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第2章:闇蠢者の襲来編
第59話:襲撃
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「それで、その認識阻害とやらは解く事は出来るのか?」
「・・・待っておれ。そうと分かればこんなものッ」
そう言ってアリシエーゼはムムムと一唸りして目を瞑った。
「・・・ほいさー!!」
アリシエーゼは目を瞑ってから直ぐに身体を大の字に素早く解放し、よく分からない声を上げた。
なに、ほいさーって・・・
「妾に掛かればこんなものッ!お主達、よくもやってくれたな!」
アリシエーゼはまた何も居ない宙空に向かって、キーキーと喚き、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、そこに居るのであろう精霊達に抗議した。
「・・・さて、お主らは認識阻害の解除は出来るか?」
暫くして落ち着いたアリシエーゼは、傭兵と篤に向かって言った。
傭兵は皆頷き、篤だけが首を傾げた。
「どうやるのだ?」
篤はアリシエーゼに聞くが、アリシエーゼは自身の説明力に自分でも疑念を抱いているのかは定かでは無いが、篤への説明をソニに託した。
きっと説明が面倒臭いだけだな・・・
「さて、精霊達が隠したがったあの大樹には何があるんじゃろうのう」
そう言ってアリシエーゼは二チャリ顔をした。
アリシエーゼ曰く、認識阻害とは、大気中にある魔力に干渉して、その魔力を相手方、つまり今回の場合は大樹を発見させたく無い者の目に直接、イメージ的には貼り付ける事で其れを行うものらしい。
ちょっと待て・・・
目に直接作用するって、それは認識では無く、視覚阻害なのでは・・・?
「それって戦闘中に例えば相手の目の前を真っ暗にするとか、自分の姿だけ見えない様にするとかってことも可能なのか?」
「可能じゃが、戦闘中にそんな事したら一発で認識阻害を掛けられたと言うのがバレるであろう。掛けられたのが分かったのなら、訓練すれば一瞬でそれを解除出来るでな」
それでも、一瞬の隙を作る事や、遠くから認識阻害を掛けておいて、近付いて暗殺なんて事も可能なのでは?
「ちなみに、暗殺に使おう等と考えてはいまいな?認識阻害は魔力に干渉するでな、掛けられたら魔力探知が人並みより少しあれば直ぐに気付く事は出来るから使えないんじゃぞ」
そう言ってアリシエーゼは得意げな顔をする。
その顔が妙に憎たらしい顔をしていたので俺は言い返した。
「じゃあ何で今は掛けられてるの気付かなかったんだよ?お前の魔力探知は人並み以下か?ううん?」
「そ、それはッ、こ奴らがまさか、妾達に認識阻害をしてくるとは思わずにじゃな!」
アリシエーゼはそう言って、そこら中にいるであろう精霊達をキッと睨む。
その瞬間、大気が一瞬震えた様な気がした。
気の所為だな・・・
因みに、俺や明莉がその認識阻害に掛からなかったのは、魔力が無い事が原因だと言う事だった。
確かに、魔力に干渉して相手の目に直接魔法を掛ける様なもので、何と無く分かる気はするが、本当にそれだけか?と疑問に思った。
ただ、その根本原因や魔力が無い事の因果関係は特に気にする必要は無いかとも思った。
認識阻害は俺には通用しないってのが分かってればいいや
そうこうしている内に、大樹の前の建物の跡を乗り越え、大樹そのものの前に立つ。
「ふぁぁ、近くまで来ると凄い迫力ですね」
明莉は大樹を見上げてそう言った。
「そうだね、かなり大きい」
俺ももう一度大樹を見上げて言う。
因みに、この場に篤とソニは着いて来て居ない。
認識阻害解除のコツが掴めず苦戦していたのでそのまま置いて来た。
「さて、この大樹がどうじゃと言うんじゃろうなぁ」
そう言ってアリシエーゼは大樹の周りを上を見上げながら回ろうとしていた。
「いやいや、これだろ」
「うん?」
俺の指差す方を見遣るとアリシエーゼは驚愕した。
「な、なんじゃこれは!?余りにも自然な感じなので気付かなかったのじゃ!」
