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11 空振り鉱山
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物陰から飛び出した僕は、ベルに一番近いやつを最初に狙った。
<命中:大成功 クリティカルヒット>
<攻撃:大成功 与ダメージ99999>
<手加減:大成功 攻撃無効、相手を気絶させる>
ダイスロールを意識してクリティカルを連発させ、ダガーの柄で頭の後ろを殴って気絶させる。
他の三人も同様に、無力化に成功した。
「デガさん、出て来ないという約束でしたのに」
「ごめん、つい」
僕が謝ると、ベルは笑顔で首を横に振った。
「いいえ、助かりました。ありがとうございます。とりあえずこの者たちを縛り上げてしまいましょう」
ベルのマジックバッグからは頑丈そうなロープが何本も出てきた。
冒険者の必須道具ではあるけれど、長いのが数本あれば十分って言ってたのに、どうして一人に対して三本使ってもまだ余る量を持ち歩いてるの、ベルさん?
全員を縛り上げた後、最初にベルと会話した奴にベルが水魔法をぶちまけて起こした。
「へぶっ!? んな、なんだ!? おい、縄を解け! こんなことして許されると思ってるのか!」
「こちらの台詞です。わたくしは冒険者ギルドから正式に仕事を請けてきたのです。該当箇所の封鎖など、例え国王命令でも認められませんよ」
ベルが黒いオーラをもやもやと出し、右手で握った杖の先を左手のひらにぺちん、ぺちんと当てて威圧している。
「そ、そんな話……」
「本当です。貴方も国に属する者ならば、最初に教わったはずです。魔物討伐に関しては冒険者ギルドを最優先するべし、と」
冒険者ギルド、そんなに権限あったのか。魔物限定っぽいけど。
あれ? じゃあどうしてドルズブラ国は僕たちを召喚してまで魔王を倒したがったのかな。
魔王だって大きく括れば魔物だ。
しかし現時点で、冒険者ギルドが魔王討伐の仕事を出している様子はなかった。
もしかしたら一般の冒険者に情報を公開していないだけかもしれないけど。
後でベルに確認しておこう。
「知らんっ! 俺は上に言われて来ただけだ!」
「知らない、と……」
ベルはいつの間にか取り出した手帳に、ペンでメモをとっている。
「上とはどなたですか?」
「第五騎士団の団長だよっ」
「先程も言いましたが、魔物討伐に関する権限は冒険者ギルドが一番です。ドルズブラの騎士団長ごときに、ここを封鎖させるほどの権限はありません」
「団長も上から命令されたんだろっ」
「では、団長の上とは?」
「んなもん知らんっ」
「話になりませんね」
ベルは兵士に話しかけるのもメモをとるのもやめて、後ろに控えていた僕の隣に立った。
「デガさん、申し訳ありませんが、あの者たちを見張っていてくれませんか。冒険者ギルドへこのことを伝えてまいります」
「わかった」
ベルはクウちゃんを再び呼ぶと、ひらりと飛び乗って、あっという間に空の彼方へ見えなくなった。
僕を乗せてるときは手加減してたのかな。それとも、僕が重くてクウちゃんが本気出せなかったか。
僕専用のワイバーンとか持てないかなぁ。
「おい、お前」
空を眺めながらぼんやり考え事をしていると、縛られた兵士たちが全員意識を取り戻した。
「お前、縄を解け。聞こえてるのか?」
僕は知らないフリをした。話すことなんて無いし、何話していいかわからないし。
万が一余計なことを口走ったら、ベルに申し訳ないし。
「このままで済むと思うなよっ!」
縛られて身動き取れ無いのに威勢がいいなぁ。
小一時間くらいそうして過ごしていたら、クウちゃんが戻ってきた。クウちゃんの背にはベルとギルド長の他に、冒険者のような風体の男が三人乗っていた。
「おかえり、ベル。こんにちは」
ベルとギルド長たちに向けて挨拶した。
「やあ、デガ。話は聞いた。見張りご苦労だったな」
「本当に見張ってただけで何もしてませんよ」
「ふむ。まあとりあえず、この者たちは一旦ギルドが預かる。君たちはこの鉱山の調査をお願いしたい」
「調査? リザードマンの討伐ではなく?」
「もしリザードマンがまだこの鉱山にいるなら、ここまで出てくるはずだ。一匹でも出てきたかね?」
「いいえ」
