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第一章
5. おっさん、テンプレに遭遇する?
しおりを挟む「とりあえず、道を探そう。」
道をたどれば人に出会えるだろう。たぶん。
歩くこと10分くらい、森の終わりが見えた。
そりゃそうか。わざわざ深い森の奥なんかに転移させないわな、常識的に考えて。ヤクザ神、見た目はともかく性格はまともそうだったし。
森の外、すぐそばに街道らしきものが見える。
「よし!あれをたどれば人に会える。」
その時、遠くから人の争う声が聞こえてくる。
おっさん、これ知ってるぞ!異世界転移もののラノベでよくある 《高貴な身分の美少女の乗る馬車が魔物に襲われているのを助けて、一目惚れされる》 感じのやつや。
ハードボーラーもある。ゴブリン程度、屁でもないわ。
「おっさんが助けたる!まかせとけ!!」
ハードボーラーを握り締め、声の聞こえる方へと走り出す。体が軽い。おっさんの冒険はここからはじまるんや!
やがて、街道そばの草原に幌馬車?とその護衛らしき武装した男達が、魔物と対峙しているのが見えてくる。
「・・ん?あれ・・ゴブリンじゃないな・・?」
まだ距離がある為はっきりした大きさは分からないが、魔物はそばにいる護衛の男の倍以上の大きさがある。
見た目は熊っぽいが、あれホッキョクグマよりデカくね?
体毛は黒くビロードの様な光沢を放ち、稲妻を思わせる金色の縞模様がある。
俺はハードボーラーをそっとしまって地面に伏せる。見つかったらヤバイ。
「ちょ・・あれなんだよ・・この世界あんなのがいるのかよ・・!?」
どう考えてもハンドガンじゃ無理がある。とりあえず様子をみよう。
この世界は魔法があるから、護衛の人たちメッチャ強いのかもしれんし。
護衛の男は5人で軽装の革鎧に槍や剣といった出で立ち。
あっ、巨大熊の一撃で一人吹き飛ばされた・・だがその隙に他の男達が攻撃を繰り出す。ある者は槍で突き、ある者は剣で斬りつける。だがまったく効いている様子は無い。
「何故馬車はこの隙に逃げないんだ・・!?」
よく見ると、そばに馬車をひいていたと思われる馬が血塗れで倒れている。
真っ先に馬がやられたみたいだな・・あれでは逃げられない。
馬車を降りて逃げようにも、熊は人より速いからな・・。
護衛の男達もそれが分かっているのだろう。逃げたくても逃げられない、そんな感じだ。
助けてあげたいけど、さすがにあれは無理。俺レベル1やし。
普通こういうのって弱いゴブリンとかから順番に倒してレベルアップしていくものじゃないのん?なんでラスボス前に出てくるようなやつがいるんだよ。
それともこの世界ではあれがデフォなの?だとしたらハードモードどころじゃなくてナイトメアモードなんですけど。
「あのヤクザ神、今度あったら不毛の大地にかえてやる・・!」
そうこうしているうちに護衛の男達は残り一人にまで減ってしまっていた。
その時、馬車から人が飛び出した。
恐怖に耐えられなくなったのだろう、商人風の男が一目散に逃げていく。だがそれは悪手だ。熊は逃げるものを追いかける。
案の定、巨大熊は護衛の男を無視して逃げる商人を追いかける。あっという間に追いつき、襲い掛かる。ぼろ雑巾のようにズタズタにされ、咀嚼される商人。
あまりの光景に吐きそうになり、思わず目を逸らす。
その時、馬車の幌の間から中が見えた。見えてしまった。
檻のようなもの中に小さな子供がいた。
みすぼらしい服装からおそらく奴隷と思われる。異世界転移のラノベでは奴隷がよく出てくるが、さすがにこれはないだろう・・。
幼子は恐怖に怯え、震えながら蹲っている。
「あーマジかー・・・」
正直に言おう。
安全に助けられるならともかく、自分の命を懸けてまで見知らぬ他人を助けようとは思わない。
ただ子供は別だ。変な意味ではなく。
