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第二章
16 ちょっとした騒ぎ
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冒険者ギルドから魔物の巣の報酬が出た翌日、チェスタの自宅に集合した。
チェスタ達のパーティに入れてもらって、早ひと月。冒険者ギルドの決まりで、冒険者は一定期間、パーティに所属しなければならない。
一定期間とは、クエストに五回以上参加または、半年以上在籍すること。
僕はまだまだチェスタたちと一緒に居られると思っていたし、そのつもりだった。
むしろ、それ以上、出来る限るずっとチェスタ達のパーティに在籍したかった。
「そんな規則あるの!?」
チェスタにそれを言い渡された僕の第一声が、これだ。思ったより大きな声を出してしまい、足元のヒイロを驚かせてしまった。後で謝っておこう。
「ランクSの冒険者は、同じパーティに所属し続けることは出来ない。ヨイチは初めてのパーティだったから、この規則は適用されないと考えていたのだがな……。統括に釘を差されたよ」
統括が直々にチェスタに話をしたらしい。パーティリーダーはチェスタだから、責任持ってヨイチに言い渡せ、と。
「そっか……」
ランクAの時点で既に、ギルドから行動制限が掛かっていたのだ。Sなら尚一層ということか。
「思うところはあるだろうが、冒険者ギルドに所属する以上、こればかりは仕方ない」
肩を落とす僕に、アトワが声をかけてくれる。
「それに、抜け道あるもんね」
いたずらっぽく微笑むのはキュアンだ。
「抜け道?」
「常時在籍は駄目だけど、臨時パーティには制限掛かってないのよ」
「じゃあ……」
日時を示し合わせて同じクエストを請けて、現地で臨時で組めばいいのか。
「そういうこと」
「続ければ冒険者カードの履歴でバレる。まぁ、余程のことが無い限りはお目溢し貰えるがな」
真面目な顔で補足したチェスタも、後半の台詞を言う前にはニヤリと笑っていた。
「実は新しい仲間がなかなか集まらないんだ。俺が正式にAになって、行動制限も掛かっているしな」
チェスタは僕に向き直り、手を差し出した。
「そういうわけで、ヨイチはパーティから脱退してもらう。が……今後とも、よろしく頼む」
「今までありがとう。こちらこそ、よろしく」
チェスタの手を握ると、アトワとキュアンが上から手を重ね、最後にヒイロが前足をぽん、と乗せた。
パーティに関する話がついたところで、その場は解散した。
巣の攻略に参加した冒険者はしばらく休みを取るのが普通らしい。今日は本当に話をするだけの日だった。
せっかくだから次にクエストへ行く日時の調整もしてきた。
三日後に、一泊以上は確定のクエストへ行く予定だ。
スケジュール帳を持ったほうがいいかな。殆どスマホみたいな冒険者カードには、生憎スケジュール帳機能やアプリは無い。
「おかえりなさいませ、ご主人さま」
帰宅するとローズがいた。最早飽きることなく定番になりつつある挨拶に「ただいま」と返す。
「ローズはスケジュール帳とか付ける人?」
「メモはよく取る。それをまとめたノートならある」
「スケジュール管理も?」
「ローズはイネアルさんのところと家の用事しかないから、不要。ヨイチ、スケジュール管理したいの?」
「必要性が出てきたというか」
「ヒスイなら余ってるかも」
「余る?」
手帳が余るって、どういう事態?