「いやいや、それは無いだろ・・・」
そこには、大樹の幹をくり抜いて取り付けた様な木製の扉があった。
事実、その扉は大樹に取り付けられており、扉の奥にはきっと大きな空間があるんだろうなと想像にかたくなかった。
「とりあえず中に入ってみるのじゃ」
アリシエーゼはそう言って、そのまま扉の前に立ち扉へ手を掛ける。
「危ねぇ!」
アリシエーゼが扉に手を賭ける瞬間、遠くから風切り音が聞こえ、俺は咄嗟にアリシエーゼの前に飛び出して手を出した。
「きゃあ!」
「痛ってぇ!」
グシャリと言う音と共に俺が出した掌を矢が貫いた。その矢は、俺の掌を突き抜ける事は無かったが、俺が手を出して居なければアリシエーゼの頭に矢が突き刺さっていたであろう。
「チッ!何処からだ!?」
俺は直ぐに矢が飛んで来た方向を確認するが既にそこに射手は居ない様であった。
突然の襲撃に一瞬皆動けなかったが、直ぐに戦闘態勢となりそれぞれ武器を抜く。
俺も手に刺さった矢を無理やり引抜き、傷が癒えるのを確認すると臨戦態勢に入った。
「視覚阻害を使っておるのか!?暖!お主は直接敵を探すんじゃ!お主なら視覚阻害の妨害を無視して探せるはずじゃ!」
「おうッ」
「他の者は視覚阻害を随時解除しながら篤と明莉を護っておれ!妾は精霊の動きを見て予測して動く!」
「「「おうッ」」」
アリシエーゼの的確な指示も有り、俺達は瞬時に自分のやるべき事をするべく動いた。
そして、この時に気付いたのだが、デス隊をこのまま腐らせておくのは勿体ない。
「デス隊!敵を探せ!無理はするなよ!」
既に俺は匂いでデス隊の位置は把握出来ているが、俺の声に反応して、三人のデス隊がそれぞれ別々に索敵を開始したのを確認した。
そしてこの時にもう一つ気付く。
「アリシエーゼ!敵は匂い誤魔化してるか!?」
「その様じゃ!強敵じゃぞ!」
「あぁ!」
アリシエーゼと短く会話を済ませるが、やはり匂いが何となく誤魔化されている感じがしたのが当る。
匂いを消していると言うより、誤魔化していると言うのが適当な気がすると逡巡してまた目の前に意識を戻す。
と同時に上空からまた風切り音が聞こえて顔を上空に向けた。
俺の目は矢が少し放物線を描きアルアレ達の方へ向かって行くのを捉えた。
「アルアレ!上だ!矢が―――」
俺は言い掛けて俺は無意識に身体を急激に捻った。
その瞬間、俺の顔をビュンッと矢が通り抜ける。
「囮と時間差ッかよッ」
身体を捻って矢を躱した後、俺は直ぐに矢が放たれた方向へ走り出した。
もう既にデス隊とアリシエーゼが向かっている想定で俺は少し反対から回り込む様な形を取った。
矢は集落の外の森の中から放たれた感じがした。
集落の外壁は木製で頑丈そうであるが、高さは俺の背丈程しかないので余裕で飛び越えられるし、全て壁と言う訳では無い。
壁、柵、壁と交互に並んでいる為、柵の部分からなら集落の外に居ながら矢を射る事は可能であろう。
走りながらそんな事を考えていると、左前方から声が聞こえた。
「ハル様!!」
たぶんデス隊だと思って方向を修正し一段スピードを上げた。
直ぐに外壁となるが丁度柵の部分であり、デス隊の一人がフード付きの外套を纏った人物と交戦しているのが見えたので走る勢いそのまま柵を飛び越え、着地後、二歩程ステップを挟みそのまま飛び膝蹴りを敵の頭目掛けて繰り出した。
「ッオラァ!!」
俺の声に一瞬振り向く敵であったが、丁度側頭部に俺の膝がめり込むのが同時であった。
「ッガ!」
鈍い音と共に飛び膝を食らった敵は倒れ、それを通り過ぎながら目で確認して、着地と同時に取り押さえるべく急制動と急反転を掛けて倒れている敵に飛び付いた。
馬乗りになり、そのまま顔面にもう一度拳を叩き込もうと右腕を振り上げて俺は動きを止めた。
「・・・マジで?」
既に俺の飛び膝で気を失っていたが、被っていたフードが捲れて見えるその顔は綺麗に整った女性で、耳が長く、先がとんがっていた。
「エルフかよ・・・」
