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第一章
15 片鱗
「ヨイチヨイチヨイチヨイチヨイチ…………」
「ヨイチ、トウタじゃなくてヨイチ、トウタじゃなくて…………」
「ヨイチくん、ヨイチくん、ヨイチくん…………」
僕の偽名登録が通った日、クエストを終えて家に帰ると三人がキッチンのテーブルに集まって、ブツブツ呟いていた。
灯りがテーブルの真ん中に置いた蝋燭だけなのは、何かを召喚するつもりなのか。連呼してる名前からして僕を喚ぶつもりか?
「ていうか、怖いんだけど?」
「おかえり、ト……ヨイチ」
「おかえりトウタじゃなくてヨイチ」
「おかえりなさい、ヨイチくん」
「ただいま」
ローズはギリギリセーフ、ツキコは完全にアウト、ヒスイは練習の必要ありましたか?
僕の偽名に慣れる練習で何故か怪しい雰囲気を醸し出す三人を放置して、自室へ向かう。
装備を解いて一息ついていると、扉をノックされた。
入ってきたのは、食事が乗ったプレートを持ったヒスイだ。
「キッチンがああだから、こっちのほうがいいかと思って」
「ありがとう。そうするよ」
この6LDKの一軒家のうち、一番広い部屋が僕の自室だ。
僕はそんなに荷物はないから小さい部屋でも、と言っても三人が了承しなかった。むしろ三人に一方的に決められた。家の主とは一体。
部屋にはベッドとテーブルと椅子二脚、クローゼットに棚がふたつある。家にある家具の殆どはツキコの手作りだ。足りない家具を頼むと、仕事もあるのに三日以内には出来上がる。ツキコのDIY技術には恐れ入る。
テーブルの上にヒスイがプレートを置き、一旦部屋を出てお茶セットを持ってきてくれた。
「ツキコ、ワゴンとか作れないかな」
部屋とキッチンを何度も往復させるのが申し訳なくて、つい思いついたことを口走った。
「あ、そうだ。ワゴンの話じゃないけど、タイヤのゴム代わりになる魔物の素材持ってないかな、って言ってたよ。何て名前の魔物だったかな……」
ヒスイがお茶の用意をしながら、思案する。
「じゃあツキコに聞いておくよ。ありがとうヒスイ、あとは自分で」
「私はメイドですので、ご主人さまの食事の面倒をみるのです」
妙な調子で張り切るヒスイを断りきれなかった。
前髪を切った効果は抜群で、僕は早々に「冒険者ヨイチ」として認識された。
前髪以外にも、装備はディオンさんに少し作り変えてもらい、腰に剣を装備したりと見た目をがらりと変えた。
今後人前で戦うときは剣を使うつもりだ。スタグハッシュで訓練を積んだ下地があったから、危険度低めのクエストなら難なくこなせた。
魔道具の弓と弓懸の腕輪は知らなければ弓矢の道具だとバレないのでそのまま持ち、魔力が切れた時用に作ってもらった弓はマジックボックスに入れておいた。
せっかく作ってもらったのに、今後の出番は期待できそうになくて申し訳ない。
トウタ=ヨイチを知っている人は、一緒に暮らしている三人と、その職場の雇い主さんたち、冒険者ギルドの統括と僕担当の受付さんのみだ。
居なくなったトウタについては、リートグルクという大国に腕を見込まれ城の近衛兵として引き抜かれたことになっている。
ここ最近の仕事は、もっぱら町の警備と周辺調査だ。
町には魔物よけの結界魔法があり、町つきの警備兵が定期的に魔力を供給することによって魔物が近づけないようになっている。
ところが、魔物が町のすぐ近くで出没するようになった。
よくよく調べてみると、町から離れた場所に棲家を持っていたはずの魔物が、わざわざ町の近くまで来て棲みつきはじめたらしい。
魔物が町に近づけないのは結界魔法が魔物に反応し攻撃を加えるからだ。致命傷にはならないが、町に近づくたびに思い切りぶん殴られるくらいの威力はある。
冒険者ギルドは、魔物が「結界に殴られたほうがマシ」と思えるほどの「何か」が発生したと見て、そちらも調査中だが成果はまだない。