「だから、状況の把握のために、仕事の内容を討伐から調査へ変更したい。調査の報酬は、リザードマン二百匹討伐相当を出す。調査中に討伐した分は追加で上乗せだ。どうだ?」
「やります」
もしかしたら、ただ調べるだけでリザードマン二百匹倒したのと同じことになるという、破格の報酬だ。請けない手はない。
「ではよろしく頼んだ。ミヒャエル嬢、ワイバーンは丁重に扱うと約束する」
「はい」
クウちゃんに乗ってきた男たちがそれぞれ縛られたままの兵士たちを担ぎ上げ、地上にとどまったままのクウちゃんに乗り込んだ。
更にギルド長が乗り込んだ後、ベルがクウちゃんに何事か話すと、クウちゃんは「キュルルル」と鳴いた。わかった、と言ったみたいだ。
直後に、クウちゃんが翼を広げる。今度はふわりとゆっくり浮いて、町の方へ向かって飛び去った。
「ベル、クウちゃんて何人くらいまで乗せられるの?」
「試したことはないですが、少なくとも七人までは余裕みたいですね」
「やっぱり人が多いと飛ぶの遅い?」
「関係ありませんよ。ギルドへ行ったときは急ぎでしたので、クウちゃんに本気を出してもらいました。疲れさせてしまうので、あまりやりません」
なるほど、いつもはクウちゃんに負担がかからない速度で飛んでもらってたのか。
「ではデガさん、改めて準備はよろしいですか?」
「うん。行こう」
僕とベルは鉱山の中へ入った。
つい最近まで人が入って鉱石を採掘していたので、壁には魔法仕掛けの照明が設置され、正常に機能していて内部は明るかった。
<探知:大成功 何の気配もない>
「何もいないみたいだね」
「そのようですね。念のため、隅々まで調べましょう」
僕たちは入り口から目印を付けたりメモを取りながら……つまりマッピングしながら進み、少し複雑な構造の鉱山内を隅々まで踏破した。
「リザードマンが二百匹も出たというわりに、痕跡すらありませんでしたね」
鉱山内は綺麗なものだった。
採掘が中途半端に終わっている場所はいくつもあったが、誰かが争った後や、血なまぐさいものはひとつも見つからなかった。
「これはこれでおかしいですね……」
ベルが警戒心を新たにする。
「リザードマンって見たことないんだけど、あの兵士たちで倒せると思う?」
ベルは少し頭を傾げて、曖昧に頷いた。
「ひとり一匹二匹なら、なんとかなると思います。でも、あの四人で二百匹を相手にして、無事で済むとは思えません」
「じゃあ他にもドルズブラの連中がここへ来て、倒して帰ったとか?」
「ギルドを通さずに魔物を討伐する理由がわかりません。ひとまず、帰りましょうか。ギルド長たちがあの連中から何か聞き出せているかもしれません」
本日大活躍のクウちゃんには、町へ帰還後にベルが赤い果物を食べさせていた。ドラケフルーツという、ワイバーンの好物だそうだ。
僕たちはクウちゃんを労った後、冒険者ギルドへ向かった。
「ドルズブラ国が冒険者ギルドを無視して、魔物の討伐をしていた。魔王討伐を視野に入れ、禁術にまで手を出していたよ」
ギルド長に聞かされたのは、身に覚えのある話だった。
「なんのためにですか?」
「ギルドが『大きな顔をしているのが気に食わない』だそうだ」
ギルド長が呆れ果てたという顔になる。
僕は身に覚えのある部分を伝えようかどうしようか、迷っていた。
「あの」
言いかけたら、ベルに袖を引かれた。ベルを見ると、首をかすかに横に振っている。まだ言うべきじゃないということだろう。
「何だ?」
「いえ、その……兵士たちはどうなるのですか?」
「しばらくは格子付きの部屋で軟禁だ。他の町のギルド長と話し合い、ドルズブラに正式に抗議を入れる」
この先は冒険者の仕事ではないからと、話は終わった。
<命中:大成功 クリティカルヒット>
<攻撃:大成功 与ダメージ99999>
<手加減:大成功 攻撃無効、相手を気絶させる>
ダイスロールを意識してクリティカルを連発させ、ダガーの柄で頭の後ろを殴って気絶させる。
他の三人も同様に、無力化に成功した。
「デガさん、出て来ないという約束でしたのに」
「ごめん、つい」
僕が謝ると、ベルは笑顔で首を横に振った。
「いいえ、助かりました。ありがとうございます。とりあえずこの者たちを縛り上げてしまいましょう」
ベルのマジックバッグからは頑丈そうなロープが何本も出てきた。
冒険者の必須道具ではあるけれど、長いのが数本あれば十分って言ってたのに、どうして一人に対して三本使ってもまだ余る量を持ち歩いてるの、ベルさん?