「ただいまー……戻りました、ご主人さま」
「そこまで徹底しなくても……。おかえり」
エントランスで立ち話していたら、当のヒスイが帰ってきた。尚、僕の前半のつぶやきは黙殺された。
エントランスからリビングへ移動中に、ヒスイにスケジュール帳のことを軽く話した。
ヒスイとローズで用意してくれたお茶とお菓子を頂きながら、続きを話す。
ヒスイは日本にいたときから、スケジュール帳マニアだったとか。
「私も色々と探したのだけどね。日本にあるようなテンプレート印刷済みの用紙は無いのよ。だから、欲しいテンプレートはスタンプを発注してるわ。リングノートもツキコにお願いして作ってもらったの」
デコレーション用のシールやテープはほぼ皆無、ペンの種類も選べない、と嘆きながら語ってくれた。
「スケジュールに、デコレーション?」
「記念日のマスにイラスト入れたり、マンスリーページの枠の外を飾ったりとかね。するでしょ?」
「いや、僕は絵は苦手だし……飾るのも、ちょっと違うかな」
嫋やかで落ち着いているヒスイが、いつにない熱量でぐいぐい話してくれる。
別の一面が見られたのは嬉しいけれど、話が逸れている。
「あの、ヒスイ、僕は予定の確認用メモの延長上程度にしか考えてなくて……」
「そ、そっか、そうよね。あ、だったら私のお古で悪いのだけど……」
ヒスイが自室から取ってきてくれたのは、片手に収まるくらいのサイズのシンプルな糸綴じノートだ。最初の数ページは千切られ、ノート半ばほどまで見開きを7×5に区切ったマス目が書いてある。
「最初にこっちの世界に来て作ったスケジュール帳なの。ツキコが作ってくれたスタンプを使いたくて、新しいのを作ったから、これは放置しちゃってて。使えそうかな?」
「うーん。ちょっと書いてみていい?」
「ええ」
マス目が小さくて、僕のがさつな字でちゃんと書き込めるか不安だった。ヒスイのアドバイスで、例えばクエストは丸の中に「ク」と書く等の記号を決めれば、月の予定がひと目で把握できそうだ。
「なるほど、これなら使えそうだよ。貰っていいの?」
「使ってくれるなら嬉しいわ。あ、でも表紙は頑丈にしたほうがいいかもね」
今は少し厚めの紙が表紙になっている。確かに、常に持ち歩くのなら表紙は革か何かにしたほうが安心だ。
「なめし革ならツキコが持ってた……あっ、そうだヨイチくんに頼みたいことがあるのよ」
手帳の話に区切りがついたところで、ヒスイが言い出した。
テーブルの上のお菓子は全てなくなっていたはずなのに、ローズがいつの間にか追加と、お茶のおかわりまで注いでくれていた。ヒイロはソファーに座る僕の横で丸くなって船を漕いでいる。
「頼み?」
「明日、暇かしら」
「暇だよ」
「孤児院で子供たちの相手をしてほしいの。人の都合がつかなくなっちゃって……。手当はでないけど、お昼は出るから」
「わかった」
孤児院ということは、ヒスイがいつも行っているボランティアのことだろう。少し興味があって、前から行ってみたかったんだよね。
***
「お兄ちゃん冒険者なの!?」
「おっきい!」
「どんな魔物たおすの!?」
「肩車してー!」
はい、子供ナメてました。すみません。
孤児院では資金の捻出や子供たちの職業訓練の一環で、手芸品や食べ物を販売するバザーを定期的に開催している。
商品をつくったり、実際に販売するのは十代以上の子供たちだ。
バザーのために他の大人や大きい子達が出払っている間、子供たちは退屈しないように、あとバザーの邪魔をしないように僕の他に何人かの大人が面倒を見に来ている。
僕が相手を頼まれたのは、十歳未満の子供たち、四人。
他の人は別の部屋でもっと大勢を相手している。僕が初心者だからと、手加減してもらえたのだ。
僕が冒険者であることを話すと質問攻めにされ、身体によじ登られた。
重くも痛くもないけど、子供特有のエネルギーが凄い。
ヒイロを留守番に置いてきてよかった。僕以上にもみくちゃにされること請け合いだ。
順に相手をしつつ、肩は常に誰かが乗っている。
「魔法使える?」
「うん」
正直に答え、しまったと思ったときには遅かった。
「見せて!」「見せて!」「見たい!」「見せてー!」
肩に乗っていた子も下りて、僕の足元で「見せて」コールが始まった。
「わかった、わかったから。静かに、ね」
盛り上がりが凄い。他の部屋から苦情が来る前に、簡単な風魔法だけ見せることにした。
部屋にある椅子の下に風を吹かせ、椅子をふわりと持ち上げてみせる。
「触りたい!」
「乗っていい!?」
風に触れようとしたり、まだ浮いている椅子に乗ろうとしたり。
「危ないから駄目。僕は冒険者だから攻撃魔法寄りなんだよ」
風魔法をやめて言い聞かせると、子供たちは素直に言うことを聞いてくれた。
「じゃあさ、魔法でどうやって倒すの?」
最初に魔物について訊いてきた子だ。僕がクエストで魔法を使った場面を話していると、他の子たちも耳を傾けてくれていた。
そうしてしばらく過ごしていると、外に不穏な気配を感じた。
この気配、知っているような……でも誰だっけ?
