TRPGの世界に召喚されて全滅した仲間を生き返らせて元の世界へ帰るために、チート能力「ダイス目操作」を駆使してこの世界を蹂躙します。

桐山じゃろ

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09 受付のお仕事

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 蘇生直後のカイトは、自力で起きることができなかった。
 その場でベルが何度か治癒魔法を掛けてから、クウちゃんで町へ運んだ。

 カイトが自力で歩けるようになったのが三日後。
 宿で、現状を説明した。
 僕のダイスチートのことも、ベルにも話した。

「そのような凄まじいお力が……」
「黙っててごめん。僕自身も半信半疑だったから」
「わたくしでも同じように黙っていたと思います」
「君ら仲いいな……」
 カイトが何故かジト目で僕を見る。
「ともかくさ、カイトもそういうチートない?」
「うーん、思い当たらん。俺は日本にいたときと同じ、もやしニートのままだ。城で着けさせられた鎧でヒィヒィ言ってたからな」
「重かったんだ、あれ」
「おう。貰った剣も、まともに振れないからな」
「武具は一旦買い直そうか」
 僕は自分のダガーが折れた話をした。
「いや、いいよ。悪いんだが、俺にリアル冒険者なんて無理だ。なあベルさん。俺にできそうな仕事はないかな」



 この世界、上下水道が整備されてたり世界共通通貨があったりと、文明レベルは日本と大差ないどころか、魔力や魔法のお陰で日本どころか地球より進んでいる面もあるのに、文字の読み書きや計算が覚束ない平民が多くいるのが現状だ。
 ベルはカイトに、
「では冒険者ギルドの受付は如何でしょう」
 と提案した。
 すぐに冒険者ギルドへ赴き、ベルさんが話をするとカイトは別室へ連れて行かれた。
 僕たちが手元に残したままにしていたメモの仕事を一件片付けている間に、カイトは冒険者ギルドの正規受付に就職していた。

「計算試験です、って小学生の算数レベルの問題出されたよ。秒で解いたら驚かれた」
 はっはっは、と明るく笑うカイトに早速、仕事の後処理を頼むと、他の受付さんとは次元を異にする動きで処理を終わらせた。
「さっきマクロ組んどいたんだよ」
「表計算ソフトとかあるの?」
「パソコンも無ぇよ。でも、魔法で似たようなことやってたからさ、俺が口出したら魔法使える人が書き換えてくれた」
 僕たちが話し込んでいると、奥からギルド長が顔を出した。
「ミヒャエル嬢。素晴らしい人材を紹介してくれて感謝する。彼のお陰で一年分の事務処理が一日で終わりそうだよ」
 ミヒャエルはベルのファミリーネームだ。
「それは大袈裟じゃないっすかね、ギルド長」
 カイトが照れくさそうに頬を掻く。
「まあ、他の者に君が書き換えた魔道具を慣らす時間は必要だが、そのくらいの価値は十分にある」

 カイトはこのまま、受付さん達専用の寮へ入ることになった。
「宿に置いてきた俺の武具は適当に処分してもらって良いか? 使えるものは使ってくれ」
「わかった。それと……」
 僕はカイトに、他の人の蘇生時に立ち会うかどうか、小声で尋ねた。
「勿論。……そういや、ちゃんと礼を言ってなかったな」
 カイトは僕とベルに向き直り、腰を九十度折り曲げた。
「生き返らせてくれて、ありがとう」
「水臭いよカイト」
「当然のことをしたまでです。困ったことがあったらいつでも仰ってくださいね」
 僕がカイトの肩をぽんぽんと叩くと、カイトは顔を上げて笑みを浮かべた。



*****



 時間は、カイトが受付試験を受けている最中に遡る。

 僕とベルはオーガの群れが占拠したという古代遺跡を探索していた。
 苔むした岩レンガでできた遺跡の内部は、魔物が占拠している割に綺麗にしてある。
 僕たちの後ろには、倒したばかりのオーガ達が大量にある。
 僕はオーガの経験値でレベルが上がり、能力値もまた大幅に増えた。

 今はこんな感じだ。

+++

 名前:デガ
 種族:ヒューマン
 レベル:89
 年齢:18
 筋力:1823
 敏捷力:1827
 耐久力:1824
 知力:1130
 判断力:1823
 魅力:339
 特殊能力:ダイス目操作 レベル2

