大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう

文字の大きさ
112 / 187
第三章

ギュンターの決意

しおりを挟む
「特に心配はないと思うけど、留守にしてる間は今回もディーナとコレットに任せるよ」

「わかりました」

「どうしたディーナ?」

 エルンストが少し寂しそうなディーナを見て声を掛けた。エルンストに声を掛けられディーナは苦笑いする。

 誤魔化そうとも思ったが、コレットと目が合うとなんとなく彼女も同じことを考えているような気がした。ディーナは思い切って本音を吐露した。

「えー、と、私も少し王都を見て回りたかったな、と」

「そうだな。ずっとこっちに来てからここしか見てないものな。アルスさま!ディーナも王都に連れて行ってくれませんか?」

「確かに、ずっとディーナさまはずっとこちらにいらっしゃいますからな。アルスさま、もしよろしければ私からもお願いいたします」

 パトスはそう言うとアルスに深々と頭を下げた。

「うーん、そっか。確かにそうだね。それならリサとダナも一緒がいいね。でも、そうなると留守はコレットひとりになっちゃうのか」

「それなら私が残りましょう」

 気が付くとギュンターが手を挙げていた。突然のギュンターの発言にみんなの目が丸くなる。常に周りを見て判断する冷静なギュンターのことだ。きっと何か考えがあってのことだと思うが、それでもアルスは「なぜ」と尋ねずにはいられなかった。 

「今回の戦いを見て思うところがありまして。特に今回私は活躍したわけでもないですしね」

「いやいや、せっかく呼ばれたのだし」

「そうだな、何故急に行かないなどと?」

「ヴェルナー、俺が今回残ると言ったのはおまえの技を見てだ。俺の技はまだおまえの域まで達してないんだ」

「だからって・・・・・・」

「だからこそだ。ここでおまえに置いてかれるのはごめんだからな。この機会に徹底的に修行して俺の技を完成させる」

 ギュンターは、ヴェルナーとコーネリアスの護衛であったリッカールトの戦いを間近で見ている。その際にヴェルナーの技の完成度を見て驚愕した。また、バートラム戦ではベルと組んでドルフ、アジル兄弟と戦ったが思うように戦えなかったのだ。

 それが悔しかったというのが本音だ。ギュンターは、同郷の出身であるヴェルナーをライバルとして意識し始めていた。

「ギュンター、それでいいの?」

「アルスさま、私はちょうど良い機会だと思ってます。オーラの性質をうまく技に昇華出来るように自分なりに調整する時間が必要だと思っていましたので」

 そう言ってギュンターはドルフとアジルの方をちらっと見て言った。

「部隊長が一人は残らないと万が一何かあったときに困るかと思います。それにドルフとアジルは私の練習相手にはちょうど良いですし」

「俺らで良かったらいつでも相手になりますよ!」ドルフがギュンターに笑顔で応える。

「わかった。そういうことなら留守はギュンターに任せるよ」

「まさか、おまえがそんなことを思ってるなんてな」

 横でやり取りを見ていたヴェルナーが、ギュンターに声を掛けた。

「当たり前だ。部隊長がそれぞれ技を磨いているのに俺だけ完成してないでは話にならない。それにヴェルナー、俺はおまえにだけは負けたくない」

「ははは!なら俺はさらに技を磨くとするかな」

「勝手にしろ。俺はそれをさらに超えてやる」

 そんなギュンターとヴェルナーの熱いやり取りそっちのけでコレットとディーナたちは喜んでいた。ディーナは、遠い異国の大陸に来て以降、感謝祭以外はほとんど城外に出ることすらない日々を過ごしている。

 もちろん植物の育成の仕事や、コレットとのお喋りやデザート作りは楽しいが、やはり州外に出て色々なものを体験するのは魅力的で刺激に満ちているのだ。

「コレットちゃん!良かったね!」

「うんうん!ディーナちゃんも!王都楽しみだね」

「コレットちゃんは行ったことないの?」

「私は小さい頃に一度だけ。でも何も覚えてないから今回が初めてみたいなもんだよ!だからさ、一緒にお菓子やさんとかカフェ屋さん巡りしようよ!」

「いいねいいね!王都にはどんなお菓子があるのか楽しみ!リサとダナも一緒に行くわよ!いい?」

「はい!」ダナが嬉しそうに答える。

「ええ、もちろんお供させていただきますわ」

 普段、ディーナのお世話をしているリサにとっては、ディーナの行くところは当然ついて行くということなのだろう。意気込みが前面に出ている。

「アルス」

 腕組みをしながら何か考えていたフランツがアルスに声を掛けた。

「どうしたのフランツ?」

「和睦会議のことを聞きそびれていたんだが、ゴットハルトはおまえと何を話したんだ?」

「あ、それあたしも聞きたいと思ってたところ」

 アイネもフランツの振った話題に乗って来た。

「まず、ゴットハルト将軍は僕らと同じく3大ギルドに苦しめられていたようだね。相当胸に秘めているものがあったらしい」

「つまり、それって将軍はルンデルから3大ギルドを追い出すためにアルスさまと和睦をしたってこと?」

 アイネの問いにアルスは頷いた。恐らくそうなんだと思う。ゴットハルト将軍は最初からそのつもりだったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...