「なんかお外、うるさくない?」
「うん。どうしたんだろうね」
子供たちも落ち着かない様子になってきた。
「様子見てくるよ。ここに居てね」
僕が立ち上がって扉に近づくと、扉が開いた。
「ヨイチさん、外の様子を見てきてもらっていいですか? ここの子たちは私が引き受けます」
他の部屋で子供の面倒を見ているマーサさんだ。ベテランの女性で、今日一番多くの子供の面倒を一人で見ている。
「すみません、お願いします。皆、マーサさんについていって」
「はーい」
子供たちを見送って、外へ出た。
想像以上に大変なことになっていた。
バザーの屋台が何軒も叩き壊され、品物は踏みにじられている。
首謀者らしき男たちは、今度は子供を庇っているボランティアの人たちに手を出そうとしていた。
体を張って止めに入ろうとしているのは……ヒスイだ。
ヒスイの胸ぐらを、男が掴んだ。
「離せ!」
考えるより先に口が動いた。
魔力の乗った言葉で、男の手は自らの意志とは関係なくヒスイから離れる。
ヒスイがふらついて地面に倒れる前に駆け寄って、支えた。
「……! 来てくれたのね」
「うん。これは何事?」
「わからない。あの人達が急に……」
その人達は、僕の周りに集まってきた。
「おい小僧、邪魔すんなよ」
「邪魔してるのはどっちだよ」
ヒスイを背後に庇い、男たちの前に立つ。
辺りの気配を[心眼]でしっかり読み、他の人や建物内の子供たちが全員無事なことを把握した。
後は、簡単だ。
チェスタ達のパーティに入れてもらって、早ひと月。冒険者ギルドの決まりで、冒険者は一定期間、パーティに所属しなければならない。
一定期間とは、クエストに五回以上参加または、半年以上在籍すること。
僕はまだまだチェスタたちと一緒に居られると思っていたし、そのつもりだった。
むしろ、それ以上、出来る限るずっとチェスタ達のパーティに在籍したかった。
「そんな規則あるの!?」
チェスタにそれを言い渡された僕の第一声が、これだ。思ったより大きな声を出してしまい、足元のヒイロを驚かせてしまった。後で謝っておこう。
「ランクSの冒険者は、同じパーティに所属し続けることは出来ない。ヨイチは初めてのパーティだったから、この規則は適用されないと考えていたのだがな……。統括に釘を差されたよ」
統括が直々にチェスタに話をしたらしい。パーティリーダーはチェスタだから、責任持ってヨイチに言い渡せ、と。
「そっか……」
ランクAの時点で既に、ギルドから行動制限が掛かっていたのだ。Sなら尚一層ということか。
「思うところはあるだろうが、冒険者ギルドに所属する以上、こればかりは仕方ない」
肩を落とす僕に、アトワが声をかけてくれる。
「それに、抜け道あるもんね」
いたずらっぽく微笑むのはキュアンだ。
「抜け道?」
「常時在籍は駄目だけど、臨時パーティには制限掛かってないのよ」
「じゃあ……」
日時を示し合わせて同じクエストを請けて、現地で臨時で組めばいいのか。
「そういうこと」
「続ければ冒険者カードの履歴でバレる。まぁ、余程のことが無い限りはお目溢し貰えるがな」
真面目な顔で補足したチェスタも、後半の台詞を言う前にはニヤリと笑っていた。
「実は新しい仲間がなかなか集まらないんだ。俺が正式にAになって、行動制限も掛かっているしな」
チェスタは僕に向き直り、手を差し出した。
「そういうわけで、ヨイチはパーティから脱退してもらう。が……今後とも、よろしく頼む」
「今までありがとう。こちらこそ、よろしく」
チェスタの手を握ると、アトワとキュアンが上から手を重ね、最後にヒイロが前足をぽん、と乗せた。
パーティに関する話がついたところで、その場は解散した。
巣の攻略に参加した冒険者はしばらく休みを取るのが普通らしい。今日は本当に話をするだけの日だった。
