ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~

桐山じゃろ

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第三章

31 とりあえず人助け

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 これまで、世界にある6つの大陸のうち、3つで解呪の旅を敢行してきた。
 トイサーチがあるのはアーノ大陸。
 ジュノやディセルブを擁するデュウ大陸。
 それから、メデュハンなどの大きな街が栄えているトリア大陸。
 トリア大陸はアーノとデュウから離れていて、解呪する回数が少なく済んだ。
 同じくらい離れたシーズ大陸から、呪術に関係する報告は全く来なかったのには安堵した。

 ところが、アーノ大陸から見て、一番離れた位置にあるコイク大陸から、多くの悪い知らせが入ってきた。

 コイク大陸にあるエイシャという村のある辺りは、以前ヴェイグが死んだ土地だ。
 一度行ってみたかったとはいえ、こういう形になるとは。

“おかしな話だな”
「だよね」
 旅の支度をしながら、ヴェイグと駄弁る。
 コイク大陸は、テファルという王国が全土を統治していて、他の国や大陸とあまり交流を持ちたがらない、と以前聞いた。
 それが、情報がどんどん届くばかりか「助けてくれ」と言ってきている。
“俺の知識が五十年前のものだからな。既に国を開いているか、冒険者ギルドは別管轄で動いているか。或いは”
「よっぽど切羽詰まってるか、だね」

 メルノとマリノに行ってきますを言って、異界の扉に入る。
 コイク大陸の座標は、大まかにしかわからない。ヴェイグの座標魔法を頼りに、異界の中から外の気配を読みながら、人も魔物もいない場所へ繋ぐ。

 少しだけ扉を開けて、様子を伺う。
 ちゃんと地面の上であることを確認して、異界から出た。

「久しぶりの感想は?」
“わからん”
 座標魔法はたしかにコイク大陸を指した。でも、土の感触も、生えている草木も、ざっと見た感じではアーノ大陸と変わらない。無理もないか。
「とりあえず町か村を……あ」
 魔物が人の近くにいる。魔物のは難易度Aくらい。人は二人だけど、一人が倒れているようだ。
 ヴェイグにそれを伝えると、魔力を待機状態にしはじめた。
 地面スレスレを、走るように飛ぶ。平地を進む時は、これが一番速く移動できる。但し、ヴェイグからは不評だ。速すぎて景色を堪能できないらしい。今は緊急事態なので我慢してもらう。
 すぐに魔物の場所へたどり着いた。二人のうち大人の男性が倒れていて、もうひとり小さな男の子が、木の剣で魔物を牽制している。男の子はマリノより少し大きいくらいかな。
 二人共、冒険者ではなさそうだ。事情は後で聞こう。
 魔物の方は、黒い毛むくじゃらの、やたらとマッチョな熊だ。

 熊が男の子に腕を振り上げたタイミングで、間に入ってその腕を短剣で止めた。

「っ!? だ、誰?」
「冒険者。魔物、僕が代わりに倒してもいい?」
 普通なら返事を聞くまでもないし、そもそも尋ねるまでもない。魔物が人の前に現れたら、やるかやられるか、だ。
 しかしここは、コイク大陸。つい先日まで閉鎖していた場所だから、文化やしきたりはよく解っていない。なにか事情があるかもしれないと念のためにお伺いを立てる。
「うん、助けて!」
 男の子が間髪入れずに叫んだ瞬間に、短剣で熊の腕を弾き、心臓を一突きした。
「え? もう終わったの?」
 熊が倒れて消えていくと、男の子がきょとんとして、僕を見上げた。
「こっちの人は、君のお父さんかな」
 倒れている男性のそばにしゃがみ込み、ヴェイグに治癒魔法を使ってもらった。頭を殴られて昏倒していたようだ。
 治癒魔法が効き、男性が意識を取り戻す。
「うう、私は……ティグ! ティグはっ」
「父さん!」
「ティグ!」
 男の子が男性に駆け寄ると、男性は男の子をしっかり抱きしめた。


「いやあお恥ずかしい。黒クマに遅れを取るとは」
 男性はティグの身体に怪我はないか確認した後、頭をかきながら立ち上がった。
 黒クマというのが魔物の名前のようだ。なんでもない相手にやられたっていうニュアンスに聞こえるのは、とりあえず突っ込まないでおこう。
「私はセイムと申します。見たところ、異国の方のようですが」
 握手を求められ、応じながら僕も自己紹介をする。
「アルハと言います。お察しの通り、さっきこの大陸に着いたばかりです」
「着いたばかりで、こんなところに?」
 しまった。どうやらここは港町から遠いらしい。
「転移魔法が未熟で、暴発したんです」
 焦りつつ、なんとか言い訳をひねり出してみた。ヴェイグが転移魔法を失敗したことは無いけど、以前、暴発することもあると言っていたから、これで通せないかな。
「はあ、魔法のことはわかりませんが、それは大変でしたね。しかし、そのおかげで助かりました」

 お礼をしたいと言われたので、近くの人里までの道案内をお願いした。
 セイムさんは僕が今まで見てきた成人男性の中で一番背が低いかもしれない。僕の胸元辺りくらいだ。
 明るい茶髪で、瞳は緑色。息子であるティグも同じ色合いだ。
 この大陸には黒髪や黒目が居ると聞いていたのに、僕の黒髪黒目で異国人認定されたぞ。
“俺の記憶では、村人は皆黒髪だったがな”
 セイムさんとティグが珍しいのかもしれない、という淡い期待は、案内された村で砕け散った。

 今までの大陸で見てきたより偏りはあれど、村の人達は様々な髪や瞳の色をしていた。
「他の村へ行けば、黒髪いるかな」
 思わず漏れた独り言を、ティグが聞きつけた。
「黒髪って見たことないよ。アルハさんが初めて」
「昔は黒髪が多かったって耳にしてきたんだけど」
「昔のことはわかんない。でも、そんな話は聞いたことないや」

 村への案内のみを頼んだはずなのに、結局セイムさんのお宅まで案内された。
 そして流れるように、こちらをどうぞと空き部屋に通される。
 ここもか。ここも恩倍返しシステムなのか。世界規模なのか。
 流されてしまう僕も良くないんだけど。


「なんと、他国ではそのような話になっているのですか。どおりで……」
 僕がこの大陸に来た理由を、冒険者ギルドからの要請ということにして話した。
 セイムさんの反応はその過程で、国交が云々の話になった時のものだ。
「実際は違うと」
「はい。確かにまだ一部は閉鎖的ですが、十年以上前から国を開いております。それと、その冒険者ギルドというのは……あって無いようなものというか」
 セイムさんが口ごもるのは、僕が冒険者だと名乗ったせいだ。
 ちゃんと話が聞きたいとお願いすると、セイムさんは遠慮がちに話してくれた。
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