全員を縛り上げた後、最初にベルと会話した奴にベルが水魔法をぶちまけて起こした。
「へぶっ!? んな、なんだ!? おい、縄を解け! こんなことして許されると思ってるのか!」
「こちらの台詞です。わたくしは冒険者ギルドから正式に仕事を請けてきたのです。該当箇所の封鎖など、例え国王命令でも認められませんよ」
ベルが黒いオーラをもやもやと出し、右手で握った杖の先を左手のひらにぺちん、ぺちんと当てて威圧している。
「そ、そんな話……」
「本当です。貴方も国に属する者ならば、最初に教わったはずです。魔物討伐に関しては冒険者ギルドを最優先するべし、と」
冒険者ギルド、そんなに権限あったのか。魔物限定っぽいけど。
あれ? じゃあどうしてドルズブラ国は僕たちを召喚してまで魔王を倒したがったのかな。
魔王だって大きく括れば魔物だ。
しかし現時点で、冒険者ギルドが魔王討伐の仕事を出している様子はなかった。
もしかしたら一般の冒険者に情報を公開していないだけかもしれないけど。
後でベルに確認しておこう。
「知らんっ! 俺は上に言われて来ただけだ!」
「知らない、と……」
ベルはいつの間にか取り出した手帳に、ペンでメモをとっている。
「上とはどなたですか?」
「第五騎士団の団長だよっ」
「先程も言いましたが、魔物討伐に関する権限は冒険者ギルドが一番です。ドルズブラの騎士団長ごときに、ここを封鎖させるほどの権限はありません」
「団長も上から命令されたんだろっ」
「では、団長の上とは?」
「んなもん知らんっ」
「話になりませんね」
ベルは兵士に話しかけるのもメモをとるのもやめて、後ろに控えていた僕の隣に立った。
「デガさん、申し訳ありませんが、あの者たちを見張っていてくれませんか。冒険者ギルドへこのことを伝えてまいります」
「わかった」
ベルはクウちゃんを再び呼ぶと、ひらりと飛び乗って、あっという間に空の彼方へ見えなくなった。
僕を乗せてるときは手加減してたのかな。それとも、僕が重くてクウちゃんが本気出せなかったか。
僕専用のワイバーンとか持てないかなぁ。
「おい、お前」
空を眺めながらぼんやり考え事をしていると、縛られた兵士たちが全員意識を取り戻した。
「お前、縄を解け。聞こえてるのか?」
僕は知らないフリをした。話すことなんて無いし、何話していいかわからないし。
万が一余計なことを口走ったら、ベルに申し訳ないし。
「このままで済むと思うなよっ!」
縛られて身動き取れ無いのに威勢がいいなぁ。
小一時間くらいそうして過ごしていたら、クウちゃんが戻ってきた。クウちゃんの背にはベルとギルド長の他に、冒険者のような風体の男が三人乗っていた。
「おかえり、ベル。こんにちは」
ベルとギルド長たちに向けて挨拶した。
「やあ、デガ。話は聞いた。見張りご苦労だったな」
「本当に見張ってただけで何もしてませんよ」
「ふむ。まあとりあえず、この者たちは一旦ギルドが預かる。君たちはこの鉱山の調査をお願いしたい」
「調査? リザードマンの討伐ではなく?」
「もしリザードマンがまだこの鉱山にいるなら、ここまで出てくるはずだ。一匹でも出てきたかね?」
「いいえ」
「だから、状況の把握のために、仕事の内容を討伐から調査へ変更したい。調査の報酬は、リザードマン二百匹討伐相当を出す。調査中に討伐した分は追加で上乗せだ。どうだ?」
「やります」
