異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第1章:異世界と吸血姫編

第18話:異世界飯

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 さて今夜私が頂く異世界飯は、














 豆です

 見た目枝豆の緑色の豆を乾燥させた様な豆三粒が俺の掌にちょこんと乗っている。

「これ仙●だよね!?ねぇ、猫が保管してる豆だよね!?」

「まだそれ言ってんのかよ?猫がこんなの持ってる訳ないだろ。それにセン●ってのもなんなんだ?」

「先程も話しましたがこれはセンビーンと言う豆で成人男性なら3粒程で腹が膨れ、栄養も満点で身体にはこれ以外で栄養補給は要らないと言われる程の物ですよ。傭兵や旅人の間ではかなり重宝される物です」

「だから!まんま●豆じゃねぇか!!」

「「???」」

 とまあ、あれから一向に晩飯を用意する気配を感じず流石に怪しいと思い聞いてみれば、狩りで肉を確保?山菜やらキノコ等で煮込み?ノンノン!今の時代はこれさ!的な感じ出されたのは豆である。
 乾燥されているからだろうか元の世界で俺が食べた事のある枝豆より若干小さくシワシワな感じだが、正しく豆であった。

「このセンビーンだけで食事は事足りる訳ですから当然食材や調理器具なんて持ち歩く必要が無くそれだけでもかなりの利がある訳ですが、魔力や体力回復促進もしてくれる優れものです♪」

 得意気に説明を付け加えるアルアレではあるが・・・名前・・・
 そう、この豆の名前である。

 センビーン――だからまんま仙●じゃねぇか!!
 もうこれはあれだ
 俺よりも前にこの異世界に召喚だか転生だか転移して来た日本人が居て、偶然この豆を発見して「すげぇ!これって仙●じゃ~ん、でも●豆って名前は権利とかそういう・・・ブツブツ・・・よし!センビーンって名付けよう!」とかって事があったに違い無い!
 きっとそうだ!

「はあぁぁ・・・もういいよ、なんで異世界飯第一号が仙●なんだよ・・・」

「だからセン●じゃねぇって言ってっだろぉ」

 おい・・・・・・
 トイズ、お前今、カカ●ットに寄せただろ
 なあ?明らかに寄せたよな?

「センビーンだぜ?それにアルアレが言った様に旅には荷物少なくて済むからこれはマジで便利なんだぜ?」

 そう言ってナッズはセンビーンとやらを5粒程一気に口に放り込みバリボリと頬張った。

「3粒でいいんじゃないのか?」
「ん?あぁ、俺は身体デカいからな。5粒くらいが丁度いいんだ。」
「なるほどね、まぁとりあえず食ってみるか」

 俺は掌の一粒を口に放り込んで噛み締めてみる。
 味はなんと言うか、枝豆と大豆の中間くらい?乾燥させている分若干大豆感が強い。

「うーん・・・想像通りの味だけど質素どころの話じゃないな」

 そのまま残りのセンビーンも食べ終えると直ぐにこの豆の効果を実感出来た。

「おぉ!?直ぐに満腹感が!」

「だろ?不思議だよな!こんな小っこい豆で腹が膨れるんだぜ?」

 確かにこれは不思議だ
 身体のと言うか胃の中の水分で急激に豆が膨張でもするのだろうか?

「この現象自体は不思議でちょっとテンション上がったけどやっぱり脳が満足しねぇわ・・・」

「んな事言ったって肉料理なんて街にでも行かねぇと食えねぇって」

 話を聞く限りではこの世界では外で調理した飯を食べる習慣というものが殆ど無いらしい。
 獣やら魔獣が匂いに釣られてやって来てしまうというのも大きいがやはり先程から会話にも出て来ていたが、旅の荷物を減らせると言うのがデカい。傭兵の本来の領分である戦争時は例外らしいが。
 戦争時は本陣では常に調理した食事が配給されるとの事であった。尤もその料理の質はピンキリらしいし、本陣とは離れた最前線や斥候等で単独で行動する部隊もその限りでは無いらしい事も付け加えておく。
 そんな訳でとりあえず本格的な異世界飯は街とやらに行くまではお預けになりそうだ。
 それでも、頭の中の俺の為のには、食材や調理器具を運ぶ荷物持ちと、調理自体を行う調理人、更には野営時等に万全を期す為の見張りの独自部隊も作ろうと書き込む。

 俺は異世界野営飯を諦めた訳では無いのだよ
 ふんっ

 晩飯と言う名の仙●を食って周りを見てみれば元傭兵団のメンツはそれぞれに寛いでいる。
 数人で集まり座って談笑する者や地べたにそのまま寝転がっている者もいて自由時間と言う感じだ。

「このままもうみんな寝る感じなの?」

 俺はナッズにそう問い掛ける。

「うん?まあそうだな、後は寝るくらいしかやる事はないな」

「そうか、暇だなあ」

「ハルは寝る時は馬車ん中で寝ていいぜ?見張りはこっちで交代でやるしな」

「うん、寝る時はそうさせて貰うよ。ただまだまったく眠くないんだよ」

「そりゃそうだろうな、でも寝れる時は寝ておいた方がいいぜ?」

「そりゃ傭兵の鉄則ってやつか?」

「その通り!戦場で安心して寝れるなんて状況はそうそう無いし、そういう時にすぐ寝れて体力回復出来ないといざと言う時代償を自分の命で支払う事になっちまうぞ?」

「へいへい、分かりましたよ」

 そう言って遠慮無く馬車内で休ませて貰おうと立ち上がる。

「なんじゃもう寝るのか」

 何とも甲高い声だなと不意に振り返る。

「ああ、特にやること―――ッ!!」

 言い掛けて直ぐに声の主から距離を取る様に跳ね上がる。

「なんじゃ?妾の顔に何か付いておるのかの?」

 そう言って声の主は二チャリと効果音が付きそうな笑顔で首を傾げる。
 俺は一挙手一投足見逃さず気を張り詰めながら声を絞り出す。

「お主、何者だ」

 あ、突然の事と緊張のし過ぎてつい、俺の好きなアニメキャラに寄せちまった
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