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閑話 神様たちの秘密
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「ただいま帰りましたよ」
「おかえり…。どうした。疲れた顔をしているね?」
ここは、神様たちの世界。
あの日、アルフレッドが転生前にお兄さん神様とおじさん神様に招かれた場所だ。
何やら複雑そうな表情を浮かべながら姿を現したお兄さん神様の元に、ゆったりとした足取りでおじさん神様が歩み寄る。
お兄さん神様が両手を広げると、おじさん神様は何も言わずにそっと抱きしめた。
「今日はアルフレッド君のところに行っていたんだろう?…何かあったんだな。一人にしてすまなかった」
ぎゅう、としがみつくように腕を回してくるお兄さん神様の背中を優しくなでながら、おじさん神様が言う。
おじさん神様の肩に顔を押し付けるようにして黙っているお兄さん神様の肩は震えている。
「今日、アルフレッド君たちの様子を鳥の姿になって見守っていたんですが…」
顔を上げないままゆっくりと話し始めるお兄さん神様の言葉を邪魔しないよう、おじさん神様はゆったりと背中をなでながら、静かに続きを待った。
「アルフレッド君、我々の加護の内容を勘違いしていたそうです」
「え…?まさか…」
そう。実は、神様たちは今日ギルバートが指摘する場面を目撃するまで、アルフレッドが加護の内容を勘違いしているとは欠片も思っていなかったのだ。
「ふ…ふふ…!まさか…と思いますよね…?」
「いや…!そんな馬鹿な…!」
顔を上げたお兄さん神様は、我慢しきれない、というように声を上げて笑い始めた。
「我々が与えた加護は『ギルバート君』だと思っていたそうです」
「ギルバート君…?確かに、アルフレッド君はあの時相棒が欲しいと言っていたが…まさか、それが我々への願いだったのか…?」
当時の様子を思い出しながら、おじさん神様は背中をなでていた手も止めて愕然とした表情を浮かべる。
「そうなんです。彼が、我々神と呼ばれる存在を二人も前にして、自分の前世の命を失った代償に求めたのは『ギルバート君』だけだったんですよ」
「なんと…」
笑いすぎて滲んでしまった涙を指で拭いながら、お兄さん神様は反対の手でおじさん神様の肩をバンバン叩いている。
「それをギルバート君自身から指摘され、混乱したことでようやく「今、話が聞きたい」と願ってくれたので、ついに直接話すことができました」
「そうだったのか…」
「それで、正確に加護を理解したうえで、この加護を取り消してほしいと言ってきたのですよ」
楽しそうに笑うのを止めたその表情は、慈しみの溢れる優しい顔だった。
「今も本心からギルバート君がいればそれで満たされている…ということか…」
厳めしく見えるその顔の、目に優しい光を宿したおじさん神様がしみじみとつぶやくと、お兄さん神様も大きく頷き「彼が自分のために望んだ唯一の存在ですからね」と微笑む。
しかし、お兄さん神様は再びこらえきれないというように笑い出した。
「実は、どうやらアルフレッド君はギルバート君の想いには気が付いていなかったそうで」
「は…?」
「純粋に「相棒」としての関係で成り立っていると思っていたようですよ」
「それであの振る舞い…?」
まさか思っても見なかったことを再び聞いたおじさん神様は目を見開いて固まった。
「おそらく、前世の記憶が影響しているのでしょうが…。他者との関わり方や、自分に向けられる感情に鈍いところがあるのでしょう」
「ああ…」
「自分が自分に向ける感情も…。これから色々と知っていくのでしょうね」
ふふふ…と笑みをこぼしながら、お兄さん神様は再びおじさん神様の腕の中へと入っていく。
「彼が、自分で誰かを探すことを諦めず、ギルバート君を見つけてくれて良かったです。もし諦めて「相棒を寄越せ」と願われていれば、私が行こうかと思っていましたからね」
「それは、私が困るな」
「ふふ…。アルフレッド君が見つけたのが、ギルバート君で良かったです」
「ああ。これからが楽しみだな」
「彼等の未来は、我々にも予測不可能ですからね」
