ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~

桐山じゃろ

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第三章

39 澱み

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 コイク大陸の魔物は、他の大陸と同じ魔物と、この大陸でしか見かけない魔物が半々だ。
 ギルドに情報のない魔物の難易度を決めるのは、今の所、僕の匙加減次第となっている。
 今までの経験を活かして、なんとかやれている。
 セイムさんと出会うきっかけになった『黒クマ』は、僕が見たことなかっただけで他の大陸では『ブラッドベア』という名前でギルドに情報があった。難易度はB。元隊員の人たちは全員、一対一なら余裕で倒せる相手だ。
 元隊員は殆ど新人ルーキーから上級者ベテランまでランクアップを果たしていた。既に熟練者エキスパートも数人いる。難易度の高い魔物を見つけやすいのと、それを倒せる実力があってのことだ。

 今回も、魔物探しを手伝った後は元隊員たちに任せ、僕は少し離れて様子を見ていた。
 相手はブラッドベアが3体。パーティは上級者ベテランばかり3人と僕。本来、上級者ベテランの相手として適正なのはF、Eあたりだ。でもこのパーティは余裕で相手をしていた。
 元々、もっと強い魔物を相手にしてきた人たちだから、油断は無い。一人一体を相手に、次々に討伐を完了する……はずだった。
「なっ!?」
 一人が声を上げた。いつもなら止めになっていたはずの一撃を、ブラッドベアが耐えていた。
 ブラッドベアの方の動きが怪しかったから、注意しておいてよかった。直ぐに僕が間に入り、ブラッドベアの動きを止めた。
「怪我は?」
「ありません。……すみません、油断を」
「見てましたけど、問題なかったはずです。おかしいのは、こいつだ」
 ブラッドベアの急所を短剣で一突き。それでようやく動かなくなった。
「大丈夫か?」
 他の2人が問題なく討伐を終えて集まってきた。
「ああ、先生が助けてくれたからな」
 元隊員さんたちは、僕のことを先生と呼ぶ。「そんな大層な者じゃないです」とは言ったんだけど、「冒険者のことを教えてくれるんだから先生だ」と、あっという間に定着してしまった。
「先生、今のはどういうことですか?」
「個体差、どころじゃなかったですね。一旦持ち帰らせてください」
 少し嫌な予感がして、[気配察知]や[超感覚]を発動させる。
 予感は的中した。でも、何故?
「今日はこれで切り上げましょう。しばらくクエストも休みになると思います」
 ドロップアイテムを回収した後、町へと戻った。



 1時間後、再び同じ場所にやってきた。
「ここに、ほんの少しだけ呪術の痕跡があるんだ」
“……そうか”
「心当たりある?」
“以前から、考えたくないことがあってな”
 ヴェイグが言い淀む。
「多分、僕も同じことを考えないようにしてた」

 呪術を撒いたのは、ディセルブの呪術使い達だ。
 人の手で行うものだから、海を渡ってまでわざわざ呪術を使うことは殆どない。
 事実、ディセルブから離れた大陸ほど呪術の痕跡は少ないか、全く無かった。
 それが今、ここにこうして存在している。


「僕ら自体が、呪術でできてる」
 確認のため口に出すと、ヴェイグは無言で肯定した。


 僕が異世界に転生した理由は未だによくわからない。
 しかし、ヴェイグは明確に、呪術によってよみがえっている。
 今の状態自体が、呪術によって構成されているのだ。

「長居しちゃったもんね」
 1ヶ月で、魔物に影響が出るほどの痕跡を、その地に撒いてしまうようだ。
“アルハ”
「謝るのは無しだよ。ヴェイグのせいじゃない」
“だが……もうどこにも、定住できぬのだぞ”
「ちょっと不便だね」
“ちょっと不便、で済む問題か?”
「ヴェイグと一緒なら旅も悪くないからね」
“俺も、アルハとなら悪くないが”
「まあでも、メルノ達とゆっくり過ごせないのは辛いから、解決策も探そう」
“無論だ”

「とりあえずは……」
 あたりを見回す。[気配察知]だけを強化して、広範囲を調べ上げる。
 20分の1くらいの割合で、影響がでているようだ。
“始末をつけるか”



 強くなった魔物だけを討伐するのは、半日で済んだ。
 念の為に大陸中を確認して回りたいところだけど、これ以上長居するのも不安だ。
 ボーダには、魔物が異常に強くなることがあるから、冒険者たちにくれぐれも注意をして欲しいとだけ伝えた。
 しっかり[解呪]もしたから、僕らがこの地から離れれば、これ以上魔物に影響はでない、と信じたい。

「先生、出立すると聞いてきました」
 真夜中だというのに、僕が泊まっていた宿屋の前に元隊員の冒険者たちが集まっていた。
 急用ができたことにしてテファニアを去ると告げたのは、ついさっきだ。
 ボーダが気を回してくれたのだろう。
 餞別と称して、テファニアの保存食をたくさん貰ってしまった。
 野菜の塩漬けが、日本の漬物に似てて懐かしい味がするんだよね。
「こんなに、ありがとうございます」
「お礼を言うのはこちらです。また是非来てください」
 全員と順に握手を交わしてから、町を出た。



「で、どうしようか」
“うむ……”
 コイク大陸からは出ようということで、一旦異界に入った。
 そこから、身動きが取れなくなってしまった。

「一ヶ月って、累積かな」
“だとすると、本当に異界以外は行く場所がなくなるぞ”
「人が住んでない大陸があるんだっけ」
“確認がとれていないだけで、実際はわからん”
「座標もよくわかってないんだっけ。適当に行くしかないか」
「おいでよ魔女の森」
「なにか言った?」
“俺ではない。だが、確かにあの森ならば呪術の影響を受けなさそうだな”
「ジュノの近くなのに大丈夫かな……いやいや、なんで居るの!?」
「いえーい」


 異界に、カリンがいた。


「2名様、ご案内ー」
 カリンがぱん、と手を打った瞬間、いつか見た和室にいた。
“相変わらず、滅茶苦茶な魔法だな”
 カリンはジュノ国の北の森に住んでいる、自称魔女だ。
「本当に大丈夫なの?」
「うん、遠慮しないでー」
 カリンはいつのまにか着物姿になっていて、いそいそと抹茶を点てている。
 僕の方も、旅の装備から着流しになっていた。
「いつのまに!?」
「似合う似合うー」
“変わった服だな。ちょっと替わっていいか”
 交代すると、どうやって着ているかをつぶさに観察しはじめた。ヴェイグの順応力がすごい。
「まあまあ、くつろいでよ。話もしたいし」
“話?”
「そ。ふたりとも、気づいたからね」
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