ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~

桐山じゃろ

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第一章

21 地雷踏んじゃったおじさん

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「何でしょう?」
 返事はしてみたけど、何なのこの人。
 すぐ側まで近づいてきて、僕を上から下まで睨みつけて、はんっと笑った。

「ヘラルドが役に立たねぇからって適当な馬の骨雇ったんだな。幾らだ?」
「何の話ですか?」
「幾らで雇われたのかの聞いている。倍払ってやるから、失せろ」
 本当に何なのこの人。

「お金は頂いてませんし、頂くつもりはないです」
「ふん」
 失礼な男は鼻を鳴らして、懐に手を入れると小さな革袋を取り出した。それを僕の足元に投げつける。
「ほら。10万はある」
 そんなこと言われても拾う気になれません。

「ダルク叔父様!」
 フィオナさんが開きっぱなしの扉から慌てた様子で入ってきた。馬車に乗っていたときとは違う、豪奢なドレスを着ている。ダルク叔父様と呼ばれた人、僕、足元の革袋を順に見て、つかつかとダルク氏に近づいた。

「この方は私のお客様です」
「ほーお? どこの者とも知れん男と仲良くしておられるわけか」
「アルハ様には命を救っていただいたのです」
「護衛ならヘラルドがいるだろう。これ以上、護衛を増やして兄上の遺産を食いつぶされてはたまらん」
「お客様に失礼ですわ、ダルク叔父様!」

 ぜんぜん話が見えない中、この失礼な男がいけ好かないのだけわかった。
 あと、親類の遺産が云々の話は、僕にとって地雷だ。

 足元の革袋を拾い上げて、ダルク氏に近づく。
「落としましたよ」
「あぁ? ……ひっ!?」

 こっちの世界に来てから、魔物は沢山殺した。人と戦ったりもした。
 相手が威嚇やハッタリで向けてくる、殺気や憎悪。最初のうちはそれだけで身がすくむこともあった。
 人にできることなら、僕にもできるはずだ。

 ダルク氏の目を真っ直ぐ見て、その手に革袋を押し付けながら、自然とこみ上げてきた負の感情をぶつけてやった。

「僕はフィオナさんとお話があります。貴方とお会いする約束はしてません。話があるなら、フィオナさんとのお話の後で承ります。ですので、今はお引取り願います」
「あ……あう……」
 ダルク氏はその場にへたり込んでしまった。腰でも抜けたのか、動けない様子だ。脅かしすぎたかな。

「……はっ! ヘラルド、叔父様を」
「あっ、はいっ」
 フィオナさんが命じると、ヘラルド君がダルク氏に近づいた。手を差し出したらダルク氏はそれを払い除けて自力で立ち上がり、慌てて部屋から出ていってしまった。なんだ立てるじゃん。


「すみません、出過ぎた真似をしました」
 ヘラルド君が扉を閉めた後、フィオナさん達に向き直って謝った。
「いえ、こちらこそお見苦しいところをお見せして、申し訳ありませんでした」
 フィオナさんが目を伏せる。それから口元に手をやり、フフフと笑った。
「でも……あんな叔父は初めて見ました」
 日頃から鬱憤溜まってそうだ。

「コホン……失礼しました。お礼のことなのですが……。アルハ様はこちらの町へ、どういったご用件で来られたのですか? 差し支えなければお聞かせください。お手伝いできることがあるかもしれません」
「手伝えること?」
「はい。当家は貿易商を営んでおります。アイテムの取引や魔道具製作の請負、それと、町に古くからある家として、あちこちに伝手もあります。何かお役に立てませんか?」
「それなら丁度良かった。実は、前の町で換金できなかった封石があって」
 背の鞄を降ろして、中に手を入れる。その中で無限倉庫を出して、そこからティターンの封石を一つ取り出した。
「これなんですけど、どうですか?」
「まあ、これは……手に取っても宜しいですか?」
「どうぞ」

 フィオナさんは封石を両手で取り、色んな方向から眺めて、僕の手に戻した。
「見たこと無いほど大きな封石ですが、これなら2500万はお出しします。いかがでしょう?」
 2500万!? 確か前の町の道具屋さんは2000万って言ってたような。

「えっと、高すぎないですか?」
「えっ?」
 何故かフィオナさんはキョトンとしてから、また小さく笑った。
「フフ……変わったお方ですね。こちらの買い取り値を高すぎると言われたのは、初めてです」
 あー……。僕、お店での交渉とか苦手なんだよな。前の町ではメルノが食料品店で上手くやってたなぁ。せめてヴェイグに替わってもらおうかな。
「そうですね……おそらく、小さな町のお店では、買い取れても2000万と言われたのでは? それは確かに相場ではありますが、少し古い話です。最近の魔道具の需要高騰で、大きな封石の価値は上がっているのです」
 なるほど。
「適正価格で買い取って貰えればそれで十分ですので。それとこの封石、全部で10個あるんです。まとめてお願いできますか?」
「10個も!? はい、大丈夫ですが……そうですね、準備に3日程掛かりますが、よろしいでしょうか」
 2億5000万エルだもんな。それでも全部買い取ってくれるのはありがたい。城下町まで行く必要もなくなるし。
「あ、あとこれも……」

 他のティターンのドロップも次々取り出して、鑑定してもらった。これも一応、前の町の道具屋さんに見てもらったけど、手に負えないと言われてしまったのだ。
 結果、総額3億3000万エル。準備日は3日で変わらず。
 唯一、例の謎の金属塊だけ「申し訳ないのですが、素材がわかりませんので……」と拒否されてしまうも、他のやたら大きな斧などは買い取ってもらえることになった。
 明らかに鞄には入り切らない斧を出した時は随分不思議がられてしまったけど、詮索はされなかった。

「本当に助かります。ありがとうございます」
 商談と言っていいかわからない、買取のお願いを聞き入れてもらって、僕はお礼を言った。
「こちらこそ。それでは、お部屋にご案内しますね。一旦お寛ぎ頂いた頃には晩餐の支度も整いますので」
「へ?」
「現金をご用意するまでの3日間、是非こちらにご滞在ください。おもてなしいたします」
「いや、そこまでお世話になるわけには……」
「ですが恩人を町の宿に送り出すというのも、体裁がよくないのです。どうか」
 そこまで言われると、恩倍返しシステムにしても断りきれない。
「では、お言葉に甘えて」


「僕と歳、そんなに変わらなさそうなのに、すごい鑑定眼だよね」
“俺も驚いた”

 晩餐が終わり、お風呂を借りた後、今はあてがわれた部屋に2人だ。こっちに来てから今まで寝泊まりしてきた部屋の中で一番広くて豪華だ。これで客室だというから、このお屋敷どれだけ広いんだろう。
 ふかふかクッションつきの椅子に腰掛けて、短剣の手入れをしながらヴェイグと無言で会話をしていた。

“あのダルクとかいう男を追い払った威圧も、すごかったぞ”
「上手くいってよかったよ」
“見ているこっちが気の毒になるほどだった”
「そんなに?」
“あれなら竜でも逃げ出す”
「御冗談を」

 他愛のない会話をしていたら、扉をノックされた。
「はい、どうぞ」

 扉を開けて部屋を覗き込んできたのは、ヘラルド君だった。
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