ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~

桐山じゃろ

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第一章

11 寝食忘れてのめり込むタイプだったわ

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 暗くなりつつある街中で、男女が複数人で揉めてたら、日本でも通報される。
 誰かが呼んだ警備兵たちが、僕らと周りの人間の話を聞いた後、僕以外の男をどこかへ連れて行った。


「ありがとうございました。また助けて頂きましたね」
 メルノが深々とお辞儀する。ちなみにマリノは、男たちをしてすぐ、僕にしがみついてきたので、そのまま片腕で抱っこ中だ。泣く寸前といった状態で、僕の肩の辺りに顔を押し付けて離そうとしない。よっぽど嫌な目に遭ったようだ。……あの弓のやつ殴っとけばよかった。

「いつもお世話になってるのは僕の方だし、2人に何かあったら嫌だからね。ところで、どうしてあの状況に?」
 するとメルノはスッと半眼になった。え、怖っ。こんな表情できたんだ。

「目がエロかったので、そういう目的の方々だったようです」

「ああー……」
“ああー……”
 ヴェイグとハモった。

 しがみついたままのマリノが僕の服をギュッと握りしめた。マリノから直接、何を言われたのかは聞かないけど、やっぱりいつか弓のやつ殴ろう。
“アルハ、あの弓のやつにまた会うことがあったら、一度交代を頼む”
 ヴェイグも同じ気持ちだった。



◆◆◆



 俺とアルハは毎日でもクエストをこなせるのだが、メルノ達にそこまでの体力はない。俺たちだけで行ってもいいが、最近は合わせて休養をとることにしていた。今日は、そんな日だ。

 部屋でひとり、だらりとした姿勢で椅子に座ったアルハの左手の指先に、白い短剣が止まっている。
 先日、「良い武器は重心の位置が丁度いい」というようなことを教えたら、指先に短剣を乗せて確認していた。
 そこから、柄を人差し指の爪の先に乗せて立たせ、短剣をわずかに跳ね上げて中指の爪先へ……という動きをやりだした。
 中指、薬指と順に動かしていき、小指からまた薬指へ、と人差し指まで戻ってくる。
 初めは本当に、重心の位置を掴むためにやったのだろう。動きはゆっくりだった。それが最近では、短剣は殆ど動いていないように見えるのに、支える爪先だけが尋常でない速さですり替わるようになった。
 しかも、今のように考え事をしている間にもそれをやっている。無意識に行う手慰みと化している。
 何度見ても面白い光景なので、俺も長い時間眺めていることが多い。

“何を考えている?”
「……んー。スキルをもうちょっといい感じに使えないかな、って」

 先日、メルノとマリノがならず者どもに絡まれていた。俺が口や手を出さずとも、アルハがあっと言う間にそいつらを制圧した。酒場のときのような及び腰の連中ではなく、腕に覚えのある者たちのようだったが。

 アルハはあの2人を大切な存在だと認識している。己の持つ力を使って、2人を遠隔から守れる方法を模索している。俺もその考えを蔑ろにしようとは思わない。

“気配察知を常時発動させればいいだろう”
「……僕がそれされたら嫌だな」

 気配察知は魔法でもできるが、相手に感づかれることはない。ところが、アルハにしてみれば「見られている感じがわかる」というのだ。
 以前ギルドですれ違った冒険者が戯れにアルハに魔法による気配察知を発動させたことがある。ギルドから出ようとしていたアルハが踵を返して知らない冒険者に突然「止めてくれ」と言い出した時は、何の話か分からなかった。冒険者は気配察知を止めたらしく、アルハもそれ以上は何も言わなかったが、向こうにしてみれば理解不能だっただろう。

「あ」
 短剣がぐらりと揺れたが、指2本で挟み止めていた。
“どうした?”
「いや、そういえばさ。魔力渡す時に球体にできるんだから、他の形にできないかな、って」
 俺が何か言う前に、アルハは右掌を上に向けて、いつもの球体を創り出した。魔力そのものを球状にすること自体おかしな話しなのだが、アルハが当然のように行うのでいつのまにか感覚が麻痺していた。

 球体はすぐに、ごく単純な形の黒い短剣へと変化していた。
「できた」
“あっさり創るものだな……”
 アルハの成長の早さには目を見張るものがある。
 左右の短剣を持ち替えて、先程の手遊びを再開する。今度は短い時間だった。

「よし、重心はいいとして……切れ味は試さないとわかんないな」
“外に出るか?”
「うん。またあのゴーレム頼むよ」
“わかった”

 あのゴーレムとは、俺が魔法で創る動く人形だ。武器やスキル使用の確認の相手として、アルハに重宝されている。本来の用途はマリノの精霊のように使役して主に盾役をするものなので相応に硬いはずなのだが、アルハにかかれば便利な的代わりである。
 家の裏手にある空き地で10体ほどのゴーレムを創り出し、設置した。

 直ぐに1体が縦に細切れにされて消えた。
“何度か言っているが、短剣でそのように斬れるものではないのだがなぁ”
「そう言われても斬れちゃうんだよな」
 今のは魔力で創った短剣で斬ったようだ。
「切れ味は申し分ないね。じゃあ次は……」
 再び右掌を上に向けて、同じ短剣を出現させた。
“同時に2本創れるのか”
「何本までいけるかも試したいけど、これはさっきの10分の1ぐらいの魔力で創ってみた」
“最初のやつはどのくらい使ったんだ”
「いつもヴェイグに渡してるのと同じくらいだよ」
“俺の魔力ほぼ全てではないか……”
「だってあの量でしか球にしたことなかったから……」
“ちなみにあのゴーレムは1体につき50程だ”
「そうだったんだ。えーっと」
 アルハはステータスを表示させて、魔力の消費量を見ながら短剣を創ってはゴーレムを斬り、また別のを出す、というのを繰り返した。

 途中でゴーレムや魔力が尽きて回復のための休憩を挟んだが、昼過ぎから始めて日が傾くころまで修練を続けた。
 アルハは一度何かをやりだすと時間を忘れる性質たちのようだ。スキルで夜目が利くらしく、辺りが暗くなってもまだ止める気配がなかった。

“アルハ、そろそろ遅い。このあたりにしたらどうだ”
「え、あっ!? いつの間にこんな暗かったの?」
 本当に気づかなかったらしい。

 慌てて家に戻ると、玄関からメルノが出てくるところだった。
「アルハさん! 部屋に居ないから探しに行くところでしたよ」
「ごめんごめん、すぐ裏に居たんだけどさ、時間忘れてた」
「アルハさんなら心配はいらないのでしょうけど……。夕食できてますよ」
「ありがとう」



◆◆◆



 魔力を短剣に換えることができたので、ヴェイグにほぼ丸一日付き合ってもらって、試し斬りを繰り返した。
 魔力を多く込めるほど耐久度は上がるけど、切れ味はあまり変わらなかった。
 最終的に、短剣1本あたり魔力は10で十分なことと、少なくとも百本はまとめて創れること、元々が魔力なので自在に宙に浮かせたりできることが分かった。
 百本を一度に飛ばしてゴーレムを木っ端微塵にしたときは、ヴェイグに引かれたけど。

 手から離しても大丈夫な距離とか、色んな効果を付けられるかとか、他にも試したいことがたくさんある。
 けど、気づいたら日が暮れてて、ヴェイグに言われて驚いた。
 続きはまた今度にしよう。
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