せっかくだから次にクエストへ行く日時の調整もしてきた。
三日後に、一泊以上は確定のクエストへ行く予定だ。
スケジュール帳を持ったほうがいいかな。殆どスマホみたいな冒険者カードには、生憎スケジュール帳機能やアプリは無い。
「おかえりなさいませ、ご主人さま」
帰宅するとローズがいた。最早飽きることなく定番になりつつある挨拶に「ただいま」と返す。
「ローズはスケジュール帳とか付ける人?」
「メモはよく取る。それをまとめたノートならある」
「スケジュール管理も?」
「ローズはイネアルさんのところと家の用事しかないから、不要。ヨイチ、スケジュール管理したいの?」
「必要性が出てきたというか」
「ヒスイなら余ってるかも」
「余る?」
手帳が余るって、どういう事態?
「ただいまー……戻りました、ご主人さま」
「そこまで徹底しなくても……。おかえり」
エントランスで立ち話していたら、当のヒスイが帰ってきた。尚、僕の前半のつぶやきは黙殺された。
エントランスからリビングへ移動中に、ヒスイにスケジュール帳のことを軽く話した。
ヒスイとローズで用意してくれたお茶とお菓子を頂きながら、続きを話す。
ヒスイは日本にいたときから、スケジュール帳マニアだったとか。
「私も色々と探したのだけどね。日本にあるようなテンプレート印刷済みの用紙は無いのよ。だから、欲しいテンプレートはスタンプを発注してるわ。リングノートもツキコにお願いして作ってもらったの」
デコレーション用のシールやテープはほぼ皆無、ペンの種類も選べない、と嘆きながら語ってくれた。
「スケジュールに、デコレーション?」
「記念日のマスにイラスト入れたり、マンスリーページの枠の外を飾ったりとかね。するでしょ?」
「いや、僕は絵は苦手だし……飾るのも、ちょっと違うかな」
嫋やかで落ち着いているヒスイが、いつにない熱量でぐいぐい話してくれる。
別の一面が見られたのは嬉しいけれど、話が逸れている。
「あの、ヒスイ、僕は予定の確認用メモの延長上程度にしか考えてなくて……」
「そ、そっか、そうよね。あ、だったら私のお古で悪いのだけど……」
ヒスイが自室から取ってきてくれたのは、片手に収まるくらいのサイズのシンプルな糸綴じノートだ。最初の数ページは千切られ、ノート半ばほどまで見開きを7×5に区切ったマス目が書いてある。
「最初にこっちの世界に来て作ったスケジュール帳なの。ツキコが作ってくれたスタンプを使いたくて、新しいのを作ったから、これは放置しちゃってて。使えそうかな?」
「うーん。ちょっと書いてみていい?」
「ええ」
マス目が小さくて、僕のがさつな字でちゃんと書き込めるか不安だった。ヒスイのアドバイスで、例えばクエストは丸の中に「ク」と書く等の記号を決めれば、月の予定がひと目で把握できそうだ。
「なるほど、これなら使えそうだよ。貰っていいの?」
「使ってくれるなら嬉しいわ。あ、でも表紙は頑丈にしたほうがいいかもね」
今は少し厚めの紙が表紙になっている。確かに、常に持ち歩くのなら表紙は革か何かにしたほうが安心だ。
「なめし革ならツキコが持ってた……あっ、そうだヨイチくんに頼みたいことがあるのよ」
手帳の話に区切りがついたところで、ヒスイが言い出した。
テーブルの上のお菓子は全てなくなっていたはずなのに、ローズがいつの間にか追加と、お茶のおかわりまで注いでくれていた。ヒイロはソファーに座る僕の横で丸くなって船を漕いでいる。
「頼み?」
「明日、暇かしら」
「暇だよ」
「孤児院で子供たちの相手をしてほしいの。人の都合がつかなくなっちゃって……。手当はでないけど、お昼は出るから」
「わかった」