そっと抱き合いながら、今日も神様たちの一日は過ぎてゆく。
「おかえり…。どうした。疲れた顔をしているね?」
ここは、神様たちの世界。
あの日、アルフレッドが転生前にお兄さん神様とおじさん神様に招かれた場所だ。
何やら複雑そうな表情を浮かべながら姿を現したお兄さん神様の元に、ゆったりとした足取りでおじさん神様が歩み寄る。
お兄さん神様が両手を広げると、おじさん神様は何も言わずにそっと抱きしめた。
「今日はアルフレッド君のところに行っていたんだろう?…何かあったんだな。一人にしてすまなかった」
ぎゅう、としがみつくように腕を回してくるお兄さん神様の背中を優しくなでながら、おじさん神様が言う。
おじさん神様の肩に顔を押し付けるようにして黙っているお兄さん神様の肩は震えている。
「今日、アルフレッド君たちの様子を鳥の姿になって見守っていたんですが…」
顔を上げないままゆっくりと話し始めるお兄さん神様の言葉を邪魔しないよう、おじさん神様はゆったりと背中をなでながら、静かに続きを待った。
「アルフレッド君、我々の加護の内容を勘違いしていたそうです」
「え…?まさか…」
そう。実は、神様たちは今日ギルバートが指摘する場面を目撃するまで、アルフレッドが加護の内容を勘違いしているとは欠片も思っていなかったのだ。
「ふ…ふふ…!まさか…と思いますよね…?」
「いや…!そんな馬鹿な…!」
顔を上げたお兄さん神様は、我慢しきれない、というように声を上げて笑い始めた。
「我々が与えた加護は『ギルバート君』だと思っていたそうです」
「ギルバート君…?確かに、アルフレッド君はあの時相棒が欲しいと言っていたが…まさか、それが我々への願いだったのか…?」
当時の様子を思い出しながら、おじさん神様は背中をなでていた手も止めて愕然とした表情を浮かべる。
「そうなんです。彼が、我々神と呼ばれる存在を二人も前にして、自分の前世の命を失った代償に求めたのは『ギルバート君』だけだったんですよ」
「なんと…」
笑いすぎて滲んでしまった涙を指で拭いながら、お兄さん神様は反対の手でおじさん神様の肩をバンバン叩いている。
「それをギルバート君自身から指摘され、混乱したことでようやく「今、話が聞きたい」と願ってくれたので、ついに直接話すことができました」
「そうだったのか…」
「それで、正確に加護を理解したうえで、この加護を取り消してほしいと言ってきたのですよ」
楽しそうに笑うのを止めたその表情は、慈しみの溢れる優しい顔だった。
「今も本心からギルバート君がいればそれで満たされている…ということか…」
厳めしく見えるその顔の、目に優しい光を宿したおじさん神様がしみじみとつぶやくと、お兄さん神様も大きく頷き「彼が自分のために望んだ唯一の存在ですからね」と微笑む。
しかし、お兄さん神様は再びこらえきれないというように笑い出した。
「実は、どうやらアルフレッド君はギルバート君の想いには気が付いていなかったそうで」
「は…?」
「純粋に「相棒」としての関係で成り立っていると思っていたようですよ」
「それであの振る舞い…?」
まさか思っても見なかったことを再び聞いたおじさん神様は目を見開いて固まった。
「おそらく、前世の記憶が影響しているのでしょうが…。他者との関わり方や、自分に向けられる感情に鈍いところがあるのでしょう」
「ああ…」
「自分が自分に向ける感情も…。これから色々と知っていくのでしょうね」
ふふふ…と笑みをこぼしながら、お兄さん神様は再びおじさん神様の腕の中へと入っていく。
「彼が、自分で誰かを探すことを諦めず、ギルバート君を見つけてくれて良かったです。もし諦めて「相棒を寄越せ」と願われていれば、私が行こうかと思っていましたからね」
「それは、私が困るな」
「ふふ…。アルフレッド君が見つけたのが、ギルバート君で良かったです」
「ああ。これからが楽しみだな」
「彼等の未来は、我々にも予測不可能ですからね」
そっと抱き合いながら、今日も神様たちの一日は過ぎてゆく。
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