一時的な対処としてギルドは全冒険者に協力を要請し、余程の事情が無い限り、調査と町の警備に駆り出されている。
町になにかあって困るのは冒険者も同じ。基本報酬は危険度G程度のこの仕事を、ほとんどの冒険者が進んで引き受けている。
僕は週に三日ほど警備または調査を引き受けることにした。
警備の場合は日に三回、町を四分割したうちの一区画を見回りし、町のすぐ近くに魔物が出たら応援を呼びつつ討伐する。魔物の危険度により別に報酬が出る。
「どうだった?」
「こっちは何も」
「こちらも問題ない」
警備する人数は、少なくとも六人。町を四区画に区切り、四人でそれぞれを巡回し、残りは冒険者ギルドで待機している。
僕の今日の担当は北西区画。気配察知も活用したけど、異常はなかった。
「グリオはどうした?」
朝の巡回が終わった三人が集まり少し時間が経っても、南東区画を巡回しているグリオがまだ戻ってこなかった。
グリオは、人見知りコミュ障を発動する僕が普通に接している数少ない冒険者のうちのひとりだ。人格者で人望が厚く、警備の仕事も積極的かつ真面目にこなす。
魔物の巣のときに知り合って以降、気安い付き合いをしていて、僕がトウタであることをあっさり見抜いた上で、何も言わずにヨイチとして扱ってくれている。
「カードにも出ないな」
今ここにいる人は全員、グリオと面識がある。冒険者カードでグリオと通話を試みたが、繋がらない。
「探してくるよ」
「頼んでいいか、ヨイチ」
「うん」
僕はグリオの探索を買って出た。
南東区画の端で、気配察知してみる。
町の境界から少し離れた場所で、魔物と人が交戦しているようだ。
現場へ向かうと、グリオが沢山のゴブリンに囲まれていた。
周囲には十数匹のゴブリンが倒れている。
ゴブリンは大人の男なら冒険者でなくとも討伐できるほどの、最弱と言われる魔物の一角だ。
ただしそれは一対一の話で、ゴブリンは群れることが多い。
冒険者ランクCのグリオでも、あれは多すぎる。
グリオの手にある剣は先が折れている。
予備の短剣を腰から抜こうとした時、グリオの死角にいたゴブリンが飛びかかった。
「グリオっ!」
ゴブリンが大きく口を開け、グリオの首筋に噛みつこうとした時。
青い燐光が散るのが見えた。
<取得経験値780×10×100>
<レベルアップしました!>
「……チ! ヨイチ!」
正面に立って僕の両肩を揺さぶり顔を覗き込むように見つめてくるのは、グリオだ。
「グリオ?」
僕が反応すると、グリオは安堵の表情になった。
「お前、大丈夫か? 俺は助かったが、無理してないか?」
「そうだ、ゴブリンは!?」
「お前が倒したじゃないか」
グリオの視線を追うと、周囲にはゴブリンが何十体と倒れていた。
最初にグリオが囲まれていた場所のあたりは剣で斬られた痕があったが、それ以外は、全て急所を矢で貫かれていた。
「凄かったぞ。名前を呼ばれて振り返ったら、お前の周囲に矢が浮いていて……」
僕は弓を使わず、矢を射ていたらしい。
なんだそれ。魔法じゃないか。
いや僕は魔法が使えるから、不思議じゃないのか。
それならどうして今まで、弓で矢を放つことに拘っていたのだろう。
「それと、目が」
「目?」
「今は黒いな。さっきまで青く見えたんだ」
思わず自分の目の辺りを触れてみる。それで自分の眼の色なんて解るわけもない。
ただ、そうだ、確か一瞬、青い燐光がちらついていた。
「それより、グリオ、怪我見せて」
よく見ると、グリオは全身血まみれだ。装備の綻びはあまりないから返り血のほうが多いのだろう。それでも心配だ。
「さっきヨイチが治してくれたじゃないか。覚えてないのか?」
不意にグリオが腰に手をやり、冒険者カードを取り出した。着信があったらしい。
「無事だ。ヨイチが助けてくれた。大量のゴブリンが出たんだ。詳しくは戻ってから話す」
通話を切って、グリオがこちらを見た。
「俺が見たことは全部話そう。その上で覚えていることや思い当たることが……いや、命の恩人に詮索するものじゃないな」
