ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~

桐山じゃろ

文字の大きさ
198 / 219
後日譚

テファル国にて 2 らしくない

しおりを挟む
 リアスは一応、王族に名を連ねていたそうだ。

 先代皇帝の妹の末子で、歳上の兄弟や従兄弟が多かったため王位継承権の順位が低く、それゆえ自由に育てられたとか。
 自由すぎて城を飛び出し討伐隊になり、隊員として頭角を現すまでは、まだよかった。
 討伐隊で気に入らない人がいれば、内外から手を回して除隊させる。
 討伐の際に自分より活躍しそうな人の足をわざと引っ張る。
 自分のミスは他人のせいにする……とまあ、好き放題やらかした。
 本人が圧倒的に強く権力もあったため、僕が返り討ちにするまで手がつけられなかった。



「冒険者ギルドとの一連の件の咎で王族からの除名が決まった直後、姿を消した。城に監禁していたのだが、力ずくで拘束を解いた跡があった。あの拘束を解くほどの力はなかったはずなのだがな」
 マサンが何を言いたいのか、もう察しはついている。
 話している間にも、僕は気配を探し続けていた。
 どうやら異界かどこかを出入りしていて、時折見失ってしまう。
 しかも複数いる。

「アルハ。その、俺達が遭った魔物は……」
「僕が呼ばれたってことは、そういうことだよね。大丈夫、始末付けてくる」
「すまん」
「どうしてマサンが謝るの!?」
 マサンが僕に頭を下げるから、慌てた。
 
 リアスが魔物になった原因に、一番関わってそうなのは僕だ。
 なにせリアスと会ったときの僕は呪術をたっぷり身に纏っていたし、心を折りまくっている。
 でも僕は僕のせいだと思わない。無論、誰のせいでもない。
 人が魔物になってしまうのは、どうしたって本人の心次第だ。
「弟子の不始末をつけられねぇからな、俺は」
 自分がやるべきことを他人に任せる行為は、己の矜持を傷つける。
 あの魔物は、マサンが刺し違えたとしても倒せる相手じゃない。
 全部飲み込んで、マサンは僕に託してくれた。
「僕に任せとけって」
 軽い調子で請け負うと、マサンは無理やり笑みを作った。

「頼んだ」



 頼まれたとは言え、どうしたものかと考え込んでいた。
「今回は僕とヴェイグだけじゃ無理だ」
 恐らく異界に出入りしてなかなか居場所を掴ませてくれない魔物たちの気配をなんとか区別すると、少なくとも二十体はいるようだった。
 多すぎる。そのうちの一体はリアスかもしれないとしても、他は誰がどうしてしまったんだ。
〝では、どうする〟
 真っ先に頭に浮かんだのは、ラクと竜たちだ。
 ラクに通信石で連絡を取ると、すぐに「了承した」と返事をくれた。そして三分後には、ラクとイオと緑竜たち、更に初めて見る竜数名が、全員人の姿で僕の近くに立っていた。

「異界を通ってきたが、アルハの言うような気配は無かったな」
「え、じゃあどこに出入りしてるんだろう。ラク、何か知らない?」
 初対面の竜たちと軽く自己紹介を済ませた後、ラクと作戦会議をしていると、後ろからぼそぼそと会話が聞こえてくる。

「本当に竜より強い人間がいるんだな……」
「ここにいる竜が束になっても敵わねえじゃねぇか」
「だろう? アルハ様は凄いんだ」
「その人間が応援を呼ぶってどういう事態だよ」
「お? 怖気づいたんか?」
「違うし!」
 言い争いを始めたのかと振り返ると、竜たちは全員余裕の表情を浮かべていた。どうやら竜スタイルのじゃれ合いのようだ。

「竜の里のように、空間軸の違いやもしれぬな。イオ、こちらへ」
 ラクに呼ばれたイオがててて、とラクのそばへやってきた。
 イオは小柄だ。メルノよりも小さい。
 この中で雌竜はラクとイオのみで、他は雄竜。全員、僕に合わせて人の姿をしている。
 竜がとる人の姿というのは、各々希望する姿に変身しているのではなく、「もし人だったらこういう姿」というものになるのだそうだ。
 ラクは人の女性にしては背が高い方だし、他の竜たちは大抵僕と同じくらいの身長だ。ぱっと見たら、大人の中に小さな子どものイオが混ざっているようにも見える。

 そんな小さなイオに、ラクは僕と相談しているときと同じ真面目な声色で話しかけた。
「竜の里以外の場所への裂け目を見分けられぬか」
「そうですね……。アルハ様、魔物たちが出入りしている場所へ案内していただけませんか」
 イオは辺りを見渡してから、僕を見上げた。

 僕が異界の扉を未来ロボのひみつ道具みたいにいつでもどこでも開けられるのに対して、ラクとイオは「時と場所、気脈の流れ具合」といったいくつかの条件が合わないと、扉が出せないらしい。
 次元の裂け目というものも似たような条件が課されるそうだ。僕には「ここが裂け目です」と指さされても見えなかった。
 だから、イオが魔物たちの近くへ行きたいと言ったのは、今この近くにそれが見つからず、その場へ行けば分かるかもしれないということだ。

 正直言って、気が進まない。イオは竜の巫女として優秀で、探知能力や予知に関しては先代であるラクを凌ぐ。
 そのかわりなのか、戦闘能力は皆無だ。ここへやってきたのは、竜たちが異界を通るためにイオの力を借りたからだ。
 僕が無言で思案していると、ラクが「心配には及ばぬ」と言い出した。
「イオは身に危険が迫れば、異界か竜の里へ逃げ込める。さすれば、魔物は追ってこれまい」
「魔物だって別次元を出入りしてるような連中だよ?」
「魔物は異界におらなんだし、竜の里へ出入りはしておらん。安全じゃ」
「自分の身は自分で守れます」
「……わかった。案内するから、頼むよ」
 魔物がまとめてかかってこないことを祈りつつ、その場へ行くことにした。



〝今回の魔物は、それほど脅威なのか?〟
 異界を通っている間、ヴェイグが心底不思議そうに問いかけてきた。
「うーん、魔物が単体だったら、いや、いつもなら僕がイオを守るくらい何でもないというか……うーん」
〝歯切れが悪いな〟
「自分でもおかしいと思う。どうしてか嫌な予感がするんだよ」
 普段の僕なら、例の魔物が五十体いたところで問題なくひとりで討伐できると言い切れる。
 それを、僕とヴェイグがいて二十体を「多すぎる」なんて弱気な発言をしたり、竜たちに応援要請したりと慎重にも程がある。
 挙句の果てに、イオの身ひとつ守り切る自信がないと意思表示した。
〝嫌な予感とはまた、アルハらしくもない〟
「ヴェイグも、気をつけてね」
〝……ああ〟
 僕はまた僕らしからぬ発言をしていたことに、僕自身が気付いていなかった。

 それに対してヴェイグが重たく返事をしたことにも、気付いていなかった。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい

広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」 「え?」 「は?」 「いせかい……?」 異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。 ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。 そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!? 異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。 時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。 目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』 半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。 そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。 伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。 信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。 少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。 ==== ※お気に入り、感想がありましたら励みになります ※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。 ※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります ※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

処理中です...