俺は女性に、しかもこの集落の生き残りかも知れないエルフに容赦無く飛び膝蹴りをお見舞いした事に少しバツを悪くした。
でも俺を確実に殺そうとしてたし・・・
「・・・待っておれ。そうと分かればこんなものッ」
そう言ってアリシエーゼはムムムと一唸りして目を瞑った。
「・・・ほいさー!!」
アリシエーゼは目を瞑ってから直ぐに身体を大の字に素早く解放し、よく分からない声を上げた。
なに、ほいさーって・・・
「妾に掛かればこんなものッ!お主達、よくもやってくれたな!」
アリシエーゼはまた何も居ない宙空に向かって、キーキーと喚き、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、そこに居るのであろう精霊達に抗議した。
「・・・さて、お主らは認識阻害の解除は出来るか?」
暫くして落ち着いたアリシエーゼは、傭兵と篤に向かって言った。
傭兵は皆頷き、篤だけが首を傾げた。
「どうやるのだ?」
篤はアリシエーゼに聞くが、アリシエーゼは自身の説明力に自分でも疑念を抱いているのかは定かでは無いが、篤への説明をソニに託した。
きっと説明が面倒臭いだけだな・・・
「さて、精霊達が隠したがったあの大樹には何があるんじゃろうのう」
そう言ってアリシエーゼは二チャリ顔をした。
アリシエーゼ曰く、認識阻害とは、大気中にある魔力に干渉して、その魔力を相手方、つまり今回の場合は大樹を発見させたく無い者の目に直接、イメージ的には貼り付ける事で其れを行うものらしい。
ちょっと待て・・・
目に直接作用するって、それは認識では無く、視覚阻害なのでは・・・?
「それって戦闘中に例えば相手の目の前を真っ暗にするとか、自分の姿だけ見えない様にするとかってことも可能なのか?」
「可能じゃが、戦闘中にそんな事したら一発で認識阻害を掛けられたと言うのがバレるであろう。掛けられたのが分かったのなら、訓練すれば一瞬でそれを解除出来るでな」
それでも、一瞬の隙を作る事や、遠くから認識阻害を掛けておいて、近付いて暗殺なんて事も可能なのでは?
「ちなみに、暗殺に使おう等と考えてはいまいな?認識阻害は魔力に干渉するでな、掛けられたら魔力探知が人並みより少しあれば直ぐに気付く事は出来るから使えないんじゃぞ」
そう言ってアリシエーゼは得意げな顔をする。
その顔が妙に憎たらしい顔をしていたので俺は言い返した。
「じゃあ何で今は掛けられてるの気付かなかったんだよ?お前の魔力探知は人並み以下か?ううん?」
「そ、それはッ、こ奴らがまさか、妾達に認識阻害をしてくるとは思わずにじゃな!」
アリシエーゼはそう言って、そこら中にいるであろう精霊達をキッと睨む。
その瞬間、大気が一瞬震えた様な気がした。
気の所為だな・・・
因みに、俺や明莉がその認識阻害に掛からなかったのは、魔力が無い事が原因だと言う事だった。
確かに、魔力に干渉して相手の目に直接魔法を掛ける様なもので、何と無く分かる気はするが、本当にそれだけか?と疑問に思った。
ただ、その根本原因や魔力が無い事の因果関係は特に気にする必要は無いかとも思った。
認識阻害は俺には通用しないってのが分かってればいいや
そうこうしている内に、大樹の前の建物の跡を乗り越え、大樹そのものの前に立つ。
「ふぁぁ、近くまで来ると凄い迫力ですね」
明莉は大樹を見上げてそう言った。
「そうだね、かなり大きい」
俺ももう一度大樹を見上げて言う。
因みに、この場に篤とソニは着いて来て居ない。
認識阻害解除のコツが掴めず苦戦していたのでそのまま置いて来た。
「さて、この大樹がどうじゃと言うんじゃろうなぁ」
そう言ってアリシエーゼは大樹の周りを上を見上げながら回ろうとしていた。
「いやいや、これだろ」
「うん?」
俺の指差す方を見遣るとアリシエーゼは驚愕した。
「な、なんじゃこれは!?余りにも自然な感じなので気付かなかったのじゃ!」
「いやいや、それは無いだろ・・・」
そこには、大樹の幹をくり抜いて取り付けた様な木製の扉があった。
事実、その扉は大樹に取り付けられており、扉の奥にはきっと大きな空間があるんだろうなと想像にかたくなかった。