僕とグリオはそれぞれのマジックボックスにゴブリンを詰め込み、冒険者ギルドへ戻った。
その後グリオが話してくれた内容を、僕は全く覚えていなかった。
僕はあの場に現れるなり、走りながら弓を構えつつ、周囲にゴブリンと同じだけ矢を創り出して放ったそうだ。
矢が放たれるタイミングは、弓で射たのと同じ瞬間だったという。
矢は全弾、ゴブリンの急所を的確に狙い、ほとんどのゴブリンがそれで倒れた。
数匹だけ生き残ったゴブリンが逃げようとすると、僕はそいつらの背中に「動くな」と声を発した。
ゴブリンは僕の一言で金縛りにでも遭ったかのように、固まった。
声に魔力が乗っていたように思えた、とはグリオの談だ。
「魔法や魔道具を介する以外の方法で魔力を使うやつがいるって話を聞いたことがある。ヨイチがそうなのか?」
わからない、としか言えない僕に、グリオは「なら仕方ない」と言ってくれた。
動かなくなったゴブリンを放置して、僕はグリオに治癒魔法を使った。
僕はゴブリンに「動くな」と言った以外は、終始無言だった。
青い瞳からは何の感情も見えず、治療も淡々としていたが、治癒魔法は丁寧で、鈍痛は残らなかったという。
それから、動けなくなっているゴブリンたちの背へ一瞬で矢を射掛け、とどめを刺した。
呆然と立ち尽くす僕に、それまでことの成り行きを呆然と眺めていたグリオが我に返り声をかけた、という流れだ。
「ごめん、グリオ。やっぱり覚えてないや」
せっかく全部教えてもらったのに、全く記憶にない。
自分がやったことを自分が覚えていないのって、怖い。
自分のことは自分で責任を取らないといけないのに。
「何を気に病んでいるんだ? 俺はヨイチに助けてもらった。ヨイチが覚えてなくても、俺が覚えているよ。ありがとう、ヨイチ」
グリオはそう言って僕の肩をぽんぽんと叩いた。
「とりあえず飯でも奢らせてくれ。昼、まだだろう? いい店があるんだ」
「嬉しいけど、僕すごく食べるよ?」
「冒険者なら皆そうだ」
お腹は空いていたので、素直に誘いに乗った。
「ヨイチ、トウタじゃなくてヨイチ、トウタじゃなくて…………」
「ヨイチくん、ヨイチくん、ヨイチくん…………」
僕の偽名登録が通った日、クエストを終えて家に帰ると三人がキッチンのテーブルに集まって、ブツブツ呟いていた。
灯りがテーブルの真ん中に置いた蝋燭だけなのは、何かを召喚するつもりなのか。連呼してる名前からして僕を喚ぶつもりか?
「ていうか、怖いんだけど?」
「おかえり、ト……ヨイチ」
「おかえりトウタじゃなくてヨイチ」
「おかえりなさい、ヨイチくん」
「ただいま」
ローズはギリギリセーフ、ツキコは完全にアウト、ヒスイは練習の必要ありましたか?
僕の偽名に慣れる練習で何故か怪しい雰囲気を醸し出す三人を放置して、自室へ向かう。
装備を解いて一息ついていると、扉をノックされた。
入ってきたのは、食事が乗ったプレートを持ったヒスイだ。
「キッチンがああだから、こっちのほうがいいかと思って」
「ありがとう。そうするよ」
この6LDKの一軒家のうち、一番広い部屋が僕の自室だ。
僕はそんなに荷物はないから小さい部屋でも、と言っても三人が了承しなかった。むしろ三人に一方的に決められた。家の主とは一体。
部屋にはベッドとテーブルと椅子二脚、クローゼットに棚がふたつある。家にある家具の殆どはツキコの手作りだ。足りない家具を頼むと、仕事もあるのに三日以内には出来上がる。ツキコのDIY技術には恐れ入る。
テーブルの上にヒスイがプレートを置き、一旦部屋を出てお茶セットを持ってきてくれた。
「ツキコ、ワゴンとか作れないかな」
部屋とキッチンを何度も往復させるのが申し訳なくて、つい思いついたことを口走った。
「あ、そうだ。ワゴンの話じゃないけど、タイヤのゴム代わりになる魔物の素材持ってないかな、って言ってたよ。何て名前の魔物だったかな……」
ヒスイがお茶の用意をしながら、思案する。
「じゃあツキコに聞いておくよ。ありがとうヒスイ、あとは自分で」