前世では甥っ子のことが大好きだった。
自分で子供を作る気はなかったが、俺のクソみたいな人生の中で甥っ子はまさに 《救い》 だった。
俺を見つけると笑顔で抱きついてくる甥っ子が大好きだった。
サンタの格好でプレゼントを持っていくと、目をキラキラさせて喜んでくれる甥っ子が大好きだった。もう会えないけれど。
馬車の窓から見えた幼子に、甥っ子を重ねてしまった。見なかったことには出来そうもない。
「しゃーねー・・やるかー。」
あんな巨大熊に勝てる気はまったくしないが、仕方が無い。
どうせ一回死んだ身だ。やれるだけやってみようじゃねーか。
ネットショップを開く。残り75万9,900円。ハンドガンでは太刀打ち出来ない。
もっと強力な武器を・・これだ。
[バレットM95・スコープ付き] 74万円。12.7×99mm NATO弾を使用するアンチマテリアルライフルで装弾数は5発。
[予備マガジン] 1万円と [12.7×99mm NATO弾] 800円×10発も購入。
残り1,900円。
急いでマガジンに弾を詰め、銃身に叩き込む。
予備マガジンにも弾を詰めると俺は走り出した。
弾は限られている。確実に当てられる距離まで近付きたい。
その間に巨大熊は商人を食べ終わり、同じく逃げ出した最後の護衛の男を捕まえて貪っていた。
馬車まであと200m。巨大熊は食事に夢中でまだ俺には気付いてない。
・・あと150m・・まだだ、もっと・・。
残り100m・・ここで巨大熊が食事を終え、次のエサを求めて馬車へと近づいていく。
マズい!俺は大声で叫んだ。
「こっちだクソやろおぉぉぉー!!」
巨大熊がこちらを向く。
地面に伏せ、狙いをつける。ボルトを操作し薬室に弾を送り込む。
「くらえっ!!」
『ガアァァァン!!』
轟音と共に弾丸が巨大熊の右肩に命中し血が飛び散る。
「よしっ、効いた!!」
「グルゥァアアアアアアア!!!」
怒りによるものなのか痛みによるものなのか・・巨大熊は大気を震わす様な咆哮を放つと、俺を睨み付ける。
だがその時にはすでに俺は、二発目の装填を済ませている。
『ガアァァァン!!』
すばやくボルトを操作し三発目。
『ガアァァァン!!』
「グアァァァァァアアア!!!」
巨大熊は唸りをあげながら、こちらに向かって駆け出した。
『ガアァァァン!!』
四発目。
『ガアァァァン!!』
五発目。
マガジンが空になる。全弾命中したが巨大熊は止まらない。
恐怖を抑え付けマガジンを交換する。残りは5発。
『ガアァァァン!!』
冷静に。
『ガアァァァン!!』
機械のように淡々と。
『ガアァァァン!!』
巨大熊は一直線にこちらに向かってくる。狙いをつけるのは容易い。
『ガアァァァン!!』
ここで左目に命中、側頭部を弾き飛ばす。だが止まらない。
最後の一発。
『ガアァァァン!!』
額に命中。巨体が揺れる。
明らかに致命傷と思われるがそれでも巨大熊は向かってくる。魔物としての執念か。
ライフルを捨て立ち上がり、ハードボーラーを構える。
巨大熊の顎が目の前に迫る。数秒後には俺の頭など丸呑みにされてしまうだろう。しかし不思議と恐怖は感じない。それどころか感謝のような気持ちさえ感じる。
俺というちっぽけな存在に全身全霊、文字通り命を懸けて向かってくる存在。
大きく開いた口の中を目がけて引き金を引く。
『ダァン、ダァン、ダァン、ダァン、ダァアン!』
次の瞬間、強い衝撃を受け俺は意識を失った。
====================
購入品リスト
・[バレットM95・スコープ付き] 74万円
・[12.7×99mm NATO弾×10] 8,000円
・[予備マガジン] 1万円
合計 75万8,000円 残金 1,900円
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