「とりあえず中に入ってみるのじゃ」
アリシエーゼはそう言って、そのまま扉の前に立ち扉へ手を掛ける。
「危ねぇ!」
アリシエーゼが扉に手を賭ける瞬間、遠くから風切り音が聞こえ、俺は咄嗟にアリシエーゼの前に飛び出して手を出した。
「きゃあ!」
「痛ってぇ!」
グシャリと言う音と共に俺が出した掌を矢が貫いた。その矢は、俺の掌を突き抜ける事は無かったが、俺が手を出して居なければアリシエーゼの頭に矢が突き刺さっていたであろう。
「チッ!何処からだ!?」
俺は直ぐに矢が飛んで来た方向を確認するが既にそこに射手は居ない様であった。
突然の襲撃に一瞬皆動けなかったが、直ぐに戦闘態勢となりそれぞれ武器を抜く。
俺も手に刺さった矢を無理やり引抜き、傷が癒えるのを確認すると臨戦態勢に入った。
「視覚阻害を使っておるのか!?暖!お主は直接敵を探すんじゃ!お主なら視覚阻害の妨害を無視して探せるはずじゃ!」
「おうッ」
「他の者は視覚阻害を随時解除しながら篤と明莉を護っておれ!妾は精霊の動きを見て予測して動く!」
「「「おうッ」」」
アリシエーゼの的確な指示も有り、俺達は瞬時に自分のやるべき事をするべく動いた。
そして、この時に気付いたのだが、デス隊をこのまま腐らせておくのは勿体ない。
「デス隊!敵を探せ!無理はするなよ!」
既に俺は匂いでデス隊の位置は把握出来ているが、俺の声に反応して、三人のデス隊がそれぞれ別々に索敵を開始したのを確認した。
そしてこの時にもう一つ気付く。
「アリシエーゼ!敵は匂い誤魔化してるか!?」
「その様じゃ!強敵じゃぞ!」
「あぁ!」
アリシエーゼと短く会話を済ませるが、やはり匂いが何となく誤魔化されている感じがしたのが当る。
匂いを消していると言うより、誤魔化していると言うのが適当な気がすると逡巡してまた目の前に意識を戻す。
と同時に上空からまた風切り音が聞こえて顔を上空に向けた。
俺の目は矢が少し放物線を描きアルアレ達の方へ向かって行くのを捉えた。
「アルアレ!上だ!矢が―――」
俺は言い掛けて俺は無意識に身体を急激に捻った。
その瞬間、俺の顔をビュンッと矢が通り抜ける。
「囮と時間差ッかよッ」
身体を捻って矢を躱した後、俺は直ぐに矢が放たれた方向へ走り出した。
もう既にデス隊とアリシエーゼが向かっている想定で俺は少し反対から回り込む様な形を取った。
矢は集落の外の森の中から放たれた感じがした。
集落の外壁は木製で頑丈そうであるが、高さは俺の背丈程しかないので余裕で飛び越えられるし、全て壁と言う訳では無い。
壁、柵、壁と交互に並んでいる為、柵の部分からなら集落の外に居ながら矢を射る事は可能であろう。
走りながらそんな事を考えていると、左前方から声が聞こえた。
「ハル様!!」
たぶんデス隊だと思って方向を修正し一段スピードを上げた。
直ぐに外壁となるが丁度柵の部分であり、デス隊の一人がフード付きの外套を纏った人物と交戦しているのが見えたので走る勢いそのまま柵を飛び越え、着地後、二歩程ステップを挟みそのまま飛び膝蹴りを敵の頭目掛けて繰り出した。
「ッオラァ!!」
俺の声に一瞬振り向く敵であったが、丁度側頭部に俺の膝がめり込むのが同時であった。
「ッガ!」
鈍い音と共に飛び膝を食らった敵は倒れ、それを通り過ぎながら目で確認して、着地と同時に取り押さえるべく急制動と急反転を掛けて倒れている敵に飛び付いた。
馬乗りになり、そのまま顔面にもう一度拳を叩き込もうと右腕を振り上げて俺は動きを止めた。
「・・・マジで?」
既に俺の飛び膝で気を失っていたが、被っていたフードが捲れて見えるその顔は綺麗に整った女性で、耳が長く、先がとんがっていた。
「エルフかよ・・・」
俺は女性に、しかもこの集落の生き残りかも知れないエルフに容赦無く飛び膝蹴りをお見舞いした事に少しバツを悪くした。
でも俺を確実に殺そうとしてたし・・・
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