「私はメイドですので、ご主人さまの食事の面倒をみるのです」
妙な調子で張り切るヒスイを断りきれなかった。
前髪を切った効果は抜群で、僕は早々に「冒険者ヨイチ」として認識された。
前髪以外にも、装備はディオンさんに少し作り変えてもらい、腰に剣を装備したりと見た目をがらりと変えた。
今後人前で戦うときは剣を使うつもりだ。スタグハッシュで訓練を積んだ下地があったから、危険度低めのクエストなら難なくこなせた。
魔道具の弓と弓懸の腕輪は知らなければ弓矢の道具だとバレないのでそのまま持ち、魔力が切れた時用に作ってもらった弓はマジックボックスに入れておいた。
せっかく作ってもらったのに、今後の出番は期待できそうになくて申し訳ない。
トウタ=ヨイチを知っている人は、一緒に暮らしている三人と、その職場の雇い主さんたち、冒険者ギルドの統括と僕担当の受付さんのみだ。
居なくなったトウタについては、リートグルクという大国に腕を見込まれ城の近衛兵として引き抜かれたことになっている。
ここ最近の仕事は、もっぱら町の警備と周辺調査だ。
町には魔物よけの結界魔法があり、町つきの警備兵が定期的に魔力を供給することによって魔物が近づけないようになっている。
ところが、魔物が町のすぐ近くで出没するようになった。
よくよく調べてみると、町から離れた場所に棲家を持っていたはずの魔物が、わざわざ町の近くまで来て棲みつきはじめたらしい。
魔物が町に近づけないのは結界魔法が魔物に反応し攻撃を加えるからだ。致命傷にはならないが、町に近づくたびに思い切りぶん殴られるくらいの威力はある。
冒険者ギルドは、魔物が「結界に殴られたほうがマシ」と思えるほどの「何か」が発生したと見て、そちらも調査中だが成果はまだない。
一時的な対処としてギルドは全冒険者に協力を要請し、余程の事情が無い限り、調査と町の警備に駆り出されている。
町になにかあって困るのは冒険者も同じ。基本報酬は危険度G程度のこの仕事を、ほとんどの冒険者が進んで引き受けている。
僕は週に三日ほど警備または調査を引き受けることにした。
警備の場合は日に三回、町を四分割したうちの一区画を見回りし、町のすぐ近くに魔物が出たら応援を呼びつつ討伐する。魔物の危険度により別に報酬が出る。
「どうだった?」
「こっちは何も」
「こちらも問題ない」
警備する人数は、少なくとも六人。町を四区画に区切り、四人でそれぞれを巡回し、残りは冒険者ギルドで待機している。
僕の今日の担当は北西区画。気配察知も活用したけど、異常はなかった。
「グリオはどうした?」
朝の巡回が終わった三人が集まり少し時間が経っても、南東区画を巡回しているグリオがまだ戻ってこなかった。
グリオは、人見知りコミュ障を発動する僕が普通に接している数少ない冒険者のうちのひとりだ。人格者で人望が厚く、警備の仕事も積極的かつ真面目にこなす。
魔物の巣のときに知り合って以降、気安い付き合いをしていて、僕がトウタであることをあっさり見抜いた上で、何も言わずにヨイチとして扱ってくれている。
「カードにも出ないな」
今ここにいる人は全員、グリオと面識がある。冒険者カードでグリオと通話を試みたが、繋がらない。
「探してくるよ」
「頼んでいいか、ヨイチ」
「うん」
僕はグリオの探索を買って出た。
南東区画の端で、気配察知してみる。
町の境界から少し離れた場所で、魔物と人が交戦しているようだ。
現場へ向かうと、グリオが沢山のゴブリンに囲まれていた。
周囲には十数匹のゴブリンが倒れている。
ゴブリンは大人の男なら冒険者でなくとも討伐できるほどの、最弱と言われる魔物の一角だ。
ただしそれは一対一の話で、ゴブリンは群れることが多い。
冒険者ランクCのグリオでも、あれは多すぎる。
グリオの手にある剣は先が折れている。
予備の短剣を腰から抜こうとした時、グリオの死角にいたゴブリンが飛びかかった。
「グリオっ!」
ゴブリンが大きく口を開け、グリオの首筋に噛みつこうとした時。
