝ち上がってるなら、新星ニュースターも相当強いんだろ、大番狂せが起きるかもな」

「もしかすると、本戦まで行くかもな」

「うわ~、どうなるかな、ワクワクするぜ」

「早く本戦の顔ぶれが出ないかな」

新星ニュースターか、凄え奴が出てきたもんだ」

 嘆く新星ニュースターとは裏腹に、酒場では今日も彼の活躍(?)に客が盛り上がる。


 王国民がお祭り騒ぎをする横で他国民達も盛り上がり、酒場も連日客でいっぱいだった。


 観光シーズンでも無いのに何故か王都の宿屋は他国民の宿泊客で溢れていた。



 

 ◆◇◆◇◆





 予選の四回戦を観戦したメイヴィスとギガとグリードの三人は、試合後に集まって意見を交わしていた。


「試合を見た感じでは、相手の距離感を狂わせてるっぽいな、それを可能にする魔導具モドキなら有るぞ」


 試合を観戦したギガが思い当たった事を二人に話した、そのギガの言葉にグリードが反論する。


「公正を期する為に試合前には魔導具をつけていないか検査をしている」


「だから、ちゃんとした魔導具じゃなくて魔導具モドキだよ」


 ギガの変な物言いに今度はメイヴィスが反応して質問をする。


「ギガ、魔導具モドキとは一体何だ?」


「性能が低くて魔導具として認められないオモチャ見たいな物だよ、だから試合前の検査でも違反にならなかったんだろ、多分」


 ギガが急にさらさらと絵を描き始める、そして描き上げた魔導具らしき絵を二人に見せた。


「こんな形で普通は手首にはめて使うけど、古いからもう流通してないと思う」


 その絵を見たグリードが記憶を探るように遠くを見つめて呟いた。


「確か試合中にアーガンがそれと似た物をはめていたような」


 二人のやり取りを聞いていたメイヴィスが会話に加わった。


「その魔導具モドキが試合に影響を及ぼしていると仮定して、アーガンはその事を知っているのか?」


 メイヴィスの問いにギガが答える。


「さっきも言ったけど最早アンティークだよ、流通してないから入手困難な物だし、彼の年齢だと知らないと思うよ」


 ギガの話を聞いたグリードが考えを纏めながら話す。


「本人も知らずに不正の意識が無いのなら、アーガンに直接話を聞いても問題有りませんね、いや寧ろ何か隠れた事情が無いか積極的に話を聞くべきか?………」


 グリードの独り言めいた言葉にメイヴィスが返答をする。


「そうだな、予選になって急にそれを身に付け始めたのなら、誰か別の人物が関係している可能性が多いにある」


 三人で意見交換をして、後日アーガンを呼び出して直接話を聞く事で意見が纏まった。
 続けてメイヴィスが二人に新たな話題を振った。


「アーガンの話はそれで良いとして、広域窃盗団のについて二人に意見を聞きたい。ギガこれを見てくれるか」


 メイヴィスは隣国アストラルから届いた窃盗団の事件簿をギガに見せた、それには被害者や被害状況の詳細が載っている。


「ギガ、被害者の共通点が分かるか?」


 ギガは資料を見て真剣に考えたが、何も思いつかなかった。


「うーん、分からないな。逆に共通点なんてあるのか、メイ?」


「ああ、彼等は悪評の高い金満家ばかりだった、彼等を恨んでいる者も多かったようだ」


 メイヴィスの言葉を聞いて、ギガはもう一度事件簿を見直した。


「言われてみれば、そうだな」


「悪評の高い金満家ですか、窃盗団のリストに載っていた人々と同じですね」


 思う所のあるグリードも反応する。


「そうなんだ、私は広域窃盗団の殆どは自国の人間で構成されていると考えている、彼等に恨みを持つ者達が犯行を行っているのではないかと」

 メイヴィスの意見を聞いたグリードが、その考え方に合わない点を指摘する。


「しかしそれでは、一時期に集中して強盗事件が起きた後に鎮まり、同じ様な強盗事件が南下するという現状に沿わない気がします」


 メイヴィスが頷いて続きを話す。


「ああ、そこであのリストだよ。ずっと不満で燻っていた奴等に、簡単に襲撃出来るだけの情報を与えてやるんだ、リストが復讐の後押しをしている印象だ」


「復讐の後押しですか……」


「どういう事だよ、メイ。それって意味が分かんないけど」


 グリードは押し黙って考え込み、ギガは理解不能だと渋面をしていた、そんな二人にメイヴィスは続けて言う。


「各国から届いた窃盗団の資料を見ると、同じ人物の犯行とは思えない位、被害の内容が違ってるし、驚く程細かく被害者の情報を掴んでいる、他国民の流しの犯行じゃ説明出来ない事が多い」

 グリードが納得出来ない点を口にした。


「しかし、自国民だけなら一時期に犯行が集中して突然止むのも説明出来ません」


「いや、実行犯は自国民だが、流しの犯罪者は存在している。彼等が恨みを持たれている金満家を調べてリストを作るんだ」


「広域窃盗団の正体は、他国民と自国民の集合体という事ですか、うーん」


 グリードが悩む、ギガはアストラルの資料を読んでいる。


「そうだ、リストを作ったら今度は不満分子を集める、邸の警備の隙だとか邸の間取りだとか、個人個人が持つ情報を纏めて犯罪計画を立てて襲わせるんだ」


 資料をじっくり読んでいたギガが、メイヴィスの意見に加勢する。


「確かに流しの犯行にしては邸の警備を詳細に把握しているな、被害状況の違いは恨みの大きさに比例しているのか?」


「ああ、恐らくそうだ。しかし特別できる事がある訳でも無いから、以前グリードが言った通り巡回して防ぐのが一番だろう」


「おお!、頼みますよ騎士団長!」


 ギガがグリードに檄を飛ばした、それを受けてグリードは王都の警備計画を見直す為に団長室へ戻って行った。


「じゃ、俺も魔法省へ戻るか、そうだメイ、これをやるから疲れた時に飲めよ!」


 どこから出したのか、ギガがピンク色の液体を渡してくる、前回の回復薬は可愛いピンク色だったが、今回はどぎついピンク色でしかも蛍光している。


「待てギガ、これは何だ、毒じゃ無いだろうな、人間が飲んでも良いものか?」


「あはははは、相変わらずメイは口が悪いな、大丈夫に決まってるだろ!」


 ギガは屈託なく答えるが、メイヴィスがいまいち信用できないでいると、ギガに背中をバンバン叩かれた。


「色がキツイのは効果が高いからだよ、毒じゃ無いから安心して飲めよ、じゃ、またなメイ」


 執務室に残されたメイヴィスは、暫く蛍光ピンクの液体を見つめていた、脳裏に学生時代ギガから飲まされた様々な液体の記憶が甦る。


 確かにどれも毒では無かった、しかし危険な目には沢山あった、その経験則からメイヴィスは判断した。


 ……これは絶対に飲んではいけない……


 メイヴィスは蛍光ピンクの液体を目に触れない棚の奥にそっとしまいこんだ。











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