もしかしたら、ただ調べるだけでリザードマン二百匹倒したのと同じことになるという、破格の報酬だ。請けない手はない。
「ではよろしく頼んだ。ミヒャエル嬢、ワイバーンは丁重に扱うと約束する」
「はい」
クウちゃんに乗ってきた男たちがそれぞれ縛られたままの兵士たちを担ぎ上げ、地上にとどまったままのクウちゃんに乗り込んだ。
更にギルド長が乗り込んだ後、ベルがクウちゃんに何事か話すと、クウちゃんは「キュルルル」と鳴いた。わかった、と言ったみたいだ。
直後に、クウちゃんが翼を広げる。今度はふわりとゆっくり浮いて、町の方へ向かって飛び去った。
「ベル、クウちゃんて何人くらいまで乗せられるの?」
「試したことはないですが、少なくとも七人までは余裕みたいですね」
「やっぱり人が多いと飛ぶの遅い?」
「関係ありませんよ。ギルドへ行ったときは急ぎでしたので、クウちゃんに本気を出してもらいました。疲れさせてしまうので、あまりやりません」
なるほど、いつもはクウちゃんに負担がかからない速度で飛んでもらってたのか。
「ではデガさん、改めて準備はよろしいですか?」
「うん。行こう」
僕とベルは鉱山の中へ入った。
つい最近まで人が入って鉱石を採掘していたので、壁には魔法仕掛けの照明が設置され、正常に機能していて内部は明るかった。
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僕たちは入り口から目印を付けたりメモを取りながら……つまりマッピングしながら進み、少し複雑な構造の鉱山内を隅々まで踏破した。
「リザードマンが二百匹も出たというわりに、痕跡すらありませんでしたね」
鉱山内は綺麗なものだった。
採掘が中途半端に終わっている場所はいくつもあったが、誰かが争った後や、血なまぐさいものはひとつも見つからなかった。
「これはこれでおかしいですね……」
ベルが警戒心を新たにする。
「リザードマンって見たことないんだけど、あの兵士たちで倒せると思う?」
ベルは少し頭を傾げて、曖昧に頷いた。
「ひとり一匹二匹なら、なんとかなると思います。でも、あの四人で二百匹を相手にして、無事で済むとは思えません」
「じゃあ他にもドルズブラの連中がここへ来て、倒して帰ったとか?」
「ギルドを通さずに魔物を討伐する理由がわかりません。ひとまず、帰りましょうか。ギルド長たちがあの連中から何か聞き出せているかもしれません」
本日大活躍のクウちゃんには、町へ帰還後にベルが赤い果物を食べさせていた。ドラケフルーツという、ワイバーンの好物だそうだ。
僕たちはクウちゃんを労った後、冒険者ギルドへ向かった。
「ドルズブラ国が冒険者ギルドを無視して、魔物の討伐をしていた。魔王討伐を視野に入れ、禁術にまで手を出していたよ」
ギルド長に聞かされたのは、身に覚えのある話だった。
「なんのためにですか?」
「ギルドが『大きな顔をしているのが気に食わない』だそうだ」
ギルド長が呆れ果てたという顔になる。
僕は身に覚えのある部分を伝えようかどうしようか、迷っていた。
「あの」
言いかけたら、ベルに袖を引かれた。ベルを見ると、首をかすかに横に振っている。まだ言うべきじゃないということだろう。
「何だ?」
「いえ、その……兵士たちはどうなるのですか?」
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