+++

 知力が上がったところで効果がよくわからなかったので、今回は筋力、敏捷力、耐久力、判断力の四つに均等に割り振った。
 獲得したポイントを四で割って足して……ってのが少々面倒くさいから、次からやり方を変えようかな。
「どう? ベル」
「……奥にもう五匹、それで終わりですが……」
「何か心配事?」
「そのうちの一匹が通常のオーガと比べて、かなり強そうです」

 ベルもレベルが上がる度に僕が「ダイス目チート レベル2」を自動行使して、割り振れる能力値を最大にすることができた。
 僕と違って自分で好きなように割り振れない様子だが、それでも「デガさんといると調子がとても良いです!」と言ってくれるので、効果はあるようだ。
 ベルは更に、探索魔法の精度が上がった。
 視界に入っていなくても、魔物の気配を捉えてその力を察知することができる。
 ベルが「試したい」というので、今回はベルの魔法に頼ることにした。
「勝てなさそう?」
「いいえ、デガさんならば」
「じゃあ行こう」
 僕はというと、百匹以上も魔物を倒し、目に見える形で能力値の急上昇を実感できて自信がつき、少々舞い上がっていた。


 通路の曲がり角を警戒なく超えたところで、炎の球が飛んできた。
「デガさんっ!」
 ベルが突き飛ばしてくれなかったら、僕は火傷じゃ済まない怪我を負っていた。

 ベルの綺麗な水色の髪が一部焦げている。
 僕はすぐに立ち上がり、炎を飛ばしてきた奴がいる方へ向かってダガーを投擲した。

<命中:大成功 クリティカルヒット>
<攻撃:大成功 即死>

 ダガーを投げた直後に「ごがっ」と断末魔がして、何かがどさりと倒れる。
「ベルっ、怪我は? 髪が……」
「平気です。デガさんこそお怪我は」
「僕はベルが庇ってくれたから無傷だよ。ごめん、油断してた」
 ダイスロールさえしなかった。いくらチートがあっても、ちゃんと自分で意識しないと使えない。
「デガさんがご無事なら良かったです」
「でも、髪、せっかく綺麗なのに」
 こっちの世界へ来てから、いろんな髪色の人を見てきたが、ベルの薄水色というのは滅多にいない。
「先が少し焦げただけですよ。ダガーをお借りてもよろしいですか?」
「切っちゃうの?」
「ええ。……よろしければ、デガさん、切ってもらえませんか?」
 ダガーはメインで使う大ぶりのものが二本と、先程投げた投擲用の小さめのものを五本、持ち歩いている。
 一度も使ったことのない投擲用の五本目を取り出して、僕はベルの後ろに立った。

 こういう時こそ、ダイスロールだ。なんでもいい。ベルの髪をなるべく損なわないように綺麗に切りたい。

<手先:大成功 カリスマ美容師並みのカット>

「よしっ!」
「?」
「なんでもない。切るよ」
 ベルの髪の焦げている部分を切って取り除き、更に馴染むよう、綺麗にすくことに成功した。
「どうかな?」
 ベルはマジックバッグから手鏡を取り出して、髪を色んな角度から見た。
「わあ、焦げ跡もないし、切ったこと自体わかりませんね。ありがとうございます」
「よかった」
 べルは心から喜んでくれた様子だった。

 炎を放ったのはソーサリーオーガという、オーガの変異種だった。
「先日のハヌマーンの群れといい、魔物が異常ですね」
「珍しいの?」
「はい。変異種というのはもっと魔素の濃い地域で出るものです」
「魔素の濃い地域って?」
「人里から遠く離れた場所ほど魔素が濃い傾向があります。この遺跡は観光名所のひとつとされていますから……」
「人がよく来るってことか。じゃあオーガが棲み着くこと自体おかしくない?」
「ええ、おかしいです」
「魔王が関係あるのかな」
「否定しきれませんね。でも、デガさん。今はお仲間のことだけを考えてくださいね」
「いいの?」
 ベルは僕のことを救世主と言って憚らないが、早く魔王を倒そうとかは言ったことがない。魔王の話すら滅多にしない。
「ええ。他所から無理やり召喚し無体を強いるような国の言うことを聞く必要はありませんよ」
 ベルはいい笑顔で言い切った。


 この後は僕も油断せず、細かくダイスロールをして遺跡内のオーガを無事に全て倒した。
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