ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~

桐山じゃろ

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第四章

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 フィオナの行動は速かった。
 アルハの足跡を調べ上げ、訪れた先で親しくなったであろう人物を絞り込むと、すぐに連絡を取った。
 最初にフィオナに捕まったのは、デュウ大陸はジュノ国王女、オーカ・オーギュスト・ジュノである。

 アーノ大陸で名を馳せる豪商ロズマリー家から何の話かと思いきや、女子会のお誘いであった。

「じょしかい?」
 ロズマリー家から物質転送魔法で届いた通信石に、オーカが問いかけた。
「女性ばかりで女性らしいお話をする集まりですわ。今回の議題は、アルハ様とメルノ様について」
 通信相手はフィオナ本人である。豪商と言えど一商人のフィオナが王女オーカと対等に話せるのは、ヘラルドのお陰だ。ヘラルドはこの一年で、上級者ベテランから熟練者エキスパートにランクアップし、冒険者としてならばオーカと同ランクにいる。ヘラルド経由で話せば、オーカとフィオナは対等の位置に居られるのだ。
「是非伺います、と言いたいところなのだけどね」
 フィオナの勢いに気圧されて、オーカの口調はだいぶ砕けている。
 オーカはアルハの事情を知っている。成り行き上、本人から直接聞かされたのだ。
「私も一国の王女なのよ。冒険者といえど一般庶民いち個人の問題に首を突っ込んでばかりいられなくて」
 通信石越しでも歯ぎしりの音が聞こえそうなほど、オーカは悔しがっている。
「ひとまず、代理を送る。私も、時間を作って必ず向かうわ」
「分かりました。皆様をお待ちしております」

 代理に抜擢されたのは、リースだ。
 アーノ大陸とデュウ大陸の行き来は通常、船で最短二十日はかかる。リースは幸いにも、リオハイル王国の城下町に転移魔法の印を持っていた。リオハイル城下町からトイサーチまでもまた、馬で十日ほどの距離があるが、船の二十日が無い分、短縮できる。
「アルハの好物より、こっちのほうが良い」
 ライドに託されたのは、高脂肪・高栄養で売っている携帯食料だ。女性冒険者から忌み嫌われているこの品を、ライドは最近せっせと摂取している。しかし見た目に反映されていない。
「本当に効くの?」
「俺のことはいい。アルハには効くかもしれないだろ」
「そもそもアルハだってもう食べているんじゃないの?」
「出たばかりの新作だから、アルハはまだ知らないだろう」
 アルハとライドは、いつの間にか「食べても太らない連盟」というのを立ち上げていた。会員数は2名から増える気配はない。
「わかったわよ。エリオスは言付けとか、ない?」
「リースが直接アルハに会うわけじゃないだろう。そうだな、これでその2人に何か土産でも見繕ってくれないか。俺にはわからん」
 そう言いながら、エリオスはリースの手に金貨を何枚か手渡した。
 その2人、というのはメルノとマリノのことである。
「私も話でしか知らないのだけど」
「俺が変なものを選ぶよりはマシだろう。余ったら手間賃として取っといてくれ」
「それもそうね。分かった」
 リースは2人から託されたものをバックパックに詰め、転移魔法を使って旅立った。



 オーカはフィオナから連絡を受けた日に、ファウに頼んでディセルブとの連絡を試みた。
 ディセルブには通信石がなく、石のある最寄りの町から馬を使い、ようやくファウの親族まで辿り着く。
 往信に5日かかったが、返信はすぐにやってきた。
 ジュリアーノ上空に巨大な船が現れ、町がちょっとした騒ぎになった。

「驚かせて申し訳ない。イーシオン・ディノ・ディセルブと申します。オーカ姫がお呼びと聞いて参上しました」
 空から降りてきたディセルブの元王族に、セネルが応対する。
「色々とお聞きしたいことはありますが、先ずは我らの恩人であるアルハ殿について話をしとう存じます。こちらへ」
 セネルがいつもの執事ぶりを発揮し、イーシオンとタルダをもてなす。
 その間、オーカは立ち上がったまま呆然としていた。
「姫?」
「あっ、ごめ、失礼しました」
 セネルに怪訝な顔で覗き込まれ、慌てて砕けた口調を正しながら席につく。
 しかし目は、イーシオンに釘付けだった。

 イーシオンはヴェイグの遠縁にあたる。元々、ディセルブの王族は皆、顔立ちが整っている。
 アルハとは方向性の違う男性の魅力に、オーカは戸惑っていた。

 戸惑いは、イーシオンの余所行きの顔が剥がれるまでだった。

「アルハはここでも大活躍だったんだね」
「そうなの。でも、ディセルブを救った話はあまり聞かせてくれなくて」
 ぎこちないオーカに、セネルが「お互い王族ですから、気を楽にされては」と提案すると、すぐにイーシオンが乗った。
 堅苦しい喋りは苦手だ、と申し出た。
 オーカも了承し、まずはお互いにどうアルハに救われたかの話から始まり……この日はずっとアルハについて語るだけで終わった。

 二日目に、アルハの話が一通りすんでふたりとも満足した頃、セネルに促されてようやくお互いに自己紹介をした。
 オーカは既に、イーシオンにすっかり気を許していた。
 オーカと同じく、アルハと関わり、アルハに憧れる王族という共通点もある。
 イーシオンのことが気になって仕方がなくなるのに、時間はかからなかった。

 イーシオンはアルハとヴェイグに出会ってからのこの一年で、劇的に変化していた。
 王族としての振る舞い方について積極的に学び、まず所作や礼儀を身に着けた。
 イーシオンの目標は勿論、アルハとヴェイグである。
 強さだけならスキル使いらしく、並の冒険者では束になっても歯が立たない程度にはなっていた。
 それでも、まだまだ目指す先は遠い。
 2人に追いつくことに夢中なイーシオンの目に、オーカは「同志」としか映っていなかった。



 そのころタルダは、質素な別室で姉ファウと話をしていた。通信石や書面でやり取りはあったものの、直に会うのは十数年ぶりである。
 何度も機会はあったのだが、解呪後のファウは「合わせる顔がない」と、ディセルブに近づこうとしなかった。
「反省し、償い続けていると聞きました。だから……」
「私の問題なのよ、タルダ」
「姉上も兄上も、頑固ですね」
 一向に態度を崩さない姉をみて、つい兄のことを口にした。
 ヴェイグのことを思い出したのか、ファウは一つため息をつくと、タルダに向き直った。
「きょうだいで、まともに育ったのは貴方だけ。だから私も兄様も、貴方にだけはまっとうに生きてほしいの」
「私は充分、まっとうに生きましたよ。兄上も自由に生きておられます」
「……もう少し、時間を頂戴」
 それきり沈黙が降りたが、どちらも長い時間、その場から動こうとしなかった。
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