孤児院ということは、ヒスイがいつも行っているボランティアのことだろう。少し興味があって、前から行ってみたかったんだよね。
***
「お兄ちゃん冒険者なの!?」
「おっきい!」
「どんな魔物たおすの!?」
「肩車してー!」
はい、子供ナメてました。すみません。
孤児院では資金の捻出や子供たちの職業訓練の一環で、手芸品や食べ物を販売するバザーを定期的に開催している。
商品をつくったり、実際に販売するのは十代以上の子供たちだ。
バザーのために他の大人や大きい子達が出払っている間、子供たちは退屈しないように、あとバザーの邪魔をしないように僕の他に何人かの大人が面倒を見に来ている。
僕が相手を頼まれたのは、十歳未満の子供たち、四人。
他の人は別の部屋でもっと大勢を相手している。僕が初心者だからと、手加減してもらえたのだ。
僕が冒険者であることを話すと質問攻めにされ、身体によじ登られた。
重くも痛くもないけど、子供特有のエネルギーが凄い。
ヒイロを留守番に置いてきてよかった。僕以上にもみくちゃにされること請け合いだ。
順に相手をしつつ、肩は常に誰かが乗っている。
「魔法使える?」
「うん」
正直に答え、しまったと思ったときには遅かった。
「見せて!」「見せて!」「見たい!」「見せてー!」
肩に乗っていた子も下りて、僕の足元で「見せて」コールが始まった。
「わかった、わかったから。静かに、ね」
盛り上がりが凄い。他の部屋から苦情が来る前に、簡単な風魔法だけ見せることにした。
部屋にある椅子の下に風を吹かせ、椅子をふわりと持ち上げてみせる。
「触りたい!」
「乗っていい!?」
風に触れようとしたり、まだ浮いている椅子に乗ろうとしたり。
「危ないから駄目。僕は冒険者だから攻撃魔法寄りなんだよ」
風魔法をやめて言い聞かせると、子供たちは素直に言うことを聞いてくれた。
「じゃあさ、魔法でどうやって倒すの?」
最初に魔物について訊いてきた子だ。僕がクエストで魔法を使った場面を話していると、他の子たちも耳を傾けてくれていた。
そうしてしばらく過ごしていると、外に不穏な気配を感じた。
この気配、知っているような……でも誰だっけ?
「なんかお外、うるさくない?」
「うん。どうしたんだろうね」
子供たちも落ち着かない様子になってきた。
「様子見てくるよ。ここに居てね」
僕が立ち上がって扉に近づくと、扉が開いた。
「ヨイチさん、外の様子を見てきてもらっていいですか? ここの子たちは私が引き受けます」
他の部屋で子供の面倒を見ているマーサさんだ。ベテランの女性で、今日一番多くの子供の面倒を一人で見ている。
「すみません、お願いします。皆、マーサさんについていって」
「はーい」
子供たちを見送って、外へ出た。
想像以上に大変なことになっていた。
バザーの屋台が何軒も叩き壊され、品物は踏みにじられている。
首謀者らしき男たちは、今度は子供を庇っているボランティアの人たちに手を出そうとしていた。
体を張って止めに入ろうとしているのは……ヒスイだ。
ヒスイの胸ぐらを、男が掴んだ。
「離せ!」
考えるより先に口が動いた。
魔力の乗った言葉で、男の手は自らの意志とは関係なくヒスイから離れる。
ヒスイがふらついて地面に倒れる前に駆け寄って、支えた。
「……! 来てくれたのね」
「うん。これは何事?」
「わからない。あの人達が急に……」
その人達は、僕の周りに集まってきた。
「おい小僧、邪魔すんなよ」
「邪魔してるのはどっちだよ」
ヒスイを背後に庇い、男たちの前に立つ。
辺りの気配を[心眼]でしっかり読み、他の人や建物内の子供たちが全員無事なことを把握した。
後は、簡単だ。
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