青い燐光が散るのが見えた。
<取得経験値780×10×100>
<レベルアップしました!>
「……チ! ヨイチ!」
正面に立って僕の両肩を揺さぶり顔を覗き込むように見つめてくるのは、グリオだ。
「グリオ?」
僕が反応すると、グリオは安堵の表情になった。
「お前、大丈夫か? 俺は助かったが、無理してないか?」
「そうだ、ゴブリンは!?」
「お前が倒したじゃないか」
グリオの視線を追うと、周囲にはゴブリンが何十体と倒れていた。
最初にグリオが囲まれていた場所のあたりは剣で斬られた痕があったが、それ以外は、全て急所を矢で貫かれていた。
「凄かったぞ。名前を呼ばれて振り返ったら、お前の周囲に矢が浮いていて……」
僕は弓を使わず、矢を射ていたらしい。
なんだそれ。魔法じゃないか。
いや僕は魔法が使えるから、不思議じゃないのか。
それならどうして今まで、弓で矢を放つことに拘っていたのだろう。
「それと、目が」
「目?」
「今は黒いな。さっきまで青く見えたんだ」
思わず自分の目の辺りを触れてみる。それで自分の眼の色なんて解るわけもない。
ただ、そうだ、確か一瞬、青い燐光がちらついていた。
「それより、グリオ、怪我見せて」
よく見ると、グリオは全身血まみれだ。装備の綻びはあまりないから返り血のほうが多いのだろう。それでも心配だ。
「さっきヨイチが治してくれたじゃないか。覚えてないのか?」
不意にグリオが腰に手をやり、冒険者カードを取り出した。着信があったらしい。
「無事だ。ヨイチが助けてくれた。大量のゴブリンが出たんだ。詳しくは戻ってから話す」
通話を切って、グリオがこちらを見た。
「俺が見たことは全部話そう。その上で覚えていることや思い当たることが……いや、命の恩人に詮索するものじゃないな」
僕とグリオはそれぞれのマジックボックスにゴブリンを詰め込み、冒険者ギルドへ戻った。
その後グリオが話してくれた内容を、僕は全く覚えていなかった。
僕はあの場に現れるなり、走りながら弓を構えつつ、周囲にゴブリンと同じだけ矢を創り出して放ったそうだ。
矢が放たれるタイミングは、弓で射たのと同じ瞬間だったという。
矢は全弾、ゴブリンの急所を的確に狙い、ほとんどのゴブリンがそれで倒れた。
数匹だけ生き残ったゴブリンが逃げようとすると、僕はそいつらの背中に「動くな」と声を発した。
ゴブリンは僕の一言で金縛りにでも遭ったかのように、固まった。
声に魔力が乗っていたように思えた、とはグリオの談だ。
「魔法や魔道具を介する以外の方法で魔力を使うやつがいるって話を聞いたことがある。ヨイチがそうなのか?」
わからない、としか言えない僕に、グリオは「なら仕方ない」と言ってくれた。
動かなくなったゴブリンを放置して、僕はグリオに治癒魔法を使った。
僕はゴブリンに「動くな」と言った以外は、終始無言だった。
青い瞳からは何の感情も見えず、治療も淡々としていたが、治癒魔法は丁寧で、鈍痛は残らなかったという。
それから、動けなくなっているゴブリンたちの背へ一瞬で矢を射掛け、とどめを刺した。
呆然と立ち尽くす僕に、それまでことの成り行きを呆然と眺めていたグリオが我に返り声をかけた、という流れだ。
「ごめん、グリオ。やっぱり覚えてないや」
せっかく全部教えてもらったのに、全く記憶にない。
自分がやったことを自分が覚えていないのって、怖い。
自分のことは自分で責任を取らないといけないのに。
「何を気に病んでいるんだ? 俺はヨイチに助けてもらった。ヨイチが覚えてなくても、俺が覚えているよ。ありがとう、ヨイチ」
グリオはそう言って僕の肩をぽんぽんと叩いた。
「とりあえず飯でも奢らせてくれ。昼、まだだろう? いい店があるんだ」
「嬉しいけど、僕すごく食べるよ?」
「冒険者なら皆そうだ」
お腹は空いていたので、素直に誘いに乗った。
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